漫画のことと本のこと

漫画好きが読んだ漫画や本の感想を書くブログです。

9/27の漫画紹介5件(ディストピア漫画紹介)

こんばんは、まんが批評見習い、美大生(41歳)中山今です。

 

本日(2022/9/27)はディストピア漫画のご紹介したいと思います。

 

本日ご紹介するのは以下5件。

 

 

それぞれ、簡単なあらすじとオススメのディストピア怖シチュエーションを解説してあります。

 

本日は権力と主権者、民主主義について考える日でした。

これらの漫画、いつもより「味」が強く感じるんじゃないかな・・・と思います。

 

『えれほん』

 

「第25回文化庁メディア芸術祭」マンガ部門優秀賞、『このマンガがすごい!2022』オトコ編10位など『ダーウィン事変』のうめざわしゅん先生の作品。

毒に満ちた短編集で、第一部『善き人たちのクシーノ』はジョージ・オーウェル1984』をほうふつとさせる全体主義管理社会を皮肉たっぷりに描きます。

 

【あらすじ】

リア充ア(ひりあじゅあ)階級が独裁国家を樹立、リア充ア(りあじゅあ)階級を弾圧し、BBQなどリア充行為が露見すれば処刑も辞さない独裁社会において、優秀な同志住田(すみた)はリア充行為「アイドルにガチ恋」するという、党の規範から逸脱した感情をいだいてしまい・・・

 

【オススメ管理社会ポイント】

ヒドイ!!旧ソ連的世界をオタク用語でアップデート。誰もが苦笑いしかできない毒々しい話運びに絶望的になること請け合い。非リアート(非リア充階級)にはクシーノ(アニメ妹キャラ抱き枕)が支給され、リア充的行為(恋愛)を抑制する・・・。愚かだ・・人間は愚か・・・・。kindleアンリミテッド加入で無料で読めるのでぜひどうぞ。

 

 

 

『フールナイト』

新進気鋭の漫画家、安田佳澄による生命と貧困のディストピアSF。現在4巻まで刊行。スペリオールにて連載中。

 

【あらすじ】

厚い雲が日の光を遮り100年が経った未来。

酸欠状態の地球では、人間を植物に変える「転花」という技術が盛んになっていた。

転花すれば人は2年ほどで植物となる。ヒトとしての死。

しかし人は転花に望んで群がる。なぜなら貧困の救済が無い社会構造で、政府が「転花者には1000万円」という制度を設けているからである・・・。

 

【オススメ管理社会ポイント】

直接の弾圧はではないものの、「アリ地獄のように絶対に抜けられない貧困」「逆転できない格差」がこれでもかと描かれてすごく身近なディストピア(つらい)。その貧困から抜け出すために「政府から」「死の希望者」が「募られる」・・・。セーフティーネットとしての死が制度化された社会。

物語は死の代わりに得た能力で、人の心の貧しさを見続ける青年のお話。

4巻まで進むと「これ以上ないだろう!」という貧困の底がさらに抜けるのでとてもおすすめ。スタイリッシュでクールな絵と、カラーページの印象的な色使いもすてき。

 

 

『光る風』

がきデカ山上たつひこ先生の超硬派ディストピア軍国主義批判マンガ。なおこちらの方が先の連載。

 

【あらすじ】

1970年、架空の日本。とある村で流行した奇病、隔離政策。その謎を追う大学生、六高寺弦。謎に徐々に迫るうちに、日本は軍国主義へと還っていく・・・。

 

【オススメ管理社会ポイント】

ギャグは全く無し。優生思想や軍国主義、細菌兵器開発、監獄での拷問や事故による四肢欠損などグロでバイオレンスな骨太ディストピア

手塚漫画の影響が色濃い絵柄で手加減なしの権力による暴力が展開する。

物語としては少々ほころびがあり粗も目立つけれど、それを補ってなお余りある「現代では出版難しいだろうな」レベルの現実をモチーフにした反体制創作。kindleアンリミテッド加入の方は読めるのでぜひぜひ。

 

狂四郎2030

徳弘正也によるエロディストピアバイオレンス。ネットミーム「おかわりもいいぞ」(飢餓状態の子どもにたくさん食べさせるが毒入り)の元ネタ。

 

【あらすじ】

2019年の食糧争奪戦争で、地球の80%の人類が死に絶えた後の2030年の日本。

国家に男女隔離政策がとられ、国民はバーチャセックスマシンを支給され人口抑制されながら主に農業などに従事している。

主人公、元兵士の狂四郎は、バーチャセックスを介して恋をした中央政府プログラマー、ユリカと「直接出会う」ため、様々な障害を乗り越える決心をする。

 

【オススメ管理社会ポイント】

ジャングルの王者ターちゃん❤』の徳弘先生のほっこりした絵から繰り出される暴力、性暴力、性悪説権力上位者が振るう容赦ない虐待に、狂四郎は暴力で、ユリカはエロでボッコボコのメッタメタにされ続けます。権力コワい、権力者全員嘘つき欲望まみれ大っ嫌い!!という気持ちになれます。なお同じく徳弘先生の『近未来不老不死伝説バンパイア』も素晴らしいエロバイオレンスのディストピアものです。

 

 

ジーンブライド』

高野ひと深による管理社会SF。フェミニズム視点からのディストピアを描く。現在2巻刊行。連載中。

 

【あらすじ】

毎日、新鮮に社会から受ける「女であることの不利益」に絶望している諫早依知。

ある時出会った元同級生の正木蒔人。彼から少しづつ、自分が忘れていた過去のことを聞き、そして自分と同じ顔の少女と出会う・・・

 

【オススメ管理社会ポイント】

最初はフェミニズム現代モノのような顔をして始まる本作。

しかし作中、いろんな違和感がちりばめられ、後々から「ンッこれ誤字?いや誤字じゃない、え、ナニこの設定・・・?」とページを振り返りたくなる、SFとして大変興味惹かれる作り。

2巻以降、全容が分からない全寮制の「学園」において、特に女子が厳しく「結婚に向けて管理」されている様子が描かれます。学園では女子に逃げ場はなく、笑って過ごすしか手はない・・・。現代社会にもつながっていく「管理社会」。

 

 

 

 

 

 

管理社会と言っても色々です。

ソ連をほうふつとさせる作品、貧困と格差のディストピア、女性を管理する学園のお話・・・

管理社会といっても色々ありますが、いずれも個人の人権を尊重しない、反民主主義思想から設定された世界観です。

どれも漫画作品として面白くってお勧めなのです。気になった作品をぜひどうぞ。

 

個人の権利が踏みにじられた先の世界、それがディストピア。こんな世界はマンガだけで十分だなあ私は。