漫画のことと本のこと

漫画好きが読んだ漫画や本の感想を書くブログです。

『生き残った6人によると』1巻感想~ゾンビと恋。リアリティーショー風ゾンビパニックは謎めいた引きで期待が高まる~

大変軽~いゾンビ漫画のご紹介ですー

 

と言いつつ、ちょっと仕込みがある気がしてならない。

気になる引きがたいへん気になる、2巻が待ち遠しい漫画です。

 

あらすじと感想をご紹介します。

 

生き残った6人によると

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 山本 和音『生き残った6人によると』KADOKAWA2021年 より引用

 

 

【あらすじ】

 

成田空港に着陸した飛行機のなかで、一体のゾンビが見つかった。

 

幕張を中心に爆発的に広がるゾンビパンデミック

 

ゾンビに襲われた女子高生、水上梨々(りり)。

 

逃げ込んだショッピングモールでは、8人の10~20代の男女が立てこもっていた。

 

ショッピングモールの中で衣食住の足りた数日を過ごしながら、残った男女は恋をする。

 

ガラスの向こう数秒後の未来が

怖い

怖い

怖い

 

だからこそ恋をする。

 

リアリティーショーめいた男女恋愛と生命の危機感が並走するゾンビパニック漫画!

 

 

【感想】

 

ゾンビ設定の含みと一枚裏のありそうな恋愛模様に2巻以降が待ち遠しい!

 

ゾンビと言えばスーパーへの立てこもり。

 

もはや定番となった設定をモールに変更、モール内の施設や食べ物でいっそ華やかで楽しい男女混合シェアハウス然とした暮らし(なお外にはゾンビ)。

 

タイプも様々な男女が共同生活となると、沸き上がる恋愛感情。

 

ゾンビものって最終人間同士の関係性に着地することも多いですが、最初っから恋愛に振り切るとは思い切った発想だなーと。

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山本 和音『生き残った6人によると』KADOKAWA2021年 より引用

 

 

 

しかしながら、ゾンビものとして見ると、千葉県まるごとを封じ込めに出る作戦(つまり他地方は(まだ)パニックが広がっていない)や、

 

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山本 和音『生き残った6人によると』KADOKAWA2021年 より引用

 

 

感染しても運転能力の残っているタイプのゾンビもいて、ゾンビものとしての展開に期待・・・!

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山本 和音『生き残った6人によると』KADOKAWA2021年 より引用

 

またメインとも思える恋愛模様も、なんとなく行動が怪しげなキャラクターがちらほら。サスペンスの予感も感じるWAKUWAKUの引き。

 

 

9月15日に1巻が発売、2巻がたった一か月後の10月15日発売と刻んできてるのもちょっと気になる。

 

ただの恋愛ゾンビものじゃないんじゃないか・・・?とテッカテカに期待しているゾンビものです。

 

 

せっかくなのでこの機会に『28日後…』(身体能力が高いゾンビ映画)を観ながら待ちたいと思います!ゾンビ万歳!

 

『作りたい女と食べたい女』16話のこと~web無料配信をTwitter告知する上での、現段階での最適解(『ルックバック』を事例として)~

本日は漫画の感想ではなく、漫画の広報について思うところを書きますー

 

多分Twitterをやられている方でマンガ好きな方だと、9/17に配信された『作りたい女と食べたい女』の感想をちらっと見られた方もいらっしゃると思います。

 

今回は、内容には触れずにその配信の方法の配慮がすごくいいって話、

そしてこれは現段階で最も求められている広報の形なんじゃないかなって話を書き留めておきたいなって思います。

 

もちろん『作りたい女と食べたい女』の内容もむちゃくちゃいいぜ!

 

今回は

  • あらすじ
  • 公開時の注意書きとweb公開漫画の問題点について

を書きます。

 

 

 

 

『作りたい女と食べたい女』

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 ゆざきさかおみ『作りたい女と食べたい女』株式会社KADOKAWA2021年 より引用

 

【あらすじ】

 

少食だけど料理好き、食べられないのにいっぱい「作りたい女」、野本さん。

長身で大柄、量をしっかり「食べたい女」、春日さん。

 

同じアパートの隣の隣に住んでいた二人が出会い、二人が嬉しいことを二人で一緒にやる。

 

デカ盛りグルメものながらきれいな食べシーンと、女性同士の優しい連帯を描く「シスターフッド」がじんわり沁みる漫画です。

 

 

 

公開時の注意書きとweb公開漫画の問題点について

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 ゆざきさかおみ 『作りたい女と食べたい女』2021年9/17配信分株式会社KADOKAWA(コミックウォーカー)より引用 

 

↑は、9/17に『作りたい女と食べたい女』が公開された時の、コミックウォーカーでの1ページ目です。

 

内容には触れませんが、確かに該当する属性の人は傷ついたり、また「こういう目で見られたくない!」と感じるであろう表現を使用していました。

 

私は、これこそ現在のwebコミックに必要な注意書きだな、ととても感動しました。

 

この注意書きは、2点の問題点を解決してくれます。

 

  • エンターティンメントに必要な描写で精神的なショックを受けるかもしれない人への配慮
  • web、無料で簡単にアクセスできる漫画のゾーニング

 

この2点は問題が絡み合っているので、ひとまとめに解説ができます。

 

その問題点の例として『ルックバック』を挙げます。

 

 

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藤本タツキ『ルックバック』集英社2021年 より引用



 

『ルックバック』は2021年7月19日に発表されたジャンプ+の読み切りです。

 

無料で読める状態でTwitter告知され、その完成度にTwitter上で拡散、大評判になりました。

 

しかし反面「凶行を振るう犯人の言動が特定の精神疾患を連想させ、該当疾患を患っている人への差別を助長するのでは」という批判も相次ぎました。

 

その結果集英社は、発表から半月ほど経った2021年8月2日にセリフを一部修正、配信し直しという対応を取りました。

 

そして2021年9月3日に発売された単行本で、さらに該当のセリフを修正しています。

 

 

 

私個人としては、この修正対応に関しては反対と賛同両端の意見を持っています。

 

まず反対に関して。

 

私は表現の自由に基づき、表現はどのような形も許されるべき、という考えです。

 

2021年9月3日に発売された単行本では、該当のセリフにさらに変更が加えられていました(詳細は自分で買って読まれたし←これも後述)。

 

つまり2021年8月2日の修正版は著者の意図するところではなかったということです。

 

その改変に関しては遺憾に思っています。

 

しかし対応に関しては賛同しています。

 

なぜなら現実と創作は別と言いつつ、その表現で人が傷つくことはあり得るからです。

 

問題となった疾患にかかっており、普段から受けている差別をなぞるような表現をされれば傷つく人もいるでしょう。

 

また該当疾患への偏見の現実があり、創作表現がその疾患の偏見部分の印象を強めてしまうのはまさに差別の助長です。

 

 

こういった問題を避け、表現の自由を守りつつ傷つく人を減らすために必要なのが「配慮」「ゾーニング」の2点だと思っています。

 

ここで『作りたい女と食べたい女』16話の話題に戻ります。

 

『作りたい女と食べたい女』16話では、配慮とゾーニングの両方の問題を解決しています。

 

それがこの記事の冒頭で貼った注意書きです。

 

「今回の話では、性的マイノリティーへの

差別構造がある現実を描くため、

一部で差別的に使われる用語の使用や、

精神的なストレスを感じられる可能性がある場面の描写を含みます。

ご自身の判断にてご覧いただきますよう

お願いいたします」

 

ゆざきさかおみ『作りたい女と食べたい女』9/17配信分株式会社KADOKAWA(コミックウォーカー)より引用 

 

この宣言で、まず該当表現について著者が無意識で使っているわけではないこと、創作の質のためにあえて差別的な用語を使用することが示されます。

 

差別をなぞることが事前に明記されていれば、その表現が創作上も差別の事例として出されていることが分かります。

 

この文を読んでなお『作りたい女と食べたい女』16話の差別表現を、一般的な認識であったり事実として誤認したりする可能性は極めて少なくなると思います。

 

またそうは言っても今現在、差別を受けている人は傷つくこともあると思います。

 

そういった人はこの宣言を受けて読まない選択もできるし、覚悟を決めて読むこともできます。

 

クリックの先に傷つく表現があるかもしれないこと、それを先に明示して回避できるようにすること、これは無料web漫画におけるゾーニングの一つの形です。

 

 

 

 

この2点の実行は非常にめんどくさい、堅苦しいと思われるかもしれません。

 

しかし『ルックバック』『作りたい女と食べたい女』16話に共通しているのは、「基本的に無料で誰でも読めてしまう形態」というところ。

 

日本に住む人の中での現在のTwitter利用率は、約4割だそうです。

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令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
報告書 令和3年8月 総務省情報通信政策研究所より引用

 

日本に居住する人の4割が使うSNS告知の上、実質無料で読めるとなれば、そこはかなり公の場に近くなると思います。

 

となれば、精神的にショックを受ける準備もなく目にしてしまう人も出てくるでしょう。知識なく差別表現に触れ、差別表現が一般認識であると誤認する可能性もあります。

 

では創作から差別表現をすべて撤廃するべきか?と言えば、それは無しだと考えます。

私はその差別表現を用いることで創作の内容が向上するなら、使用することが創作への誠実な姿勢だと考えています。

 

現在、多くの人の目に触れる形式でマンガの広報→購読(無料でも)をする形態はとても多いです。

 

そういった形式の告知マンガにおいて、1ページの注意書きで配慮とゾーニングを達成した『作りたい女と食べたい女』16話はとても創作に誠実で、差別に真摯な対応だったと思います。

 

今後同じような形態でセンシティブな表現の配信をする場合は、ぜひ慣習にしてほしいと思う例でした。

 

 

 

 

なお、『ルックバック』単行本では該当のセリフは7/19バージョンでも8/2バージョンでもない形に書き換えられています。注意書きもありません。

 

しかし『ルックバック』はもう無料で読めません。お金を出して本を買う必要があり、不特定多数の人の目には触れない状態になっています。

これもまたゾーニングの一種だと思います。

 

また最近では、単行本発売でも(無料公開ではない)児童虐待に関して注意書きをした『とんがり帽子のアトリエ』という作品もあります。これは丁寧な配慮としてとても評価されています。

 

この注意書きが形骸化すると意味が薄れてきます。作品の内容や広報の方法、発表時の価値観に合わせ、丁寧に提示をしてくれることを願っています。

 

 

※なお、『ルックバック』の修正所対応に関してはweb公開漫画の通過点だったと思っています。

あの炎上も含めて『作りたい女と食べたい女』16話の注意書きにもつながってきていると思います。

そのため、日本のweb公開漫画の進化がいい方向に進んでいて、とても嬉しいなあと思う次第です。

 

 

『阿部洋一短編集 オニクジョ』感想~怪奇・フェティッシュ・ゴア。京都で悪さする鬼を駆除する定めの女子の短編集~

妙なエロみといやな後味!

 

阿部洋一先生の短編集のご紹介です。

 

湿度の高い暗めの画面。かわいい女の子がかわいい嫌なキャラクターの頭を吹っ飛ばす、どうあがいても爽やかな気持ちにはならない一作です。ほめてます。

 

あらすじと感想をご紹介します。

 

『阿部洋一短編集 オニクジョ』

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阿部洋一『阿部洋一短編集 オニクジョ』集英社2015年 より引用

 

以下7編からなる短編です。

  • オニクジョ
  • オニクジョ season2
  • オニクジョ果樹園1~3話
  • 金属のキミへ
  • オニクジョ果樹園後日談

 

金属のキミへ以外はストーリー的につながりのある連作。

 

連作のオニクジョのあらすじをご紹介します。

 

【オニクジョ あらすじ】

 

京都の大学生、岩倉宗太はアパートで気になる女の子がいた。

 

向かいの部屋の九条ふき。いつもニコッと愛想よく、共同トイレは扉を開けて使う。

 

ところで、京都の街にはたびたび鬼が降りてくる。彼らは軽犯罪~重犯罪を繰り返す鼻つまみ者。

 

九条ふきは実は「オニクジョ」。

 

オニクジョとは鬼を退治する定めを持った女の子の称号。

 

鬼駆除後の茶そばがうまい。九条ふきは今日も鬼の頭を吹き矢でふっとばす。

 

【感想】※エロとゴアなので隠します・・・!

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『RAIDEN-18』感想~不謹慎の極北!コンテンツの自由漫画は「きょうかしょにでてるひとバトらせたらおもしろくね?」で出来ている~

こんにちは、表現の自由、守られてますか?

 

いきなり不穏な出だしですが、最近、「表現の自由を守る」という言葉の動きに思うところがありましてね。。。

 

私も漫画読みとして、表現の自由はとても大切。

 

しかし表現の自由を守ると言うならここまで守ってもらわねば!

 

というわけで「コンテンツの自由」を体現する漫画のご紹介です、

 

荒川弘先生の『RAIDEN-18』。これがコンテンツの自由というやつだ!!

 

今回は

  1. あらすじ
  2. コンテンツの自由について
  3. 感想

の三本立てでご紹介します。※2以降は有料にて・・・!

 

本邦の表現の自由よ、これが最低ラインぞ・・・!

 

 

『RAIDEN-18』

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荒川弘『RAIDEN-18』小学館2021年より引用

 

 

【あらすじ】

 

死体改造愛好家、タチバナ博士。

 

彼女が力士の死体などを接ぎ合わせて作った最強の人造人間、それが「RAIDEN-18」!

 

割と常識的で優しいフランケンシュタインRAIDEN18号と、狂気のマッドサイエンティストタチバナ博士。

 

1巻完結、二人が世界各国の「いろんな」人造人間とバトルする不謹慎エンタテインメント!

 

 

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『あおのたつき』感想〜おしゃれな日本画テイストがきれい!遊郭にまつわる幽霊エンタテインメント〜


和モノの幽霊話がお好きな方におすすめの漫画のご紹介ですー

 

日本画の風情がありながらすごく今っぽい絵。合間にはさまる遊郭コラムが知識欲をそそる作品です〜

 

あらすじと感想をご紹介します。


『あおのたつき

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安達智『あおのたつき』マンガボックス2021年より引用

 

著者:安達智
掲載:マンガボックス(web媒体)


【あらすじ】

 

江戸、人の情念がうずまく吉原。
その奥に、浮き世と冥土の狭間「鎭主の森」があった。

 

わだかまりが恨みになり、悪霊になり、悪さをする。


そんな冥土の者の魂を守り、導くのが鎭主の森の宮司、楽丸。

 

ある日楽丸のところへ、花魁姿のこどもがやってきた。

名はあお。生前は三浦屋の濃紫という花魁。

 

たつき(金儲け)を立てたい」というわだかまりを持つあおは、楽丸に雇われ鎭主の森の客人を鎮める手助けをする事となる。

 

 


【感想】

美しく禍々しい怪談噺!


なにせ絵がきれいだ!もうこれは見ていただくしかない!


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安達智『あおのたつき』4巻マンガボックス2021年より引用

 

美しい画面がエキゾチック。

 

物語も遊郭にまつわる生々しい哀しみ・人情を抱えた悪霊退治と、和モノの怪談の楽しさたっぷり。

 


なお、巻を追うごとにデザインセンスがうなぎのぼり。
キャラクターデザインもみごたえ抜群です!

 

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安達智『あおのたつき』4巻マンガボックス2021年より引用

 


マンガ本筋じゃあ無いんですが、コラムや巻末での生々しい遊郭話豆知識も楽しみの一つ。

 

歴史好きの人はがっつり刺さると思います。

 

和モノ怪談噺が好きな方、日本画テイストが好きな方、イケてるキャラデが好きな方にぜひおすすめ!すてきですよ〜

 

 

 

『ダンピアのおいしい冒険』感想~かわいい顔して生粋の無頼。17世紀のグルメ漫画は荒くれた社会情勢も見どころ~

17世紀の航海時代グルメ漫画のご紹介です~

 

航海時代の冒険を、食事をフックに見せてくれる漫画ですが、荒っぽい航海事情とかわいいキャラクターのギャップに拍手喝采ですよ。

 

 

あらすじと感想をご紹介します。

 

『ダンピアのおいしい冒険』

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 トマトスープ『ダンピアのおいしい冒険』 イースト・プレス2020年 より引用

 

【あらすじ】

実在の冒険家、ウィリアム・ダンピア

17世紀英国公認の海賊船に乗り込み、未知の大陸、島々を「食べて」回る!

 

史実をもとにした冒険譚。歴史コラムも充実した博学のグルメ漫画

 

【感想】

荒くれ!

荒くれメシ!

Twitter構文!!

 

かわいいキャラクターが南国の知らないフルーツを美味しく楽しむ漫画・・・ではありません。

 

そこは17世紀、他国、および他国船の略奪を一方的にOKされているイギリス様の海賊船。

 

略奪上等、殺しもやるガチ海賊!

 

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 トマトスープ『ダンピアのおいしい冒険』 イースト・プレス2020年 より引用

 

ダンピア自身は海賊ではありませんが・・・

海戦を経験してぎりっぎり生き延びたり、ジャマイカの農園に流れて投げ出して別な農園に行ったりと冒険の度合いがハードコア!

 

で、その合間にメシを食べるのですが、未知の料理とかそういう段階ではなく「猿食べられる」「バクおいしい」とかそういう世界。

 

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 トマトスープ『ダンピアのおいしい冒険』 イースト・プレス2020年 より引用

 

でもかわいいキャラクターのせいも相まってグロさは皆無。むしろ未知なる食べ物に希望を見る不思議・・・!

 

ダンピアの足跡を補足する歴史コラムも充実して、かわいい見た目を裏切る硬派な漫画なのです。

 

 

と、硬派な部分ばかり強調しましたが、とっつきづらいことは全ッ然ないです!

 

元からかわいいキャラで読みやすいのに加え、特に合間に挟まるコラムに満ちた「Twitter構文」的ノリはシンプルにフフっと笑える。

 

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 トマトスープ『ダンピアのおいしい冒険』 イースト・プレス2020年 より引用


リアル絵だったらちょっと引くくらいハードな冒険譚を、かわいく面白く読める大変良き漫画です!

 

 

歴史コラムも充実しているので歴史好きには超激推し。

かわいい絵でサクサク読める冒険物語としても良きです。紙で買って置いといて、こどもが読んだら嬉しいな~

 

 

 

『春の呪い』感想~恋愛はサスペンス。甘いどころかヒリつく恋模様~

甘い恋愛ものは読まないけれど、ビターな恋物語ならいけるかも!という方にお勧めの漫画のご紹介ですー!

 

ビターどころか、なんかヒリつく。恋してるのになぜか犯人を捜している気になる。

 

あらすじと感想をご紹介します。

 

春の呪い

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 小西 明日翔『春の呪い』 一迅社2016年より引用

 

著者:小西 明日翔

掲載:月刊コミックZERO-SUM

 

【あらすじ】

 

夏美と冬吾。

夏美は19歳の妹、春を亡くしたばかり。そして冬吾は春の婚約者。

 

夏美と冬吾は惹かれ合う。しかし夏美は知っている、春がどれだけ冬吾を愛していたかを。

 

罪悪感とお家(いえ)の都合。本能と理性が冷たく反発しあう、恋愛サスペンス。

 

 

【感想】

なんで恋愛なのにヒリつくんだろう・・・

 

甘い恋愛シーンは皆無。

 

主人公夏美は妹への罪悪感に常に脅え、冬吾は家の都合(後述)に振り回される恋愛模様

 

本来、甘やかで燃え上がる恋愛のパターンのはずなのに、なんかいつでも犯人捜しのムードが漂うのはなぜなんだろうな~~。

 

絵柄のせいか、画面処理のせいか。愛の告白も切迫感!

 

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 小西 明日翔『春の呪い』 一迅社2016年より引用

 

 

もちろん悪いどころかむしろ良い。

サスペンス仕立ての恋愛モノとして、甘い恋愛ものが苦手でも楽しめる変化球です。

 

また、冬吾をしばる事情は血筋や家柄といった「お家の事情」

上流階級とか特権階級とか、浮世離れした世界は現実味のない恋愛にぴったり。

 

 

物語としてはハーレイクインロマンスなど、甘い甘い恋愛小説の型のはずなのに、なんか過呼吸が起こりそうな切迫感があります。

 

私は進んで恋愛モノって読まないのですが、サスペンス仕立てでスッと読めました。

と言いつつ通読した後振り返ってみれば甘い甘い恋愛モノで、読書体験としてちょっと混乱する逸品です。

 

ちょっと変わった恋愛マンガを探している方、あるいは甘い恋愛マンガを読むのが苦手なのにたまには恋愛気分も摂取してみたい(いるのか)という方にお勧めです。(私のこと)