漫画のことと本のこと

漫画好きが読んだ漫画や本の感想を書くブログです。

ここんとこ読んだ漫画感想2023/11/13~20(10件)

その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。

 

リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。

 

本日は10件の漫画の感想です。

 

 

「[57話]ゴダイゴダイゴ」

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巨大ヒーローはおじさん!


怪獣が飛来し害をなす世界において、対怪獣兵器として人間を巨大化して闘わせるプロジェクトがある。その古参被験者であるダイゴは、ある種ショーアップ&タレント活動化した巨大ヒーロー業界においてちょっぴり人気のないロートルおじさんヒーロー。
しかしその温かな目線で後続をサポートする、信頼厚きおじさんでもあるのだ!
文字通り以上、史上最大の「でっかい男の背中」を見せつけてくれる、おじさんがかっこいいバトル漫画。

 

ゴダイゴダイゴは面白いなあ。


普段はちょっと頼りなさげなおじさんがかっこいい少年マンガ、って好きなんですよ。おとなに憧れを持てる漫画。ダイゴさんに褒められてえなあ(40代が言うことじゃない)


巨大ヒーロー市街地プロレスは特撮ファンにもおすすめだし、肉付きのいいメンズプロレスは一定層に絶対的な人気があるはずだし(私は範囲外だが「そんなことはない」とは言わせないぞッ)。

 

というか、この漫画の連載形式もすごくて、ジャンプラインディーズ枠なんですよね。編集のつかない、言うなれば同人誌スタイル。それでコミックスも出てて。
ジャンプラ(集英社)に思うところ多々あるけど、やっぱり夢があると思います。実力本位。

 

ヤングマガジン2023年50号
『税金で買った本』91冊目 戦後日本の出版史 1冊目

 

 

 

石平少年はヤンキーで司書アルバイター


みんなが利用する図書館の裏話。司書も色々大変!物おじしない好奇心で司書のお仕事を見学する「司書お仕事もの」漫画。

 

『税金で買った本』はためになるなあ。。


今回の91冊目は「なんでその本買えないの?」という市民の声を解明します。答えの大枠は「請求書がめんどくさすぎるから」!!

 

「税金の行方を明瞭に」はとても正しいのですが、それをまっとうするために求められている本がすぐ隣の本屋さんで売られても図書館に並べられない。アンビバレンツ。


私も出版業界に詳しいわけじゃないのですが、取次、返本、返本待ちと、なんとなーく聞いたことのある出版業界ワードに困っている様子が伺えます。ン〜悩ましいネ。。

 

また、今回のお話のリクエスト者の方は「行政の政治的スタンス」についても疑いを持っていらっしゃるようで、市長の政党と「戦後日本の出版史」を図書館に置かないことの関係を指摘されています。こんなこと言われるのか、言われるんだろうな、辛いね。。

 

図書館の自由に関する宣言のリンクをそっと貼ります。司書さんたちにエールを・・・!!

 

図書館の自由に関する宣言

 

私は大学のレポートを書くのに図書館がないと破産するので、図書館はとてもありがたいです。

でも、知人で「大学司書をやって体を壊した」という話をしていた人がいて、大変な仕事なんだろうなあと思います。

ところで私のスタンスは「漫画で情報を得た気になるなかれ」なんですけど、本職の司書さん的には『税金で買った本』ってどうなんですかね?医療もの漫画とかだと本職医師が「ファンタジーですなあ〜」みたいに言ってたりするのでなるほどなーと思うんですけど、司書さんが『税金で買った本』について語ってるのは見たことないなあ(YouTubeとかではあるのかな)

 

『高度に発達した医学は魔法と区別がつかない』

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医学で魔法世界の病と闘う!
新人医、天海は技術も志も高い医師。無医村に赴任する途中に雷に打たれ、気がついた先はドラゴンやスライムの跋扈するファンタジー世界!?その世界では一部の魔法使いが医療技術を独占しており、医療支配とも呼べる状況にあった。「誰でも学べば誰かを治せる」、科学的医療を以てファンタジー住人を治せ!

 

おすすめ医療ファンタジーが無料期間よ!(2023/11/13段階)


この話、建て付けとしては「異世界転移」なんだけど、タイトルでピンとくる人も多いはずアーサー・C・クラーク「高度に発達した科学は魔法と区別がつかない」のもじりです。SFだ!

 

医療独占状態にある特殊技能「魔法」を、科学の力で解放しようという体制破壊にも読めるし・・・


ドラゴンの体あと、内に直接入って内視鏡的に見たりして面白いったらないよ!原作の方、本職のお医者さんで消化器・内科医の方なので切開よりも内視鏡にリアリティのある医療漫画です。

 

絵がすごく綺麗で、繊細なのにモンスターの重厚感もある、、、上に、なぜか「味方をしてくれる貴族階級」のファンタジー衣装がヤクザ形式という二度見感。姐さんはファンタジーキモノだし下っぱはファンタジージャージ。こういうの好き!

 

「[第148話]チェンソーマン 第二部」

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チェンソがやっと面白くなってきた。Twitterが死んでよかった!

 

「本当はあいつは◯◯なんじゃないか」。疑心暗鬼。「またチェンソーマンになってチヤホヤされたい」が夢だったデンジが「チェンソーマンもどき」という嫌疑をかけられて否定する。このアンビバレンツよ。

 

アサの「大切なものを剣(武器)に物質変換できる」がだんだん規模が大きくなって「自分の住んでる部屋だけくり抜くように消滅」っていう、建物に及んできたのが嬉しいですね。たーてもの!こーわれろ!!(コンテンツの中のビル破壊が好き)

 

とはいえ、今はニュースでボロボロになった戦地のビルを見る機会が多くてとても楽しめないのですが。。

 

チェンソ世界の原則は「悪魔各位は嫌われれば嫌われるほど強くなる」で、それはTwitter華やかなりし頃、「嫌われれば炎上して話題になる(売れる=強い)」ということで証明されてきました。

 

アサに取り憑いている悪魔(ヨル)は「戦争の悪魔」ですが、最近は「戦争」は好かれているようです。またチェンソの中のヨルの破壊行動程度可愛いもんで、炎上にもなりゃしません。

 

ここはひとつ、デンジが最近嫌われているもの・・・例えば「人権」を謳って戦って欲しいもんです。炎上するよきっと。

(でもそれは露悪ヒーローではなくてヒーローなのでは?)

 



邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん
『Season11/5本目 魔女見習いをさがして』

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邦画って地味?いいえ邦キチのプレゼンを聞いてみてッ!?


邦画大好き女子高生、邦キチが繰り出す邦画の新たな楽しみ。「映画を愛する若人の会」のヌルいアメコミ映画ファンの部長にバシバシとプレゼンを決めまくる。アジア、特撮、女児アニメ!「邦キチは面白いけど特に邦画が見たくはなるわけではない」映画批評マンガ!

 

今回はおジャ魔女どれみの大人になったファンをターゲットにした『魔女見習いを探して』。
というか女児アニメ業界の切迫感、確かに薄々感じていた。大人向けメディア展開やグッズ展開などに活路を見出したようだけど、ネトフリとかの海外こども向けアニメの質がすごくいいからその(これ以上言うな!!!)

 

私個人としては日本の女として生まれたものの女児アニメはビタイチ通らずに育ってしまって、私がこどもの頃にあった女児向け特撮(ポワトリンとかですね)も熱心に見た覚えが無く。。女児アニメの魅力もわかってないのでした。。ゴメンネ。。

 

それにしても邦キチ世界、全員が「好きな映画のあらすじを簡単にまとめる能力は最低限あるっしょ」という映画マッチョで、すごく無駄で最高。

 

それにしても「女児アニメは卒業が早い」というのと「女児アニメのテーゼは【魔法で全ては解決しない】」というのは、健全な方向で作用してるのではないかしら、とか。

シン・エヴァンゲリオンで20年かけてようやく「お前ら大人になれ」と言ってくれたのを、女児アニメはこどもの頃からやってるってことですもんねえ。いいことじゃあないですか。

ただ、今どき男女を分けることも結構ナンセンスだと思っていて、女児アニメはその批評性を持ちながら統合されるものなのかもしれないですねえ(あるいは男児アニメが統合される側か)

 

「Our Way Home」

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80年前、家族を失い帰るところを失った男と、帰るところのあった男がいた。帰るべき男は死に、そうでない男が生き延びた。
謝罪のために旅路を急ぐ男は、男のなりをした女を拾う。
生命の選択と許しの物語。

 

さて・・・・(座り直す)

 

生きるべき理由に、死ぬほどの経験や死んだ方がマシな経験をカウンターにすることはあるでしょう。
また、アカルクタノシイまんが媒体において、第二次世界大戦を描こうとすることも良しと思います。

 

ただ、どうしたって、「アレ」は人災なのです。


植民地主義に色気を出した大バカ軍人たちが自分たちの負けを認められずにたくさんの命をカジノのチップ的に消費した愚行です。

残酷なことを言いますが、戦争で散った命に意味はありません。意味を持たせてはいけません。

おばさんは若者を試してる場合じゃ無くて、「戦地に送ったアタシが一番悪い」と銃を奪ってそのまま電車に飛び乗って永田町に行くとかって話だったと思いますよ。

当時の、命からがら逃げ切った人にそれをやれというのは酷だと私も思います。

 

だからこそ戦争を知らない私たちが断罪するべきでしょう。戦争で死ぬことは生きるための得難い経験になんてなりません。ただの負債です。

 

作品の描きたいこと、作品の提案するロマンを否定はしたくないんです。

でもねえ、戦争をテーマにした作品は、ごめんなさいもうのっぴきならないんですよ。

極右政権と世論をほっといたら、人類史上最悪と言っていい虐殺に至った国があるんですよね、イスラエルって言うんですけど。

戦争の一縷の浪漫を語りたければ、世界中のすべての戦争を終わらせてきてくださいと。そこから、ファンタジーとして大いに語りましょう。
それができないなら戦争否定一択です。悪い話じゃないと思いますよ、戦争になったら読者が漫画読んでる場合じゃ無くなって死滅するんで、戦争しない方がいいですね。

 

モーニング2023年51号
『二階堂地獄ゴルフ』第14話「師匠」

 

 

 

男、二階堂38歳。プロゴルファーテスト失格歴12年。サポートしてくれていたクラブ「桜武」から最後通告を突きつけられ、それでもなおプロテストに挑む。敵は己の心ッッ。後輩に嫉妬し、「プロテストぎりぎりで落ちちゃってさ〜」だけがプライドであることに直面し、公園でカップルに八つ当たり。卑小な男を逃げずに描く熟達の技が光る、福本伸行新作。

 

二階堂38歳、プロテストの合間に後輩と飲み、ホステスの地下アイドルと知り合い、プロテストに受かったらおっぱいを見せてもらう約束をする。

 

あの〜〜〜、

 

これ大切なとこなんですけど、こっちの女子もあと一押し、みたいなね、そういう関係なわけ。ちゃんと関係性できてんの。作ったの。時間かけて。
その微妙な時期にね、恥じずに押す感じ、あの、それはいいじゃん、いいことじゃん。

私、カイジをまともに読んでなかったんですけど、少なくとも二階堂地獄ゴルフ、卑小中年男のウィークポイントをザクッーーーと刺しつつ、目線が温かいじゃあないですか。
二階堂、悪いやつじゃないんだよね。諦めが悪くて要領が良くて才能がないだけ。うん、そうねえ。そうねえ。。(なお地下アイドルは5年やってる、とのことなので成人済みではあるはず)

(でもおっぱい見せてはやっぱヤダ)

 



『道徳の子』(読み切り)

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寛太の妹は知的障害を伴う自閉症スペクトラム症。
寛太自体は知能も普通で発達に遅れもない。でも、寛太は追い詰められていく。ネットで見た「何も希望がない」ということばに深く共感しながら。

 

。。。
私は自身が社会にギリギリ適応できるくらいの障害を持っていて、その視点から作品を見ることも多いのだけど、これはぜひ目を通してほしいッス。

 

いわゆる「きょうだい児」。障害のある子のケアを任されてしまうヤングケアラー。
また生々しいのが、このご家庭離婚しているんです。それもとてもよくあることで、扱いづらいこどもに疲れて逃げ出す片親はとても多いんですね。そしてたいていが母親に育児が偏り、シングルマザーの賃金の低さ、それによりきょうだい児にケアの負担をさせざるを得ない悪循環。

 

クラスでの偏見も。。
こと、性への接し方が人前で抑えられないこどもへの偏見は極めて厳しいです。性器を触ることは衛生的にさえすれば抑圧するべきではないのですが、クラスでは忌避されてしまうでしょう。。

 

きょうだい児のリアリティがある作品だ、と思います。ただ、お母さんの「自閉症アート」ということばはなんともやりきれません。

 

私は美大生でもあるので、西洋アートは歴史とロジック、日本アートは歴史と模倣であることを知っています(大まかに言えば、ですが)。結局は学びが必要で、感性からただ出力されるものは、残酷ですがアートでは無く「現象」です。※この点については末尾に補足をしています

 

それでもそう言いたくなる気持ちはとてもわかります。

 

先日、エッセイストできょうだい児の方が「弟の作業所のクッキーが190円で爆安で美味い」と言って、搾取ではないかと話題になっていましたね。

 

私は搾取だと思います。


でも、じゃあ、どう言えばいいのよ?とキレられたら、それも真実だと思います。

 

『道徳の子』では、同じ立場の人と出会うことでわずかな希望を見出します。これは現実でもきょうだい児のグループワークが存在することから有用な「癒し」だと思います。

 

はっきり申し上げて問題は「社会」なのですが。

 

作中、作業所のスティグマになるような表現や、お母さんの疲労によるきょうだい児の搾取もありますので閲覧は注意。

 

最後、爽やかな終わり方をします。それもまた、・・・・なにもできない、、、と苦い顔になります。

 

※この「自閉症アートはアートではなく現象」ということばについて、「健常者主義的である」という批判をいただきました。

ここについての補足と、私の考えを述べます。(他のマンガの感想が見たい人は↓までスクロールしてください)

 

アートが障害者を排斥していた過去があり、健常者主義についての反省と批判で障害者のアートを認めよう、という潮流があること。それは喜ばしいことだし当然なことだと思います。

 

一方で・・・・

 

『道徳の子』では、保護者が「この子がアートで有名になったら嬉しいでしょ」という、保護者も信じていない夢を口にします。その夢を伝えられたきょうだい児は、本当にやりたかったサッカーをあきらめて定時で帰れる美術部に入ります。

 

私は軽度精神障害児の保護者という立場もあるのですが、

障害児保護者のリソースは、足りていない・・・というか、マイナスです。だからこそきょうだい問題が起こっています。

 

私は自身も軽度の障害があるので、自身の困りごとをアートで昇華するのではなく、現象としてありのままとらえることが必要である、と主張しています。アートとして発露してしまうのではなく、困りごとの現象として受け止め、社会との折り合いの付け方、必要であれば薬物対処療法。アート教室で色彩や造形で表現をするより、グループワークで「ビックリして他人を噛んでしまうこと、受け止め、どうやらないようにするか考える」方法を模索するべきで、そのリソースは残念ながら奪い合いなのです。「アートと見るか現象と見るか」の、選択肢すらないのがきょうだい児問題を抱えた家庭です。

 

長じてアートを志した障害児たちがのびのびとアートを描き、排斥されない社会は重要です。(というか、私の立場だと排斥されることそのものが信じられませんが)

でも、個人的な想いとしては「障害児の付き添いで働くことも自分のこともままならない。これ以上リソース無いからアートをやらせてあげられない」というのが本音です。

 

私は障害児の発露を現象として持っていきます。ウチの子に今必要なのは、アートでの表現ではなく社会との摩擦の軽減の追求です。

 

障害児のアートの発展性を整備する方は、ぜひやっていただきたいと思います。でも、それは私のような当事者ではありません。それは福祉の目で見るか、文化の目で見るかの残酷な乖離です。その乖離が減る時代になることを私も願っているし、それができるのは私のような疲れた当事者を顧みず理論を構築する人です。

 

この件は様々な意見があることかと思います。『道徳の子』を読んで、身近な方と議論をしてもらえるととても嬉しいです。

 



『ワニになりたい』

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自傷跡はかなり生々しいので注意

美大生のまよは自傷癖がある。
課題もバイトも「逃げ癖がある」と言われ、頑張ってるのに対応できなくて夜毎増える傷。ある日のヌードデッサンで、胸に大きな傷のある女性に出会う。

 

最近おっ?と思った漫画のテーマが似通って来てるのは絵にもそういう傾向があるのかもね。

 

まよは明らかに精神障害を抱えていて、それが先天的か後天的かの判断は控えるけど、短期記憶が続かない、集中力が持続しないなどで社会的な困難に繋がってるのが見て取れる。

 

遠い異文化の知識と、そこを侵略せずに参考にする方法、なによりアートで社会と繋がろうとすること、

 

学問をフックに救われる、まっすぐで明るい救済の物語です。

 

「そうは簡単にはいかないYO!」というくらいサラッと救われていくので違和感はある。正直通院と服薬をお勧めする(メンタル薬服用中の人の意見)。

 

でも病院にできることと知識に触れることの効果ってまた別なので、知恵で救われるファンタジーとして受け止めたい。

 

何かを知ることで視界がガッと開けることって本当にある。服薬と両輪で掴み取りたいもの(メンタル症状対処中の人の感想)

 

「[第80話]ラーメン赤猫」

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ラーメン赤猫は猫がやってるラーメン屋。接客、仕入れ、新商品開発に顧問弁護士との軽い親交・・・って、これガチの小規模飲食店経営物語!優しくて真面目な世界、そして猫。

 

今回はとっても猫っぽい回ダヨ〜〜〜!!!

 

猫が妙に気に入っちゃう質感のぬいぐるみを、普段はチャキチャキ仕事するラーメン赤猫の面々が奪い合い。なんかあるんだよね猫の好きなぬいぐるみ。

 

私も20年ほどいわゆる「猫の家」だったので、猫がやわこいものをふみふみする、ウンふみふみふみふみふみふみするの、思い出しますねウン(ほのぼの)

 

しかし多頭飼いだと「この子は気に入ってもこの子はそんなでも」とかってあるようですが、今回のぬいぐるみはみんなが気に入った模様。奇跡のぬいぐるみ(そして末路もとても分かーる。。)

 

 

ここんとこ読んだ漫画感想2023/11/6~11/12(16件)

その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。

 

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本日は16件の漫画の感想です。

 

 

 

「Lavi」

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現代、のように見えて、
その世界は汎用家事制御システム「Lavi」が大いに使われている社会。
1人の男が洗濯物を洗う。【そこに隠された異変】すらLaviは「見抜いて」しまうッ・・・!

 

↑の最後、小文字「ッ」がよく似合う、荒木飛呂彦フォロワー作品です。

 

内容はとてもベーシックなサスペンス。進行だけ言って仕舞えば「凡庸」とすら言っていいでしょう。


しかしその荒木イズムを買うッ!絵の力でねじ伏せるッ!ささやかなサスペンスを変えてしまうその表現をッ!!

 

とは言え荒木作品の魅力はどこまでも広がる荒唐無稽さがあり、本作は読み切りということもありコンパクトなイメージ。この方向でどう開花するのか、今後が楽しみです。

 

FEEL YOUNG2023年11月号
ジーンブライド』

 

 

 

その世界は少しづつ何かが違うけど、同じ問題を抱えている。


諫早依知はライター。男性社会に苛立ちを感じ続けてる。過去の「学園」生活を共にした正木の登場で、抑圧の構造の記憶の扉が開く。

 

いじめ加害者を許さないこと。


今回のジーンブライドでは、十分に反省し、世の中を知り、謝罪をしてきた人を「受け入れない」決断が描かれます。


加害者にカウンセリングを促すだけでも福祉。許されようと思うな、許しの言葉を乞うな。

 

いじめ加害者の心情もがっつりと描き出し、かつ選択肢と決定権は被害者に与えられるの、フェミニズム漫画としてもう頭ひとつふたつ抜けてる。

 

幼さや無意識で加害をしても、その罪は無くならない。謝罪は要らない、繰り返すな忘れるな2度と顔を見せるな。

 

フェミニズムというものが弱者の、尊厳を奪われた人の誇りを回復するもので、加害者と対等である当然の権利を主張するものなら、

いじめ被害者が加害者の扱いを決定する権利を有することは、これはフェミニズムの考え方として正しいと思うの。)

 

『まんがでわかるまんがの歴史 』

 

 

大塚英志が語る、太平洋戦争の前後を起点とした「まんがの歴史」。

 

プロパガンダ、弾圧、「無駄で馬鹿馬鹿しいものなど描くな」、その割に「性についてはぼかせ」、

 

まんがの歴史も興味深いのだけど、


さらに大塚英志の説く、「なぜ漫画で性表現をするようになったのか」の講義が際立つ。

 

為政者たちが称揚した「ただしいこくみん」、そのためには楽しい空想も性への興味も不要。死んでお国のためになる少国民に夢や希望なんて要らないんだからな!という弾圧。

 

それへのカウンターが戦後の手塚治虫であり、日本の漫画、アニメカルチャーであり、現代のクリエイター、そして読み手に「性表現を守りたい時、表現の自由を都合よく持ち出すのではなく、逆に「まんがは日本の文化だ」と叫ぶのではなく」負の歴史に目を背けず、歴史を学んでほしいと結ぶ。

 



『梅花の想ひ人』(最終回)

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日本の昔噺が世にも鮮やかなカラーのまんがで蘇る。極彩色の絵は現実か幻か。

 

今回で最終回か〜〜〜!世にも美しいものをありがとうございました。


最終回は花を愛ですぎた男が置いていった妻の話。彼岸花の赤と、ほぼ白で描かれる妻が不気味に映える。

 

お侍の所作を見ると少なくとも江戸時代以降に見えて、町人を無礼打ちできる(無礼を働いたら殺せるってこと)特権性がチラ見える。(そんなにちょくちょくはできなかったみたいだけど)

 


『けがわとなかみ』

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あなたもひもじいのでしょう


私を食べて下さいませんか


分かるのです、命が終わるのが


ならばあなたの助けに。

 

捕食者の「狐」と被食者の「うさぎ」。2人はある冬の日に出会っていた。

 

狐はリアルなのに、うさぎは妙にぬいぐるみのように描かれる違和感。涙の、生命を感じる極めてウエットな表現。


そのままの狐とうさぎの物語ではないような、寓意を感じるまんがです。

 

扱っているテーマが生命で、かつ捕食・被食の関係ということで、人によって投影して見るものが違ってきそう。

 

私はこんなに泣きながら誰かに救われたことはあったかな、
救われた後に、執着か愛かの区別もそこそこに、誰かを追ったことはあったかな。

 

みずぽろ』


一色美穂/水口尚樹

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とある高校に2人の男子高校生が転校してきた。


1人は身長185センチ、信濃千曲(しなのちくま)。1人は191センチ、山城桂(やましろかつま)。

会話のテンションは凸凹、身長的には凸凸の2人が目指したのは過酷な「水球部」!

 

会話の!スピード感がスピーディー(重複的表現)!

 

デカいくせに運動能力皆無、絵がうまくて筋トレもデッサン目線で行う色々間違ってる長身、山城。


デカいくせに小心者、内心のツッコミ吹き出しでコマがはち切れそうな長身、信濃

 

自信満々の山城が投げ、常識的な信濃が受ける。これが水球のリズムなのか(まだ始まってもいない)

 

私は水球のこと何も知らないのだけど、それ以前に漂うこの面白ムードはどうだ。クラスのみんなも山城のボケをいちいち拾ってくれて(信濃はちょっと置いてきぼりだ!)学園ものの「やさしいせかい」なのか。安心だ!

 

とはいえ、1話目の導入として挿入された「水球」の解説を見るとものすごく過酷そう。なに?水深2メートルで足つかないで球を取り合うって?大丈夫か山城泳げないみたいだけど。不安だ!

 

JOUR2023年12月号
『狐面夫婦』第7夜

 

 

 

常世とあの世の境目にある家で、一組の夫婦が暮らしていた。


夫は咎人、常世に戻れば死罪。
妻は妖狐、人間の生気をすする。

 

夫も妻も愛を語っても、ホントは理由あってのこと。そんな「狐面」夫婦の2人が騙し合う、そして少しづつ惹かれ合う暮らし。

 

こう、いきなり『うしおととら』を思い出すのですが(思い出ファイルを開く)、


少年マンガ文脈におけるバディ関係をつなぐのが(人間を捕食する)大妖怪から少年への「お前はオレの餌」というつながりで、もちろんそれは絶対に実行されない、素直に「お前はオレの友達」と言うのは恥ずかしいから捕食関係を強調してのバディ関係、ということなんですが(それを美味しくいただく私)、

 

『狐面夫婦』はもう結構「食われて」いて、回復するものとはいえ生気をガンガン食われているし、また夫が見せた愛情も、死罪を免れるための偽りが多分に含まれている訳です。

 

すでに2人とも相手を騙してしまっている。

 

その上に恋慕がらみのパートナーシップを作るというのはハードルが高そーだなと。。

愛を偽る、というのは、これはめちゃくちゃな罪な訳です。その上で惹かれ合うなら、どこかで謝らなきゃいけないんですけど。言えなければ言えないほど罪は深まるのですが、さて。

 

モーニング2023年50号
『だんドーン』第十七話 人を繋ぎ止める本質

 

 

 

『ハコヅメ』の泰三子が描く警察黎明期のドロッドロ軽薄策謀合戦・・!


幕末の動乱、中央幕府に反旗を翻さんとする薩摩藩で、ひとりの策謀家が暗躍していた。その名は川路利良。後世、「日本警察の父」と呼ばれる男であった。

 

面白いなコレえ。。


拷問、謀殺なんでもござれ。人権概念が無い時代ってこーゆーことだね!いやー戻りたくない!

 

17話では虚弱な母と幼い子を抱えた忍びに「少しだけ多めの報酬、そして家族の安全」を担保し二重スパイをやらせていた(なおバレたら一族もろとも拷問の上惨殺必至)ことに限界が出てくる川路。金と安全がなければ人は従わない。でもそのためのお金がなくてもう無理〜どうしよう!(どうしようじゃねー!)

 

1コマ1コマ、シャレにならないような殺人や人権侵害が渦巻いているのにあくまでコメディタッチで感情の法則が乱れる。コレ怖がるところ?笑っていいところ?(バイオレンススキーとしてはたまんないッスね)

 

いやほんと、史実怖い。漫画を史実として受け取っちゃならないけど、過去の現実の事件をモチーフにした創作のエグさは現代人の頭からはなかなか出ないよ。本当の人権侵害を見せてやりますよ!っていう堂々たる貫禄。怖〜!!(面白がってる)

 



佐渡の三人』

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「私」と父と弟の旅路。葬儀という儀式でかち合った大人の家族の会話のあっさりさ。

 

小説家、長嶋有作品コミカライズプロジェクトの一作(既刊)。コミカライズ担当はオカヤイヅミ。

 

隣家のおばさんの納骨のため、佐渡に渡る親子たちのちょっと頼りない道中。でも私知ってるんだ、大人って案外冠婚葬祭のルールって分かってないし、旅の予定もスマートじゃない。


そして大人になってしまえば、友達よりも会う頻度が減るのが家族。

 

大叔父や祖母がまだ存命中の「父」は、何歳くらいだろうか。作家として身を立てている「私」、引きこもりの弟は何歳くらいだろうか。


佐渡の三人』の家族は自由だ。たぶんこの冠婚葬祭が終わったら、次に会うのはまた誰かの葬式だろう。その自由さが清々しいと感じる。

 

そしてそれは豊かだと思う。

 

貧しいと人は寄り合っていかなければいけない。単純に可処分所得が低ければ一人暮らしができなくて、人は一つ屋根の下に集まらざるを得ない、どんなに仲が悪くても。

寂しさの自由を謳歌できるのは、もはや少し特権的だとすら思う。原作小説は2007年。ガラケーなので舞台も同時代だろうか。みんなが寂しい自由を得られたらいいのに、と願う。

 

 

【読み切り版】大きくなったら女の子 -夢と嵐太郎の場合-

 

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おもしれ〜〜!

 

オメガバースとかもそうなんだけど、性を「イジる」SFはものすごく批評的だと思うっすよ。現在の性のあり方を組み替えるのって、今段階の在り方をものすげーー考えないと出てこないものだと思うので。


グイグイ考えて考えて、その上で一定の視点から解釈をアウトプットすることが「批評」だと思うので(あ、いろんなやり方あるんですけど。。)

 

そして批判にもなるよね。


作中では基本的に男女ジェンダーが反転して描かれるけど、「こどもができたら基本男が育てなきゃいけないじゃん」ってせりふがあって、

 

「こどもができたら基本男が育てるって、それ無理なんじゃないの?」っていう感情が湧くんだけど、

 

別に女でも普通に無理だから。
どっちも無理だから分散してやろうよ、が最適解なのに、「こどもができたら基本女が育てる」は受け入れられてしまう不条理に背筋よ凍れ!

こういう、価値観をクルっとひっくり返してもらえるのはとても楽しいね。あとエッチですね(えっち)

 

別冊マガジン2023年12月号
アルスラーン戦記』第百二十三章「孤独の玉座

 

 

 

田中芳樹×荒川弘


中世中東をモチーフにした戦乱大河を『鋼の錬金術師荒川弘がコミカライズ。
群雄割拠、覇権を狙い麻のように乱れる大地で、心優しきパルス王太子アルスラーンを軸に英雄たちが織りなす骨太の群像劇!!

 

面白いな〜


でも私、話を全部理解してなくてごめん人数が多いからごめん(謝ってばかり)


ただ今回の百二十三章、一つの戦いが終わって皆に褒美を分配する回で、人心掌握がお上手というかやっぱり褒美に人はついてくるねアルスラーン殿下!ケチとか増税とかは支持率が落ちるよね(どこかで聞いた話)

 

それにしても今回、各キャラクターの褒賞の多寡をニコニコみんなで語る回・・・それって先の戦争での武勲の洗い直し回でもあって、このキャラは今回ハジケたな〜みたいなまとめをセリフ(と褒美の山)でしっかり見せた後、開始15ページでタイトルコールっていう「前の話をまとめて次の展開の扉を開く」っていう、私あんまりコレ言いたくないんですけど【マンガが上手】ですねェ全く!次の展開にワクワクしちゃうもん〜

で、舞台変わってパルス本国にて人望薄いヒルメス王子が登場して、って、ニッコニコのアルスラーン陣営との対比がパッキリで。もう〜お上手〜ッ!

 


『夢から覚めたその後で』前編

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アサとまひるは10年来のともだち。空気を読みがちで「好きな男の子が好きだった」という理由でバンドの追っかけを10年やってるアサ、他人との境界線の引き方がパキッとしてるが故に敬遠されがちなまひる


ある日、まひるの結婚の話を聞いて落ち込むアサ。親友だと思ってたのって自分だけだったのか。。ある2人の女の子のお話し。

 

まだ前編なのでなんとも言えなくて、今の段階だと「。。重いな。。」と思いながら読んでます。あんかけパスタのあん部分のテクスチャと言うか。天下一品の超こってりというか(40の胃には無理!)

 

共感できてないガールズトークに反応したのは、作中の「昔の男にラブポエムを間違って送信(ともだちが)」に似た思い出がビビットに蘇ってきたからです。ラブポエムじゃなかったですけど、半年くらい大変なことになりました。呼び起こされたのは殺意。絶対許さねえあいつ(個人の思い出の話)。

 

、、、という、個人的な思い出をつかみ出してくる創作ってそれは割と「有効」なのではないでしょうか。アサとまひるの話じゃない、中山と◯◯の話だけど立ち上がってくる怨恨の感情。

 

後編はどういう話になりますでしょうか。良ければ裁かれろ(個人の怨恨を晴らす期待をかけてしまっている)

 



『女甲冑騎士さんとぼく』第21話

comic-ogyaaa.com

 

インターネットにずるずる居続けるオタクのサラリーマンがルームシェアを開始したのは誇り高き「女甲女騎士さん」。甲冑騎士はその歴史上の役割を終えて日本に下宿しているケースが多いのでそういうこともある。あるったらあるんだ。これ以上の説明は無理だ。そういうマンガだ。


【女甲冑騎士】というニッチで高貴なキャラクターとインターネットオタクという圧倒的普遍性(矮小属性)が化学反応を起こす。枠外煽り文芸も含めて味わうギャグ漫画。

ツナミノユウ氏の漫画は説明に苦しむシュールさがあって、今日はもう金曜だからその辺の説明は諦めたんだけど(1週間の疲れ)、


こんなにも主張してくる煽り文(漫画の欄外に書かれるお祭りのお囃子みたいな盛り上げテキスト)はなんかすごくイイな、と思って、日本マンガのハイコンテクストな文脈を食べてるなあ・・・と思わず批評文口調に。

 

あと、私さっき「誤送信から始まる物語」を別媒体で見たばっかりなんですがこの21話でも誤送信(に見せかけた恥ずかし文の送信)の話をしていて、やっぱりみんな誤送信ストーリーは心のやらかいところを今でもまだ締め付けてるの?私は締め付けられますよ(青ざめる系の話なんですがそれはまた別の話)

 



『極主夫道』第122話

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元極道、今主夫。


顔が怖い言動が怖い家事ができると三拍子揃ったキャラメイキングで軽妙な「ハズシ」の笑いを堪能。ヒト的にもタイミング的にも「そうはならんやろ」が美麗な絵で今、開かれる。

 

極主夫道は面白いなあ。

 

ギャップの入れ子というか、
そもそも「ヤクザが主夫」という転倒、
からの「ヤクザムーブで家事」という転倒、
からの「絵がめちゃくちゃ端正で整っているのにやってることが小学生並みギャグ」という転倒、
レイヤー全部裏切ってる。裏切りの報酬だ(いい加減な言葉選び)


さらには時間軸の操作というか、「そこで普通切らないじゃん」というオチの踏み切り方もまた、従来のギャグの王道があってのハズシであって。

 

また最大の裏切りは「極道で主夫」という出オチギャグを5年も同じテンションで続けていることで、もうトータルで全部面白い。5年やったらテコ入れでこどもができたりしそうじゃん。しないもん。ずーーーっと同じで「顔が怖いけど家事が上手い」で5年。ここは裏切らない。

 

ところで急に真面目な顔になるんですが、この前戦後の戦災孤児の取材記事を読みまして、ものすごく悲惨でもう全然シャレにならないし孤児たちの多くは長じてそのままヤクザに吸収されていったというのになんとも言えない気持ちになったりして、

現在のヤクザや犯罪集団でも、特に下っ端構成員は「もともと家庭環境に恵まれなかったり教育が足りない、または教育を受けても受容できる能力がない(学習障害や境界性知能など)」場合があるということで、

極主夫道で極道をやめたタツがご近所の主婦たちとキャッキャしてるのは本当はあるべき姿だったのかなーなんて思ったりして。大人になったら咲く場所は自分で選べるね(そーゆーマンガじゃないのは承知だけどもだ)

 

「アイドゥラブユー」

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アイドルグループ「ロゼット」のミリアはかわいい!!


ミリアの幼馴染の亜美と、超美人でミリア推しの多田。接点のなさそうな2人なのに、2人は仲良し。

 

これはいいですね・・・

同じ偶像を愛することが結びつける友情。
「ミリア」は亜美と多田の絶対的な共有アイコンなのに、ミリアの心情とかは全く出てこない。ミリアはステージの向こうの人で、この話は亜美と多田の話。

 

アイドルに「なろう」とはしない。そのわきまえみたいなものがあって、

わきまえる、って、なんだか悪い言葉のように聞こえるかもしれないけど、私はそんなに悪いとは思っていない。自分の本懐でわきまえさせられるのは屈辱だけど、趣味とかでわきまえて楽しむ、というのはそれはとても健康なことじゃん。

 

亜美と多田はとても健康。ミリアの話じゃないからね。お互いの好きなものを共有して、二人は生き抜いていく。ふたりで。

 



『テラ麺』第29話 鬱憤スプレッド

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ラーメンは好きですよね?もちろん宇宙人も好きなんですよ。


ラーメン屋の暖簾の奥には、人間と宇宙人が仲良く麺を啜るカウンターがある。ラーメンはいつでも美味しいけど、同時多発的に起こる不思議な出来事。


1話完結、ラーメンを介したスコシフシギなSF。

 

面白いなあ〜


今回は宇宙犬?駆除業務??の宇宙人???が休日にシフトをぶっこまれて怒りのやけラーメン。❓が多いのは特に説明されないから。たぶんそーゆー話。そしてほっこりに着地。

 

たまたま隣り合わせた人間の会社員と宇宙人が仕事の大変さを分かち合うの、こう、宇宙の法則が乱れますね。いいのか、その服絶対カタギじゃないけどスルッと受け止めてるけどいいのか。いいんだな?わかった!

 

こう、上品な上滑りというか。


内容に無理があることは承知で、「でもこんなことあったら楽しいでしょう?」って出されてる感じ。その違和感を全部まとめ上げるラーメン。ラーメンは美味しいからね。

たくさんの説明は無粋だと思う。心地よい小粒SF漫画なので気楽に読んでもらえたら嬉しい。もちろん、この「心地よさ」の塩梅は人によるので「薄いッ!」「冷めてる」とかあるので、まあご試食ください(ラーメンっぽく紹介)

 

 

ここんとこ読んだ漫画感想2023/10/22~11/5(25件)

その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。

 

リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。

 

本日は25件の漫画の感想です。

 

 

「[第19話]ハンサムマストダイ」

 

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。。。

昨日、ジャンプラで「おじいちゃんが死を教えてくれる」マンガを読んだんだけど、今日もまた読んだな、超別ベクトルで。

 

マジな話の合間にどうしても看過できないトンチキがあって、例えるなら「しっかりした椅子に座ったらいきなり走り出した」みたいな、みたいなじゃない、この例えも訳がわからないだろうが私だって訳がわかっていないのだ

 

「墓場まで持っていく話」

 

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早乙女新介(そおとめしんすけ)は25歳にして死んだ。死んだものは「墓場まで持って行く話」、略して墓話(ハカバナ)を話し、その軽重で天国地獄が決定する、、らしい。アフロのおねーさんに探られる新介の秘密とは。

 

楽しい絵柄とポップなリテラシーの利用。

 

ブラックのキャラクター、女性から男性へのセクハラ、性指向など、芯を食った高いリテラシーで心地よく読めますッス!

 

こういう表象を消費するだけか、現実にも導入するかで批判と受け入れの境が分かれるのでしょう。女性からでもセクハラダメ絶対。

 

お話はやや込み入ったミステリなので、絵柄と共にゆっくり読んで楽しんでくだされ。ただ、ミステリの謎として今どきソレは古いぜ、という気もしなくはないぞ!コンテンツとしても結構周回きてる!

 

「こういうのうんざりーー」って人がいるのもわかる。けど、ジャンプラという「ポップ」に乗り始める頃合いでもある、と言えると思う(ネタバレを避けているのでずっと婉曲な言い方)

 

それにしてもアフロは「上からの強い光のある舞台で、顔周りの影だけ塗ることで画面の黒を減らすことができる」というテクニックを知った。おお。。

 

「ザ・キンクス | 第6話 闇夜のアウル」

 

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構造を改造せよッ


ギャグに内包された飽くなき物語への問いと自己完結。物語の構造は入れ替え裏返されそしてカタルシスへ。構造を揺らがされることは不安だソレがいいッ

 

ある田舎に暮らす家族の、少しヘンな暮らし。牧歌的な生活にいつしか「問い」が紛れ込んでくる。

 

今回は6話7話通して読んで欲しいんだな。お話の時間軸をひっくり返していてそれだけでも脳がエンドルフィンを放出します(エンドルフィンってなに?)

 

6話は不穏な「行きて帰りし物語」、7話はナンセンスギャグ。知的な香りとお楽しみ。

 

週刊ファミ通2023年11月2日号
『無慈悲な8bit』

 

ゲーム好き漫画クリエイター、山本さほのゲームあるあるエッセイ2ページ漫画。

 

私はゲームのことはこどもがやってるもの以外何もわかりはしないが、そこに漫画があるなら読もうとも!

 

今回のお題は「スイカゲームについて」。気づいたら流行っていたスイカゲーム、この手の大きなタイトルじゃないゲームの流行の決め手はつまり「配信者のリアクションが面白いからなのでは」と考察します。そうなの?(何も分からない業界の話は楽しい)

 

ところで、この漫画の感想の宛先が「ファミ通『無慈悲』宛」というのがいつ見ても笑う。無慈悲宛て。

 

「[第126話]ダンダダン」  

 

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マッドマックスでーーーす!!!!

ちょっと和風オカルトなんで、デコ山車にパンクバンド積んで歌わせて学校ロボが追いかけてきて周囲に二宮金次郎像がピョンピョン襲ってきますマッドマックスでーーーす!!!


ギターから火を吹いたら危なかった(危なくない!)(いや危ない)!

 

作画は週刊連載として最高レベル。マッドマックスが足りてない人は見ていってーーー!!(私足りてなかったの助かった〜)

 

「[第76話]ラーメン赤猫」

 

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ラーメン赤猫は猫がやってるラーメン屋さん。でも経営、人事、近隣店舗との付き合い、顧問弁護士との付き合いヨシ!渡る世間は猫ばかり、優しい猫ラーメン屋の日常。

 

今回は「お世話になってる農家さんがお中元送ってくれたからいろいろ送ってくれた」「相席になってくれたから一品つける」など、きめ細やかな付き合いやサービスがきらめく回。

 

私はこーゆーサービス業の細やかさをすべて失って生きてるもんで、ほんとにその、こういうことができる人、天才だからね?天才よ?誇って?バリバリ誇って??(念押し)

 

アフタヌーン2023年12月号
『ミライライフライ』(新連載、不定期連載)

 

 

 

その国では苛烈な競争がある。場所は中国。舞台は大学。時代は現代。小さい頃から追い立てられ追い立てられ入った大学で、それでも休むことを許されぬ学生たちは自由を求めて自死をする。その、ドキュメンタリーに撮る決意をした女学生。

 

作者は雨田青(あめたあお)。翻訳は金子拓真。


現代の中国の加熱する学歴主義、人間の限界を超えた学歴の追求と、そこから転落する恐怖。

 

作者の方はチャイニーズネイティブの方なんだろうか(少し調べたけどわからなかった)、


「マンガで現実を知ることはできない、ただし入口にはなる」がモットーの私としては、隣国の現代の1シーンをモチーフにした漫画が読めるのは嬉しい。

 

社会的な題材だけど、ドラマティックな演出でスリリングなエンタメをやるのかな、、という気配がする!

 

本作品の試し読みはないんだけど、作者の読み切りはこちらから読めます。女性への暴力があるので注意。

comic-days.com

 

「遊星からの幸福感染」

 

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おばあちゃんを介護して、夢をあきらめてきた空。彼女のもとに飛来した「かわいい」宇宙人たちに背を押され、人並みにSNSを始めた空の、自分なりの「人生の獲得」。

 

またそうとう賛否が分かれそうなマンガですね・・・嫌いな人は嫌いだろうという漫画。

 

星新一ショートショートとかが好きな人とかは結構いけるんじゃないかな、(ことば少なに)

 

しんどい時はお勧めしません。私はずっと眉の間にしわを寄せて読みました。


楽しかあないですけども、この問題提議が誰かの心にとげのように刺さる時、ひょっとしたら社会が少しだけ変わるかもしれない。暴力を描くコンテンツには、そんな力があるでしょう(暴力的な漫画、だと思います)。

 



「東京歌舞伎タワー計画 S:1/000 浦島設計」

to-ti.in

 

歌舞伎町をふらつく男は、亀を助けてスナック竜宮城へ。街を味わうマンガ。

 

うわーーー待ってたーーー!


この作家さん、「通勤電車で漫画を描いた」ってマンガで話題になった方で。


サラリーマンの方で、通勤電車の中でノートに絵を描いて、朝塗って。


画材はシンプルなものだって言ってたけど、あえて消失点を取った線とかが残ってて、それがまた渋くてねえ。

 

今回の漫画も味わい深い歌舞伎町がいくらでも眺められる。絵を眺める漫画です。

 

気に入ったらこっちもどうぞ!かっこいいんだあ〜

 

 

「血を召し上がれ」

 

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道端で拾った吸血鬼、バリーさんは意地悪で何もできなくて読書マウントが酷くて、でも大好き。読書感想と血の供給でバリーさんの気を引く日々は、いろんなところが痩せていく。

 

読書感想のコミュニケーションは特別な関係のコミュニケーションになり得るか。漫画の感想を書き続けている私にズバッとくるテーマ。

 

読書好きが高じて「すべての本が読みたくなった男」が永遠の命を得て読み続ける本。


振り向いてもらえるかもしれないと顔色を伺い続けて「良い感想」を話し続ける女の子(名前が出てない!)。

 

私は感想を収集するのが趣味(多分研究的な目線なんだと思うけど)で、感想とは影響力のある他者によってグッと変わることはずっと見てます。私自身も経験あるし。

 

その人が当事者だったり、本をめちゃくちゃ読んでいたり、好意を持たれたかったりしたら一発です。バリーさんは永遠の命があるため、知識量はすごいし三島由紀夫菊池寛の時代も見ていますから説得力もありますね。そんで冷たげな語り口で断定されたら一気に心弱くもなりますよね。嫌いなコミニュケーションだな〜

 

バリーさん、民俗学的アプローチに行けばよかったのに〜。感想は選別するもんじゃないんだよー増えるもんなんだよー(老婆心)

 

『マンガ 認知症2』

www.webchikuma.jp

 

これはマンガで描かれたレポなので、微妙に私の範囲なのか?と思う、

 

介護マンガですね・・・

 

こういうセンシティブなテーマをわかりやすく伝えるためにマンガというメディアが選ばれることはとても多いのでやっぱりマンガの範囲なのだ。

 

誰かの手助けになればと思ってシェア。かわいくて見やすい絵なので入りやすいかと。からりの人が目を背けられないところなのでね・・・

 

シリウス2023年12月号
『タワーダンジョン』

 

 

 

弐瓶勉新連載。


ある時、禍々しきものが王女を奪った。それは竜の塔の中に去っていった。


力自慢のユーヴァは、とある村の召集兵として近衛団の竜の塔探索に加わった。


広大な世界、宙に浮く塔、阻むモンスターと探究心。

 

壮大なアドベンチャーのはじまり。

 

ほぼ色を使わない、弐瓶勉さん特有の白っぽい画面。古き良きファンタジー「塔の探索」をテーマに進むのかな。

クリーチャーがグニャグニャしてて好みの造形!どんな物語になるか。

 

試し読みはないので(ちぇー)、告知ニュースでどうぞ。

news.yahoo.co.jp

 



『全員記憶喪失オフィス』

https://biz.chunichi.co.jp/news/article/10/63818/

 

その会社のその部屋にいる人間、みんな記憶がなくなってたら!?
うっかり構造破壊、なにげに階級逆転。へらへらコメディ5話更新。

 

『花四段といっしょ』増村十七氏による新聞メディア掲載のショートコメディ。記憶喪失した会社空間でぶっちぎりの小娘、本部長子(もとべちょうこ)がてきとーに部長の座に収まり、誰も何も把握していない会社生活が今、始まる。

 

2ページのショートさとヘラヘラっとした笑いでコーヒーのお供にピッタリ。辛い社員生活なら「こんな生活だったらいいな」、特にそうでもないなら「本部長子はどこでも生きていけるな」とか思いながらコーヒーを淹れに行きましょうそうしましょう。

 

[第20話]ハンサムマストダイ

 

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2023年最新少年ギャグマンガ、ここに完結。

 

フォーエバーハンサム・・・

 

ものすごくよかった・・・

 

まあ面白いことはみんな言ってるから譲って、私は女の子の話したいんだけど、

 

主人公は女の子が男装して男性アイドルの世界に紛れ込む話なんだけど、ラストまで「そんな設定あったっけ?」みたいな無視っぷりで(合間に女の子いじりもあったけど全部基本行動が「ぶん殴る」の方向だった)、最後もみんなで仲良く麻雀やって終わった・・・よかった・・・


バトルも全く女の子の泣きとか入れなかったし、最高の少年マンガだった、ありがとうハンサム。

 

 

「[第127話]ダンダダン」  

shonenjumpplus.com

 

ダンダダン、「音のオノマトペ」を使わない(ドガーンとかグシャッとかの書き文字)のがすごい、本当にすごいな、と思ってたらついにライブシーンまで音レスで始めて、もうこれBLUE GIANTじゃん

 

 

『こういうのがいい』

 

 

 

村田は「質問攻めの彼女」、友香は「淑女を求める彼氏」、にそれぞれ別れを告げて、ゲーム仲間として気楽なセフレ生活をスタート。会話とエッチが同じアングルで描かれる【実用書】(実用に最適という意味)

 

と書いて申し訳ないのですが私はコンテンツにセックスを求めていなくて「実用」度合いについてはちょっと分からんのですが、

 

コミニュケーションの漫画、としてすごく興味がある。

村田と友香はゲームとセックスが趣味で、会話コミニュケーション、セックスのコミニュケーションとも阿吽の呼吸。お互いに空気のようにコミニュケーションを取っていている。2人とも一般的な恋愛規範や結婚観が嫌いなことも描かれる(ラブラブカップルの会話を聞いてマクドゴミを叩きつけるように捨てる、とか)

 

ただ、2人の間にあるのが【決定的な賃金格差】で。

 

これほどまでにピッタリ合う2人なのに、村田と友香の賃貸は2サイズは違う。

 

ここで飛躍して、医大で女子の偏差値を抑え付けていた話に飛びたいんだけど、

 

男子をA、女子をBとした時、

集団AとBの勉強時間が、Aは月に50時間、Bは100時間であれば、まず努力規範や生活習慣的に話が合うわけがなくて。

でも、今の日本ではこの集団が同じ「ハコ」に入れられる。Bは、コミニュケーション相手として同じ価値観や努力規範を持つ勉強時間100時間のA‘を求める。A’はほとんどの場合、A、そしてBより収入が高い。

 

村田と友香が経済格差が大きいのに、コミニュケーション規範が同等なのは、こういう影響もあるんじゃないかなとか。

 

社会的には差をつけられた2人が、実質的には同じ価値観を持ってるってのが今、存在してるんじゃないかと。

 

だから「女は金を持った男が好き」というよりは、

 

「女が話が合う男とコミニュケーションをとろうとすると、自然に自分より収入が上めになる」

 

という現象が起こってしまうのではないかと。

 

男とか女とか、社会が決めたジェンダーの話で悪酔いしそうですけども。

 

時に言われる「女は収入の高い男になびく」と言うの、実はこの日本の社会構造として「女性の収入が不当に抑えられてるから」じゃないか?

とか。

 

漫画の話で締めると、会話とエッチがずっと同じアングルで進み、エッチシーンがクローズアップされないので面白いなって思います。ワンカメ据え置き。なお実用性については自分で確認されたし。

 

モーニング2023年49号
社外取締役 島耕作

 

 

 

軍事産業に乗り出した会社の社外取締役をしている島耕作。しかし強引な新社長は古参社員の恨みを買い、軍事事業は造反組の手に渡る。

 

これは政治的主張として私と全く反対であり、また私の不利益になることなので批判せざるを得ない。


イスラエルパレスチナでも戦争が起こったから台湾クライシスが起こって日本も集団的自衛権を発動させて参戦するかもしれない」

という主張をするのだけど、
違憲スよね。今、現状で。

 

このあと話が転がって「やっぱり戦争よくないですね」みたいな話になるのかもしれないけど、今の段階では強く批判する。

 

敗戦後、流通の死んだ東京で、こどもを食わせるために母親は泣く泣く身を売った。そんなに長い期間ではなかった、でも1週間、こどもに食わせられないなら母親は強盗か体を売るかしないといけない。私はそんなこと絶対に嫌ッ。戦争なんて庶民が痛めつけられるだけなのに。

 

『ゆりあ先生の赤い糸 』

 

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ゆりあ先生はゴツくて背が高くて刺繍の先生をやってる50歳。
長年連れ添って友達みたいになった「とーちゃん」ととーちゃんのお母さんと3人ぐらし。

 

そんなある日とーちゃんがくも膜下出血で倒れて完全介護に。それだけでも大変なのに、なんと愛人が2人出てきた!?ゆりあ先生の取った手段は「3人交代で介護!」

 

漫画みたいな(漫画だけど。。)トンデモない介護生活をパワフルに突き進むゆりあ先生が痛快。入江貴和らしい細やかなキャラクター造形で、突破な設定なのにキャラ一人一人が生きているような瑞々しい作品。

 

ゆりあ先生と年下ボーイの恋愛(これもまた色々複雑なのよ)も絡み、介護を中心に極小コミューンを形成、これは家族解体の物語で社会主義なのでは(めんどくさいこと言い出した!)

 

菅野美穂主演でドラマ化も決定。漫画の「ゴツくてオンナを諦めてたけど、交代介護生活を経てむしろどんどん可愛くなる」ゆりあ先生、楽しみにしてるよ頑張ってッ!!

 

「スペースの君に」(読み切り)

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大好きだった絵を切られた少年がいた。


時を経て定年を迎えた少年・・・老人は、アパートの管理人として眼前の廃墟に足を踏み入れる。そこには絵を大切に飾る少年「宇宙人」がいて。

 

アクション読み切り。絵も上手いし構成も少年マンガらしい満足感。主人公がおじいちゃんというのも良いです。

 

なにより、

「老人らしくない」部分についていいなあと思う。

 

端的に言って、老人が50代くらいの中身をしてるなあって。


他人を怒る威圧的な感じとか日本の老人らしいと言えばらしいのだけど、感性と行動がみずみずしいので「シワのある50代」くらいに見える。

 

ステレオタイプとして、定年後の老人って、あんなに動けないしあんなに機転も効かない。


でも今の老人って個人差あるよね。同じ年でも明るくおしゃれに振る舞う人もいれば、本当にザ・老人という佇まいの人もいる。

 

老後こそ個性が見えてくるところ。今からスクワットを日常化して、老人のステレオタイプを打ち壊せ。

 

(ただ、この作品のおじいちゃんの中身がかなり幼いのは気にかかる。少年マンガで若い読者が対象とは言え、個性はありつつもそれ相応の年輪も期待したいところ)

 

「[第147話]チェンソーマン 第二部」

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第一部で一部熱狂的な支持を得たクァンシ様が出てきたけどこれはどーゆー扱いででてきたんだろ、別人格とゆーことかな。

 

「(チェンソーマンには)腑抜けてもらっちゃ困るんだ、前みたいにめちゃくちゃになってもらわないと」

 

同意同意。水族館デートとかしてる場合じゃないんだぞデンジ!

 

DOGA

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貴族の青年と、貧民の少女。


どこか遠くの時代、どこか遠くの国で、体を失い機械になった貴族は、少女を頼って海を見に行くことを決意する。2人はこんなに格差があるのに、等しく海を見たことがない。

 

フランス出版が決定している日本マンガ(と言えるのか?)2話目(前後編の前編)。

 

太古のアジアのシルクロード、砂漠のソグド商の街のようなエキゾチックな世界観と、体の機械化というSF、そして圧倒的な格差という社会的なテーマが盛り込まれる。

 

今回の話は少し今、きつい。


貧民が昼寝をする世界遺産のたもと。彼らはこの街にいて、一度も宿に泊まったことはない。警察に追い立てられる身分。

 

私は10年ほど前、ベルギーに旅行に行き、ブリュッセル駅にびっしりと布団を敷いて寝ているアラブ系難民がいるのにひどく驚いた。

今、ガザは難民キャンプすら安全ではない。

 

DOGAはフランスの出版だから、その辺りについて社会的要素が無関係ということはないだろう。

床に寝るのが当たり前のキャラクターと、貴族の邂逅。西側の本気の格差を見せつけられている今、現実感を伴って迫ってくる。

 

『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』

 

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Season11/4本目 Winny

 

2000年代のWinny裁判を取り扱った映画の紹介。


最近、作者の服部氏が著作権系の判例をいくつかツイートしてたのこれかー。


判断の難しい例ばかりですごくためになった。ありがたや。

 

Winnyという「現象」について、日本のイノベーションの現状を象徴するかのような映画になりそう。

 

それにしても、さっき全然別の経済ニュースで「日本の投資信託が育たないのは天下りがあるから」という身も蓋もない結論を聞いていて、ジャパンはまじで一度「ご縁とご恩」のメンタルを捨てた方がいい気がするぞ・・・

 

ヤングエース2023年12月号
『まんがでわかるまんがの描き方』

 

 

 

『多重人格サイコ』などの原作で知られるまんが原作者&編集者、かつ柳田國男直系の民俗学者でありまんがプロパガンダ研究の大塚英志が放つ「まんがの歴史(太平洋戦争プロパガンダ利用編)」ッ!

 

資料の正確さはこのジャンルの第一級の研究者として信頼は極めて高い(私も氏の本は何冊も持ってる)。


まんがの制作こそ政治発言をしなければ、国家プロパガンダに利用されると警鐘を鳴らす。

 

こういう人の後続にたくさんの人がならなきゃいけない、私もその大きな流れの小さな水流にならなければ。

 

『瓜を破る』6巻

 

 


性経験の有無は、生きるのに関係ありますか?


香坂まい子は32歳で性経験がない。それは自分の大きな欠落なんじゃないかと思えて。


性経験のみならず、性にまつわる(対象は育児やルッキズムまで)思いが邂逅するオムニバス。

 

ごく個人的な悩み(メインは性のこと)を掬い上げ、ごく個人的な事情を描き解決したりしなかったりするオムニバス。

 

だってエ、性経験のことって教科書に載ってないじゃん。なにを「みんなできて当たり前」みたいに言ってんの?教科書に書けって言ってんじゃないんだよ全員ができなくて当たり前だって言ってんの!

 

セックス、それはコミニュケーションとタイミングと自分たちの意思の総合芸術。当然義務でもなんでもない。悩んだり折り合いをつけたりする過程が丁寧に描かれていきます。

 

特に出番の多い、まい子と鍵谷さんの性体験がない2人による距離の取り方、縮め方。派手なことのない誠実なことばでの合意の取り方、そして最後にはエモーションが背中を押す。これを教科書に書けッ!(さっき言ったことと違う!)

 

なんか、とても良くて。。コミニュケーションコストをケチらない、めんどくさくてややこしいセックスの話です。

 

私はできる範囲で漫画雑誌を眺めるようにしていて、その中にエッチ漫画雑誌もあるんですね。

そこではコミニュケーションコストゼロでセックスができるエンタメが展開されます。

私は漫画にセックスは求めてなくて、

その過程、どのようにセックスに至るか、にすごく興味がある。

『瓜を割る』はまさにそんな漫画で、セックスも丁寧に描かれるけどそこに至る過程、そっちの方が重要な作りをしているので、私は正座で誰かの決死のコミニュケーションを覗かせてもらうのです。

逃げのない、本気のぶつかり合いの場にセックスという舞台はかなり有効で、

私はつまりコミニュケーションの死合いが見たい、

断られたらそうとう傷つくし受け入れられたらほんとに嬉しい、ことばでコミニュケーションを取ることでその辺の都合を折衝もできる、

そういう、背水の陣のコミニュケーションのつばぜり合いが見たい。

。。。なんか偏ってる気がするけど、なんかそういう感じで、『瓜を破る』はそんな、むき身の真剣勝負だと思・・・・思う(不安になる)

 



DOGA

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第2話 砂漠の街のドガ (後編)

 

フランスの出版社での発表作品を日本で連載形式に。Webアクションの新星、武田登竜門氏の新作はどこか遠い、エキゾチックな砂漠の街から始まる、大きな社会的格差を持つ2人のロードムービー

 

連載形式が特殊なのだけど、掲載としては1週間に一回なのかな。

 

ぽっちゃり怪力娘のドガと貴族のお坊ちゃんで体が機械になってしまった青年、ヨーテのいまいち噛み合わない旅路。

 

この作品はテーマが格差にあると思って、砂漠の街や体の機械化といったSFで距離を取られているけど、その貧困は現実をまざまざと思い起こさせる。

 

シリアやリベリアと言った貧困国、あるいは日本のホームレス街なども想起させる貧しさ。


目先の採掘で地下を掘りすぎて、地盤沈下で死んでしまう人。でも、それを批判して別な生産を考える時間資源も教育資源も彼らは持っていない。誰かが死んでも警察も来ない。

 

武田登竜門氏の描く作品の、社会の書類から抹消される感じが好きで、それは自由だ、、、、と思っていたけど、今作ではさらに「人を記録するという概念すらない」世界に突入していて、私の常識の根幹が打ち崩される。これは良い読書体験だ。

 

 

『昭和ママと令和キッズ』

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昭和ママ、昭和中期の知り合い(?)、平成おばさん、令和の私による世代間ギャップ噺。


『母がしんどい』『それでも親子でなきゃいけないの?』等、親子間の抑圧を誠実な取材とタブー知らずに踏み込む田房永子氏が「元号って天皇制の象徴なんですけど」と言いながら比較する、カルチャー比較フェミニズム論漫画(と言っていいだろう!)。

 

私は自分の親子間のガビガビした感情の理解に田房永子氏のルポ漫画がめちゃくちゃ役に立って、本当に信頼しているルポライターなんだけど・・・

 

正直に申し上げて絵の上手い方じゃあなかったのに、明らかにマスに寄せてすごく読みやすいぜ!たまに本人の持ち味の不気味さが出るのがナイス。

 

本領としてはルポの人だと思うので、語られるカルチャー比較情報も感想ベースではなく歴史や理論を引いたものでホホウ・・・と納得。その後調べるのは忘れずに(私の信条は「漫画で一次情報を得るなかれ」)

 

昭和のブルマとかみんな信じられる?あんなパンツで運動させられてたとか犯罪だろ令和から考えると。元号区切りがフィットしてしまうのは癪だけど、要は「およそ20年単位のカルチャーギャップの話」をしている。これは教育マンガだなあ。

 


『線場のひと』

to-ti.in

 

太平洋戦争敗戦後の日本。性アイデンティティセクシャリティを時代に踏み荒らされる4人の人物のオムニバス。

 

今回は日系アメリカ人、アーサー・ジロウの物語。舞台は戦後長崎。

 

作中に出てくる「突き刺さった矢のようなもの」は、長崎の原爆慰霊碑・・・を建てようとしたらGHQから横槍が入り、慰霊の意図が不明、かつ短期間、そして米兵の写真スポットとして消費された矢形標柱。こういうものをスッといれてくるあたり、この作品の社会的な目線が強く伺えます。

 

日本人でもアメリカ人でもない、アメリカ人として忠誠を見せるため兵士になり、箸が使えないと責められる。でも英語が使えてこどもにチョコレートはあげられるし、日本にもてなしてくれる親族がいる。

 

国家に切り刻まれたアイデンティティ。決して単純に「こちらの国のやり方が良い」と言えない、今よりもずっと深刻なものだったと思います。

 

 

彫刻家の小田原のどか氏もこの矢形標柱をアートにしています。皮肉な文脈です。

spice.eplus.jp

 

 

 

 

ここんとこ読んだ漫画感想2023/10/11~2023/10/21(23件)

その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。

 

リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。

 

本日は23件の漫画の感想です。

 

 

ねこともVol.87

 

 

これは雑誌全体の感想になるんですが、猫をテーマにした4コマやエッセイ、創作マンガオンリーの猫アンソロジーと呼べる雑誌。読者からの猫写真投稿などもあり、リアル猫も拝めます。猫純度100%。

 

私は実家がいわゆる「猫の家」で、一人暮らしで家を出るまでに2匹の猫を飼っていました。今の環境では飼えないので、こういう雑誌を見るとあの柔らかさや声を懐かしく思います。

 

日本美術の勉強をしていても、江戸時代の絵師で猫好きマンが猫絵を描いているなんてことはよくあることで、昔から猫は美術の面でも好かれてますな。

 

アンソロジーのマンガはどれも軽く読めるもので猫の邪魔をいたしません。まずは猫。猫が優先。当たり前ですが猫は酷い目には遭いません。

 

メイドインアビス』12巻

 

少女は冒険心に全てを捧げる、身も心も、倫理観さえも。

 

隅々まで探索され尽くした世界で唯一残されたフロンティア、地底へ続く大穴「アビス」に挑む冒険者たち。彼らは神秘の力を持つ「笛」を携え、降りれば2度と上がっては来れない地底に潜る。好奇心は誰にも止められない。

 

有名作ですがおいそれとは勧めません。酷い暴力が目白押しなので、辛い人には辛い作品です。痛みの表現やグロテスクが嫌な人は絶対見ちゃダメ。

 

さて倫理観を破壊することでお馴染みのメイドインアビス、私は少し違う角度から感想を。

 

メイドインアビス、枠線がフリーハンドなんですよ。なぜか。


あと、なんだろ。。私は電子で読んでるんですけど、薄く塗った跡?が、画用紙みたいな質感に見えるんですよね。これは紙でもそうなのかなあ。

 

機械感など硬質なところはカタイ感じあるんですけど、時に出してくる「凶悪メンタルすぎて人物が筆絵化」の時とか、枠線も相まって寓話のようです。

 

あと、バトル漫画としてゴツいですよね!バトル担当はレグ(謎の機械少年)ですが、12巻でも伸びる腕と飛翔しばり無視(この世界はジャンプでダメージを受けるので)でハイパーバトルになってます。お勧めはしません(2度目)

 

メイドインアビス、悪い昔話、

柳田國男がフィルターをかける前の各地の口承伝承。あるいはペローやグリム以前の民話。

グロと暴力と知的好奇心のカーニバル。

そんな感じがします。

柳田國男の収集した話とか、祭りの名の下にしれっととんでもないこと書いてますからね。。

そういうのを物語で済ますのは大切だと思うんですよね私は。。

 

『戦士に愛を』

 

 

 

その戦場は人造人と人造人が殺し合う。

 

大戦で大地は汚染された。その除染のために作られたのが毒に耐性のある「人造人」。
しかし人造人は40年ほどしか寿命がなく、人造人の人体活性化を求めて機構政府との衝突が絶えない。

 

人造人ウィズは汚染除去プラントの仕事を失い、選択肢がなく兵士に志願する。そこで見る地獄とは。戦地シーンを追求する戦争SF。

 

初出は2016年。


「人もどき」人造人との居住地を分ける「境界壁」、そのために「居住地を接収される人造人」、そして政府警察に暴行される「人造人デモ集団」。

 

あまりにも濃厚に現在の激戦地を喚起させる作品。


しかしこの作品には「生活」がない。音楽も食べ物もない。

あるのはただ戦地。毒が蔓延し過去の人間の造りし異物「機械兵」の死骸が転がる廃ビル群で、気づけば死んでいる銃撃戦だけがある。

 

私はまだ1巻を読んだだけだけれど。

 

生活感が全くないので、現実の戦地とは違うもの。(生活を壊すことこそ戦争なので)

でも戦地に想いを馳せることはできる。同じ「人造人同士」が殺し合い、「人間」は手を汚さない構造。紙のようにあっさりと死にゆく同僚。昔はきっと栄えていた街の残骸。

 

モーニング2023年46号

 


『二階堂地獄ゴルフ』

堕ちて落ちて堕ちまくる・・・!『カイジ』の福本伸行の新作はプロゴルファー試験に落ち続けて35歳になってしまった男の話。カネのかかるプロ試験を支えてくれた後援会から見放され、二階堂は孤独と敗北感を噛み締めながら単独プロ試験に挑む。

 

キビシい〜〜〜!!

 

男の!男の欺瞞を!残さずキャッチして全部指摘していく福本伸行地獄!!

 

「俺はまだ若いから」と言う35歳に「若くねえだろもう」と現実を突きつけるところから始まり、


「プロ試験にギリギリ落ちた」ことがアイデンティティ(もうちょっとで受かってたんだけどナ〜〜で10年)と気づいてしまい、


プロ試験に合格した後輩に説教して「なんで落ちてるのにアドバイスできると思うの?」と実に真っ当に言い返され。

 

あげく、後輩の不正を見て見逃してあげようと決意したのに、痛いことを言われまくったのでつい不正を暴いてしまう。。。

 

イタタタタタ卑小ッ!

 

男に優しいモーニング、『小遣い万歳』や『1日外出録ハンチョウ』で薄めないと大変。ああでも今回ハンチョウ掲載ないんでこづまんで薄めてください!うわわわわ!

 

「降りられない」ひとは、二階堂地獄ゴルフ見てメンタルを保てるんだろうか。

 

敗者であることが問題なのではない、勝負の世界に挑み、その舞台から降りられず、己が敗れたことを認めず、鏡から目を逸らし10年過ごした男の欺瞞を容赦なく掬い出して突きつけるこのッ。。

 

そのリングから降りちゃったらラクなのに!!とタオルを投げるモーションに入っている私ですが、それは。。嫌なんだろうナア。。お、降りちゃいなヨ〜〜!!!

 

と言いつつ、

この自己批判、非常に好感を持って見てるんですよ。

女性はまだまだ、差別や虐待が酷くて、自己批判とかにいくフェーズじゃなくて。

自己批判が大っぴらにできることは文化が豊かということです。けっちょんけちょんにしてください、自分たちを。自己批判であなたたちはさらに強くなります。全くズルいぜ。

 

「[第九話]サチ録~サチの黙示録~」

 

shonenjumpplus.com

サチはクソガキ!


天使と悪魔が「人間審判」を始めた。人類の中から代表を選び、その善良度で人類の存続を決める。天使と悪魔が1人ずつ派遣され、その人間のポイントを測る。ポイント次第で人類滅亡!選ばれたのはサチ!天使と悪魔がクソガキに振り回される(と見せかけて案外楽しくやる)コメディ。

 

このマンガ好きだなー(初手からの褒め)。

 

今回はランの上司の天使長が現れて、「保護者たちがギャースカこどもに見せるモンのラインを決める」の回。

 

少年マンガに掲載されるギャグ漫画ってこうあるべきだな!という気持ちの良い展開。ギャグに風刺が効いていてインテリジェンスがチラ見え。

 

こどもが読むマンガ、というより、こどもマンガを取り上げられて悔しい思いをして、そのまま読んでる大人向け、、、のマンガなんだけどさあ。

 

俗物天使のランちゃんが主張する「指導者が娯楽の影響に負けてちゃいけないでしょうが」というの、飲んでいた第3のビールをそっと置いてアツい握手を求めるレベルです。

 

ところでこの回についてSNSで「コンテンツを優先して他人が困っているのにコンテンツを表に出し過ぎる見苦しい大人の言い訳みたことある」(意訳)という感想を見て。

 

そのきもちは分かる。「表現を表に出すことに躍起になっている人の言い分」ではあって、ちょっと嫌だなって思う。

 

でもそのバランスは極めてシビアで、1970年代における「過度に道徳的な価値観からのマンガ追放運動」というものがあり、サメ映画とかバカアクションとか、そういうくだらないものが憎まれ委縮した時代っていうのが確かにあったので。

 

くだらないコンテンツもほどほど、すてきコンテンツもほどほどじゃあないといけないんです。ここはねー、バランスですよね。ずっとずっと、読者側の議論が必要なところです(うっかりと哲学的な話題)

 

コミックビーム2023年11月号

 

 

 

いやあコミックビームはいいなあ。サブカルが詰まっておる。

ストーリものが多くてまとまった感想の言えないマンガが多いので、言えるものだけ。

 

『地獄の三十路録』


三十路になっても処女なのは嫌だ。。男をゲットしてみたい、堅物女の地獄録。

女が降りなきゃいけないステージーー!!やめろやめろ早く降りろそんなところから!ほらモラハラ男が勘違いして寄ってきたじゃん〜〜(地獄!)

 

『魔女とわたし』(読み切り)


リアリティラインの高い絵で、高校に転入してきた魔女(白人種日本語ネイティブ少女)と人の顔色を伺う少女の邂逅を描く。

 

過渡期かなあと思う。私のこどもの世代は保育園から多国籍他人種の子達が仲良く遊んでるので、今がキツい時じゃないかな

 

『幻滅カメラ』


そのカメラで撮られた者は性欲がなくなる?ゲイで卑屈なカメラマンがそれで撮るよう依頼されたのは、既婚の姉と、同性の恋人。

 

SNSなどでとにかくウケの悪い鳥トマト作品。隠しようのない毒で、今号では家父長制をメタメタに。


カメラマンに立ち塞がるモデルの父。いや俺は素材提供だけで展示は姉なんですけど「うるさい女がアートなどできるわけがない(!)貴様のような無職者(!!)が幼稚でバカな娘(!!!)を唆したんだろう(!!!!)」。偏見と傲慢のミルフィーユ!こういうの見せてくれるの貴重だと思うのよ。

 

『そして彼女は贄となる』(読み切り)

 

「有名人の彼女って?」プライベートを歌われてしまう女性のメンタルは追い詰められて。短いホラー風味で、「有名人」側のメンタルが消えてしまったのは少し残念。

 

『終末、きみと』


ゾンビ化が静かに進行する世界で、人間(だと思われる)けれどあの人を食べたいと願う気持ちと、食べられたいと願ってしまう2人の分かち難さ。

 

2人が同性であることで生じる恋愛の困難と、食欲に直結してしまっている感情の混線。恋はややこしい。

 

ほかにも書きたいものはあるんだけどこの辺で・・・!暴力もフェミニズムも構造破壊もあるサブカルチャー漫画誌です。『下北沢バックヤードストーリー』、古着店ドリームマンガで西島大介ギャグがあったのは笑った。サブカル生まれサブカル育ち!

 

コミック乱ツインズ2023年11月号

 


『カムヤライド』

 

4世紀、大和。

古墳時代の戦乱を生きるヤマトタケルは、熊襲討伐の際に熊襲の神「国津神」と対峙する。神の圧倒的な力に押されていた時、モンコと名乗る男が背後に立った。埴輪を媒介して奇妙な全身鎧をまとったモンコは「神遂人(カムヤライド)」として「人と神の境界線を閉じる」。

 

古墳時代特撮ヒーロー」!

 

エリア51』で「ハードボイルド妖怪退治」を描いた久正人が挑むのは日本成立前の古代を舞台にした特撮ヒーローもの。


前作で洋の東西問わず妖怪を出してきた博識は本作でも健在。さらに戦隊モノや仮面ライダーでキャラデザインを手がけるデザイン力はマンガでも一目瞭然の「ホンモノ」さ。

 

古代なのに野球やったりするユルユル歴史ファンタジー。かつ、女性的キャラのマッチョさやプラスサイズ表象など見ていて自由。


古語の使い方などもいちいちカッコよく、『コミック乱ツインズ』という「お江戸雑誌」において歴史ものだから好き勝手やっていいんだろ!!と縦横無尽に遊んでいる感じにニヤつきます。

 

あと、あのー。エロ方向の話ですが、この作家さん「触手」なんですね。ドゥーユーアンダスタン触手?(特殊めなエロの話をしてます)

試し読み↓

https://comic.pixiv.net/viewer/stories/46104

 

もっこり半兵衛』

 

 

江戸の夜鷹(路上に立つ最下層娼婦)を夜回りで見守るのは月並半兵衛。スケベで子持ちで腕が立つ。ついたあだ名は「もっこり半兵衛」。その正体は大老柳沢吉保に見染められた荒巻藩の脱藩剣術指南役、別名「人斬り半兵衛」であったッ。。

 

江戸とエロとバイオレンスとセクハラ!


人斬り半兵衛が剣を一閃、バラリ泣き別れる上半身と下半身。直後の下品なギャグに1ページ内の寒暖差がすごくて結露しそう。

 

狂四郎2030』などで見せた強烈な社会批判も健在。この巻では「連座」、江戸における放火犯は家族もろとも死罪である見せしめ刑に苦言を呈しています。

 

私は自分の生活がマッチョともセクハラとも縁のない生活をしていて、だからこういうハイパーマッチョ作品を手元に置いてたまに見るというのは、私なりの現実逃避なんだろうなと思ってる。

 

暴力が構造に組み込まれてる作品で、暴力を否定していないし、その分悪人に暴力を思い切り振るう。フェア、だと思う。この世界に私はいたくはないんだけど。

 

人権をズタズタに冒涜した遠い国の国防相の発言に割とヨロヨロしていて、コンテンツの中でだけ、暴力に最大の暴力で返すところが見たかった。本当にやったらダメだから。それは分かってるからさ。。

 

羆嵐

 

 

熊害といえば『羆嵐』!
矢口高雄氏がコミカライズしているのでそちらをご紹介。

 

日本史上最悪の熊害、三毛別熊害事件を小説化した同名小説のコミカライズ。

 

小さな集落の無惨な熊害のち、熊ハンターが集結し凶悪な熊を追い詰める怒涛の追い込みがアツい。

女こどもが惨殺される惨たらしいシーンもありつつ、さすが『釣りキチ三平』の矢口氏らしい美しい北海道の自然も見もの。
Kindle Unlimitedに含まれるのでご興味あればどーぞ。

 

「205/第1回ジャンプTOON AWARD」  

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へええーーー!!

 

ジャンプラで縦読みコミックス、いわゆる「ウェブトゥーン」の募集をしたんだね。

 

この作品は身長が205センチある気の優しい男のコメディ。縦読みというカタチに身長差ギャグはすごく効いてるし、


読み方の実験それだけじゃなくて、心情についてもきちんと掘り下げててイイな。高身長について観察眼があるというか。ベッドで寝る時は斜めになる(一番大きいの買ってもまっすぐ寝るとちょっとはみ出すんだろうね)

 

審査員は韓国ウェブトゥーンの会社RED7のイ・ソンヒョク氏。氏はもともとヤングガンガンの編集を10年務めた日本マンガ出身の人なよう。私は縦読みコミックスのこと何も知らないんだけど、業界が華やぐのは大賛成だよーもっとやれ!

 

「モンキートリック」

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縄文時代に起こった殺人事件。ろくに検証もされずに死刑にされようとするウジャクを救ったのは流れ者ワユタ。超古代密室殺人事件を推理せよ!

 

これ、ジャンプ少年漫画ファンタジーとしてすごいイイなって思って。

 

ミステリなんだけも、


でも、本質としては、「人ひとり死ぬことを深く考えない、突き詰めないで流していくことってダメじゃない?」っていう提案で。

 

すげーーーーーつまんねー重箱の隅突きしちゃえば、そら色々ありますよ。この時代だと「個」の概念まだ無いだろうとか、結婚概念は9世紀くらいからだそうなんで不倫とか貞操とかの概念もないよねとか(娼婦って商売は結婚制度で「性の独占」が起きたから成立したそうですby『性差の日本史』)

 

でもそーゆー話じゃなくて、

 

人1人死んでも「群れの掟」ではなんか流せちゃう、でもそうじゃないよね、掟とかじゃなくその人個人の痛みや辛さ、尊厳があるよね

 

そういうめちゃくちゃ現代的な道徳を、古代舞台だからこそ語れていて、

 

少年マンガに載って欲しいのはこーゆーマンガじゃんか。少年マンガくらいこんな正義を語って欲しい。

 

(でも縄文時代に興味が出たら正史研究にGO!)(これも大切)

 

このお話って
「周囲がいい、社会がいいって言ってる話を、【真実じゃねーだろ】って掘り返す話」
で。

今、求められてる道徳ですよホントに。「IAEAがいいって言ってるから汚染水流します」じゃねーんだよ数値をちゃんと出せって話してんだ

 



『天津水市「がご」撲滅だより がごはん』

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第3話 みいちゃんのひみつ

 

ここは天津水(あまつみず)市。異形の怪異【がご】に対抗するため、がご撲滅班通称「がごはん」が・・・厳正なるくじ引きで、一般人女性4人選ばれた!だいじょうぶか天津水市!


ゆるくて可愛い、時々毒の地域密着ゴーストバスターズ

 

カワイイ!女の子たちも敵も可愛くて双方ムカつく!


どこの地方かはわからないけど、特産品は玉ねぎ。畑で食い荒らされる玉ねぎとディスられる農家。もうそんなにいうなら食べなくていいです!

 

穏やかでゆる〜い空気感(たまに血が出る)。ちょっとビールとか飲みながら見るのにぴったりの一息つける系コンテンツ。

 

「[第146話]チェンソーマン 第二部」

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チェンソーマン「教会」で「合同結婚式」の発言。

 

集英社、やる気かなあ。これ公開して、電話殺到とかしないかな。新聞社とかはそういう行動があるようだけど。解散命令出されたって別に教会がなくなるわけではないので。

 

露悪でエグい大衆マンガなんて、このくらい汚いことやってナンボでしょ。巨悪も繊細な涙も全て消費するんでしょう。


電話が殺到して文言差し替えになったら、それはそれでまたTwitterが騒いでくれるしね。

 

文春の魂ですね。露悪で汚くて、でも他のお行儀のいいところが手を出せないところに出せちゃうっていうの。

 

古い話になるけど、『電車男』のドラマでも「壺売り」ってミームがあって(詐欺で騙される、という文脈で使われた)
あと、『きのう何食べた?』で、シロさんの性指向を受け入れられないお母さんが「壺の宗教」に入ってたって話は有名だよね。

その意識が個人に向けた差別的な偏見になることは避けなければいけないんだけど、

本邦政府、「事実を消す」のがめちゃくちゃにお得意なので。
サブカルに組み込まれてしまえば消せない。その威力を支持する。

 



『ねたあとに』

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フジモトマサル/原作・長嶋有

 

長嶋有小説のコミカライズプロジェクト(この作品はすでに既刊のもの)。21人の漫画クリエイターが漫画に再構成する小説の妙。

 

『ねたあとに』は「コモローさん」の別荘に招かれた久呂子さんの楽しくて不思議な寓話のようなお話。

 

版画のような強弱のある線とフリーハンドの枠線、ほっこりのんびりした時間の楽しめる作品です。作中の遊び、今度やってみたい。

 

「わたしたちは無痛恋愛がしたい 〜鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん〜 | 第24話 男らしさの呪い」

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私は『私たちは無痛恋愛がしたい』が好きじゃない。

それは私が「教え導きますコンテンツ」に基本的に反感を持つアウトローだからでございます。

 

落ちこぼれも教え導いてくれるのかい?失せな!(銃を構える)

 

の魂で40年やってきて、あと実際それなりのリテラシーを携えてきていると思っています。一人でコツコツ本を読むアウトロー

 

でも違うんだよね、私が客じゃないんだよね。

 

DVで深い穴にハマって悩んでいる人は、マンガをきっかけに自分が受けていることがDVだって気づくかもしれないし、それへの対処法や答えがパッケージされてたらすごく救われる。私が鼻につくところは、誰かが求めてるところ。

 

なのでここに広報。DV、また男性学も含むので男性にもおすすめです(ややこしい紹介の仕方)

 

瀧波ユカリ氏はすごく学んでらっしゃると思う。

 

私も精神・経済DVで離婚歴があるので、困ってる時に選択肢がなくなる感じはとてもよくわかります。というかDVの悪質なところは「お前に選択肢は無いんだ」と思い込ませるところで、それを提示するマンガはすごく必要。

 

今の私が元気で健康で家庭も楽しいから、そういうコンテンツがミスマッチになっているけど

 

「夫に服従する必要なんかゼロ」、

 

それさえもっと広く知られていればこのマンガは「人の選択肢ってそれだけなの?」ってフェーズで論じられるもので(私はそこにんっ・・・って思ってるので)、

 

でも今、社会はそうじゃないから。

 



【新連載】余談と怪談

viewer.heros-web.com

 

イラストレーター、クリハラタカシのエッセイ時々怪談。

 

柔らかな絵の雑談に時々おや?と思う程度のちっちゃな怪談が混じるスタイル。

 

おしゃべり、ですよね。だれかとおしゃべりをしてて、ふっと混ざる違和感のある話。

 

怪談って本来こんな感じのもので、なんだかリアルに感じます。これが積み重なって、ああいつものあれねーなんて思ってて、帰る電車の中で「あれ?あの話、けっこうマズくない?」って思い出したら美味しい、みたいな。

 


ハンドシェイク(読み切り)

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上界、と、下界。
暴力、管理社会、攫われた妹。
圧倒的な視覚情報で綴られるアドベンチャー

 

うむっ。
話はよくわからん!


『映像研には手を出すな!』大童澄人氏のアシスタントを経て今回デビュー。建物と、そのカメラアングル・効果がはちゃめちゃに上手いんだけど、話はよくわからん(2度目)。

 

これほど美しく魅せる背景画であれば、少年マンガっぽいカタルシスは捨てて視覚情報の冒険に連れてって欲しい気もしまする。

 

絵を見るだけでも楽しいです。まだデビューなのでお話は今後に期待ですな(お話をしない、という方向とかもいいんじゃないかなとか)

 



DOGA

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貴族の子息と、貧困の娘。


2人は全く違うのに、2人とも海を見たことがない。砂漠に沈み、大地の少ない星で知らないものを見に行く2人の旅路。

 

フランスの出版社ki-oon(キューン)と制作。作者初の商業長期連載になります。
人が住める土地の少ない舞台はアドベンチャーのムードに溢れ、知らない世界への憧れに満ちています。


まずはお話の初めなのでワクワクするのが仕事みたいな感じで、あとは女の子がプラスサイズなのが良きですね!正直、貧困による肥満(貧困は人を太らせる)のような感じがしてて悲しいですが、金をゲットしてそのお腹をさらに膨らませてくれ!行け行けプラスサイズ!!

 

「なんにもない、なんでもない」(読み切り)

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なんとなく、でもなにかが辛い。


不登校の花凛は、公園のベンチで「じいちゃん」と話すのが日課になっていた。


すれ違う好意と悪意、ある日じいちゃんは言った、「死体を見に行くか?」


いいしれない不安と向き合うジュブナイル

 

これは雰囲気のある読み切りですねー。
ちょっと「少年マンガのトレンドパターン」と違って、お母さんは優しいし悪い奴がずっと普通に悪い。

 

死を物見遊山で見ることで生を得る、あまり最近のジュブナイルに見なくなったアプローチ。昔はこどもが死体を探しに行く話ってよく聞いたなーと思います。

 

なので懐かしい、甘酸っぱい気持ちにさせてくれたんで良いなあと思ったんですけど

 

ちょっといい子過ぎやしないか、というのも感想。

 

死体を見て日常にヒビを入れてもらって、行き着いた先が目的のないお勉強ってのは上品すぎやしないか。またかたーーいつまらーん世界に自分から戻ってどーする。


あとじいちゃんがいわゆる「マジカルニグロ」の扱いで気になりました。ジジイ自我の剥奪と、主人公に都合のいいファンタジー妖精としての役割を担うキャラクター。じいちゃんは何を想ってあのベンチに毎日いたんだろう。じいちゃんはなんであのベンチにいて、なんで見知らぬこどもと一緒にいたんだろう。じいちゃん側の動機の消滅。

 

見えない圧力(合わない感じで優しい母親も、ハブってくる友達も、粗暴なクラスメイトも)が嫌で、たぶん花凛はあの生活嫌いなんだよねアレは。息苦しいんだよね。

死体を見て感じいるものがあったなら、タナトス・・・死への興味や美学、また死にも近い超非日常、、、私はあんまりここに結びつけるのは好きじゃないけど、まあ端的にセックスとか、そーゆー、今まで花凛の息を詰めていたものの反対だったから良かったって話だと思うんだ。おじいちゃんに安心したのもそれこそ生ではなく死の匂いがするからじゃあないかね。

なんで戻っちゃうのと。

せっかくゲットした死の実感なのに、またその・・・矛盾した話だけど、花凛を「殺す」場所に戻っちゃったらあなた、本当に死んじゃうよって。

死を見てスカッとしたこどもくらい、学校に戻さないでユルく見守ってあげてほしーなーなんて。

この結末について「◯◯にしたら良かったのに」とか言い出したら批評の域を脱しちゃうと思うので言わないけど、いやーガッコなんか行かずにロマサガ2とかずーっとさせてあげてえよ(言ってる!)

 

 

ここんとこ読んだ漫画感想2023/9/30~2023/10/10(28件)

その時期読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。

 

リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。

 

本日は28件の漫画の感想です。

 

 

『透明男と人間女〜そのうち夫婦になるふたり〜』4巻

 

 

 

この世界はありとあらゆる種族が暮らしている。
それは個性であり、全ては配慮によって社会的障害を取り除かれる。
全盲の女性、夜香さんと透明人間透乃眼さんの「普通」のラブストーリー。

 

障害の社会モデル、ということばがあります。
ざっくりいうと障害者を障害者たらしめているのは「社会」であり、適切な理解と配慮、そしてデバイスやデザインがあれば「普通の人」になるという考え方です。

厳密には調べて欲しいのですが、『透明男と人間女』は社会モデル障害を排除した世界です。全盲の夜香さんはこの世界で少々の齟齬はありつつも単なる「違い」として毎日を生きています。

 

今回は透明人間の透乃眼さんのコンプレックスと葛藤。


この作品、現実世界の写し鏡としても読めますけど、真摯に「透明人間が一般社会にいたらどういう悩みを抱えるか?」と思考するSFでもあって、透乃眼さんの傷は、「姿が見えないことで信頼関係を築けなかった過去」。
もちろん、全盲の夜香さんには何の障害にもなりません。その悩みの概念にピンとこないレベルで。

 

個の特性が個にフィットして互いを助ける。すごく面白いと思います。

 

他にも「毛皮の模様がド派手な獣人で、性格的にもアネゴ系で革ジャンがむちゃくちゃ似合うし服屋で勧められるのはモノトーンかそれを打ち消す「カッコイイ系」なんだけど、ホントのホントは小花柄のふわーっとしたワンピースを着たい」の写螺子さんの話もすごくいいの。着ていいんだヨ〜〜〜!!

「ファンタジー世界の亜人は社会とどう適応するのか」って思考実験がすごいのと、でもそれは結局は現実社会の要素を取り込んでいるので、ここから現実社会を読み込んだり、展開させることはできると思うのです。

 

ンッ、だけど〜〜〜〜

 

すっごい恋愛モノでさあ、もう、えっ手エ握っちゃいなよ!握らないの!?もういいじゃんそんなのお互い好きなんだからアッ照れるの〜〜〜!?みたいなムズムズする恋模様でして、普段そういうの読まないのでスマホ持ってジタバタゴロゴロしてるわけ!私のようなポップな血と暴力のマンガ読んでる奴は!!

かわいい恋愛ものと多様性の自由さを味わいたい方にぜひおすすめデス。

 



『恋とか夢とかてんてんてん』4話

shuro.world

 

なんにもない、29歳。
絵を描いても反応ないし仕事はバイト。


だから大阪に住むことにした。片思いのあの人がSNSで住んでるって言ってたから。
紙面が伸びて縮んで弾む恋心。心のイマジネーションが溢れる恋物語

 

ンッ痛いッ。。。

 

カイちゃんの恋心が相変わらずコマの中で踊る。好きな気持ちが泡になって爆ぜる。。。

が故に、おばさんはその恋は勧められんよ。。

でもまあ、そういう恋をすることってある、

 

あるネ。。

 

イタタな恋は無邪気で心配。でもじゃあ誰が止めらるということもない。ものすごく傷つかないように願ってる。。。あと高円寺くんは呪っとくからね!

 

『よなきごや・上』

 

 

 

今夜も寝ないなあ。。


辛い妊婦状態を終えてお腹も軽くなって楽なはずなのに、赤ちゃんが可愛く思えない。寝れないから。

抱っこ紐で夜に街を彷徨うと「よなきごや」という看板があった。すっぴんのボサボサ髪でそこを開けると・・・

夜に集うお母さんたちの三者三様のアンソロジー

 

懐かしい。。


私は5年前ッスね、この辛さ。今、隣にながーく大きくなったこどもが寝てます。ぐっすりと。
ウチは年子だったので、寝られない期間は約1年でしたねえ・・・

ここからは私こと、バイオレンス漫画読みの視点なんですけど

拷問器具で「異端のフォーク」ってのがあるそうで。とんがった鉄のフォークをベルトに取り付けて置くと、寝そうになったら胸に突き刺さるから寝られない。「寝かせない拷問」なんですね。3日くらいやると精神に異常をきたすそうです。

 

【赤ちゃんは寝なくて大変だけど可愛いから頑張れます】

 





 

産後うつってことばありますけどオ、ホルモンがどうとか言いますけどオ、私個人としては「ただ単に睡眠を削りに削られて普通に鬱になった」だと思ってますけど!!

お話自体は未来のある方向に着地するので爽やかに読めます。ブチギレてるのは思い出し怒り。

 

ワカコ酒コミックゼノン2023年11月号

 

 

OLワカコの趣味は一人酒。うまいつまみと酒のマリアージュを求めて、今日もカウンターに1人座る。

 

ワンテーマで21巻。ひたすら一人酒4ページでずっとここまでやってきました。

 

酒を楽しむというテーマが故に季節感とか店の雰囲気なんかも反映される作品なんですけど(暑い時には枝豆だしオシャレな店ならカプレーゼでしょ)、

 

今回は「廃業してしまうお店で飲む」。

 

このお店はご高齢で、、のような雰囲気ですけど、インボイス実施の10/1に読むと「いやたぶんインボイスもあるよね。。」と嫌あな味わいが広がります。

こういう小さなお店を薙ぎ倒すのがインボイスなので。。特にニュースはないので実施はされたんでしょうね、でも撤回してもらいましょうそうしましょう。

 

ワカコ酒
「仕事が忙しくてクサクサした時の飲み」とか「バーゲンの帰りの飲み」とか、日常(つまり社会)が酒や料理のチョイスに影響してくるマンガで、

 

作者の新久氏は居酒屋取材ガッツリ、当然のように東京ウォーカーにも連載を持ってた(今もだっけかな?そこはあいまい)人で、小規模居酒屋の現状はよくわかってると思います。だから今回の回なのかなあと。

 

私の話で言うと、私は都合10年ほど小規模飲食店広告の業界で飯を食わせてもらった人間で、

 

小さいお店の大変さってホントあって、インボイスなんてこういう店を全部潰すくらいしかメリットないと思います(それがメリットなのかなあ。。)

 

カナリア

 

TwitterKindle Unlimitedで読めるよ!って書いてあったからなんだろう?と思ってダウンロードしたら、1ページ駄洒落が25ページ続いて終わった。読むねるねるねるねみたいな気持ち(どんな?)。ダジャレがないと眠れない夜にお勧め。そんな夜あるだろう?(特殊な感想)

 

『これからのラーメンの話』※閲覧注意

 

 

「女ってエロい」の対象を追い詰めて追い詰めて、さらに商業利用でしゃぶり尽くすめちゃくちゃな皮肉のマンガです。

 

一連を漫画にされた時のタイトルにしぶうううい顔になります。ニーズも良く汲んでるし、キャッチー。これは「売れる」だろうなって・・・思いますよ。それに苦い顔です。

 

暴力的、です。キツい表現なんで勧めはしません。


でも、現実への批判は十分に含んでいると思います。いろんな方面への批判。

 

※なお、作者の背川氏はヒップホップ漫画も描いていたそうで。ポップカルチャーへの皮肉への信頼感が厚いですな


キャッチャー・イン・ザ・ライム』 背川 昇 監修:般若/R−指定(Creepy Nuts) | ビッグコミックBROS.NET(ビッグコミックブロス)|小学館 

bigcomicbros.net

 

長嶋有小説コミカライズ企画第二弾


カラスヤサトシ「夕子ちゃんの近道」
島田虎之介「猛スピードで母は」

※すでに公開期間は終了

 

長嶋有の小説をコミカライズし、Webアクション上で公開。

『夕子ちゃんの近道』はノスタルジックなスペースとエキセントリックな姉妹との日々を描く。


4コマ形式、なによりカラスヤサトシマンガのカラスヤサトシそのまんまの造形主人公で、見知った人はまるでカラスヤサトシが物語に現れたようで楽しい。もちろん、知らない人には少しほろりとした、あり得る人たちのあり得る日々の物語として。

 

『猛スピードで母は』は白黒のパキッと効いたイラストレーションのようなマンガ。デザインが綺麗でみていても楽しい。


小学生の聡くんと、カッコいいお母さん。お母さんの好きな人。1970年代かな、「お母さん枠でカッコいい」はすごく珍しかったと思う。イラストのかっこよさと共に、シワのある顔でなおステキなお母さんが良き。

 

今回公開の作品は11年前に公開されているもの。今後発表になる完全新作も期待。

 



『殺し屋はスマートウォッチに逆らえない』

comic-walker.com

 

奴は殺し屋、死神X。奴がくればバーは3分後には死体置き場(モルグ)になるのさーーー

 

でも死神、スマートウォッチのエクササイズに夢中。コッテリ風味ギャグ漫画。

 

1話1話がショートなので読みやすいです。

 

あの、情報量が多いです。ムッチリと。

 

キャラのボディがムッチリなのも良いですし、アクションエフェクトが「飛び回る本人が明確に記されるタイプ」と言いますか、ここで撃ってこちらでさばいて、みたいのがアクション表示(結果)だけではなく本人もちゃんと描かれるスタイルで、誌面がミチっとしてます。すごく好きなタイプ。

 

こどものころのギャグマンガを思い出します・・・私がこどものころなんで岡田あーみんとか奇面組とかですけども。そういう味わいがありますねえ・・・(お茶をすする)。ギャグマンガが本気でくだらなくて良かった時代の。

 

「[第73話]ラーメン赤猫」 

shonenjumpplus.com

ラーメン赤猫は猫がやってるラーメン屋。


接客、製麺、ご近所づきあい、弁護士との打ち合わせ、祭りの参加と地域店舗との関係・・・ってこれガチの小規模飲食店ものじゃん!


渡る世間は猫ばかり。信頼関係とリアリティのラーメン屋漫画。

 

今回は「小規模店舗で病人が出たよ!」の回。


小さい店では心配なことですが、信頼感でラーメン赤猫はクリア〜!ああ、職場ってこうあってほしい。普段の仕事は6割で抑えて有事の際に助け合う、最高。

 



『スクールバック』第8話 嫌いな人

www.sunday-webry.com

 

伏見さんは、どこかの高校の用務員さん。程よく、適度な距離で、ちょっと話せる人。
大人という存在に無意識に傷つけられるこどもが、我慢していたことを少し話せる人。
10代のこどもに視点を強く置いたヒューマンドラマ。

 

今回は。。痛いなあ。。


笑顔の人が信じられない子。笑顔の大人は本当に怒ってくれない、だってお母さんは「私のことを思って怒ってくれる」・・・

母親から依存され、言う事を聞いてしまう子のある日のこと。

 

スクールバックでは、傷ついたこどもたちへの答えは出ません。伏見さんは「適度な距離を取る人」で、解決まで踏み込む物語ではないからです。

 

私は、こどもの痛みを知るための漫画だと思ってるし、この漫画を読んで痛みに配慮したり、あるいは「過去のこどもだった自分」の痛みに気づくための漫画だと思ってます。

 

こうやって物語にされて客観視することで、「あれっ?昔私がされてたことって??」「私がやっていたことって?」って気づくことあるんですよ。

 

少し気をつけながら読んでみると、そういう心情に気づくことがあるかもしれません。

物語は爽やかです。伏見さんは深入りをしない人だから。そんな語り部は、私はアリだと思ってます。

もちろん、今こどもをやってる人にも良いと思います。

「そんな程度のことで」を物語の中で掬い上げてもらっているのをみるのは、「あ、私これ言っていいんだ」ってなったりすると思うので。

 



『パリッコの都酒伝説ファイル』

reader.futabasha.co.jp

 

今をときめく居酒屋ライター、パリッコ。彼を主役に据えた飲み歩き漫画・・・だけどオ、それだとちょっと薄いな〜なんかいい味つけない?ん〜オカルト?オカルト混ぜてみようか?というような編集会議が想像される(憶測)、オカルト×飲み歩きギャグ漫画。

 

安居酒屋の飲み会に咲く、ものすごく強引なオカルト小噺。まさに泥酔ノリで展開するこじつけ全開の都「酒」伝説は、軽く飲みながら読むのにぴったり。

 

私はライターパリッコさんが大好きで、パリッコ提唱「酒蒸し法(フライパンになんでもいいからタンパク質を放り込んでなみなみ酒を注いで酒が蒸発するまで蒸す)」は本当にお世話になっています。ハイパー簡単でどんな肉でも基準値を超えてくるんだヨ。

 

現実のパリッコさんはまんがのような怪しげな風貌ではないけど、確かに「◯◯法」とか言い始める感じはこの漫画の根っこを作ってる・・・・のか?

 

テキトーなオカルト風味をアハハって読んでると、ちょっとイイかも?安居酒屋テクが入り込んできて侮れない漫画です。なに?安居酒屋テクって(自分で言っといて)

 

酒蒸し法についての詳細はこちら!みんな大好きデイリーポータルZ

平成最後のキッチン革命「酒蒸し法」

dailyportalz.jp

 

『まんがで分かるまんがの描き方』ヤングエース2023年11月号

 

 

 

マンガ指導マンガで「政治」に踏み込む!講師は安心信頼の大塚英志ッッ!!!

 

このシリーズ、私は前から読んでいて。手塚治虫由来の漫画術やウェブトゥーンなど、漫画原作・編集者でもある大塚英志が講義する信頼の漫画だったんですが、ここへきてなんと政治をやるとな。

 

大塚英志は『多重人格サイコ』などで知られる漫画原作者ですが、同時に柳田國男直系の民俗学&サブカル&プロパガンダ研究者でもあります。私の批評は北村紗衣と大塚英志のミックスでできてる。

 

「萌え漫画をフェミニズムから守ることだけが表現の自由にすり替わってしまう」
「それがゆえ、表現が政治に支配されている時代を学ばなければいけない」

 

私の日々のマンガ紹介トゥートの主張そのまんまと思ってください(当然、私が大塚英志に倣っているのです)

 

今回は大正末期からの「まんがの描き方」についての講義。まんがの描き方が学べるようになり、広告に転用されるようになり、そしてその後に待ち受けていたのは戦争プロパガンダへの展開。

 

マンガが政治的じゃない・・・・って、それ、「誰が」「いつ」言い出した?

 


『解体屋ゲン』週刊漫画TIMES 2023年10/13号

 

 

極小建設業を営むゲンさんは、海外で「ダイナマイト解体」を学んできたビル爆破解体のプロ。ゼネコン、一人親方、海外企業も巻き込むゲンさんのアツい想いが業界を動かす。
現実の業者にも取材する、将来を見据える建設業界お仕事マンガ。

 

今回はゲンさんの会社の事務、有華さんが営業に成功(小さいので事務も営業に行かねばならないのだ。。)。良さそうな案件なんだけど、どうも性的な視線を感じて。。

 

マンガについては、マンガらしいファンタジー撃退(ゲンさん世界のドラえもん、大手ゼネコン研究所の谷が面白解決)。

 

ゲンさん世界は理想主義に陥らない生々しさがあって、現実問題やばいセクハラなんだけどそれが罷り通っている業界であることが描写される。それは隠しても仕方ないので。。。

 

私は自分が女性であることを踏まえて、営業行ったら性的に求められるの絶対嫌、あってはならない、と思うんだけど、じゃあそれを描かないのは、、それはずるいと思うので。実際に「在る」ものを。フェアな漫画だと思います。

 

 

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』

 

やーー面白かった!!


ハイクオリティ画質・映画クオリティのゲーム画面再現・過不足ない脚本、演出で超良質のエンタメ。こどもが見てる最中ずっと走り回ってましたよ(レンタルBlu-ray)。

 

お母さんとしましてはマリオ世界の「ピーチの不在」がスゴイよかったなーって。

 

ピーチといえば囚われ、囚われといえばピーチという、マリオ生誕以後ずっと常識としてあった「囚われの姫概念」。

 

本作のピーチはスターウォーズ1.2.3のヨーダみたいに動くし、為政者として大変立派な人物。クッパにデカいジャベリン(か?)を突きつける姿、推せる!

 

では「クッパから何かを取り戻す」が物語の9割であるマリオ世界で何を取り戻すかといえば囚われたルイージ。マリオと再会したらクルクル抱っこでチューするの!?(しなかった)って感じでお姫様!!

 

でもルイージクッパにヒゲ引っ張られてマリオのことを喋っちゃう「主人公の足を引っ張る仲間」ムーブ、そしてなにより最後にマリオと背中合わせでクッパをやっつける「バディみ」もあり、この作品に姫はいませんでした!主体性100%!良き!

 

さて、私が勝手に言い出した「囚われの姫」概念ですが、これは「客体化され、物語の都合で勝者のトロフィー奪い合われる姫」「主体性は無く自ら脱出や抵抗を試みない姫」だと捉えていて、

 

本作のピーチはもうぜんっぜんそんなことない、マリオの指南役だしコングの国にゴリゴリ交渉に行くしバチボコバトルするしメインバトルキャラだし

 

ルイージにしてものちのちの成長とマリオと背中合わせの激アツバディ(マリオがあんなに修行してできるようになった動きがスタールイージは一発でできるようになった、というのは言ってくれるな・・・!)は物語初期の「囚われの姫」のみで収まるものでは無く

 

当然マリオ、コング、キノピオ諸々も意思と行動があり

 

イイじゃん・・・!主体性の濃縮果汁還元じゃん。

 

なんか話の最初の頃にマリオのファミリーが出てきてマリオ兄弟超バカにされてて「ファミリーに認められてなくてボクは」みたいな愚痴をコングにするんだけど、

 

こんなにみんなキラキラしてんのに、あんな意地悪なファミリーに認められる必要ある?ゴッドファーザー2でもファミリーを維持するのは難しいって言ってたし解散だよ解散!ファミリーなら黙ってると思うなよ!

 

モーニング2023年45号

 


『箱庭モンスター〜少女漫画家、ときどき紙袋〜』

少女漫画編集者のお仕事とは!?
超ハードワーク&マッチョ環境の編集部から一転、少女漫画編集部に転属になった臼井。
うつ寸前だったのでこれで楽になる!と思いきや、少女漫画編集部は「売れない」という魔窟で・・・!?

売れない。。。。のか。。。。

少女漫画には全然詳しくない私なので、そんなにも売れてない売れてないと言われてアワアワになってしまっている。そうか。。そんなに。。

今回は新米編集、臼井が大御所漫画家に以下三つのうちどれかを選んで、と言わなくちゃいけなくて悩む回。

 

・今の作品のままなら原稿料半額
・大ヒット前作の続きものを描く
異世界転生ものを描く

 

んんんんんんんんんんんそうなのオ〜?

私のようなバイオレンス&デストロイな漫画読みは、異世界転生もの全然読んでない。『ライドンキング』しか読んでない(アレはまた話が違う)

でも確かに雑誌として「異世界転生専門」の雑誌が多数あることも、男性向け女性向け別に独立して成立してることも確認している。

私としては、自分は読まないけど異世界転生というフォーマットに則った軽く読めるコンテンツ、というものが悪いとは思ってないけど、そればっかりだと寂しいわね、というのも本音。

 

『だんドーン』

『ハコヅメ』作者の描く、江戸幕末警察黎明期。


薩摩藩斉彬侯の下、西郷隆盛と共に暗躍した川路 聖謨を主人公にコミカルに描く。

 

これ、めちゃくちゃ面白いんですよねえ。


何って、ツッコミがとにかくドライで現代的で現実的で、すごく好みなんです。

歴史というものを編む時、歴史家の中には強く聖性を付与する人がいます。

卑弥呼はその時、感動に打ち震えた」みたいなやつです。

私なんて者は「いや現代と価値観相当違うし感動に?打ち震える?え〜?そうなる~?」みたいに思うわけですよ。

 

で、『だんドーン』はそれがコメディかつ現実的なので、

「うん、この作戦ムリだね!広げた風呂敷できるだけちーっちゃく畳む方向で逃げきろっか!」
みたいな、現代の倫理観で納得できる物語が付与されるわけです。


聖性を付与するとは


「本作戦は失敗してはおらず、前向きな縮小で未来への期待を託すものである」
みたいなキラキラすり替えっすね。嘘つけ失敗してんだろ!

 

それが合ってるかと言えばそりゃ分かんないんですけど・・・少なくとも警察黎明期というアンタッチャブルにキラキラ聖性を付与されるよりぜんっぜん楽しい。楽しいというか、、この素材でキラキラされたら俺のプロパガンダレーダーが火を吹くわけで(ごにゃごにゃ。。)

 

「[#7]スパイダーマン:オクトパスガール」

shonenjumpplus.com

 

スパイダーマンの敵、ドクターオクトパスが日本の中学生の脳に同居した!?いじめられっ子の乙葉とオクトパス、案外いいコンビ。オクトパスの科学力でまちの悪いやつをやっつけろ!

 

清く正しい少年漫画!


と言いつつ、登場キャラクターがいまのところオクトパス以外全員少女ということにはたと気付いたりして。男の子は少し残念だったりしないだろうかな〜

 

今回はオクトパスの敵として「オクトパスとスパイダーマンの遺伝子ミックス」という敵が登場。スパイダーマンってこう、化学の匂いがするですね。スパイダーマン自体も「放射能を浴びた蜘蛛に咬まれる」という化学の匂いがして、オカルトとか宇宙生物とかじゃないんだなあというのは素朴な感想です。アメコミには詳しくないのだぜ。

 



『あのこが好きだった本』

www.comicnettai.com

嘉山諒は本を読む。あんまり読まなかったけど最近読む。
本を介して人と会う。会うし、スルーっと肌も重ねる。
ゆるい空気の漂う、本と人との関わりの漫画。

 

私、このマンガ好きなんですよ。ブンガク的堕落、えっちじゃん・・・!と思って。

でも最新話でちょっと風向きが変わって、あれ?これって・・・ブンガク的堕落でえっちだ!

 

何話まで続くのかな。やるせなくて気だるくて哀しくて、毎日育児でヘルシーに過ごしている私はこんな話も読みたくなります。

 

ヤングマガジン2023年45号

 


『一日外出録ハンチョウ』

死と金のデスゲームの名作『カイジ』のスピンオフは、奴隷生活を送ってるはずの地下組織のおじさんたちのほのぼのライフ!?「地下組織からの1日だけの外出」という設定で、おじさんたちが個性豊かに独身中年男性を謳歌。みんなでパフェを食べたりマンガ投稿に挑戦したり。ウキウキの中年休日!

 

今回は「接客の悪い店でみんなでごはん」の回。

 

ハンチョウの何がいいって、「過程」があるんですよ。


今、飲食店ランキングサイトなどで「結果」だけが見られちゃう時代に、そこで起こったことにワーワー言いながら折り合いをつけるおじさんたち。


今回は「この店の接客の悪さを漫才に例えるとな、」という、若い頃漫才番組を浴びるほど観た世代の例えを披露し、かなりマズイ接客(あれ私なら怒ってるな)もなんとなくクリアーします。あとご飯自体は美味しかったらしい。

 

そこに起こっているドラマをきちんと描くことで、「星3.5」のつまらなさから出ていける。そんなささやかなおじさんたちのプロテスト(そんなデカい話ではない)

 



「にわか雨のてがみ」(読み切り)

to-ti.in

 

突然の、雨。
友人と一緒にいた「ぼく」は、その雨が自分たちの上にしか降っていないこと、そして友人がとても楽しげなことに気がついた。
少し不思議で愉快なショート漫画。

 

擬ネコチャン(擬人化のネコチャン)がそっと踏み込んだアニミズムの世界。擬ネコチャンのイラストの情報量の少なさと森のミチミチした書き込みの多さに時空が歪む。ああこれは、これは水木しげるの系譜。面白うて少し不気味。のち、愉快。

 



『レタイトナイト』8話

michikusacomics.jp

 

ビシテ大陸のザイ地域は海に挟まれ、4つの国がある。北方のレタイトナイトに暮らす少年カンカンは、作物の取れる量が減り、すこし苦しい時代に生きていた。魔物と魔法、そして経済。ファンタジー世界でも「生きて」いく物語。

 

今回は「この世界の収入&ざっくり生活用品の物価紹介」があって楽C!


わたくし、設定集で一日楽しめるサイドの人間なものですから、こういうのめっちゃ嬉しいわけ。


ふむふむ、普段着は「3銀貨」かー!日本円だといくらくらいかな。

 

しかし服の値段は紡績技術&工業化がどれだけ発達しているかで変わる、
そもそも通貨(クレジット)で生活全てを回すのではなくある程度は縁故でインフラを担える社会構造であれば現金はそんなにいらなくて価値が低いのかも、
また魔法で服の修理ができるなら価格が釣り上がることもなさそうだウフフフフフ(本当に楽しい)

 

以前、作者の香山哲氏から「今作の魔法は、熱量保存の法則が効いている環境を想定してます」という提示があって、

無から有を生み出すわけじゃない、魔法とは言え労働技術に近いものかなと思ってて、では素材そのものの価値は結構高いんじゃないかなウフフフフ(楽しい)

 

あと、異世界日替わり定食メニューも楽しいです。異国めしだ〜

 

「[第1話]対世界用魔法少女つばめ」(新連載)

shonenjumpplus.com

 

今、空には「ハート」がある。
ハートで埋め尽くされた空で、ひとつでもハートが割れると超ヤバい。強い「思念」が降り注ぎ、人は狂い、殺し合う。


燕は高校2年生。両親はもう死んでしまったけど、泪(るい)ちゃんと心心(ここ)ちゃんがいればそれでいい。だから魔法少女になって人を守りたい!でも魔法少女ってどうなるの?


kawaiiとゾンビ様の群衆が押し寄せるダークファンタジー

 

ハート意匠とタイポグラフィアートの力の強いグラフィック。マンガとして違和感のあるデザインは常に刺激的。

 

当然このテーマとグラフィックでいくなら『魔法少女まどか⭐︎マギカ』を意識していないとはいえず、まどマギ以降、億単位で作られたフォロワー作品(盛ったけど同人作品まで含めたらあながち冗談でもないんじゃないか)との差別化はどんな感じでいくのかしら。

 

「フォロワー作品が上回る」ことは全然あるので注視したい。

 

個人的にはちょっと飽きはあるけど、飽き・・・つまり定番化してこその「こすり」もあると思うので。

 


「[#009]ぼくと海彼女」

shonenjumpplus.com

 

 

妖しげで寂しげで、妙に惹かれてしまう女(ひと)。
少年を惑わす女性というのは魅力的ですな・・・!

今回はオカルティックな伝承と、そして「体験した人間の口承」。過去に惑わされ囚われた男というのもイイですねウフフフフ(好きなテーマなので喜んでる)

 

FEEL YOUNG2023年10月号

 


発達障害な私たち』

発達障害な私たちは、いつも心ここにあら’s・・・
2005年、「発達障害者支援法」により日本社会に認識された発達障害はその認知件数が急増中。当事者である漫画クリエイターと編集者コンビが、生活者としての発達障害者に取材しまくるゆるめでマジメな発達障害者レポ漫画(医師による監修付き)!

 

オモコロ・恐山編最終回。


わたくしも当事者として首がもげるほど頷いて少しもげました(ウソをつきました)。恐山氏、タイプとして近い。

 

「食べ物系取材をするので食べてはいけない」の前に思いっきり食べてきてしまう恐山氏。本人の分析曰く「◯◯系取材」として取材だけが頭に残っているため腹ごしらえをするパターン、「食べ物系」として頭に残っているためお腹減ったーなんか食べよ!と食べてしまうパターン、後半の「食べてきてはいけない」がすっぽ抜けるパターンに分解。


明晰で合理的な分析と言語化、そして結果のトンチキぶりとの乖離。

 

高度な言語能力とスーパーウッカリドッキリ思考能力の合わせ技。こういう人「も」いる。たまにしかいないのでネットの有名人になってるわけで、他の発達障害者がみんなこんな片輪のスーパーカーみたいな人でないことは言及しておきます、ハイ。ネット面白有名人。

 

「[第18話]ハンサムマストダイ」

  

shonenjumpplus.com

 

ハンサムマストダイ、おふざけギャグ漫画だけど素材が男性アイドルなので時節柄どーーーしても現実の某アイドル企業とオーバーラップしてしまうんだけど、

 

「悪逆の限りを尽くした挙げ句に道徳を説いてくる悪のアイドル企業社長」に対しての反論が「寝ぼけてんじゃねー」なのはすげー正しいと思いました。正解でしょう。逆にそれ以外無いっすよね。。

 



『女神の石』

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作家、長嶋有の小説のコミカライズ企画。
イラストレータ100%ORANGEによる不穏で不条理なポストアポカリプスショートSF。

 

これは絵の力!
退廃的で未来のない物語を再構築するのは絵本も手がける可愛らしい画風の100%ORANGE氏。

 

寓話的ではない、酷薄でウンザリするような日々、
カワイイ絵なのにマッチョやダメ人間、博識そうな男性全員のクソっぷりが丸出しになる。こんな生活イヤだ〜

 

これは世界観に合った絵柄の作家だとむしろ「・・・で?」ってなる作品だと思うので編集者のベストセレクト。新たな価値。

 

『大好きな妻だった』

comic-action.com

 


武田登竜門氏と言えば、Twitterで話題になったこの読み切りもご紹介。

嘘が下手で口の悪い妻とぼく。妻に癌が見つかって、妻は一変した。死が確定した妻の最後の抵抗。

 

↓ネタバレしているんで良ければ読んできてから、コピペでテキストなどにはっつけてどうぞ!

 

千香の行動、あれは自分を守るためだよなあっていうのは思ってて。

だって、最後にお金残してたじゃないですか。てことは、死後バレることは確定なんですよ。

生きてる間だけ嫌われたい、

それってたぶん、「素のままの自分」を嫌いになってほしくないってことだったんだろうなって。

昴に嫌われるためってのも絶対あったろうけども、演技で徹底的にイヤな奴を演じて、「そっち」を嫌ってくれれば、素の自分は守られるから。

どうせ嫌われる、だったら演じた方を嫌ってっていう。昴を信用していない。

これは死を目前にした愛の試し合いで、千香は幼いけどそれを責めるには死はあまりにも不可避だし、そして昴は千香に勝利したし。

というわけでいいマンガだな、とは思うんですけど、、、

私個人として、がん患者家族だったことがありまして。
心情ではなくカネのことで、吐き気がするよーな絶望的な未来を待ち受けた過去があって、目をぎゅうっとつぶっちゃう作品です。
残高が減った昴の気持ちが痛いほどわかるので、手放しで泣けないンす。これは個人の感想。本来は愛の試し合いのマンガなので、良い話だと思います。

 

「[第74話]ラーメン赤猫」

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猫のラーメン屋は今日もオープン。


麺打ち、接客、人事、経営、地区の店との付き合いに顧問弁護士とのやりとり・・・これガチの小規模経営自営業じゃん!渡る世間は猫ばかり!あったか人情ラーメン屋噺(猫情?)

 

今回は店の穏やか担当・虎のクリシュナちゃんが「法的人格試験」を受ける回。

 

ラーメン赤猫はすごく真摯に「猫がラーメン屋やったら?」を突き詰めていて、そういう・・・そういう仕組みでやってるんだ!?と面白く受け止めています。試験をクリアすると人と同等の資格を得られるんだな、この国の猫は。

試験のクリアで人権が「付与」されるのって憲法的にどうなんだ?と思いつつ、じゃあ生まれたまんまの猫に人権与えられるのかよと(喋れない猫もいるようで)、
これはアニマルライツの話?いや、人権付与の話?

 

ネコチャンキャワイイとか言ってると思わぬ袋小路に。いえファンタジーなんですが!猫はラーメンの湯切りはしないので!!

 

「[第124話]ダンダダン」  

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超作画オカルトバトルラブコメ(あまりにプリミティブに凄いのであらすじが短い)

 

今回は新キャラの過去の掘り下げどす。ダンダダンはこういうキャラごとの物語(ナラティブ)掘り下げも本当にうまくてね。。

 

それにしても今回、「キッチンに背中を向けて立ち楕円コマに料理を描くことで「本来料理に携わる年齢じゃない子が料理をしていることがすぐわかる」という表現になってるんだけど、この楕円コマの使い方見たことないなあ・・.アメコミとかではこういうのあるのかな?面白いな。

 

ところで今回の新キャラ「委員長」(もうこう言っちゃっていいだろう、そういう類型のキャラクターだ)が幼い頃から父と死別し祖母のケアをするヤングケアラーだった過去を説明セリフなしで絵のみで見せていく(うまい。。)んだけど、

 

ヤングケアラーって社会保障からこぼれた「社会からの虐待」という側面があると思うんですが、埼玉の虐待禁止条例だと「大人(おばあちゃん)が見守ってるから虐待ではない」ってことになるんでしょうか。それともこれも通報案件なんですかね。違う意味で保護されて欲しいけど。※こちらの条例、2023/10/10現在で取り下げの予定(完全にやめるとは言ってない)だそうですね。ちょっと無理がありすぎなのでこのままで4649。

 

「[第七話]歴史メンタリスト」

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負け戦の武将に惹かれ院で研究をやっている司馬朔太郎。その「歴史的負け人生」への共感性を買われ、ハードな人生でメンタルをやられた偉人たちの「メンタリスト」に抜擢される!偉人伝のシニカルな捉え直しを軽いギャグに。原作はトゲトゲ漫画の旗手、鳥トマト氏(でもこの漫画はトゲなんて一切ないよ)

 

今回は吉田松陰先生がやってきて、Z世代に「結局何もできてなくね?」という冷たい声を浴びせられます。そーゆーことを言うな。

 

私は大学生なので、その研究者の功績が直接何かに作用しなくても次の研究の礎になることを知っています。漫画の中でもきちんと改心して吉田松陰先生から漢語を習う(これは本当に素晴らしいことだぞ)という結末になってよかったです。幕末の漢語は日本の文化の礎なのだよ

 

この漫画、歴史人物がふにゃふにゃ飲んだくれながら愚痴る感じと思いきや、ちょいちょい「歴史研究」について納得することがあるので侮れなく。朔太郎が学会で発表する回とか、研究者の矜持も見せてくるのでこちらも気が引き締まります。勉強しよ。

 

 

 

 

今日読んだ漫画感想2023/9/25~9/29(28件)

その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。

 

リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。

 

本日は28件の漫画の感想です。

 

 

アフタヌーン2023年11月号』

もう読みごたえがあり過ぎて、本誌中大量のレビューをしてしまいました。私は今、マンガ雑誌というものを楽しんでいる・・・!

 

 


『ブルーピリオド』

長い夏が終わる。
八雲の物語と、それを見続けた八虎の出力。その入賞。

すごく良いな、と思うの、アートのアウトプットが物語の果ての最後でしかなく、

その前の物語と、それに対する思考錯誤、

この過程が、過程こそが美術であると、

私なんかは思ってしまう。美大生の、批評畑の人間の手遊び。

 

プ〜ねこ

ハイ!ブルーピリオドの圧の後に、おしゃれで可愛いネコもので中和!!ナンセンス&カワイイ!優勝!!

でもそれでもアフタ味、はちゃめちゃにオシャレで洒脱。んもう!オシャレ成分で溺れそう!

 

『カオスゲーム』

現代舞台のバトルファンジーなんだけど。。。。。

いえ、どうしようもないのですが、絵がどーみても安野モヨコリスペクトなのです。

それは全然悪くない。悪くないけど、安野モヨコが気合い入れてバトルファンジーやってるようで戸惑いが発生。

今号では筋肉お嬢様が登場。縦ロール上腕二頭筋!でも安野モヨコ!ぼくの視界が混乱する!

 

『メダリスト』


陽の光が眩しい!

「賞を取っても1位(自分の功績)を卑下するとその分悪口言われた時のダメージが少ない」という真っ当なメッセージが眩しい!スポーツの良い部分!

 

 

『スキップとローファー』

 

志摩くんの脳内人間関係図「人>友達>恋人の順に関係性が上がる」図が光る。
ナオちゃんの思い出も光る。ところでいわゆる雑誌の枠外にある「人物紹介」で、ナオちゃんのことトランスとも女装ともガッチリ定義しないのイイですね、「自分のライフスタイルを貫いて」って書いてあるのいいですね

 

ヴィンランド・サガ


今、単行本を初めから読み直していて、雑誌の段階ではもう27巻相当になっているのでチビのトルフィンがこんなに大きくなって。。という感慨が。。
支配と愛について、そして忌憚なく出てくる殺人のバランスがとても真に迫るし、とても良い漫画ですね。。あと、最新の話のあたりには開拓団の中で暮らすトランス?のキャラクターもいてそこもいいです。小集団の中では、性別など個性の一部にしかすぎない。

 

 

青野くんに触りたいから死にたい


青野くんの罪に触れるキーになる回。
誰が悪いのか、誰も悪くないなら、じゃあ誰が悪いのか。
母親と子の、息の詰まるような罵り合い。。

 

ダーウィン事変』


才能ある科学者でありながら、トップクラスの研究所で買われた資質は「子宮」。
女性差別への決定的な皮肉をたっぷりと秘めた生命倫理の話は、さらに倫理を踏み越えた場所へ向かう。
緊迫する物語、もう直ぐ終盤か。

 

宝石の国


私は途中参入なこともあるんだけど、実は何もわかっていません。その抽象的なグラフィックと禅問答のような続く問い。みていて嫌な気持ちではないです。

 

『山田君のざわめく時間』


KAT-TUNの中丸雄一が描く不気味な世界。

それはいい。。んだけど。。。。。

。。。。

ちょっとね、世間のニュース的に、シンプルすんなりと読めなくてね。。。

中丸さんが悪いわけじゃないが、事務所ぐるみの性犯罪についてのノイズがデカすぎる。いったん休止して、いろんなことがキッチリしてからまた描いて欲しい気がするんだけども。。

 

『アンダー3』


やはりアフタヌーンの最後はこれだ!日本のmangaの中でもトップレベルの下品。色々考えた頭の中が下品で洗い流される。今回も忌憚なく下品でした。

 

『フラジャイル』は作者急病休載ですね、お大事に~。。。

 

 

「君と宇宙を歩くために | 第4話 重力っていいな」

comic-days.com

 

宇野君はASD
小林君はADHD(あと多分学習障害)。
ふたりの歩む道はまるで宇宙を歩くように不安だけど、理解をして、工夫をして、自分なりのテザー(命綱)を作れば、一緒に歩いていくこともできる。発達障害のふたりの友情と過ごし方。

 

天文学部で星を見に行きます!
小林君が「靴紐を結ぶためにちょっと置いた備品を忘れて自己嫌悪」という典型的なADHDパターンを展開(いや忘れるんだ)。私のような開き直ったおばさんは「小林くん!忘れろ!そんなものはアレだ星だ、星の回りが悪いんだ!!」とアワアワ応援。

また、マインドワンダリングによる素っ頓狂なパニックも披露。うう小林君、みんなが受け止めてくれる環境なのすごくいいね!

 

今回は天文学部らしく惑星や恒星の豆知識が豊富で、知らないことの前では誰もが等しくなる。それどころか小林君の発想は豊かで、こんな感じの人が「面白い人枠」で存在。。したい。

 

ところで私事ですが旧姓がまんま「小林」のため感情移入度が半端じゃないです。小林君は友達とのやりとりにメールを使ってる(LINEじゃないんだ)ので自分の高校時代に思いを馳せる。こういう細かいとこが気になるのはADHD特性。

 

※このメール(ラインじゃない)、及びデバイス、及び制服の着崩し方などから、SNSで「これは平成の話なのでは?」という指摘があり。あ、これガラケーか!(制服の着崩し、とかに全くもってうとく・・・)

はッ、と気づいてガラケー時代の発達障害事情を調べてみたら、2005年に発達障害支援法が成立。それ以前は「発達障害」ということばすらなかったようで(!!!)ガラケーを使っている時代であれば、1990年代後半~2000年代前半というところでしょう。

 

以前、連載初期に↓のような感想ブログを書いたんですが、その時は時代が平成だって気づいてなくて。

でも、宇野君たちの時代が平成なら、彼らはほんとうに、まったく、一ミリも、「発達障害」という概念すら持たずに過ごしているということ・・・

現代よりさらに「まるで宇宙を歩くように」歩いている物語なんだ・・・ということに気が付いて、更に前のめりになるなどしました。がんばれ宇野君、小林君・・・!!!

 

ima-nakayama.hatenadiary.com

 

発達障害かと思ったら統合失調症の一部でした』

 

 



こどもの頃から体のだるさ、感情の起伏の激しさなどに悩まされていた漫画クリエイター遠藤一同。友人が発達障害の診断を受け服薬を始めて「楽になった」ということばを頼りに、自分も精神科を受診してみて判明したのが本タイトル!

 

日本で「発達障害」という語が法的に定められたのが2004年だそうで(ごめんここちょっとまだ詳しくはないんだけど!)、

 

最近、発達障害を扱うコンテンツなども増えてきたけど、逆にこういう「発達障害じゃない」ケースも出てくる頃合いなんだな、と過渡期であることを感じます。

 

本書の中で語られるこどものころのエピソードや状態は、聞くだけだと発達障害だと思ってしまう(ADHD当事者が読んでも)んだけど、症状として同じ状態でも、薬に違いが出るのできちんとした医師に診断されてなにより!と他人事ながら安堵。

 

精神科医のQ&Aも豊富についているので、「発達障害精神疾患?」と疑ったら手に取ってみてもいいかも。

 

印象に残ったのは「通院してくる8~9割の人が発達障害でも精神疾患でもなくただ内気なだけ」という精神科の見解。内気なだけで通院まで考えるほどツライ社会・・・がどうかと思う・・・とか思うんだけども。

 

「[第144話]チェンソーマン 第二部」

shonenjumpplus.com

 

うむいい感じ!!!

 

【正しいことが何もない】!!!

 

何もないよ!道徳も倫理も合理性も。ハッキリ言って勧めません。

 

誰が一番醜いかのチキンレース。下へ下へ、カッコ悪い方に競うろくでもないバカの戦い。

チェンソに望んでるのはこういうことだし、これでいいんですよこれで(16歳からのアプリなんですジャンプラは一応)

 

で、最後に言う「チェンソーマンに正義はない」、完全同意だ。

 

露悪やろうとしてやってるのだから、批判されて嫌われてナンボ。水族館デートなんかやってる場合じゃないんだよこのマンガで!

 

「[第85話]株式会社マジルミエ」

shonenjumpplus.com

 

魔法少女×ベンチャー


世の中に「怪異」と呼ばれる災害があり、
それを駆除する「魔法少女」業務を生業とする企業が乱立する世界。


業界再編・規制緩和により尊敬する社長が失踪した桜木カナは、魔法少女、そしてベンチャー企業社長として社長の行方を求めて業界に食い込もうとする!

 

うん、「魔法少女×ベンチャー」って自分で勢いよく書いといてなんだけど、このマンガ最近「レジスタンス」みもありまして。。地下組織。

 

いや、カナちはちゃんと勉強して免許取って会社立ち上げた普通のベンチャー社長なんだけども、この世界どうも「魔法少女」が民営化したのがつい最近(20年前まで国営だったらしい)ので、そこに対抗しようとするとなんか日本の1970年台のような雰囲気を帯びてきた。嫌いじゃない、むしろ好きな方・・・!

 



『みどりちゃん、あのね』(新連載)

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日本の地方のどこか。
静は、野球が好きな少女。
おじいちゃんの一周忌、静の大好きな「みどりちゃん」がやってくる。
みどりちゃんは都会的でかっこよくて、すごく強い。
法要の席で呑んだくれている男性陣の中に、1人で突っ込んでった。

 

広い「長男の家」の玄関に散らばる無数の靴。
法要。
男と女の役割分担。

 

私は最近、よくこのテーマのマンガを見る。
それはここ最近でようやく描けるようになったテーマだし、
だからこそ描いても描いても飽き足らない、100人作家がいれば100人が異なる描き方になる、日本の宿痾だと思う。


海外テーマもいいんだけども!このテーマ、俺たちが描かなくて(読まなくて)どーする!!

 

私は建売住宅の子でこの辺への恨みがあんまりないんだけど、それでも断片は知ってんの。逆に、都市の子でもこの感情はわかるってくらいには根深いアレっす。

 

 

【※1日経った後、TwitterマストドンなどSNSを巡って・・・】

 

男性と思われる読者が「これは俺の家の話だ」と刺さっているのを結構見る。Twitterとかでも。

 

実は私への刺さりは割と弱く(新興住宅地の子なので)(でも嬉しかったよ!?)

多分そうなんだろうと思う、男性だってアレ、嫌なんだろうなって。

 

『シン・エヴァンゲリオン』で、碇ゲンドウが「親戚付き合いが嫌だった」って言って(本当に言ったんだよ!)

 

女性から見ると、ただダラダラしてるだけに見えてそれは超ムカつくんだけど、

中にいる男性の中でも居心地の悪さを感じる人もいるよね!

 

まあそらそうだよね、ナチュラルボーン「女ア〜、ちゃきちゃき料理出せガハハ〜!」みたいな人、あるいは馴染みすぎて風景としてスルーしてしまう人じゃないと居心地も悪いよねそれは。

 

みどりちゃんの体型や年齢、静が野球をやってることについてことさら言及するレビューは私は見なくて。ここで「少女が野球をすることは珍しい」とかみどりちゃんについて自虐系体型こすりとかあったらほんとに嫌だなと思ったけど。そんなことなかった。

 

こういう作品が描かれて、そのオーディエンスもちゃんと、現状を正しく認識しながら未来に希望を持つことを喜ぶ感じ、

 

これは私、日本のマンガファンやってて良かったなって思うよ。

 

『梅花の想い人』

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クリムト狩野派か。絵師「おく」が描く日本の古風景。

 

金ベースの極彩色、華やかな色のフルカラー漫画に見惚れる。


今回は『竜と琵琶法師』の民話を新解釈し漫画化。いやあ〜〜目が幸せだから見てくれッ。。前後編読めるようになってるから通しで見てくれ(↑のリンクは前編から)ッ。

琵琶法師(盲人)の視点で、視力がないときは白黒に、視力を得てからは目にも鮮やかな色合いのラッシュが始まる。後編の歌シーンもお見事ッ。いやあいいな。。こういうのを見ていたいッ。。

 



『クイックオバケの動かない漫画(仮)』

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クイックオバケとは作者のペンネーム。


元々SNSで「キャラクターのみが動くマンガ」というジャンルでブレイク。その作者が描く動かないマンガ。

 

ちょっとここは偏って、「マンガの読みやすさ」って視点で見たいんですが、

 

私は「LLマンガ」というものに興味があって、それはざっくり言うと「マンガの文脈に慣れていない人でも読める漫画」なんですね。

 

マンガって、難しい文芸なんですよ。コマ割りとか難しいでしょ。読み慣れてない人には何が何だかって感じだと思います。

 

んで、この『クイックオバケの動かない漫画(仮)』は、1コマ〜3コマのページが続く読みやすいものだなあと。


4コママンガで固定されてるより動きがあって、でも少なくて変形コマがないから読みやすい。面白い形態だなと。


それで、ちょっぴり偏屈な「ほしいもの」の話をしてるの、いいなって。読みやすさはすごくて、気持ちはちょっと捻くれてる。面白いね。

 

ところで、Twitterアカウントがある方はこちらもどうぞ。『クイックオバケのうごくマンガ』、この漫画のものですね。GIFでキャラだけ動くマンガ。こんな表現も面白いっすね!↓

 



『林檎の国のジョナ』

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加藤アリスは25歳。
アパレル勤務だったけど、コンプレックスはその丸い体。

職場で「華奢見え」を勧められ、同居する母親からは体型を謗られ。

勢いで逃げてきた林檎の国(おばあちゃん家)で、訛りの強い人と出会う。

 

地方男子とのラブラブ物語『自転車屋さんの高橋くん』松虫あられ氏新作、月刊!スピリッツでの新連載は、ルッキズムに悩む女性の物語。

 

プラスサイズを主役で真っ向から扱ったのは「カンナさーん!」だっただろうか。いまだに日本はプラスサイズ主人公が少ない気がする(脇役には増えてきた印象だけど)。

 

さて、私の話する〜?


私は堂々たるLLサイズのおばさんで、今はそれに満足している。牧歌的な見た目でフェミニズムを語りたい。生理の話をオヤツ的にしたい。

 

でも、25歳くらいの女性がその辺を振り切るの、それはまだ難しいことも承知するよ。私だってダイエットをしていた。炭水化物めちゃくちゃ抜いていた(危ないから真似するな!)。

 

この辺のつらみに風穴を開ける創作であってほしい。実際、標準以外の体型の方が体調がいい人はいる(私は小太り状態だと全然風邪ひかない)。自分に合った体型でハッピーに過ごす人に嬉しいマンガになるといいな。

 


『奸臣スムバト』(新連載)

 

 

13世紀半ば。


ジョージア王国とモンゴル、アルメニア
躍動する歴史を生きる1人の男の物語が紡がれる。

 

『ダンピアの美味しい冒険』を完結させたトマトスープ氏による歴史新連載!
歴史的な信頼はめちゃくちゃに厚いクリエイターなので本を片手に読み進めたいー

また、時を同じく13世紀、かつモンゴルを舞台にした連載『天幕のジャードゥーガル』と比較しても楽しいかもしれない。侵略する国とされる国を同じ作家が同時期に連載しているのはどのような解釈になるのかな?

 

百姓貴族

 

ご存知!大人気漫画クリエイターの実家で巻き起こる農業エッセイ漫画!

 

今回はクマの出現に怯える荒川農園。危ない!足跡のサイズやコーンの葉についた泥などでクマの巨大さを押し測り震えます。人類が自然を生かしてるんじゃない、自然がたまたま人を殺してないだけや

 

ところで今回、クマサイズ比較のために荒川先生が身長171センチ靴サイズ25センチということが判明(多少のフェイクは入れてるだろうけど)。さすが肉体派。実存としての漫画家(テキトー言ってる)

 

 

 

『逢いたくて、島耕作

 

 

Z世代サラリーマン(島耕作大好き)、1980年代島耕作世界に転生す!ミッションは課長時代の小悪党、今野の未来を救うこと!あと島耕作にも逢いたい!

 

今回で遂に「シマコニスタ」というファンダムネームを使い始めた『逢いたくて、島耕作』。

 

私は前からずっと「島ニスト」という称号を使っていたけど、公式(に認められた商業マンガ)はスペイン語アレンジで、こちらは英語風か・・・!

 

ところで多分こーゆーこと言ってんの『逢いたくて、島耕作』と私だけだから安心してほしい。みんなそんなに島耕作でまとまってない。そもそもそういうマンガじゃない。

 

きのう何食べた?

 

今回は台風がくるよ!台風とごはんといえば「台風コロッケ」だよね、ということでシロさんがカボチャコロッケを作ります。

 

カボチャコロッケ自体はすごい美味しそうだし、雨で閉じ込められた日の娯楽としてのコロッケ作りは楽しそうなんだけど、この「台風コロッケ」ミーム、、一体どこで流行ったんだっけ。

 

私は流行り全てに疎いので(コロナ除く)、あまりピンとこないんだけど、Wikipedia

 

> 飲食店のインターネット検索サービスぐるなびは、2013年(平成25年)8〜10月に発生した台風とぐるなび検索の関係を比較し、コロッケの検索数が増えたと折れ線グラフで発表した

 

「台風コロッケ」(2023年4月16日 (日) 11:36  UTCの版)『ウィキペディア日本語版』。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%B0%E9%A2%A8%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%B1

 

と、ちゃんとどこかでは流行っていたようです。

 

今日はコロッケにしようかなあ(影響されやすい)(台風じゃないのに)

 

『フールナイト』7巻

 

厚い雲が陽を遮り100年。


経済は衰え格差が広がり、酸素が足りない世界。


その二つを一挙に解消するのが公的なセーフティネット「転花」。人間がゆっくり2年後には植物になる手術で、志願者には1000万円。


手取り9万円の月給で工場勤務をするトーシローは、母の医療費が払えず転花に志願。すると、地に植物になった転花者の声が聞こえるようになった。

 

悪夢の管理社会創作を「ディストピア」と呼ぶ。
悪夢の崩壊社会創作を「アポカリプス」と呼ぶ。

 

であればフールナイトはその二つを合わせたものだ。


上層部の管理は生きているのに、下層への福祉として提案されるのは必ず死に至り、生き残った人間のインフラにされる「転花」。

それでも。

トーシローの貧困は我々が想像のしうるもので、貧困だけれど小学校に通うことや友人を頼ることができた。

しかしこの巻で明らかになる本作最大の敵「アイヴィー」の過去、保護者不在の子ども同士での暮らしの中、字が読めない、医療アクセスが分からないため2人で生きながら死んでいたこどもたち。

トーシローの所属する転花院(公的組織)を潰そうとする暴力的勢力の「自分に正義を感じるか?」に【私】がYESと言えない。

 



『モトカ霊探偵リョウ』(新連載)

 

 

 

内田春菊新連載!


夜寝るベッドの背後に誰かの気配、ああ彼氏か、、、
いや、彼氏、先日亡くなったぞ・・・?

 

キャバ嬢主人公と亡くなったカレシのポップなオカルトミステリに・・・

 

なるかと思ったら、最初の1話目は内田春菊謹製のセックスシーンでございました。

 

相変わらず手の表現がグンバツにおエロくございます。エロみあふるる探偵ものでやるんでしょうかね。エッセイじゃない内田春菊を見たい方はぜひどうぞ。

 

「[第八話]サチ録~サチの黙示録~」

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サチはクソガキ!


でも人類神判の代表に選ばれちゃった。天使と悪魔がやってきて、サチの良い子ポイントを観測。ポイント次第で人類滅亡!でもサチはクソガキなのだ!天使と悪魔を振り回すクソガキコメディ。

 

今回は思い出ノートを書く回。相変わらずの無軌道ぶりで天使と悪魔が大慌てするわ、なんかほっこりイイ話も混ざるわで楽しいです。妙にシェイクスピアを引用するサチのインテリジェンスが光る。

 

それにしても作画の話したいんですけど、

 

今、インボイスもあって漫画アシスタントの話がありますよね、

 

サチ録、背景が相当白いんですよ。

 

これで!!!!イイやろがい!!!!

 

ギャグ漫画ってこともあるけど、確かジャンプ(週刊連載)のマンガってこのくらいの背景だった気がするよ?ていうかそうじゃないと無理じゃん。そんなおもてなしよりクリエイターのできる範囲でやってくれればそれでイイよ。レジの人は客がいない時は座っててくれてイイよ(別な社会問題の話をぶちこむ)

 

「念の為良い方がいい」みたいなので潰れて欲しくない、、これでイイんだヨオ〜

 


『クロエマ』

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仲良くなくても一緒にいれますーー


黒江は洋館に住まうお金持ち。
江間は色々あって無宿無職の貧乏人。

 

なんやかんやで一緒に住むことになったふたりは、時にミステリを追い、時にパフェを食べ、そして「関係性」を哲学する。

 

逃げるは恥だが役に立つ海野つなみが描く女性2人の平均体温なパートナーシップ。


いやあ、ADHDおれ、こういう理屈づくのパートナーシップめちゃくちゃ憧れるんですよね。。逃げ恥の時もそうだったんだけど理屈で生活を作れるの、感情労働がなくていいなあって。

 

こーゆー共感性の低いヒューマンのみならず、ライトなミステリと占いの取り合わせ、美しいパフェ、迷いのない綺麗な線画は見てて心地良いかなと。

 

あと、このマンガ、基本的に吹き出しが真円なんですよ。歪みのない丸の連続。こういう幾何学的モチーフや合理で展開する理論と、インスタ映えするオシャレが同居するの、海野つなみ氏の不思議なところです。

 



『透明男と人間女~そのうち夫婦になるふたり~』

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アッ
そのっ

 

ちょっと、これ、全話無料やってる(2023/9/29現在)んで良ければ見て、見て欲しいんだけど、

 

ファンタジー世界において多種族の多様性を包括した時、主人公の全盲女性もまた社会的障害を取り除かれノーコンプレックスで生活している・・・・

 

イッチャイチャのラッブラブ漫画・・・・!!

 

ど正面から多様性の実現なのでいつでも勧めたいのだけど、あまりに私の好みのラブ模様なので逆に照れて勧められない!でも本当に良いから!私は「点字タイプライター」というデバイスをこの漫画で初めて知りました。

 

いや私は、「もう付き合ってる2人がイチャイチャする」ラブ物語が大好きでねえ。。いやそれはいい。

 

多様性の実現を果たした世界の思考のタタキとして本当に良いと思うんです。こんな世界があったらいいな。

 

あと、透明人間の透乃目さんの自己主張は「スーツ」なので、スーツスキーさんにもおすすめ。イギリス紳士風スーツを着こなす透明人間カレシがスマートにエスコートするラブ話だよッイイでしょッ(照れ隠しのためやや強めに言う)!!

 

掲載は『ようきなやつら』(朝鮮人虐殺や入管などを真摯にカリカチュアした短編集)と同じWebアクション。でもめっちゃかわいいラブラブなんです〜

 

ここんとこ読んだ漫画感想2023/9/21~9/24(12件)

その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。

 

リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。

 

本日は12件の漫画の感想です。

 

 


『逢いたくて、島耕作

 

 

 

課長島耕作を「聖典」と崇めるZ世代サラリーマン、課長島耕作世界へ転生す・・・!

ミッションは、聖典内で非業の死を遂げる小悪党を救い、かつ不整合なく島耕作を課長すること。あと島耕作にも逢いたい!

 

全島ニスト歓喜島耕作世界への信頼厚き島世界堪能漫画。別名「課長島考察」(たぶん私しか言ってない)

 

今回の回でついに「島耕作世界とは「女性がいつの間にか助けてくれて事件解決」が島世界の黄金パターンであることに言及。

 

これ言っちゃって良かったのか・・・!島耕作は社内政治とセックス(女性関係)で社内を動かすだけのことしてないな、と常々思ってて、そのため「誰がいつ上役にゴルフに誘われたか」「抱いた女性がたまたまプロジェクトに影響力のある人だった」を少し視点を変えて延々繰り返していると思っていたけど、これ指摘して良かったんだ

この漫画で指摘してOKということは、やっぱり島ニストはみんなそう思ってたんだなウンウン

 

全国各地に散らばる島ニストの気持ちが一つになった回だった。「島耕作、改めて都合いいよな。。」

 



「まめで四角でやわらかで」

to-ti.in

 

やさしくつましく美しい、江戸の暮らし「ファンタジー」。


温かな線と滑らかな動き、見ていて心地の良い古の世界。

 

素敵なお話なんだけど、一応これは注意が必要だなと思う。

 

たとえば江戸時代において、既婚女性に一般的な化粧であったお歯黒は、この作品には描かれない。

 

また、ごま油を売る回なんかもあるけど江戸の油事情は魚油がメインで(だから灯籠の油を化け猫が舐める)、植物油を普段使いの油のイメージで見ちゃいけなそうだな、とか。

 

この作品では明るく爽やかに描かれる江戸だけど、現実にはもっと臭くて暗いはず。

それを踏まえて「一番綺麗な江戸」として楽しむのはとてもいいけど、これがそのまんまだと思っちゃいけないなっていうのはある。

 

私も江戸には詳しくないので、ちょいちょい出てくるディテールの真贋がつけられない。髪型とかは本当なんだろうし。

 

ちょっと重箱の隅をつつきすぎ・・・とは自分でも思うものの、この漫画は「生活の良さ」をポイントに置いていると思うので、ではそれをウォッシュしていることはちゃんと頭のすみに置いて読まないとな、というのは。


ファンタジーとして読んで、あとあと資料とかで補正できると最高ですよね。

マンガとしてはささやかであたたかでいいお話ばかりだと思います。

 



カッパ少年紅介〜昭和妖怪恋物語

ddnavi.com


カッパでBLで昭和!むっちむちカッパたちの恋模様は百花繚乱〜❤️


かわいいカッパたち、恋をしがちで性別気にしながち。どんな組み合わせもオールオッケー、ここは自由な恋愛区(なお恋に興味のないカッコいいアネキ河童も最高だよ)(デカ女子好き?)


それにしても設定が1970年代くらいに見えて、ベルボトムジーンズや「ツィギー」というほめことばなど、ノスタルジーを超えた過去の文化が新鮮。50年前だからねえ


それにしてもフリーセックス文化のあった時代のこの明るさ、ジャパンからいつの間に失われたんでしょうね?とちょっと首をひねる。そういうカルチャーは確かにあったはずなのにねえ。

 

「肉の女王は愛の月(読み切り)

shonenjumpplus.com

 

鞘田美愛は冷めた中学生。
慈島月子は明るい中学生。
月子の手には、謎の月型のアザがある。
そして、最近出回る失踪者増加のニュース。

 

これ、最初に超褒めるんですけど、絵が見づらいんです!!(これで褒めてる)

 

すごくうまいんだけど、線の強弱が独特で、今のマンガの主流な線画に慣れた目にすごく新鮮。主要キャラ2人、1人が黒髪・1人が白髪(マンガ上)と読みやすさへの配慮は確かにあるし、キャラデザも今っぽいし、なんだけど怪異の表現とか背景とキャラが同化してて、いやあ私は好みです。

 

絵の力が強いんだなあ

 

バトル少年マンガなんだけどタイトルにもあるとおり「肉」のモチーフの選び方とか、なにかおぞましげな「月」とか、とても好きな方向性でした。

 

「[番外編5]サチ録~サチの黙示録~」  

shonenjumpplus.com

 

サチはクソガキ。


このクソガキを人類代表とし、天使と悪魔が「人間審判」を行うことにした。人類存続派の天使と人類滅亡派の悪魔が1人づつ派遣され、サチの「良い子ポイント」を監視する。ポイント次第で人類滅亡!でもサチはクソガキ!!クソガキに振り回される天使と悪魔のギャグ漫画。

 

このマンガ、天使と悪魔の採点の恣意的なところ(悪魔が案外イイやつ)なのも面白いんだけど

 

今回は特別編のショート4コマで、一発目で「憲法と法律に全て違反してやるぜ!でも漢字が多いから焼いちゃえ」という国家レベルのクソガキぶりを披露して、あ、これ「政治的発言は基本的にNG」のSNSに書けないやつじゃん、とゲラゲラ笑ったっていう。政治的!

 

昔のギャグ漫画ってこーゆー、「政治家とかwwwww」みたいなギャグ多かった気がするんですけどね。それが無邪気文脈だったとしても。

 


『指先と恋々』

 

 

 

雪は生まれつきの聴覚障害者。同じ大学のバックパッカー、逸臣との、指先で会話する愛しい日々。

 

私は聴覚障害を持ったことがなく、このマンガの表現が正しいかちょっとわからないとこがあるんだけど、

 

マンガ表現として、吹き出しの文字が濃い黒ではなく、薄墨になっている工夫で、雪と逸臣の会話のメインが声じゃないことを表現してる。

 

逆に聴覚のある人間はどんだけセリフに頼ってんだ、という話でもある気もする。

『映像研には手を出すな!」では、「意味のないセリフの吹き出しは建物と同じパースで歪めてしまう」という手法をとっていて、

 

ことば、セリフ、そういうものの情報量って、そんなに当てになるかな、なんてことを思ったりする。

 

【読切】俺の尿路結石と高橋さん

bigcomics.jp

 

尿道結石になったおれ、

ちらちら視線を送ってくる同期の高橋さん、

ここから恋が・・・始まらない。

 

 

あ、ウン、
いいな、

 

あーーーこれは困るな、
でもいいか!

 

みたいな感情が押し寄せる。このマンガのジャンルを確定することができん(そゆの好き!)

 

グロとかエロとかないので、この不可解な気持ちをのぞいて見たい方はどうぞ。なお尿路結石の痛みにトラウマのある方はお勧めしません。

 

作者の方、尿路結石になったんだろうか・・・あまりに直情的なテーマだ(好き)

 



『女甲冑騎士さんとぼく』

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オタクなサラリーマンと女甲冑騎士が同居生活。


え?なんて?いや女甲冑騎士!異論とかそういうのよしてください西洋甲冑を着けた高貴な騎士ですよ。千駄ヶ谷ルームシェアしてます。そういうギャグ漫画。

 

「女甲冑騎士」という概念を投入することにより、何気ない日常がドライブする。

今回も「吉祥寺には甲冑騎士が多い」「お、見るからに騎士向けの店」など、まるで混乱する私の方が悪いかのように堂々と甲冑騎士のいる世界を展開する。その上で誰も傷つかない優しい世界なので、退屈な日常にひとさじのファンタジーで新しい視界を開きたい方におすすめ。単純に甲冑騎士が見たい方にも(いるの?)

 

 

「ふたりきり晩酌」(読み切り)

  

shonenjumpplus.com

 

スキンヘッドの夫とスレンダーな妻が大きなキャベツを一つ買った。2人で食べ切れるかな。
時間を味わう2人晩酌。

 

 

。。。。。。。

 

少年漫画って、「ターゲットより少し年上」を描くって聞いたことがあって。中学生向けなら高校生もの、大学生向けなら社会人もの。

 

今回いただきましたマンガ、私でしょ?私を。。私を狙ってきて。。るんだよね?フフ。。。フフフフフ。。。(涙)

 

「ことばで説明しない」空気感も、ヌケのある洗練された絵も心地よく、シンプルに良い創作、と言えるし、

 

子育て勢、子育て勢。。。。どうぞどうぞ見ていって下さいヨ。

 

(こういう文脈が嫌な「子」の立場の人もいるだろうね。親世代が嫌ならぶっちぎっていいんですよ。こういうの見ながら茶をすすっている者を足蹴にして行きなさい)

 

「[第一話]歴史メンタリスト」

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司馬朔太郎は大学院生。負け武将の一生が好きで進まぬ修論を書いているが、時はコロナでフィールドワークもままなりません!


煮詰まった部屋に突如現れたのはボロカスのようになった【源頼朝】と【仏の使い】。
朔太郎はその負け武将への情熱を買われ、歴史上の人物のメンタルケアをする「歴史メンタリスト」に選ばれたのだ!しょぼしょぼ歴史人物を慰める歴史ファンタジーコメディ。

 

伊集院光は・・・・・・

 

ラジオの時は「黒の伊集院」、テレビの時は「白の伊集院」、映画になると「金の伊集院」と・・・

 

TPOを使い分けている、と言われてきた。

 

なんでこんな話したかというと、このナンパで軽いマンガの原作、毎回毎回賛否両論を振りまく「鳥トマト原作」だからッ!白い鳥トマト!なんも辛いことはないマンガだけど、黒い鳥トマトを思い浮かべながら読むと少し味も変わるでしょう!味変!!

 

作品自体は歴史人物の史実あるあるモノなので歴史好きにニコニコな案件。とてもライトで楽しげなエンタメなので、歴史二次創作が好きな方にシンプルにおすすめです。

 

 

芥川賞大江賞受賞作家・長嶋有の小説コミカライズ

萩尾望都「十時間」
衿沢世衣子「ぼくは落ち着きがない」

 

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へえー?面白そうな企画ね?みたいなぼんやりした感じでいたら、

> 今週はこちらの2作品を配信します。


萩尾望都「十時間」
衿沢世衣子「ぼくは落ち着きがない」

 

ガタガタガタッ(イマジナリー席を立つ音)!

「豪華」の桁が違うッ!!!

 

なお、今後の配信予定は↓だそう。マジで豪華じゃねえかよウ・・・


100%ORANGE「女神の石」
よしもとよしとも「噛みながら」
フジモトマサル「ねたあとに」
陽気婢   「エロマンガ島の三人」
小玉ユキ「泣かない女はいない」
うめ「パラレル」
島崎譲   「THE BUNGO」
吉田戦車ジャージの二人
オカヤイヅミ「佐渡の三人」
ウラモトユウコ「サイドカーに犬
河井克夫「タンノイのエジンバラ
雁須磨子「三の隣は五号室」
コナリミサト「もう生まれたくない」
丹羽庭「今も未来も変わらない」
鶴谷香央理「問いのない答え」
三本阪奈「舟」
米代恭「三十歳」

 

 

なお、今回配信の2作品の感想は以下。

 

萩尾望都の、つましい昭和の家からカーニバルのような華やかな世界に意識をぶっ飛ばす鮮やかなイマジネーション(そして親不在の家を守るという試練)

 

『2年1組 うちのクラスの女子がヤバい』で「にこにこの多様性」を描いた衿沢世衣子によるわちゃわちゃ文系バトルも楽しい。

 

元の作品を知らずに読めるし、マンガの終わりに解説もついてるので何重にも楽しめますヨ。豪華な企画だな〜

 

 

衿沢世衣子作品「2年1組うちのクラスの女子がヤバい」は↓

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