本日の漫画感想は岡崎京子『Pink』です。
いえ、今日、京大の「笑い声ロボット」がTwitterで話題だったんですよね。
人の笑い声の特徴を分析して、一緒に笑い声を出す機能を搭載した人型のロボットを京都大学の研究グループが開発しました。https://t.co/tyBHa5QIoe#nhk_video pic.twitter.com/xcZK7Obmj6
— NHKニュース (@nhk_news) 2022年9月28日
でまあ、ジェンダーロール的な意味合いとかケア要員的な意味とかで盛り上がって(良い言い方)いたんですけど、私はどっちかっていうと「このロボットの笑い声が良いものだ」という前提が気になってしまって。
「あははそうですか~」「そうなんですかえへへ~」っていう笑い声、すごいディスコミュニケーションだと思うんですよ。もう目の前の相手と会話する気のないやつ。
んでまあ、ロボットっていうかディスコミュニケーションの、そういう漫画あったかな・・・と思ったときに思い出したのが『Pink』だったわけです。
『Pink』は1989年初版(筆者が持っているのは2010年の新装版)、今から約30年前のお話です。
バブル華やかなりし東京、OLのユミちゃんは優雅な独り暮らし。
OLだけじゃ足りないから、夜は売春をして稼いでいる。
たくさんおかねを稼いで肉を買う。じゃないと、飼っているワニが飢えてしまうから。
前提として、この頃のOLは東京一人暮らしが十分できるお金を稼げています。そのため売春はあくまで余暇。
ユミちゃんには刺激が足りないのです。そのため、自分の中のスリルとサスペンスとしてワニを飼っています。
だからユミちゃんは売春も平気。
嫌なオヤジに「へえそうですか~」
セックスの後説教されても「あはははは~」
お小言を言う課長にも「あ、スミマセ~ン」
それこそ、京大の笑い声ロボットのような声を出していますが、心の中では「こいつウチのワニのエサには筋張ってマズそう」くらいのことしか考えていません。
そんなもんじゃないですか?
でもそれって男性でも同じだと思って。
『Pink』では、ユミちゃんの彼氏(と言えるのか分からない関係・・・)の大学生の男の子、ハルヲが母親くらいの年齢の女性に体を売っています。
「いつもおきれいですよ」
「好きですよ奥さん」
「美しい 魅力的だ かあいらしい」
なんて言いますがその実考えていることと言えば
「これは労働だ」
(電話が来て)「ババアか~」
などなど。
まあそんなもんでしょう?
親密なコミュニケーションって時間をかけて信頼関係を築いて、そんで受け入れてもらえるかもらえないか?っていうジャッジがある、わずらわしいモンじゃないですか。
そこすっ飛ばして相手に受け入れてもらえてる(笑い声を立ててロボットみたいに相槌打ってくれる)って、それもう権力勾配がキツくて、どうしようもないから相手がコミュニケーション放棄して他のこと考えてる状態ですよね。
笑い声ロボット、あれ自体はロボットなのでそんな意図はないですけど、信頼関係築けていないであの笑い方をしている人がいたら、それ多分相手をあきらめてるだけなんで・・・。
「ワニに食われたらいいのに」くらいしか思ってない笑顔じゃないかなと。
笑い声ロボット自体に悪意はないけど、あの笑い方をする現実のヒトはコミュニケーションを取る気が無いので、あの笑い方をセットして良いコミュニケーションだ、というのはちょっと違うよなって感想。
・・・で、更に『Pink』では、ユミちゃんを買って汚く罵り行為に及ぶおっさんがいます。
このおっさんは動物愛護を提唱するエライ人で、テレビで難しい話をしながら「はちゅうるいの捕獲はけしからん」などと言うけど財布はワニ革なのです。
おっさんだって裏の顔があるじゃん。
男も女もおっさんも、腹にはみんなワニを飼っていて、本音なんか言わないし信頼関係が無い人にはウソをつく。
本当の笑い声は、時間をかけた信頼関係からしか出ないんですって。