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『さびしすぎてレズ風俗に行きました』紹介~ハーベイ賞受賞の「生と性の交わるところ」を痛みを隠さず描く漫画~

こんばんは、大好きな『チェンソーマン』がハーベイ賞を受賞して嬉しい!中山今です。


ハーベイ賞とは、アメリカでもっとも権威あるコミック賞のひとつ。

その中でも「bestmanga賞」は「邦訳された日本漫画」というくくりの賞で、アメリカの賞でありながら実質日本の漫画賞ともいえる状態になっています。

 

今まで、『とんがり帽子のアトリエ』など知名度も実力も作品が受賞してきたこの賞ですが、実は2018年に受賞した作品はあまり知られていないかもしれない。

 

その名こそ『さびしすぎてレズ風俗に行きました』。

 

今回はこの作品をご紹介します。

 

痛くて、途上で、それでも生きることをあきらめない。あまりにも痛々しい生と性の渇望のレポ漫画です。

 

あらすじと見どころをご紹介します。

 

『さびしすぎてレズ風俗に行きました』

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『さびしすぎてレズ風俗に行きました』 永田カビ 株式会社イースト・プレスより引用

 

 

【あらすじ】

エッセイ&レポ漫画。

主人公は作者である永田カビ本人をモデルとしている。(このため以下作中キャラを表す時は「永田カビ」、現実のクリエイターを表するときには「永田先生」と記載します)

 

永田カビはメンヘラの引きこもり。

 

摂食障害、鬱、社会不適合、「死んだ方がまし」な状態にあるアラサーの永田カビ。

 

「自分には食べる権利がない」と思い込んで摂食障害に陥り、「無条件で認めてくれる人」を職場に求めて首にされる。

 

その恐るべき思考のゆがみは多分に家庭環境によるもので、どこからどう切り取っても毒親の両親と仲の悪い祖母の4人暮らし。

 

楽しい高校生活を終え、美大を中退、社会不適合者として家族から(そして内なる自分から)責められ続ける永田カビは、体が動かなくなって「どう考えても死んだ方が楽」というほど追い詰められた。

 

しかし永田カビは「意外にも悔しかった」。

 

ここから「生きるためにレズ風俗に行く」という斜め方向の戦いが始まる。

 

 

【感想】

痛いッ

 

しかし前向きだッッ・・・・!

 

 

あらすじでも書きましたがもう物語はイタタタのイタタ。

 

現在心を病んでいる人や毒親に悩んでいる人は見ない方がいいレベル。

 

メンタル系に悩むレポ漫画はたくさんありますが、ハーベイ賞受賞に至るために3つほど要因があったと思います。

 

それが以下です。

 

  1. 痛みにやみくもに向かうヤケっぱちな前向き感
  2. 繊細かつ大胆な表現
  3. ピクシブのバズり

 

まず、「痛みにやみくもに向かうヤケっぱちな前向き感」

 

本人モデルのメンタル系漫画は痛いです。

失踪日記』も『アル中ワンダーランド』も辛くて痛くてたまらない。

 

特にまだ寛解(完治する病気ではないがひとまず正常機能が戻った状態)していない状態だと、本が出た後にさらに悪化した近況が聞こえてきたりしてとてもつらいです。

 

『さびしすぎてレズ風俗に行きました』がどうかと言えば・・・

実際、本作の次回作などでも寛解しておらず、常にぐらぐらとした不安定な状態を続けています。

 

↓次回作でも酒浸りになり、非常に危うい状態です

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『一人交換日記』 永田カビ イースト・プレス より引用

 

しかしながら、「繊細かつ大胆な表現」がただの痛みだけでない「生への渇望」をたたき出します。

 

これは見ていただいた方が早いですね。例えば私が本作で一番好きなシーンですが・・・↓

 

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『さびしすぎてレズ風俗に行きました』 永田カビ 株式会社イースト・プレスより引用

 

自分が生に対して絶望していること、そして性に対して一般的でない感覚を持っていること、それらを踏まえながらまさかの「ぱんつ絵」を出してくるこの大胆さよ!

 

突然の突拍子もない表現は、ただ暗く湿っているだけではない、(前向きな)やけっぱちのあがきを感じます。

 

絵も適度な抜き加減がありつつ、少しのノスタルジーと2色刷りの軽さがいい感じで軽さを演出していて。

 

 

 

 

物語の激重ぶり、表現の軽やかさを伴って起こったのがピクシブのバズり」です。

 

これはまさに『さびしすぎてレズ風俗に行きました』にも描いてあるエピソードです。

永田カビは絶望の淵でレズ風俗レポをピクシブに載せ、大バズを経験します。

 

現実問題、このバズがあっての出版化、ハーベイ賞受賞であることは疑いようがありません。

 

ピクシブというニッチな場で大バズするほどの表現であったし、それがアメリカにも受け入れられた・・・ということなのでしょう。

 

 

 

 

 

永田先生の環境は(作中の表現をそのまま受け取るなら)詰みと言ってもさしつかえないレベルのヤバさです。

よくそこから「自分が女体に興味がありそうだからレズ風俗に行く」という思い切りができ、そして「それを漫画化する」というところまで行き着いたなと感動する次第です。

 

 

痛みは隠されていません。そして今も進行形です。

 

しかしそのうえで、なんとか生き延びようとあがくことを軽い絵で描き出しています。

 

もし精神状況に余裕があるようならオススメなんです。

 

私はこんなに生きよう、生きようとほとばしらせている漫画、あんまり見たことないです。