このエントリーに書いた感想は以下の4件。
- 『指先のゴースト』
- 『Lack Men's Luck』
- 『月刊ヤングマガジン 2022年No.9』
- 『毒りんごcomic : 71』
※Webマンガリンクは時間が経つと閲覧ができなくなっている可能性もありますがご了承くださいませ
『指先のゴースト』
小指に宿った「ゴースト」と、その宿主である女子大生の会話劇。恋と自意識と嫉妬について。
なにせ地味だ・・・!
「小指に宿ったゴースト」は擬人化もキャラクター化もされない。見た目には大学生、手毬ちゃんの独り言にしか見えない画面がずっと続く。
ゴーストの話す内容は全てにおいて根拠がなく、解釈としては「多感な時期の少女の暴走した自意識」なのか「ホントになにか憑りついている」のか、とにかくマンガ表現であればそのへんをあやふやにしても「カオ」を付けることができるわけで。メディア特有の表現を放棄した作風にやや戸惑う。
演劇などで超絶技術のある俳優さんが演じるとめちゃくちゃ楽しいジャンルだけど、マンガであえての会話劇に徹するカタルシス(例えば『ぼくは麻里のなか』のような)もあまり感じられず。
こういうとまどいをくれるマンガがあるのがジャンプラの懐の深さよなあ、と思ったりする。
『Lack Men's Luck』
周囲から認められない会社員、月島。同期はどんどん認められていく。コンプレックスを募らせる月島。
あるとき月島が副業の家庭教師で出会った少年「レン」は自閉症様のコミュニケーション不全があった。月島はレンを観察していずれあることに気づき・・・?
令和の「ひょんなきっかけ」は副業なんだなア・・・!!!
古来、マンガの「本来出会うはずのないふたり/なるわけのない状況(そこから非日常物語が始まる)」は「ひょんなきっかけ」ということばでまとめられていたわけですが、令和のひょんは副業。へー!!
この「ひょんなきっかけ」を醸成するために、空から女の子が降ってきたり親同士が子連れ再婚して意中のカレと一つ屋根の下になったり腕利きなのに窓際部署に左遷されたりしていたのですが、そうか副業か・・・!
ところで副業は今、控除が見直されて「単なる趣味(=割りが相当悪い)」になってしまう可能性が出てきて、ひょっとしたらこの「ひょん」はとても旬な、今しかない表現かもしれない。貴重。
話自体は重度自閉症様の症状が説明臭くなく使われていてスマートだと思う半面、コミュニケーションを題材にした作品で「コミュニケーションが取れない人間がおり、自分はできる」「自分は相手の気持ちを理解したため相手の守りたい境界線(触られること)を踏み越える」という結論はかなり一面的で、ノレない作品でした・・・。
自閉症様の症状の解像度が高い分、荒すぎる解決の仕方が気になり過ぎる。「触られるだけで(嫌で)大声が出る」症状を話のフックにしているのに「俺はこの子の気持ちが分かったから触る(抱えて走る)」っていうの、あまりに荒っぽすぎる。それは月島本人が「できない」と言っていた、「上司と上手く付き合うこと」を強制されたのとおんなじだよな、それちょっとひどいよな・・・と。
『月刊ヤングマガジン 2022年No.9』
講談社系の雑誌で一番好きかもしれない。
書き込みの多いダークファンタジー多め。『亜童』、『ヨモツグヘイ』、『戦花』、サザンアイズもあるよ!
多様性についてチャレンジしていて好感~。
ファンタジー世界の限定的なものではあるけれど、異文化相互理解の不安でおずおずした気持ちが味わえていいな、と思う。真面目に恋するサキュバスの個性のエピソードとか、素敵じゃん!
『毒りんごcomic : 71』
基本的にレディコミなのだけど、表紙を飾っている『復讐の未亡人』は光が違う。
今回はインドの昔話のエピソードを盛り込んできて、美しい絵柄と共に引き込まれる内容。