漫画のことと本のこと

漫画好きが読んだ漫画や本の感想を書くブログです。

女も男も、笑い声ロボットになっても裏ではワニだよね?漫画『Pink』より

本日の漫画感想は岡崎京子『Pink』です。

 

 

 

 

いえ、今日、京大の「笑い声ロボット」がTwitterで話題だったんですよね。

 

 

 

でまあ、ジェンダーロール的な意味合いとかケア要員的な意味とかで盛り上がって(良い言い方)いたんですけど、私はどっちかっていうと「このロボットの笑い声が良いものだ」という前提が気になってしまって。

 

「あははそうですか~」「そうなんですかえへへ~」っていう笑い声、すごいディスコミュニケーションだと思うんですよ。もう目の前の相手と会話する気のないやつ。

 

んでまあ、ロボットっていうかディスコミュニケーションの、そういう漫画あったかな・・・と思ったときに思い出したのが『Pink』だったわけです。

 

『Pink』は1989年初版(筆者が持っているのは2010年の新装版)、今から約30年前のお話です。

 

バブル華やかなりし東京、OLのユミちゃんは優雅な独り暮らし。

OLだけじゃ足りないから、夜は売春をして稼いでいる。

たくさんおかねを稼いで肉を買う。じゃないと、飼っているワニが飢えてしまうから。

 

前提として、この頃のOLは東京一人暮らしが十分できるお金を稼げています。そのため売春はあくまで余暇。

ユミちゃんには刺激が足りないのです。そのため、自分の中のスリルとサスペンスとしてワニを飼っています。

だからユミちゃんは売春も平気。

 

嫌なオヤジに「へえそうですか~」

セックスの後説教されても「あはははは~」

お小言を言う課長にも「あ、スミマセ~ン」

 

それこそ、京大の笑い声ロボットのような声を出していますが、心の中では「こいつウチのワニのエサには筋張ってマズそう」くらいのことしか考えていません。

 

そんなもんじゃないですか?

 

でもそれって男性でも同じだと思って。

 

『Pink』では、ユミちゃんの彼氏(と言えるのか分からない関係・・・)の大学生の男の子、ハルヲが母親くらいの年齢の女性に体を売っています。

 

「いつもおきれいですよ」

「好きですよ奥さん」

「美しい 魅力的だ かあいらしい」

 

なんて言いますがその実考えていることと言えば

 

「これは労働だ」

(電話が来て)「ババアか~」

 

などなど。

 

まあそんなもんでしょう?

 

 

親密なコミュニケーションって時間をかけて信頼関係を築いて、そんで受け入れてもらえるかもらえないか?っていうジャッジがある、わずらわしいモンじゃないですか。

 

そこすっ飛ばして相手に受け入れてもらえてる(笑い声を立ててロボットみたいに相槌打ってくれる)って、それもう権力勾配がキツくて、どうしようもないから相手がコミュニケーション放棄して他のこと考えてる状態ですよね。

 

 

笑い声ロボット、あれ自体はロボットなのでそんな意図はないですけど、信頼関係築けていないであの笑い方をしている人がいたら、それ多分相手をあきらめてるだけなんで・・・。

「ワニに食われたらいいのに」くらいしか思ってない笑顔じゃないかなと。

 

笑い声ロボット自体に悪意はないけど、あの笑い方をする現実のヒトはコミュニケーションを取る気が無いので、あの笑い方をセットして良いコミュニケーションだ、というのはちょっと違うよなって感想。

 

 

・・・で、更に『Pink』では、ユミちゃんを買って汚く罵り行為に及ぶおっさんがいます。

 

このおっさんは動物愛護を提唱するエライ人で、テレビで難しい話をしながら「はちゅうるいの捕獲はけしからん」などと言うけど財布はワニ革なのです。

 

おっさんだって裏の顔があるじゃん。

 

男も女もおっさんも、腹にはみんなワニを飼っていて、本音なんか言わないし信頼関係が無い人にはウソをつく。

 

本当の笑い声は、時間をかけた信頼関係からしか出ないんですって。