漫画のことと本のこと

漫画好きが読んだ漫画や本の感想を書くブログです。

2/25週に読んだ漫画感想(漫画14件、本4件)

その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。

 

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本日は漫画14件、本4件の漫画の感想です。

 

 

 

【comics】

アフタヌーン2024年4月号
青野くんに触りたいから死にたい

 

 

コミュ障の高校生、優里ちゃん。付き合って2週間の青野くんが交通事故で亡くなってしまった。幽霊になって表れた青野くんを見て、優里ちゃんは願ってしまった、「青野くんに触りたいから死にたい」。


青野くんは意識がある時は優しい。でもその実、優里ちゃんの体を少しづつ蝕んでいく。恐ろしいけど痛くて切ない、オカルトホラーラブ物語。

 

今回のお話は…

 

姉から精神的な、巧妙な虐待を受けている優里ちゃん。
幽霊の青野くんが受けた虐待を「虐待した側」として追体験した優里ちゃんは、ついに長年の姉の虐待に答えを見つける。

 

ケガレの話なんですが。


ケガレというと、汚い、呪いといったマイナスのイメージがあると思うんですが、実は「出産」もケガレにカウントされます。
ケガレとは生と死の混ざる境界。

 

『青野くんに~』では、幽霊の青野くんは悪霊であり、優里ちゃんの命を吸い取ります。

 

でも同時に青野くんは、優里ちゃんの味方です。優里ちゃんが姉に反論して、怖くて辛くて泣く優里ちゃんを抱きとめるのは青野くんです。

 

そろそろお話も終盤ですが、どんな結末になるんでしょう。正義と悪に分けられない青野くんと、絶対的に分けられてしまった生者と死者である優里ちゃんと青野くん。

 

青野くんに触りたいから死にたい』読んでると、倫理観と言うか、「良いと思われる結末」感がバグるんすよね。

丁寧に丁寧に優里ちゃんと青野くんの心情を描いて、ホントならどう考えたって悪霊の青野くんから逃げた方がいい、優里ちゃんは青野くんを忘れた方がいい、というのが通常の話運びだと思うんですけど、「ほんとにそれでいいんだっけかなあ」と思ったりする。

家族から精神的な虐待を受けている優里ちゃんを見て、幽霊の青野くんが「連れてっちゃった方が良かったかな」と言うんですね。
それはダメでしょう。ダメなんだけど、
ダメかな・・・・?と、認識が揺らぐんですねえ・・・

このへん『ミッドサマー』の結末(と、予想されるその後のダニーの運命)を幸福と見るか、おぞましい悲劇と見るか・・・のあたりとちょっとイメージが重なります。

でも、優里ちゃんは現実に立ち向かっていて、家族の虐待をはねのけてます。現実を生き抜く勇気を持っていて、
でも、その勇気の源は、悪霊でもある青野くんなんですねえ・・・

どんな結末でもあり得て、この後のお話がすごく気になります。誰がどうなったらこの話はハッピーエンドになるんだろうなあ。

 



『君と宇宙を歩くために』第7話 理由を探して

comic-days.com

 

発達障害という言葉がまだなかった時代の、ふたりの高校生。


宇野君は音に過敏でイレギュラーが極端に苦手、小林君はコミュニケーションに問題は無いのに段取りが組めず一部の学習がどうしてもできない。

彼らはこの、まるで宇宙のような心もとない社会を歩いていく。ひとつひとつ、命綱をつなぎ、誰かと一緒に歩いていく。

 

今回の第7話、これは発達障害じゃない人でもものすごく痛い場合があります・・・

 

「なんでこんなことができないの」

 

そんなことは、自分がいちばん知りたい。それを言われるたびに、何も言えなくて押し黙るたびに死んでいく何か。

 

ああ、これは辛いなあ、辛いなあ。

 

『1日外出録ハンチョウ』ヤングマガジンの2024年13号

 

 

「外出中に家に帰ろうとしたら鍵がなくてアワアワしてなぜか話の流れで部下の実家に泊まることになってお母さんがいい人なのに部下がツンケンしてて怒られる回」だったんだけど、わたしこの前鍵を家に閉じ込んだからあの絶望感ってマジですごいよね(タイムリーな着目!)

 


『私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記』

 

 

統合失調症の母、家庭に無関心な父、特別扱いされる弟、 認知症の祖父。

幼稚園からずっと家事を担当してきたゆい。


ヤングケアラーの少女がたどった時間を、幼稚園から自身が母になるまでの心の動きと共に綴る。

ヤングケアラーの経験のある当事者複数に取材し、そのエピソードをつないで一つの物語にした漫画。

 

ヤングケアラーがどのように心を閉ざすようになるか、閉した心が回復するには何が必要か。「ヤングケアラーの回復」の参考に。

 

先だっての「ヤングケアラーキャンプ」として有効そうな回復やピアサポート(当事者同士の支え合い)についても紹介している。「大人のヤングケアラー」の人にオススメの漫画。

 

そう、たぶんキャンプは、もう「ヤングケアラーとして奪われてしまった子、大人」に有効なんだと思う。そこに回復の糸口がある。

 

そうじゃない、まだヤングケアラーとして心を壊す前に、母から突きつけられる包丁から、なぜか弟は免除される介護から、父と母が殴り合う面前DVから、
こどもを救うためには、キャンプは役に立たない。

 

すでにヤングケアラーとしてどうしようもない傷ついてしまった人へのサポートと、ヤングケアラーになる前・なってもまだ日が浅い状態で社会が介入するのは両輪でやらないといけないな、というのが感想デス。。

 

 



『其れの手も借りるほど』

kuragebunch.com

 

恋人を亡くした。
コーヒーショップで出会った「手」があまりに似ていたから、その「手」を借りることにした。
その手の主だって、人だのに。

 

手のフェティッシュ。。指の表現が美しく艶かしく、執着のちに寂しくて、艶のあって余韻のある作品でした。

 

 

全然違う話するんですけど、

なんか「仕事を色恋でやめる」っていいですね。
いや、そういう時もあってもいい、みたいな感じですが。

「10年働き!昇進!のち転職!間を空けずまた5年ッ!」みたいな感じは辛いなと。「仕事に不満はないけど辞めたい」っていうのが通るし、それでそこそこ死なない、新しい仕事も見つかるみたいな、ゆるい感じがいいなあとか。。

午前中に、1975年の女性の労働環境の本を読んじゃったからかもしれないス。当時はシングルで45歳越したらホントに生きるか死ぬかみたいな絶望感があって、
なんかそーゆーのじゃない感じがいいなあって。職業選択を決死でしなくていい感じ、
感情を優先して仕事場を選ぶゆとりがある方がいいなって。

恋が実らないことを悟って、辛くて辛くてバイト先を変える、
こういうことが恋の延長で話せたらいいと思って、それが貧困の落とし穴の文脈にならない方がいいと思って。

(これは↓の方で紹介している『ひとり暮しの戦後史 戦中世代の婦人たち』に影響された感想ですネ)

 

 

【漫画】先輩に恋する男子大学院生の物語 視点を変えた後半に「怖い」「認識の差がリアル」 | マグミクス

magmix.jp

これ辛いの、後半で視点が切り替わると体型やビジュアルも変わってて、自己認識がズレてることも織り込んであって割とわかるというか

 



『蝶になる日』

michikusacomics.jp

 

弟は熱中しすぎると倒れてしまうし、生活力もない。弟を心配する姉は、弟が虫が好きで、その展覧会に行って、そこで出会ったクリエイターに興味を持つことが心配。

 

「保護する側」の目で見てしまうんですけどね。。


自分が守っている存在が新しいことを知ろうとすること、新しい道に踏み出そうとすること、それを警戒することはすごく分かってしまって、
それが保証のない道であること、保証のない関係であることを止めたくなる気持ちはすごく分かってしまう。

それをギュッと飲み込むことができなければいけない。

 



秋葉原カチカチ山再開発計画』

to-ti.in

 

秋葉原神田川に沈むのは泥船。ひとりの男のさみしい背中に、カチカチっと火が付いてじゅうッと消えた。

 

これは絵を楽しむ漫画なので、できたら大き目な画面で見てもらいたいな~(あるいは本で読みたいな!!)

 

青と灰色、ごちゃごちゃっとした街と機関車、さみしい部屋。汚れているようでクリーンで、与えた下心に返ることのない秋葉原。閉店しちゃった万世の肉ビルは、この時はまだきっと輝いていただろうにね。

 



『激紅のレッドアイ』

manga.line.me

 

松浦だるま氏原作の縦読みウェブトゥーン新連載。

 

怪獣被害に遭った少女と、巨大ヒーローレッドアイ。家族を失った少女が出会った少年こそがそのレッドアイであることは、まだ知らない。

 

わたしwebトゥーンってあまり読まないんだけど、こればかりはスマホで読まないと始まらないな!スマホのスワイプのムーブで設計された漫画。

 

オノマトペの大小、ナレーションのサイズの大小がスワイプです~っと変化する、音声的な想起をさせる演出はすごく楽しい。
また縦読みなので「縦にデカいもの」が映える!怪獣や巨大ヒーローはうってつけの素材。

 

ただ、スルスル動いてしまうので長い説明文字の吹き出しがあると「アッまだ読めてないデス」とちょっと戻ったりしなくちゃいけなくてンッ・・・ってなる。ストーリーが込み入っているとスムーズじゃない印象。なんかこのへん、「このあたりは「読む」とこですよ~」というのに気づくお作法が必要な気がして、漫画のコマの文法を読むのと同じ「慣れ」が必要な気はする。

 

能動的な体験の漫画と、受動的な体験のアニメの間のようで楽しいですね~。

 

これ、媒体側でスクロールの設定して、クリエイターが望むスピードでスクロールして見せる方法って取れないのかなあ。韓国ではそういうのもうあるんだろうか

 


『たあいないのうりょく』

storia.takeshobo.co.jp

 

この世界の人間には異能がある・・・ただし、それらはほとんどたあいない!!

 

ミクロな多様性マンガ『しょうもないのうりょく』の続編はスーパーが舞台。相変わらずホワイトな職場環境とそれぞれの「能力」のたあいのなさをオープンに開示できる清々しい人間関係に癒されてください。異能は全く関係なく、就労意欲が低めなのにみんな仲良しなこの世界を眺めてから仕事に行ってください(行き地獄)

 

いやほんと、ぼくのよーな発達障害者としてはこの世界に行きたいヨネ。。わたしの能力は「好きなことなら3時間でも5時間でも喋ってられるが意味はない」です。役に立たん!

自らの異能を「役に立たないけどネ〜」と言いながら持ってるの、発達障害パーソンじゃなくてもそうでしょう?それをオープンに話し合えること、それで稼がないこと…「役に立たせないこと」で広がる自由がありますネ。

 

またマンガ表現で言うとあまり動きの速くない絵柄、明朝体オノマトペは『動物のお医者さん』等の佐々木倫子氏を彷彿とさせます。あまり漫画クリエイターの表現の影響について言うのは好きじゃあないのだけど、この絵柄や明朝体オノマトペ表現、落ち着くんスよね。ゆったりお茶でも飲みながら読みたいマンガです

 

 

 

『ちょっとした言葉を攻撃と感じる』お話

 

おお〜

発達障害当事者のエッセイ漫画、Twitterで少し試し読みできますネ。

 

この方とわたしはタイプが全然違って、わたしは注意・忠告を自分のことと思わずスルーし続け、本当に注意が届くのはブチ切れた怒りモードになってから、という悪い循環があるんだけど、

 

うちの小2はモロにこのタイプですね。これは大変だな。。(発達障害でもタイプが違うと全く理解が及びません)

 



『恋とか夢とかてんてんてん』第8話

shuro.world

 

29歳のカイちゃんにはなんにもない。描いてる絵もバズんないし、友達もいないし恋人もいない。社員食堂でバイトしてもう何年も経つ。でもカイちゃんは恋を覚えた。だから追いかけて大阪に行ったし彼女やキープがいるのも知っててホテルに来た。痛い痛い、初めての恋と抱きしめてほしい想い。

 

なんだろうナア。。
わたし、これ、恋の話で話せないな。恋の気持ちは誰かにお任せします。

 

社会問題、、じゃない・・・?

母親に抱きしめてもらったことないカイちゃん、仕事が非正規で、また自分の趣味でも満足や承認を得ることができないカイちゃん。

何者にもなれないから、恋した人のセフレになろうとして、それにすらなれなかった。

なんっかね!!!!!そんなに!何者かに!ならなくても!!!!!いいのに!!!!!!!!!!!

みたいなね。。

 

何者かにならなくても生きられるのが社会というシステムだったはずなのに、何者かにならないと何も手に入らなくなってしまってる。
カイちゃんがしてるのは恋じゃないと思うんだけどどうだい。どうなのかな、これも恋の範囲に入るのかな、わたし分かんないなあ

 

『のび子ちゃん』

www.pixiv.net

コレすごいなー!面白かったー!

 

で、メッセージじゃなくて「アイコンの利用」という面で興奮しちゃったのでその話をしたいんだけど、(メッセージはきっとみんな思うところあるわよね)

 

ドラえもん世界の流用で、「親近感」とか「登場人物の関係性」、「神(信じるし頼るべき、しかし存在はしない者)の存在(この作品で言えばドラえもんだよネ)」の醸成を全部省いていて、短い作品でも彼らひとりひとりがその選択をした意外性や順当さがすーーーッと入ってくる。オリキャラでやろうとしたら大変だよコレ。

 

すっごい、ほんとに、とてもうまく使ってるなあっていう、いやースゲーな!って思ったっていう。


1970年代に始まったドラえもんの感情移入先はのび太だったと思うんだけど、2010年代には出来杉の方が「自分のアイコン」としてしっくりくるのだろうし、女子読者からするとしずかちゃんが、性選択に思いがある人は(この作品の)のび太に思い入れができるだろうし、広く共感できる作品だと思いマス。

 

あとなんかこの世界って親や教師が寛容なのでこどもたちが思い切り悩むことが出来ていて(出来杉は学歴という大人社会の構造に縛られているからああいうことになっちゃったんだろうけど)、まずは大人やろがいと自分を反省したりねえ。この作品の野比家に倣え

 

7SEEDS

 

 


連載は2002年〜、36巻で完結。

 

地球が滅亡することが分かった時代に、「人類の種」を残すため、7人を基本チームとした若年男女をコールドスリープさせ、はるか未来に目覚めさせるプロジェクトがあった。それが7SEEDSプロジェクト。

 

ほとんどが海に沈んだ日本で目覚めた少年少女は、何を糧にどうやって生きるのか。ハイパーポストアポカリプスサバイバル。

 

ポストアポカリプス(文明崩壊後世界を描くSF)の中でもキツイ、「社会完全崩壊世界」の物語。ジャパンランドマークが風化(水没)してるのでとてもツラい。


未来戦国史『BASARA』でも日本全土を舞台に色々変化した文明が出てきたけど、少なくとも社会はあったもんな。。今回は7SEEDSに選ばれた人たち&少数の補佐役しかおらず、田村由美ですから当然のように疑心暗鬼の殺し合いも盛りだくさんでとてもツラいです。

 

ただ、BASARAん時は腐った社会構造で奴隷化されたひとたちがいたけど、7SEEDSの場合は「落ちこぼれも含めることで多様性を獲得し生存の可能性を上げる」という、まあ俺ちゃんこと発達障害者としては「だから言っただろー!」みたいなことになってます。まあそうなんですよ合理的に考えればネ。

 

とにかく長いのでまだチクチク読んでいきます。ツラい。

 

 

 

【books】




『ひとり暮しの戦後史 戦中世代の婦人たち』

www.iwanami.co.jp

 

1975年発刊の本である。

戦中を経験し、かつ結婚をせずに暮らした女性個人への給与水準や待遇などのヒアリング。
結婚することのみが女性の生存であった時代を経て、戦争終結時に宣言された「女性にも人権がある」という声明は希望であった。しかしそれは「同等の場所で働く男女の給与格差が2倍(!!)」という現実的な労働搾取の始まりでもあり、その結論が現実に生きる人々の給与明細に反映される。

給与格差2倍ってお前(絶句)

しかしこの給与格差はある意味で平等であり、なぜなら単純に労働時間に起因しているから。つまり1975年段階において、男は超長時間労働をすることで女性の給与の2倍を獲得していた。

そのため1975年のサラリーマン事情は
男として生まれ残業100時間とかで働く→「平均的な暮らし」
女として生まれ残業ナシ→「食うので手いっぱいで余暇は寝るかテレビ」
という地獄が浮かび上がってくる。

また男性がこのような働き方なので「夫が労働災害で重度の障碍者になり女性が働き手になる場合は?」という調査もあり、このバカげた時代に俺は戻りたくねえな

 

『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』

 

 

 

斎藤幸平(東大のマルクス主義研究者)がウーバーイーツやって搾取されてイラッとしたりあつ森やって資本主義の欲望に負けて島の独裁者になりそうになって反省するのすげー面白いし、「共事者」(「真の当事者」探しによる分断を防ぎ、全ての社会問題に影響を受けている者としての当事者)の概念はいいなーと思う。ちょっとこれはほかの本も読んでみたい、(・・・差別が構造に組み込まれている以上、「共事者など存在しない、利益のある側とない側、すべては当事者である」という考え方も・・・ある)

 

軽く読めるエッセイとも言えるし、エッセイを社会学で書いているとも言える。男性メイクやエコファッションなど身近なものから外国人労働者問題、ミャンマーアイヌなどをあくまでひとりの人間として見た後、学者としての見解を加えるスタイル。

 

読み物として読みやすいのでオススメです。「それがマジョリティとしての外部の目である」という批判は、傷ついた人はすると思う。わたし自身が今今の今、自身が障害者・そして障害児童を養育する保護者としての就労に苦しんでいるので、「言ったって学者先生はいいよなア」という視点があるのは否定できない。

 

それでも好奇心が何かを動かすことを願うし、そうでなければいけない。

 



『名字の話』

honto.jp

柳田國男による「日本の名字」の話。
前半が柳田國男による考察、後半が、いくつかの実際に収集した名字の由来を具体的にアーカイブ

 

個人的柳田國男フェアを開催しており(一冊読んだらまた一冊)、すごい安かったから買ってみたんだけどとても薄い本だわ!!ていうか青空文庫でも読めますわね。

 

最初の方で「神の御裔(みすえ)である大和民族」とか言ってくるのでこのへんは「明治史観デスネ」とスルー。柳田國男は足で集めた当時の民俗の様子をありがたく読むのが吉。

 

ただこの本自体があまり「足」ではなくて、名字というか名前について、(柳田國男が言うには)「郎」という時は「むすこ」を表すので、大昔の太郎次郎は「むすこ1、むすこ2」というカウントの命名であったと。

 

というような感じで、具体的な話の集積ではなく「ほ、ほんとかい!?」というような歴史的な話題を扱っていて、ちょっとこの本は言語学や古典と付き合わせてみるべきかなあと思ったり。

 

『月刊みんぱく

www.minpaku.ac.jp

 

本じゃないんだけど・・・

国立民俗博物館の「月刊みんぱく」、全部じゃなさそうだけどPDFでほとんど読めるよ!!

ナチズムを台所から眺める・・・とかめっちゃ面白いじゃんか!!

 

 

2/18週に読んだ漫画感想(11件)

その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。

 

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本日は11件の漫画の感想です。

 

 



『こりせんまん』

magcomi.com

 

はるかむかし、天変地異を巻き起こすほど力のある強い玄い狐がいた。その妖力は取り去られ、体には縛りが設けられた。罪を償わなければ痛みが襲う。その贖罪に課せられたのは「カワイイ化け狸を一人前に育てること」。ツンデレ狐とめちゃカワ狸の擬似親子な毎日。

 

絵が上手いです〜


動物もうまいし、変化して人間になった時の骨格の太さも好み(こう、ガシッとした太さのあるキャラ造形で)

 

ツンツンした狐マン、阡三(せんぞう)がカワイイ狸萬八(まんぱち)にてんてこまいになる、ウフフフかわいですねえってお話。

 

ガチ動物とキャラ化した動物の明確な差を絵で見られるのはマンガのいいとこだなーと思うし、動物時の特徴を残した人間キャラクター化もすごいなあと思います。ひとと動物のあわい。

 

『極東事変』6巻(完結巻)

 

 

 

1945年、東京。敗戦後の打ちひしがれた空気の中、GHQは戦後処理にあたっていた。それこそが731部隊製の生体兵器「変異体(ヴァリアント)」の殲滅である。生体実験により脅威の回復力を誇る変異体たちによる終戦を認めないテロリズム


GHQ子飼いの変異体少女「砕花」と、不死身の衛生兵「近衛」がバディを組んで、東京を舞台にカーチェイス&ガンアクション。敗戦後ドンパチ漫画、完結。

 

敗戦後の東京でそんな量の火薬ないだろ!という豊富な爆発と色とりどりの銃器、クラシックな外国車アクション、そしてほぼ不死身の生体兵器&地獄帰り兵士のバディ。

 

「戦後東京でド派手なアクションをやりたいんだ!」という大胆な解釈、歴史物に強いハルタらしいしっかりとした歴史考証(の上でのハズシ)が異色な漫画でした。

 

ただし731部隊に関しては国の内外問わず生体実験をした事実があり、エンタメ素材として消化できるほどわたしが理解できていないので評価不可です。


ただ1950年の朝鮮戦争特需について書いてあるのはいいなと思いました。エンタメの中で戦後復興もまた戦争産業であったことが描かれるのは「記録として貴重」と言える作品だと思います。

 

焼け野原の東京でクーデターを抑止するという目的はすごくいいなーと、終戦を認められないテロリストが本来旗頭に掲げていたはずの人たちを襲撃するってすごく好きな方向性なんだけど、完全なドンパチエンタメに変換するにはいくらなんでも、というか。

ニコニコ楽しむにはぜんぜん社会の振り返りができていない時代なので、ちょっとまだ受け入れ態勢はできていないデスね。。

面白かったよ、不死身の兵士とド派手ガンアクション。たぶん作者の方は相当調べてる人だと思うので、もう少し形を変えてまたこの時代にトライしてほしいなあと思う。この時代を描こうとしたことは結構チャレンジだったと思うのです

 



『球神転生』第二話

urasunday.com

 

ジェントルメン中村氏の濃ゆい濃ゆい小学生野球漫画、濃厚さをさらに高めて第二話公開。


これ以上濃くなったら箸がどんぶりに立つくらいになるけどどうしようと思ったらすでに立ってる感じだった。


ジェントルメン中村氏、キャラクターの作品横断システム「スターシステム」ならぬリアクションの横断「スターほっこり」(なんか・・・「ホッコリ」ってリアクションがすごいあるんだヨ)をしてきたけど、今回「ポコーン」が出たので今後使いまわされることを期待したい。ポコーン。

 

『胚培養士ミズイロ』(いったん3巻まで)

bigcomics.jp

 

14人に1人。日本で体外受精で出産される人数。


不妊治療、、生殖補助医療を医師の指導のもと行う「胚培養士」。卵子と生死を授精させたり管理する役割を担う。


最低で3年の研修。その後もずっと勉強。生命を扱う以上ミスは許されない。


胚培養士水沢と一色。「少子化とか関係ない、こどもを持ちたいという願いを叶えるために仕事をする」。監修もしっかりついたおかざき真里氏の新作。

 

センシティブなテーマであると認識しています。これを男性向け媒体ビックコミック小学館)で描くこと、その上で不妊の半分の理由である男性不妊もガッツリと踏み込むこと、非常に意欲的だと思います。

 

「子を持ちたいという願いの強さ」に関して、わたしはジャッジする術を持ちません。社会的な道徳倫理、個人の思い、金銭的な可能不可能、いろんなものがあると思います。

 

ただ「胚培養士ミズイロ」で描かれる様々な技術、科学の進歩、問題意識などは見て勉強になりました。

 

高校生の少女ががんになり、卵子が治療のダメージを受けるのを避けるために卵子凍結を決意する、それは「がんを治した後の未来の可能性のための準備」。科学ってこういうことのために発展してほしいじゃないですか。

 

『ウスズミの果て』(2巻まで)

 

 


今より50年以上前、人類の大半が死滅した。


人間を蹂躙した異形、「断罪者」と呼ばれるそれが出す瘴気を吸った人間は奇病に冒され死んでいった。


丑三技研の臨時調査員、丑三小夜は、誰もいない都市で人の痕跡を探し、埋葬して歩く。寂しいポストアポカリプス。

 

以下、たぶん物語の趣旨とかなり違う感想(のため、見たければ反転などしてみてください。ある程度ネタバレもしてしまうので)

これはわたしのこだわりの話なんですけども。。

死の世界で死体を見つけ、火葬して埋葬する。そんな斜陽の世界の物語なんですけど、

火葬場で、長い箸でお骨を拾う、そこまでやって、お墓は個人という違和がありまして。。

丑三小夜は研究から生まれた不死の人造人間で、本人自体に宗教観はないと推測されるんですね。「葬儀はイメージでやってる」と言えなくもないのですが、火葬に対しての宗教的な忌避のある人がいるかもしれないこと、墓とは親族と共に入ることが重要な宗教観があること、

それら宗教観の機微を意識的に無視している感じじゃないのでなんだかなあって。。

人造人間、分からないから逆に本とか読んで型通りの宗教行事に異様に詳しくあってほしいという希望があって、イメージで火葬や埋葬ってできないんじゃないかなあと。残ってた映画とか見たのかな。。なんの映画見てそうなったんかな

 

 

「物語る星」

shonenjumpplus.com

ジャンプラSFの旗手、田中空氏新作。


宇宙の意味とは、語ることではないか。ある執事の物語がひとつ、伝えられる。

田中空氏のSFはいつも「すごくてすごい」みたいなことしか言えないわたしですが、「物語」の話であればズバッと参上!

 

「物語が全ての根幹である」という仕掛かり、わたしは大好き。


人類は幸福になるためのフィクションを作ってきた。やれ太陽がすごいとか、神様偉いとか、いや学問だ、資本だ、人権だと。

 

全てのものはフィクションで、わたしはそれを悲観していない。フィクションは選べる。わたしを幸せにしてくれるフィクションを。それはいまのところ人権で、わたしが幸せになるためには人類全体幸せになってもらわなきゃいけないから。幸せの連帯責任。

 

しかしでは、幸せにするべき人類がいなかったら、それでもフィクションは成立するのか。

 

わたしは「成立する」と思う。

 

田中空氏の『物語る星』は、「信頼できない語り手」が語る。着いた遺跡に物語の柱となる根拠はない。「先生」のその場の作り話である可能性もある。富豪と執事、先生とリコの関係は相似する。


それでもフィクションは「先生とリコ」のアイデンティティを支える。1人でも物語るものがあれば、物語は立ち上がる。

 

先生が語る物語は不完全で、凡庸と言っていい。正確には「新そうで新しくない、ちょっと新しい物語」。つまんないと言い切るほどじゃないがそんなにキレッキレに新しくもない。過去の寓話の類型をひらけば、似た様式のお話はいくつも見つかると思う。

 

でも先生とリコが選んだファンタジーはそれでいい。完全に凡庸ではなく、でも死ぬほど目新しいわけじゃない、そういう話を先生とリコはよすがにして存在している。

 

そして「完全に凡庸ではなく、でも死ぬほど目新しいわけじゃない」人生こそたいていの人生で、それこそ人類が失われてしまった時、最も得難くオリジナリティのあるファンタジーである。

 

『物語る星』の中核のお話、それそのものに感動したりするものじゃないのかな、と思う。感動するほどじゃない物語を大事に抱える先生とリコ、それを生命体のいない宇宙全体のアイデンティティと据える。わたしはすきだよ、共感する。

 

「つまんないと言い切るほどじゃないがそんなにキレッキレに新しくもない。」とかってクソ失礼なことを言ってるけど、ポストアポカリプスにおける文明の崩壊の仕方とか治安維持、ポリティカルコレクトネス不要の死に向かう世界観(ポリコレが嫌ならこのレベル世界を崩壊させれば無問題だ)、倫理観無用の目的達成、中身の話もすごい好きだよ。。。ごめんなさい、外枠の問いに全力出したらこういう言い方になって。。でもほら、ヒューマンの人生、そうじゃんか。そんなやばいくらい面白いわけじゃないけど、いっこいっこ面白いでしょ。そういう。

 


倫理観のコップが溢れそうになって溢れた時、そこにあるのは破壊ではなくて消滅だったっていうの、わたしはすごいすき。他者の破壊もできたじゃんあの状況。でも自己の消滅を選んだ。それは合理的な選択。合理的に考えたら、侵略でなくて輪廻の方がいいっていうの、究極の問いだけどわたしもそっちがいい。

 



『雷鳴りて春来たる』3話

michikusacomics.jp

大正時代の女学生、ハルが雷に打たれたら、そこは令和だった・・・!「女だって男のように働けます」、職業婦人になりたかったハルのまったく常識の異なる令和JKライフの始まり!

 

今回の3話は「女学生ことば」が出てきますネ。少し文化的な補足を。


これは雑誌の文通などを通じて栄えた女学生たちのことば。地方との交流などない時代、北海道と東京の主婦(女学生言葉は卒業生も使った)が雑誌上で話せるなど、彼女たちが育んだギャル語だったようです。当時の男性知識人からギャル語wみたいにくそみそに言われていたので、ハルも父親には使わなかったでしょう。

 

大正時代、『ハイカラさんが通る』みたいな明るいイメージはありますが、察するに男女差別はスーパーベリーハード。家長、長男の権力が王様レベルに強いので、ハルが思わず男性を立ててしまうのはもはや生存方法とすら言えると思います。

ただ先ほどの女学生言葉なども、男性への反抗文化だったわけです。権力への反抗を秘めたハルが令和をどのように感じるかはちょっと怖いスね。令和人、反抗しないですからね・・・いえ頑張らないと・・・

 



『ふしぎの国のバード』(〜6巻)

 

 

明治11年。女性冒険家イザベラ・バードが降り立ったのはふしぎの国、日本。横浜から蝦夷(北海道)までを目標に、彼女の旅路が始まった!


あえて先人が未踏の道を選び往くイザベラ女史の行手を阻むのは悪い道と深刻な梅雨、男女とも半裸の住民たちの奇異な目とノミ・ダニ・シラミ。明治始まったばかりの日本を西洋の目が書き記す。

 

いや〜〜面白い。


わたしは少しだけ柳田國男をかじっているので「江戸の少し後の日本の風俗が今の常識で理解できると思うな」というのは心しているつもりですが、その具体的な例を矢継ぎ早に出してもらえるのは単純に脳が興奮します。ありがとうバードさん。

 

ツンデレ有能通訳の伊藤とのコンビもアツい、マンガとして満足度の高い作品です。

 

。。。もちろん、世界の植民地大国イギリス、そしてプロテスタント牧師の子息という出自の冒険家が、日本の文化風俗を持ち帰ることを日本人の立場で大喜びするわけにはいかないのですが。彼女自体ではなく、イギリスという国の悪辣さは警戒するに値するモノです。

 

が、やはり柳田國男と違い、そのズケズケしたアーカイブは西洋の思想(柳田國男、結構土地の人に遠慮してぼかしたりする)。原典も読みたくなるマンガです。

 



『はじまりのはる』

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牛の出産に立ち会ったりバターを作ったり。押しの強い、酪農の家のイッコ上の友達と気弱な高校生の、農業高校の友情。


その平凡な生活は、サイレンによってかき消された。2011年3月、福島。この土地で牛を育てるということ、何もわかっていなかった。

 

酪農のこと、被災者のこと、関東のオフィスであの日を過ごしたわたしには知る術もない。


もしこの漫画に叫びが刻まれているなら、その万分の一でも受け取れたらいいと思う。その資格が自分にないと言われても。

 

本邦は叫びを消す。恨み言を涙を消し、被災地を観光地にウォッシュする。薪の上で寝、肝を舐めて忘れないようにする当事者性はないから、エンタメから痛みを想い、消さないようにしたい。

 


『断腸亭にちじょう』37. 第34話

sunday-webry.com

 

ガンになった漫画クリエイター、ガンプ。様々な漫画表現で表される闘病生活の、苦しみとも癒しとも諦めともつかないエモーション。

 

もう本当に大変なことになってるんだけど、今更気づいたのがガンプ(※作中キャラクターとして呼び捨てで呼称します)が40前なこと。


わたしは40過ぎてしばらく経つけど、30代後半でもまだ体力ってあるし、いわゆる「働き盛り」ではあるんですよね。


もとから才能のある漫画クリエイターで、『断腸亭にちじょう』でも誌面を貫く漫画ならではの表現が評価されている(本作は有名な賞も受賞しています)

 

彼が病を得なかったらどのように活躍しただろうかと考えたりする。それはたらればでしかないのだけど。

 



『JKハルは異世界で娼婦になった』(7巻完結)

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普通の高校生のハルは、トラックに轢かれて異世界に行った。できることは体を売ること。男尊&女卑、人権のない世界で、ハルはどのように生きていくのか。

 

ウン、面白かったヨ!


わたしは異世界転生ものというジャンルをほとんど見なくて、(ライドンキングと『逢いたくて、島耕作』、そして本作)、JKハルがどの程度、異世界もののセオリーから外れているのかは分からないんだけど。

 

春をひさぐことへの恨みとともだちとの生活。恋。やりがい。適応。元々いた世界への呪い。

 

差別に遠慮のない怨嗟を唱えながらもそれなりに暮らしていく生々しさが面白かったです。6巻あたりで「異世界転生ものっぽさ」もあり、ジャンル的なニーズを満たしているのではないだろか。

 

わたしはここんとこ遊郭の歴史について調べていたんですけど、ハルが働くのは直球の売春宿というより昭和初期のカフェー、「疑似恋愛を楽しむ(プラスオンでセックス)」業態のように見えます。大正期には厳しくも願えば高収入の目もあった職種で、結婚でアガリなのは同じっぽいデスね。異端者のハルの作る「女性が飲食店に普通に入れる風潮」は、この後のあの世界を変えていくでしょう。これもまた異世界ものか。

 

 

 

 

※『クッキングパパ』に関するショート論

SNSで言われていた「クッキングパパは社会問題を描かないって言った」っていう話に呼応して。

 

 

 

そもそもクッキングパパ、1980年代において家事のできないバリキャリの虹子さんの代わりに豪快家庭料理を作るお父さんっていうのが根本としてあって、「家庭仕事より仕事が得意な妻」「家庭料理を恒常的に担当する夫」を超〜〜ポジティブに描いたの、当時としては革命だったと思うけどね。虹子さんマジで料理できないけど、全然コンプレックス持たずに楽しく暮らしてるわけ。申し訳なさとかなしでさ。

 

革新的で新しい価値観とはそりゃ言わないけど、きんしゃい屋のママが別居婚してたり、梅田夫婦はこどものいない暮らしを謳歌したりして、なんていうか地方の合理性のある保守層というか。

 

少なくとも「女は家に入れ家事をやれこどもを作れ」に抗ってきた昭和時代は過去のものになったようでなによりです。ありがたいありがたい。

 

共同親権推進に伴う『3月のライオン』ショート論

 

 

 

おれはマンガアカウントなので、「マンガの中の最悪の、縁の切れたこどもへの粘着」について、『3月のライオン』10巻〜11巻を紹介する。

 

「こんなに邪悪な男がいるのか」最悪の父親が離婚した母親の死後に遺された3姉妹に迫ってくる。理由はなんと「浮気して3姉妹を捨て別な家庭を持ったが【また浮気して】社宅を追い出されたので、【住む場所がないので3姉妹の家に一緒に住まわせてくれ】」「父と子じゃないか」。

 

姉妹たちは父親に繰り返し繰り返し繰り返し罪悪感を煽ることばを吹き込まれ、ボロボロになりながら断る。断れはしたけど、その後もずっとずっと泣く。ずっとずっと。

 

↓キャプチャもつけたけど、にわかには信じられない、、、と、まともな人ほど思うはず。でも本当にこういう人間がいる。「嫁と子供に対してだけ」。

 

もし「そんなに嫌われる離婚後の片親ってどんなんだろう?」と気になったら、3月のライオン10巻か11巻を読んでもらいたい(11巻の方が心底ムカつくと思う)。こんな卑劣で邪悪な人間がいるとかちょっと信じられないかもしれないけど、わたしは読んで「ああ、いる」と思った。当事者の人はフラッシュバック注意。

 

 

 

 

2/4週,2/11週に読んだ漫画感想(11件)

その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。

 

リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。

 

本日は11件の漫画の感想です。

 

 

ヤングマガジン2024年10号
『税金で買った本』98冊目 ビブリオバトルガイドブックⅡ

 

 

みんなが知りたい図書館の裏側!!司書のお仕事ってどんなもの?あのシステムってどうなってるの?割と真面目なヤンキー少年石平くんが好奇心いっぱいに突っ込んでいく図書館お仕事ものマンガ。

 

今回はビブリオバトル(書評バトル)について。


ビブリオバトルの発祥、日本の大学だそうで(原型は他にあったとしても)、ジャパンがこういうバトル形式のイベントを作るのって意外だったわね!サッと調べると京大とか立命館大学とか出てきますが、これはどうなんでしょうネエ(何かの起源の話はそれだけで戦争になるからちょっとぼやかしますぞ)

 

わたしも漫画のビブリオバトルには参加したことがあって、バトルとは言ってもほのぼのした「コレ面白かったから聞いてー!」みたいなやつで楽しかったです。自分の好きな本を人に話すってオタクが一番輝きますから。ただ知らない人の前だと緊張はしますネ。

 

作中でも本好きオタク女子高生の柴さんが「大会は出たくない、できれば内輪のヌルいコミニュティでビブリオバトルしたい」とゴネます。大会は嫌だが本は紹介したい。アンビバレンツ。でもまあやっぱりマンガなんでね、大会に行くことになるでしょう。陰のオタクがどう頑張るかを見守ります。

 

「[1話]続テルマエ・ロマエ

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ルシウス、ジャンプラに帰還。ジジイになって!!


風呂を愛する浴場技師、ローマ人ルシウス。彼がふと風呂で気を失うと、「平たい顔族」の風呂にタイムスリップ・・・!現代日本の風呂の技術をローマに輸入せよ!風呂っていいなあ!!こってり風呂ギャグ、再演。

 

「少年が中年になってリバイバル」は今流行りですが、元から中年だったルシウスはジジイに。さらに風呂マニアを拗らせ、周りの人も愛想を尽かしていく。ルシウスは新しい風呂を作れるのか。

 

うーーーーーんとオ。。。。


コレはちょっと厳しいことを言いますけど、新しいひねりもなく、ギャグとしての肉欲女性、みたいなアイコンも「いや80年代のジャンプじゃないんだから。。」みたいな古さで、懐かしさ全振り、なんでしょうかね(歯切れの悪い言い方)

 

あと、いま、(メディア的に)ジャパン風呂文化で華やかなのってサウナだと思って、キャッチーなのってととのうってことじゃないですか?(あれ超体に悪いらしいね?)ジャンプラっていうTwitterに接続してる媒体だと、風呂よりサウナなのかなあとか。

 

うーん、このままのテンションでずっとはキツイかな、というのが私見ス。新しい表現を競う媒体に現れた懐古趣味。困惑。。

 

なお、ヤマザキマリ氏、ジャンプラでやる前はグラジャンで古代ローマものを連載していたそうで、そちらの方が読者層に合っているのでは、みたいな・・・

 



『パルノグラフティ』

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マンガクリエイター、板垣巴留の初エッセイ。『BEASTARS』、『SANDA』などヒット作を飛ばすその日常とはどんなものか?

 

開始3ページ目で「私はすごく普通の人間」という大見得が切られるエッセイ。

 

えっと・・・・・・・・・

 

ムサビ卒で・・・チャンピオンの看板漫画家で・・・・・・デビュー作でアニメ化もして・・・

 

父ちゃんが板垣恵介刃牙の作者)・・・・

 

「普通」の範疇が・・・デカイッ・・・・・!!!!

 

エッセイの題材は主にファミリーのお話。しかし「板垣恵介のこと」を大きく取り上げるわけでなし、2世漫画家ではなく板垣巴留自体の評価が伺える作り。いやわたしも実際、板垣巴留が見たくて読んだし。

「自分はたいして派手ではない」という自己認識で描かれるものの、個性丸出しと言うか、うん、そう、こういうカンジでも「普通」を名乗って生きていいし生きたいネ・・・と勇気をもらいました(勇気?)

 

特に家族の在り方についての「普通」概念は本当にいいナアと思って、父ちゃん板垣が多忙で仕事場に泊まり込んでいるので、基本的に「家族とは電話で話して会うのは週1.2」というスタイルだったそう。これは普通になっていいスタイルですネ。

 


『夏目アラタの結婚』11巻

 

 

 

夏目アラタはリーゼントの児童相談所職員。担当児童からの願いで、ある死刑囚に会うことになる。凶悪で、嘘つきで、一見可憐でも口を開けば歯がボロボロ。モンスターのような女性は、夏目アラタのこの後の妻。

 

緊迫のリーガルサスペンス、ふたりの逃亡編。面会室を飛び出し、二人は車に乗って束の間の自由を味わう。

 

いやあ夏目アラタの結婚はちょっとネタバレしたくなくて・・・美麗な絵とおぞましい猟奇殺人、「面会室ワンシチュエーションサスペンス」というハイクオリティなエンターテインメント。


ほんとネタバレしたくないんだけど、真珠(死刑囚)のかわいらしいビジュアルを一瞬でモンスターに変化させる口腔について多方面で納得せざるを得ない理由が明かされいやあああああコレは面白いのヨオ(これも言いたくなかったけどココほんとスゴくて!!)

 

次の12巻で最終巻。


犯罪のアリバイ崩しから少女の愛着障害の話になってきていて、好きってなんだっけ、結婚ってなんだっけって考えるマンガでもあります。

 

愛するってなんでしたっけかね。その『夏目アラタの結婚』なりの答えが、12巻で出るんでしょうか。

 


『あの日の腹の虫』

comic-action.com

 

『ようきなやつら』岡田索雲新作。

そこは開放的で閉鎖的な精神病棟。1983年を舞台に、7000坪の敷地と職員数110名、入院患者290人の巨大な精神病院で、幻覚とも現実とも言えない体験をする人たち。3話一挙公開。

 

ウンッ

 

不穏な空気とほんわりした笑い、そして80年代ファッションの違和感を抱え、3話じゃ全然判断つかない!!!

 

「この後が気になる方はお便りを」ということで、これはたぶん連絡が多かったら続きが書かれる感じだろうなー

 

岡田索雲氏のマンガ、割と不遇な目に遭うことも多く、打ち切りになるケースも多々あります。『マザリアン』とかあれ多分もっとやりたかったんじゃないかな(『鬼死ね』読んでなし)

 

『ようきなやつら』『アンチマン』など、社会的な問題に向き合った作品・・・というわけでは(いまのところ)ないです。

 

・・・と言いつつ、ノールックで出てくる同性愛など氏が今まで築いてきたリテラシーは当然のように踏襲。ルッキズム等、「もうその話ずいぶん前にクリアしてるよ」という作品作りは「平凡な作品」というにはレベルが高いと言えますでしょう

 

『しあわせは食べて寝て待て』

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麦巻さとこ、38歳、週4パート。
ほんの少し前までバリキャリで人生やるつもりだったし、マンション買うつもりだった。でも「一生付き合う病気」になったから、どうも人生を切り替えるべきだ。


築45年の団地と、そこに集まるひとたち、それからゆる薬膳。自分の時間を過ごすこと。

 

あっの〜〜、これはわたし自分語り不可避ですわ。。


わたしも会社員でした。一度リタイアしてもまた戻れると思ってた。
でもいろんなことが重なって、重なりまくって、本当に最近ですよ、「ああ、あの生活にはもう戻れないんだな」と諦めがついたのは。

 

『しあわせはたべて寝て待て』でも、そういう過渡期がリアルで、


「パートなのに服が上質」とか、わかる、お金がある時期にいい服買って、それを今も着てるんだよね。

 

他にもいろんな理由で会社員のレールから外れた人たちがふわっと生きていて、

 

けど割とその人たちも打算的というか、結構善意だけじゃない集まりで、そのバランスが好きですね、ええ。実際、そんなもんだと思うし(結構、人間関係の密さがウッとくる感じはある)(でも多分そうなるだろうなとも思う) 

 

それら全てをまとめる、ゆるゆる薬膳のごはん。あったかそうよ。

 

発達障害パーソンとして嬉しかったのはLD(学習障害)の症状を持つ人(明確にそう描かれてる)がやんわりと「困ってはいる」といいながら暮らしていて、あー、こーゆー人いるなあと思ったり。たぶん本人は自覚してない、という描かれ方。

その人は職種を選ぶことで特性の弱さをカバーしていて、こういう人ってたぶん、本人も周囲も自覚してないけど普通にいるし、こういう人に苦手なことを無理にやらせないでほしいな、と思うなど。その方がみんなハッピー

 

週刊TIMES2024年2/23号
『解体屋ゲン』1031話

 

 

 

パッとしない商店街のパッとしないカレー屋。ぼちぼち売り上げが伸びてきて、商店街一丸となってフェアを開催しようとしたが、カレー屋の店主は子どもが連れてきたともだちがあまりにも痩せているのを見て、こども食堂をやることを決意。ゲンさんたちがひと肌ぬぐ!

 

建築業界漫画ではあるけど、社会の問題にもガツガツ突っ込んでいく本作。今回もこども食堂の資金集めをするにあたり、「それはいい心がけだけどそもそも政府の仕事だろ」というまっとうな指摘。まとも!


それでもやりたい、というカレー屋に資金が集う。それもまたまとも。


古い店舗の店内リフォームの話になればそこはゲンさんの範囲内。またこどもの親に信頼されるよう、店内に監視カメラをつけるなどの工夫もする。こども食堂は無事オープンできるのか。

 

『阿・吽』(とりあえず7巻まで)

 

 

 

最澄空海
平安の日本仏教において、天台宗密教という大きな潮流があった。


権威に認められ愛されながら同時に批判し続ける最澄


アウトサイダーとして権威以外から認められ密教に突き進む空海


ふたりは同じ時代にあって、ただふたり、同じレベルで【阿頼耶識】を分け合える天才。無意識の魂が美しい筆致で踊り出す。

 

ごめんなさいぼく仏教のことは何も知らなくて(まず謝ります)

 

なので漫画としての『阿・吽』の話をしたいんですけど、暴力に飢えている方にはぜひにおすすめ!支配欲、権力欲、家庭内の暴力、フィジカルの暴力、性暴力、全部詰まってます。わたしかなり暴力耐性ありますけど「ここでこうきたらえぐいな」を矢継ぎ早で出されます。ワーニング!

 

これでもかと見せつけられる醜さと、心優しきエリート・最澄の「全てを救う」という壮大な意思との対比。


そして真理だけを追求する少年、空海。天才が故の学ぶことへの飢え、つまり「自分を救う」意思で密教に踏み入れる空海

 

最澄ははるかな高みを目指しすぎるが故に虚しさを抱え、空海は果てのない知識欲のためにいつまでも乾く。

 

どちらも「足りないことへの欲求」、これを絵で表す。おかざき真里氏の美しい筆が、最澄の虚無を白く白く、空海の飢えを黒く黒く描く。

 

2人の「足りてない、もっと欲しい」という究極の煩悩、これを絵でずっとずっと絵で描いていて、おかざき真里氏の華やかな絵柄で過剰に修飾されていく。

精神世界をどう表現するか、最澄の侘しさを、空海の衝動をどう紙に表すのかをずっとやっていて、もちろんものすごく参考文献たっぷりな、史実に支えられた物語ではあるんだけど、

「飢えを絵で描いてみたい」みたいな欲求を感じるです。

平安の最悪の策謀や治安の悪さすらその素材にしかすぎず、最澄空海のパッションを描きたいのかなあと。

空海の渇望を描くときの絵面の「黒さ」、もうあれよ、もののけ姫もののけ姫の祟り神みたいになってるの。見開きで真っ黒い勢いのある何かが吠えてるとか(空海です)。

【絵の勢いに翻弄されたい】という人にこそオススメかなあと思う。仏教も、この人らが何に悩んでるのかもわからん、ただ絵が強い、なんかを求めてるのは分かる気がする、絵に動揺させられたい、そういう。

 

「ピアス」

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ピアス、綺麗だね。


高校の頃、隣の席に座ったあの人は、口調はキツイけれど「退屈しのぎに誰かを傷つける人」には見えなかった。小さなピアスをしていた。


校則違反をめぐる、自我と小さな革命の話。

 

思い出話をさせていただきます(でも漫画の話)。


スラダンの井上雅彦が1998年に『ピアス』という短編を描いていましたね。ステップファミリーになる不安を抱えた少女と、ピアスをした少年の話でした。

 

ピアス、は、イニシエーションなのかもしれませんね。

 

校則という抑圧に明確、継続的に反旗を翻す装飾具のための、痛み。

この痛みを以て、これからの戦いの覚悟とする。そんな儀式。

 

1998年のピアスは少女の成長でしたが、2024年のピアスは女性が過去の革命の痛みを思い出すもので、読者の年齢層は違うところを見ているな、と感じます。

 

ところで、こういうマンガに敵役として出てくる一方的な悪役(この作品ではコンビニカスハラ爺さん)、基本的にはステレオタイプで一面的な「役のための役」になっているんですけど、実際こーゆー爺さんは死滅していないのでどうしたもんかな。。と思います。いるんだよなマジで。。

 

中原さん、最後の方のページで左手に指輪がなく、短編マンガの中の情報で全てを読み取るなら「独身でコンビニで働いている」という理解で良いと思って

(共に暮らすパートナーがいたとしても)日本社会の(書類上の)独身女性への冷たさは異常なほどで、全てが「男性のイエに入ることを前提」にした権利保障になっている今、もう塞がってしまったピアスをよすがにカスハラ爺いを撃退するその背筋のまっすぐさ。

 



『ヒトナー』

shonenjumpplus.com

 

素晴らしい思考実験SFでしたナ・・・

 

そしてこれは少年漫画媒体であり、このような青臭い理想論を言うべきだし、

 

おれたちは「青臭い理想論」をこそ頭上に高く掲げ、そこに苦しみながら向かっていくしか生き延びる術はないのだ

 

ところで

アオリが「ケモノはヒトにフェチズムを感じるの?」なんだけど、本当のメッセージはその辺の話では全然ない、

けどいいんじゃない、そういう目眩しで毒薬をそっと忍ばせる、それが毒かどうかは後世の歴史家が決めるだろう

 



【コミックDAYS読み切り】キャラバン

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キャラバンーーーー隊を組んで全国各地を回り、宣伝、販売などをすること。その集団。

 

技術者の会社で起こった「よくある話」。納品先での初期不良品対応。そこから始まり、ミッションを終えるまでの1日の話。

 

これは良質!!
小さなリアリティを積み重ね、問題あり、課題あり、それを乗り越える・・・

うわあ、こういう小説は昔はもっとあったはずなんだが、これは2024年のマンガだ!!素晴らしい。

 

ただ、チクっと言わせてもらうなら、キャラバン・・・生活も共にしたであろう長期間の旅路の仲間をタイトルに採用して、女性がたったの一人としていない、というのは指摘させてもらうですネ。無理に入れろたあ言わないけど、わたしは客じゃないのね、OK OK・・・とはチクっとは言いますわさね

 

 

1/29週の読んだマンガ(9件&リンクのみ2件)

その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。

 

リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。

 

本日は9件の漫画の感想です。

 

 

鬱ごはん 第175話 「カフェと思ったら美容室だったので髪でも切っていくか」の精神

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低空飛行の青年、鬱野たけし。

孤独だけれど辛くはない。贅沢じゃないけど不満もない。

普通。。。ってこういうこともあるよね。あとメシも食べます。

 

今回は「カフェかと思ったら美容院、かと思ったらカフェ」という日本都市部のトラップについて。もはや食べ物の話はほとんどしません。

 

うん・・・多いよね、美容院(カフェ)誤認。わたし目が悪いから結構近くに行かないと判別がつかなくて、近づきすぎるとお店の人に補足される可能性があって、ウンとりあえずスルーかな!みたいな。鬱野のアグレッシブさには感心します。

 

それにしても、目的もなくカフェに入ってみるとか、本当に鬱野はリア充だな・・・

 

『君と宇宙を歩くために』 第7話 理由を探して

 

comic-days.com

 

平成の高校生、小林君と宇野君が出会った。

小林君は集中できず、物事の段取りをコントロールできない。

宇野君は音に過敏でコミュニケーションが苦手。

まだ「発達障害」ということばが知られていない時代。ふたりは宇宙のように生きづらい世界を、手を取り合って歩いていく。

 

これはねえ、私の特性(わたしも発達障害があるものでね)を考えると追いかけないといけない作品でして・・・

7話は2/26に無料公開かな。すっごい・・・刺さるので注意してほしい、刺さる、うへえ。。。

 

この漫画、基本的に追い詰められているのは宇野君が多いんだけど、小林君は明るくコミュニケーションもとれるからこそ「そんなに普通なのになんでできないんだよ」と追い詰められていく。これはわたしもおなじでねえ。。。

この怖さってさ、発達障害じゃなくても体感するシーンあると思うんだよね。入った会社が想像の10倍能力の高い人ばっかりで、みんな空気みたいにできることがぜんぜん手が出ないとか。それが365日いつも迫ってる、そんな胃から何かがせりあがるような焦燥感。

 

 

 

健康で文化的な最低限度の生活(6)~(12)

 

 

日本国憲法 第三章 第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する・・・

 

新卒公務員、義経えみるが配属されたのは福祉事務所。ケースワーカーとして、様々な困窮と向き合い「健康で文化的な最低限度の生活」をサポートしていく。

 

わたしは福祉方向で取りたい国家資格があって、それについて情報収集しています。

もちろん『健康で文化的な最低限度の生活』はマンガなのでファンタジーではあるのですが、人って簡単に社会から「落ち」ることが描かれます。その多様なケースは、見ていてどんどん眉の間にしわが寄ってきます。

最新刊では東京の下町で水害が発生した想定。被災後の個人の尊厳を守るために、どのような社会資源が駆使されるのか。

 

『あの嫌いなバンドはネットのおもちゃ』(読み切り)

comic-action.com

 

※暴力・性表現が非常に強いです。

 

気の弱いあの先生の秘密をゲットした・・・

なんでも言う事を聞く、牧村先生はおもちゃ。

でも小林君はあのバンドが好き。みんなが嫌いなあのバンドが好き。

牧村先生は好きでいてくれるかな・・・・・・・・・・

 

エロ漫画ですね・・・

ありえない状況、単純に犯罪であることは先に申し上げておきます。これは性ファンタジー。ねちっこく、生臭く、卑屈で、「いやそのシュチエーションはナイナイ」という、「実用性」に富んだファンタジーです。ハイ。

 

小骨トモ氏、いつもねちっこーい、つらーいマンガ描くんだけど、ちょっと読後感は爽やか。恋と肉欲と共にある。

 

『雷鳴りて春来たる』(新連載)

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大正乙女、令和にタイムスリップす・・・!!
職業婦人になりたい大正時代の少女、島津ハル17歳。父親から反対され、悲嘆に暮れていた時、雷に打たれて・・・目が覚めたら100年後の令和5年!

 

現在2話まで更新済み。
さて、大正乙女、、
大正デモクラシー、なんて言いますが、軍国主義言論の自由を(物理的に)弾圧したマッチョで物騒な時代です。
2023年にタイムスリップして気に入ってもらえるでしょうか。

 

媒体は動物ロシア風刺マンガ『サバキスタン』などを掲載していた「路草」さん。楽しみですわ(にこにこ)

 

 

『おかしの家のマダムさん』

souffle.life

 

萌はぽっちゃりして引っ込み思案な高校生。
あるさびれた商店街の駄菓子屋さんで、オシャレで鋭い眼光の「魔女」に会った!
駄菓子屋さんから始まる凸凹50歳差のおんなのこともだちのお話、懐かしいおやつを添えてスタート。

自分が年取ってきて、やっぱ「歳を見せつける美人なマダム」に憧れるわけね。衰えた脚、刻まれたシワ、オシャレで堂々たる佇まい!カッケー!
駄菓子屋のマダム、ひよりさんは黒&ポイントでフリルをあしらうオシャレでイケてるマダム。『ピンポン』の時の!夏木マリ!!!

対して萌ちゃんはぽや〜とふくふくした女の子。お菓子を作るのが好きで、アレンジ自在な割とアイディアマン。ああかわいい。こういう女子高生に生クリームたっぷりのホールケーキを食べさせてあげたい

年上を仰ぎ見て美しく、年下に目を遣れば可愛らしく。時を止めたようなさびれた商店街に息づくフフッと笑う空間。

 

『【特別読切】習作「秋の窓」』

comic-walker.com

 

わたしの色は、人と違う。
双子のみどりとあかね。2人とも絵心があるけれど、あかねはもう絵を描かない。
P型色覚特性。赤がとらえられないわたしの色は「間違い」と言われる。「間違い」たくない。けれど、みどりに絵を描く役割が回ってきて。

さすがハルタのWeb媒体。美しいカラーの表現が挟まる「感じる」マンガ、です。

色覚が人と違うことは特性であって弱さではない。けれど、「正しさ」が定められた社会では「間違ったこと」として処理されてしまう。
こういうことってたぶんよくある。あなたたちには間違いでも、わたしには間違いじゃないこと。みどりの色は、美しい。

見ているものが違うって、アウトプットも、「どういうイメージを持ってもらいたいか」も違うってこと。生体的なコンテクストを共有しないアート。わたしは好ましい!そーゆーの好ましいネ!!

 

いいじゃんか、生体的な文脈が信頼できないアート。赤は情熱的じゃないし、オレンジはあたたかくない。紫は高貴じゃないし茶色に安定感は出ない。

分断がある。絶対に乗り越えられないやつ。乗り越えずに共にある方法こそが良い方法じゃないのか。

 

ドラゴンの運転免許(読み切り)

 

shonenjumpplus.com

 

す、すごかった。。

ドラゴンへの中2の憧れから始まり、ドラゴンの定義のし直しと提案、そしてエクストリームカーアクション

すごい丁寧なマンガだ。。

 

『けがわとなかみ』第9話 一緒に行こう

 

kuragebunch.com

 

わたしは死にかけていました。
あなたはわたしのことを食いませんでしたね。
ひもじかったのにあなたは食いませんでしたね。
あなたのことが好きになりました。

食べ物であるうさぎと、食う側であるきつね。うさぎはきつねが好きで好きで、今日もきつねを追いかける。

きつねがストレートな動物表象に対し、うさぎはぬいぐるみのようなデフォルメされた造形。愛なのか執着なのか、自然界の話というか、個人と個人の愛着のカリカチュアとして、なにか寓意があるのだろうと思って読んでいます。

今回は、「善意の塊の親族が嫌いじゃないけど居場所がない」の話。
悪い人たちじゃない嫌いじゃない、だけど本当の自分を知ってる人はいない。それってどうだろ、幸せなのか?

きつねさんなりのアクションは別に正しいわけじゃなくて、きつねさんの出した答えなだけ。でもこういう結論出す人もいるんだなー、と思ったスね。

わたしイ?うーん、別に親族がそもそも善意の塊じゃないしイ(前提が違った)

 

そのほか読んだ漫画(リンクのみ)

ブルース・ドライブ・モンスター

www.pixiv.net

 

『ボールアンドチェイン』第8話

shuro.world

 

 

1/22週の漫画の感想(9件&リンクのみ20件)

このエントリーに書いた感想は以下の9件。また、感想ナシ・読んだアーカイブリンクは20件です。

 

Webマンガリンクはエントリー公開後時間が経つと閲覧ができない可能性があります。ご了承くださいませ

 

 

 

 

『税金で買った本』97冊目 ビブリオバトルガイドブックI

 

 

 

 好奇心いっぱいの不良少年、石平くんが覗く司書お仕事マンガ。みんなが使う図書館は、ありがたいけどたいへんなこともいっぱい・・・!

 今回は書評バトル「ビブリオバトル」について。わたしもあんまり知らないのですよネ。楽しみにしてます。
 それにしても司書のお仕事の給与が低いことはかなり知られていると思うのだけど、司書ってすっごくハイレベルな専門職。わたしは大学のレポートのために「あっあのっこの土地のあたりの坂の状況を調べたいんですが・・・100年単位の・・・」みたいなめちゃくちゃな相談にも「ではこのあたりの資料とかどうでしょう」とすっと資料がまとまっている場所に案内してくれる訳です。AIを駆使したレコメンド情報、なんてものはどんどん進化してきていると思うけど、なにせ本人にも調べたいことが分かってないから!AIはそのへん踏み込んでくれないだろッ
 図書館をテーマにした創作はけっこうあると思うのだけど、こういう現実的なマンガで司書の仕事の大切さが広まるといいです。あと給料を上げてあげてほしいです

 

 

 

チャンピオンRED 2024年2月号

『ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース』

 

 

 

アメリTwitter発、サイバーパンクニンジャ小説がコミカライズ!ニンジャ死すべし!そう古事記にも書いてある・・・!!!

 

 ハイパートンチキ日本感をゴリ押しするサイバーパンク。ネオサイタマにはマルノウチタカイビルがありニンジャたちがカラテでナムアミダブツ。難しく考えない方がいいです、ミヤモト・マサシも言っている(誤字でもないし錯乱もしていません)。

 

 文化の盗用、という概念があって、これは世界的に見たときとてもセンシティブな概念なわけです。本来その文化が育まれたところから、ふと気づけば「白人文化」になっている。いいか悪いか儲かるか儲からないかの話じゃない。ただひたすらに間違ってます。

 ニンジャスレイヤーも当然その危険性を内包するものであるし、すでに「ニンジャってサイバーパンク生まれのカラテ使い!」とかって言われてたりするんでしょうかね。地球が平たいことを信じる人たちもいる中で「そんなバカなこと信じる奴いるのかよ」とは言いません。またそれを止めることもできません。モキュメンタリー等と同様の危険性を孕む創作だと思います。

 わたしも将来、日本が本当に弱くなってしまって、文化の正当性を主張することすらできなくなった頃に「ああ、ニンスレなんて楽しく読むんじゃなかった」と後悔しているかもしれません。日本人、100年後には人口半減してるらしいからシャレではないのです。日本語話者なんてマイノリティだからネエ。。

 

 でも面白いんだヨ!!今回「ノーカラテノーニンジャ」って言われちゃってもうウケちゃってウケちゃって。バカじゃないの!?

 元が小説なので適宜モノローグやテキストの挿入があるんだけど、その処理が本当にうまい。コミカライズのひとつの理想系、と感じています。ケレン味「しかない」魅力に、過剰な文字量はものすごくマッチしてます。

 

 こういうキワキワの創作を楽しむために、ウチんとこの文化をしっかり語れるようにならなきゃダメだなあと思います。たぶん作者たち(※小説版もコミカライズ版も、他のバージョンも)、ある程度古事記ちゃんと目を通してると思うし。わたしちゃんと見てないもん。読まないで笑ってんのもなんですわな。

 

「[62話]ゴダイゴダイゴ」

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巨大ヒーローはおじさん!!

対怪獣兵器として、人間を巨大化するプロジェクトが始まってから30年が経つ。怪獣の飛来は減り、巨人たちは食費や生活費など巨額のコストを巨大ヒーロープロレスなどの「副業」でスポンサーを獲得して賄っていた。

世界で初めて巨人になった男、後醍醐ダイゴはロートル扱いされて人気がない。しかし彼こそ巨大ヒーローの将来を憂い、30年前の凶悪な怪獣の記憶を留める巨人界の先輩なのであるッ

 

 ゴダイゴダイゴは面白いなあ。

 絵も上手い、少年マンガの中の「おじさんの背中で魅せる」エモーションもヨシ、さらにジャンプラの中のインディーズ枠・・・つまりジャンプラプラットホームを使用するだけの編集者ナシ枠、言うなれば投稿枠なのだけどコミックスも発売と奇跡のようなマンガ。クリエイターの夢がありますね・・・!

 でも最近、編集さんがついたのかしら。話が収束していっている気がする。怪獣たちの起源や動機、また地球側の事情などが混み合ってきて良きですね!

 

 ただ、今回の「人類は繁栄するために小麦を栽培(奴隷化)したが、むしろ小麦が人類を利用して増えたのだ(怪獣を利用して人類が繁栄する)」 という主張、

 ボカァ、小麦に意思なんかなくてただ増やされただけだし、実際に奴隷にされたのは「大衆」、奴隷にしたのは「王侯貴族と法皇」、という主張があるのでこの辺どのように進めてくれるのかワクワクしますね。同族の方が残酷ですモン。真っ当な少年マンガの主張が眩しい本作、どう落とし所をつけるのかお待ちしてます!!

 

「[第10話]ダディデバディ」

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 こどもに憑く怪異、「疳の虫」。こどもの悪感情を媒介に現実社会に仇なす存在。この怪異を倒す任務こそ、「体操のお兄さん」「うたのおねえさん」の真の仕事!!

 体操選手の夢破れ、今は体操教室のインストラクターとして働く三児の父、田中。彼は疳の虫を視ることができる力と、こどもを守るヒーローになりたい気持ちで「体操のお兄さん」を目指す。

 

 育児世代を眼差した設定で見事まなざされたおれ(育児中)。「体操のお兄さん、歌のお姉さんがヒーロー」なんてわたしが一番知ってるよ!!あのお歌や体操に何度救われてきたことか。。。オヨヨ。。(コロナ禍はほんっと死ぬほど見たなあ。。)

 本作はそれにさらに特撮ヒーロー要素を加え、さらにさらに「アツい遅れてきた男とクールな陰を持つ男」でバディを組まそうという、主にお母さんを罠にかける仕掛かりで優勝を狙う(大きめな言い方)。

 今回はクールお兄さんの陰と、アツいお兄さん親しみが丸出しで狙ってるだろう!狙ってやがるだろう!!もう!!

 わたしは「寝かしつけの大変さの解像度の高さ」にに泣いてるからお兄さんたちのバディの話は任せた。寝かしつけポジショニング争いで10時過ぎ。。オヨヨ。。(しっかり取り込まれてる)

 

「[第153話]チェンソーマン 第二部」 

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1990年代、悪魔が跋扈し人に仇なす時代。貧しさから、唯一の友達でありペットとして共にいたチェーンソーの悪魔と契約をしたデンジ。胸のスターターを引っ張るとチェンソーマンに変身。頭からチェーンソーを生やし、悪魔を屠り血を撒き散らす。夢は「パンにジャムを塗ること」。何もない少年(本当に何もない)がチカラを持った行き先は。

 

 、、、上記あらすじは第一部のもので、第二部になってからは、「ナユタ」という守るべきものができてデンジも丸くなったもんです。何もないところからチェンソーマンとして祭り上げられて、大好きなマキマさんを物理的に食った後、ナユタと出会ってデンジは確かに幸せになったのに。。。いまだにヒーローを捨てられない。

 そして第一部ではチェンソーマンを祭り上げてくれた大衆が、増えすぎたチェンソーマン(の偽物)ごと、チェンソーマンに襲い掛かります。

 いやーそれにしても、チェンソーマン、ホントもうTwitter辞めたんだなって思うんだけど、これ今までだったらパンピーの腕切ったら「うわあああ!チェンソーマンが腕を切ったぞ!」みたいな、「殴りまくる大衆にちょっと反撃したら10000倍返し」みたいな、そうTwitterミームでよくあるやつ、あれやるところなのにやんなかったねえ。マンガ自体がTwitterトレンドに入ることも少なくなってきたし、私はいい傾向だと思うよウンウン。

 ヒーローがいずれ大衆に狙われるの話、『バガボンド』でもあったなあ。探せば神話にもあるような気がする。カミなんてものは信仰が変わればアクマにされるわけですが、チェンソーマンは元々アクマだったものが一時的にカミ扱いされていただけなので確かにまあこれで正しい気もします。あとはデンジ、お前が幸せになるために何をすればいいかって話よ(ワクワク)


JKハルは異世界で娼婦になった
第10話 カンケリズム~ドナ・サマーを聴かせて~4

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 普通の女子高生が異世界転生した。やれることは、あの頃やってたのと同じ娼婦だけ。男尊女卑、タテマエの人権すら剥ぎ取られた世界でハルが生きる。

 

 「女は異世界に来たって搾取対象」の本作、ここへきて異世界転生モノのミソ、、つまり「現代ジャパンの知識でチート」が出てくるんだけど、それが悲しいかな「JKだったから男がどうパンツを見てくるか知り尽くしている」という哀しい知恵。。そうなの、この作品すでに「女が1人でカフェに入るとヤバすぎで何度見もされる」という中世ヨーロッパ並感を出しているので、スカートの短い女性が出歩いている世界じゃないのよね。抑圧でスカート長くさせられて、嫌だっつってスカート短くしたら今度は「短くしたから見るんだ(女が悪い)」と進行する世界を飛び級するハル。世界の歴史を早回し!異世界転生ですなあ。。

 

 ハルがパンツを見せるのは女性の解放としての主張ではなく、あくまでも自分の目標のための手段。それは人権概念がない『JKハルは〜』世界での最適解。「売りたくはないが体を売って自己達成」は、人権や各種制度で女にもチャンスのある現代ジャパンではなく、私刑、宗教観による治世が行われているナーロッパ並みと心得たい。

 そして人権もまた人間の作ったファンタジーであり、現代日本であってもそれを信じない、信じられない人には全くの無効であることも付け加える。

 

『白山と三田さん』101. 第100話 上・京・物・語

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田舎のカップル、白山くんと三田さんはなんかヘン。ぼんやりまったり、やっぱりヘンなファミリーや周囲の人たちに囲まれた2人が、上京するまでの物語、完結。

 

 良かったなあ良かったなあ。2人が幸せそうで良かったなあ。

 なんか。。最近、職場がハイパーホワイトな漫画を読むと涙腺とか猜疑心とか同時に緩んじゃうんだけど(泣きながら「こんな会社ねえし〜!」とか言いながら「あったらイイナ。。」と呟く)、白山くんと三田さんの環境もまた「理想の田舎」。

 そもそも、おじいちゃんが孫の付き合う相手を見つけてきて。。みたいな話の導入、当初はギャグ漫画だと思ったから許してたのにどっこいちゃんと人間関係の話で、人間関係の始まりがめっちゃ強引なのにこんなにみんな優しいことってある?

 他人様(孫)の色恋に越境しちゃう侵食ぶりって引くんだけど、その最初の強引さを乗り越えたらとてもとてもハピネスな話で。

 こういうの見ると、お見合いって悪い文化だったのかなあ、なんていうのは思います。マッチングアプリのプリミティブで無料なやつだよね。人間関係のニラミの効いてるヤツ。マッチングアプリで出会って結婚って割ともう普通で、お見合いもその手段の一つとして見直されてもいいのかもしれない(※ただしやさしい世界に限る)(つまり現代ジャパンだとあまり薦めない)

 

『SANDA』10巻

 

 

 超超少子化を迎えた未来、こどもたちはヒエラルキーの上部に位置する。滅びに向かう社会でこどもを守れるのは・・・サンタクロース?それもムキムキの?

 

 こどもを隔離した学園の中で、こどもを脅威から守るためサンタクロースの末裔である少年、三田がマッチョな白髪老人になって悪い大人を退ける!

 

 いやあ〜、こどもの在りようとおとなの意義を問い直すSFでありバトル少年漫画であってまあメチャクチャ面白いんですけど、9巻くらいから一段飛ばしに刃牙みを帯びてきて、これは掲載誌チャンピオンの味なんだろうな(一応、作者は板垣恵介氏の娘さんではあるけどまあそういうことは言いたくない)。こじつけたくはないけどその辺も継承というか、こどもとおとなの関係の話に見えちゃってごめんあんまり言いたくないけど親子でチャンピオンのヒット漫画とか存在がマンガなのヨ!

 

 まあそれはいいとして、思考実験SFなのに少年マンガ、という両輪を成立させる巴留氏、10巻でもグッとくる仕上がり。ファンタジー的な理由から「股間を意識せざるを得ない」少年と主人公の他愛がなくて親密なやり取り。いろいろ複雑な話をあんまり意味のない行動で締める、

 

「2人だけが楽しいこの感じ、これを友達というんだろうか」

 

という導き方に、ぼく40歳なのにものすごくハッとしちゃったよ。ああそうなのかもしれないね、他の人にはつまんないけどその人たちだけが楽しいことを共有できること、それが友人の一つの定義かもわかんないね。いまだに少年マンガから生き方を学んでる。。

 

『43歳、子供部屋おばさんだって愛されたい』

 

 

 43歳、母親と二人暮らし。パートは20年選手。一生独身だったら最後は一緒に暮らそうね!と約束していた「子供部屋おばさん仲間」が結婚し、陽子はマッチングアプリで出会いを繰り返すが・・・?

 

 死ぬかと思ったぜ!!!

 

 あのねえ、子供部屋おばさん、とか、なにを批判されるべきかわかんないわけよ。いいじゃんかなにひとつ問題なく暮らしてて。そうやって生まれてそうやって死んで何が悪い、と思うので、陽子は恋愛を楽しんでほしいのよ。行け!恋路の果て!!

 

 ただその、絵の上手いクリエイターさんで。。

 

 老眼も含め、自分の顔を見ることも少なくなった40代。毎日カンで眉毛を描いて幾星霜、ある時近くで見た自分の顔に「!?!?!?お、おばさんがいるッ!!」と怯える経験がものすごく上手に描かれていて、なんていうの?顔の作りが大幅に変わったわけじゃないのにおばさんとしか言いようがなくなってるのよ。素晴らしい表現力でした。ウヘヘエイ(だらしない諦めの笑い)。

 

 西炯子の描く40代の「うるせーーーー!!ちょっと老眼だなんだとか言ってんじゃねーかわいいじゃねーか!!!」というところに激しいツッコミを入れる方にオススメ。いや、西炯子しごい好きなんだけど!『姉の結婚』とかホント好きなんだけどさ!!

 

 ところで本作もそうなんだけど、『たそがれたかこ』『恋とか夢とかてんてんてん』とか、しょんぼり女子が働いてるところの「社員食堂勤務」というポイントが気になりました。社食にはずっとお世話になっていたので有難い存在なんだけどなあ。

 

 

 

他読んだマンガ

「[第138話]ダンダダン」

shonenjumpplus.com

 

E Kiss2024年3月号

『クロエマ』

 

 

 

「[拷問217]姫様“拷問”の時間です」 

shonenjumpplus.com

「[番外編5]放課後ひみつクラブ」

shonenjumpplus.com

 

ヤングキング2024年4月号

『ひとでなしのエチカ』

www.shonengahosha.co.jp

 

『妻の家出』

 

 

 

『カフヱーピウパリア』

matogrosso.jp

 

『SANDA』9巻

 

 

 

『【コミックDAYS読み切り】正しいワンピース』

comic-days.com

 

「[第十六話]サチ録~サチの黙示録~」 

shonenjumpplus.com

 

モーニング2024年8号

 

 

アフタヌーン2024年3月号

 

 

月刊少年シリウス2024年3月号

 

『作りたい女と食べたい女』45話

comic-walker.com

 

全員記憶喪失オフィス【第11話】

biz.chunichi.co.jp

 

『博士七段』

shonenjumpplus.com

 

『真・女性に風俗って必要ですか?~女性用風俗店の裏方やったら人生いろいろ変わった件~』第6話「未だ指名なし!」

kuragebunch.com

『球神転生』第1話 野球世界(ザ・ワールド)

urasunday.com

 

『歴史メンタリスト』[第十二話]

shonenjumpplus.com

 

『けがわとなかみ』8話

kuragebunch.com

今週読んだ漫画感想2024/1/14週(5件)

その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。

 

リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。

 

本日は5件の漫画の感想です。

 

 

くびしょい勇者

viewer.heros-web.com

 

それは勇者が魔王を倒すところから始まる物語。

勇者はアイデンティティを失い、そんな不甲斐ない勇者を見て「いやこんなしょぼくれにやられたとか言われるのは嫌だ」とアイデンティティをかける首だけ魔王。アイデンティティ追いかけっこ!元は敵同士だったふたりのちょっと仲良しな旅路。

 

こう、メインストーリーのアナザーサイドというか。王道の物語のダークサイド。能力はあってもメンタル的にはそんなに強くないヒューマンに勇者(使命)を背負わせると自己肯定感が下がる!という地獄みたいな示唆がツライ。首だけ魔王ちゃんがいい人で本当に良かった。

 

作者のツナミノユウ氏は同媒体「コミプレ」で、過去に「ぽっちゃり肥まくったセクシーインド女神が現代日本に降臨して毎日ジャージ(なんて?)」という日常系漫画を創作していました。今回もスットコドッコイな匂いがする。

 

『山女のはらわた』

michikusacomics.jp

ラジオがあるくらいの時代、どこか東アジアの国の村。

村人たちはふらりとやってきた美女、安(あん)に夢中。村の少女小丹(シャオタン)も安が大好き。優しくて物静かで穏やかな安は、ある時、はるか昔の呪われし物語を小丹に語り出す。

 

いやらしさ&ナイス丸み&滅べルッキズム!!

いや。。アウトプットが混線するほどモヤモヤする作品です。好きです!

 

あんまり説明するのは野暮なのでぜひ見てきてほしく、見ていただいたと仮定してあらすじ抜きにした説明不足な感想を書くんですが、(できれば読んできて!)

 

女が主役の民話ってのは、なんたってこんなにしけっぽいんだい!

 

うるせえうるせえ、女が辛い目にあって楽しいかよ、その感情のドロみとエロみがないまぜになったヤツは美味しいかよ、美味しいだろうよ禁断っぽいだろうよ

 

エモーショナルとしては完全に理解する。おぞましさといやらしさは相互協力関係にある。おぞましくもいやらしい、背徳のセクシャリティ

 

そしてはるか昔の農村部、醜い女が現実としてどれだけの目にあったか、想像だけならばできる。

 

安は0か1のデジタルな世界に生きている。醜く死ぬか、美しく(永遠に)生きるか。そのあわいが本当に欲しいものなのに。

 

現在の安が、極めてふくよかな状態で美人と寿がれているのは幸いなんだけど、それは山女の呪いなんじゃないかな、とも思う。安の生まれたままの姿を喜んでくれる人は誰もいない。

 

『黄泉のツガイ』6巻

 

朝と昼を分かつこどもたちが生まれた・・・

山中で物々交換の生活を営む村落。アサとユルは伝承に伝えられしこどもとして育てられていたが、ある日襲来した妖「ツガイ」により世界は一変。ユルは村の石像のツガイ左右様を従え、現代社会の街に降りて両親を探す。

 

相変わらずはちゃめちゃに面白いアクション群像劇、6巻目。

あの〜、ワタシ、さる名前を言ってはいけないマンガ(大人気なので検索されてしまうがいい感情は抱いていないので伏せたい)で、「敵と味方がクルクル変わる」ってのが大好きだったんです。前エピソードで背中を合わせて戦った同士が次のエピソードでは殺し合う。イヤッホー!生きてるウ!(エンタメには刺激が欲しいタイプ)

 

『黄泉のツガイ』も裏切り裏切られ、いつなんどき誰が尻尾を出すかのサスペンスは見もの。えっひょっとしてあの主要キャラもいずれ裏切る?イヤッホー!

 

とんでもない仮説を立てるのですが、これってどう?恋愛マンガに近いんじゃない(とんでもない)?

恋も愛も、あの人が好きか嫌いか横取りするか、みたいなところあるじゃないですか。それが命(タマ)の取り合いになったって考えると、このドキドキも理解の範疇かも知れない。なんが情緒おかしいかしら。。

 

それにしても代表作『鋼の錬金術師』は強さマックスなのに不殺の主人公だったけど、今回はじゃんじゃん死んでたのしーなー!ワタシはあの名前は言ってはいけないマンガでヒトがはちゃめちゃに死ぬのが楽しくてね、ゴールデンカムイって言うんですけど(言っちゃった)

 

「刀贄心中」(読み切り)

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江戸末期。目の前で家族を惨殺された少年、鞘十郎。死の間際に話しかけてきたのは妖艶で眼帯の美女。名刀、千代丸の付喪神である彼女を手にし魅入られ、少年は血まみれの道を歩む。

 

こう〜、濃ゆいデスネ!!!

 

絵からはみ出してくるような密度の濃い作画。なんていうか、誌面から出てくるような気迫がある。

話の作りも、少年マンガから一歩、怨念めいた情愛を感じさせていいっス。濃い!

 

残酷さとエロスがないまぜになっている感覚。うふふたまにはこういうのもいいですねえ。

 

『かわいそうな私たち』(読み切り)

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 アイドルみたいにかわいいあの子と、小太りで冴えない私って、いったいどっちがかわいそう?

 すっごくかわいくてミスコンに出る予定の藤島さんを、写真部の松崎さんが写真に撮る。ぱっと見「差」のある2人が出会って生まれた小さくて大きな事件。

 

 「冴えなさ」の解像度が高い・・・というか、ちょうどいいというか。

 もうねえ、冴えないってことは、ほんのちょっと至らない、ということなんですよ。そこに強度の格差・・・民族格差や性格差など、ほんとうに覆せない屈辱じゃなくて、ちょっぴり至らない。

 私はもう10代の頃ってストレートに松崎さんの体型で、いやあ冴えませんでしたね。

今も、冴える冴えないみたいなところをあんまり気にしないで済んでいるだけで、絶賛冴えていません。でもこの「気にしないで済む」ことがでかいですよね。今は、超~~~美人なレディと自分を同列に扱うことができます。でも、ナイーブな10代の子におんなじことを強要するのもマッチョな気がするんスよ。

 松崎さんがハイライトでとった行動、これどうかなあ・・・私なんかは身をよじるほどの勇気・・・であると感じます。10代であの体型(→自分の記憶の中の腹肉)であのステージにいくの、私、たぶん無理。その手触りのある無理感・・・つまり理想のファンタジーのスゴさを、私はものすごくガッツリ受け取りましたねえ。

 

 

ウルトラマンブレーザー最終話

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マンガの感想を標榜しているくせにしれっとウルトラマンをぶちこむ無節操さがありますね(他人事のように)

 

 ていうか、イラク戦争のような・・・もっと言えば、侵略主義に反対するメッセージだったと思う。
 全編通じて隠されていた謎が「宇宙から飛来してくるタイプの怪獣については、1999年に敵性飛来船団として撃墜されて船団が『実は相手は武器等を所有していなかった』ことが分かっていたためではないか」ということで。
 イラク戦争じゃん・・・・!!
 そこから敵攻撃をやめること、ただしもう飛来してきて直接アタックを加えてくる個体は撃退すること、
 バランスがとれていたと思う。
 あと、わたしはゲント隊長がエミちゃんの気持ちをこうアレしてアレしてる感じなのにちょっとおこだったんですけど(ゲント隊長はエミちゃんを意識して遠ざけるように!!!)、最後のウルトラ〆が左手の指輪のアイコンと家族のもとに帰るパパだったの、ヨシっと頷きました。少なくともこどもの見るファンタジーでそいつぁ守ってもらいたいぜ!ってとこを守ってくれたのでヨシっ!!

 

 

 

2023年ベスト10マンガ&レコメンド10。発達障害関連トピック、反戦、ジャーナリズム、すっとこどっこいギャグ・・・エモーション別にセレクトしました。

 新年あけましておめでとうございます。マンガ感想ウォッチャー、中山です。

 昨年もたくさん漫画を読みました。それに伴い、昨年読んだ中で印象に残った10作+10のマンガを厳選、すべてに書評を付けてみました。

 

 2023年も面白いマンガがとてもたくさんあったのですが、そこからギャグ、政治、個人的興味・・・などのエモーションで10作に絞ってます。さらに同じエモーションで「関連するレコメンド漫画」も含め、合計20作品の紹介です。

 

  レコメンド作品も含め、500〜1000文字くらいの書評をつけております。冬休み、面白い漫画を探している方、文字を浴びるほど読みたい方にぜひどうぞ。

 

 

 

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私の個人的興味、発達障害関連のマンガ

 

『君と宇宙を歩くために』

 

 発達障害者支援法が制定されたのが2004年小泉政権下。
 それまでの発達障害者に名前はなく、ただただ、自分と物理法則の異なる宇宙を歩くような心持ちだった。


 いや、別にマンガ自体はこんな導入ではないです。でも私が、発達障害者として1990年代をこどもとして生きた私の脳裏にぽ~んと浮かんできました。
 発達障害当事者研究書籍に『みんな水の中』という書籍があるのですが、「宇宙」「水の中」など、そもそも存在する世界の物理と自分の感覚に違和がある・・・とい、すごく納得できることば選びです。
 たぶんASDの宇野くん、たぶんADHDでLDの小林くん(診断のない時代なので正確なことはわかりませんし作中で症状名は出てきません)。でも、彼らのつらさや他人と違うことの不安な気持ちに痛いほど共鳴しました。私自身が、小林くんと極めて近い症状なので。
 こんなに神経系障害であることに真っ向から向かい合ってくれた作品は初めてだったなあと思います。


 物語はそんな彼らの友情の育み方がメインテーマです。どうでしょう、発達障害の方以外でもおもしろいと思いますよ。ぜんぜん違う二人が友達になるって、それめっちゃドラマじゃないですか?発達障害者は今、10人にひとりの割合といわれています。その人たちにはスパッと刺さるし、そうでなくても青春の人間関係の育ち方は甘酸っぱい気持ちになると思いますヨ。

 

まとまった感想文も書いているのでどうぞ↓

ima-nakayama.hatenadiary.com

 

レコメンド『発達障害な私たち』

 

 発達障害当事者マンガクリエイター&編集者プレゼンツ、発達障害パーソンインタビューレポ漫画!
 「社会にいる発達障害者」にスポットを当てた本作。社会に出て働いている人やクリエイターとして活躍する人を対象に話を聞いて、その多様な「現象」に首がもげるほど頷く漫画。


 「社会に適応できている発達障害の人」が対象なので、これもまた一例に過ぎないと踏まえた方が良いと思います。が、そのように対象を限定してもあふれ出てくる困りごとの多さ&多彩さ。その正否をジャッジせず、面白みを取り出して紹介できるのは当事者コンビがクリエイターであることが大きいと思います。

 

 どうぞ覗いていってくださいおれたち神経系障害者の世界!神経系障害者の方は私と同じようにもげるほどヘドバンしてください!

 

今知るべき、ジャーナリズムのマンガ

 

『まんが パレスチナ問題』

 今年はイスラエルによるガザ侵攻が激化した年でした。しかし中東問題はよくわからない・・・ということで「まんが」を冠するこちらの書籍を。


 仕様としてはユダヤの少年、ニッシムとパレスチナの少年、アリ、そしてファシリテーター「ねこ」の三者が膨大なテキストで振り返る数千年の中東の歴史。

 テキストの合間に理解を促すためのイラストを添えてある、という様式であって、いわゆるコマを割って構成されたマンガ、ではないです。しかしそのわかりやすさとかみ砕き方、1ページ~2ページ毎でひとまとまりの話題としてテンポよく進む構成は、マンガ読みには割となじむものじゃないかな・・・と思います。日本のマンガもページ毎にまとまっている(ないしは「まとまっていることを前提に外す」など)ものなので。


 中東の歴史をざっと学ぶのに最適だし、ニッシムとアリ、本来友好的なふたりが政治的な理由で時折口論に至るのは、小さなパレスチナ情勢でとても悲しくなります。


 多角的に知識は得るべきですが、まずは入門書として良書でした。続編の『続 まんが パレスチナ問題』もぜひ併せて読まれたし。

 

 

レコメンド『MATUMOTO』

 フランスの出版社の、いわゆるバンド・デシネ。日本に起こった世界史上でも最悪の公共機関(地下鉄)でのバイオテロ地下鉄サリン事件・・・及びそれを起こした宗教団体を、ひとりの青年の視点で描く。


 海外のマンガのジャーナリズムは本当にすごいと思って、他にも原爆を扱ったアメリカンコミックスなどもありますネ。


 一冊400円~700円程度のポップアートである日本のマンガと一冊1000円を軽く越える海外のマンガ(このマンガはKindleで2000円越え)を同ジャンルとしてみることはちょっと違うかな・・・と思いますが、だとしてもこの表現、ジャーナリズムが本場日本で出てこないのはややモヤモヤします。


 リアルに寄った絵柄とクラクラするような邪悪、最初は笑っていたのに取り込まれていく青年。巻末の取材メモも含めて読み応えのあるマンガです。

 

NO WAR!反戦のマンガ

 

はだしのゲン

 これは「私が手に入れたのが今年だった」というセレクト。反戦マンガの普及の名作です。


 小学生のゲンは、大好きな家族と楽しく暮らしていた。平凡な小学生だった彼の全てを変えたのは、時代が第二次世界大戦中だったこと、そして広島に住んでいたこと。

 

 強い反戦メッセージは各国で戦争が激化している今まさに見るべきマンガなのですが、マンガ読みとしてその内容にも触れていきます。面白いんですヨ。なんせゲンがクッソガキなので!


 クソガキ、面白いでしょ?もの盗んだり嘘ついたりって、悪いことだけどそれはスカッとするじゃないですか。ゲンがターゲットにするのは大人です。ゲンがクソガキ力(りき)を発揮するのは生きるためです。クソ医者に怒ってウンコをぶつけて、アメリ進駐軍の倉庫に忍び込んで食べ物をちょろまかします。泣いているお母さんやおなかを減らした年下の子の代わりに。クソガキヒーローです。


 でも、少年マンガって本来そういうものだったはずじゃないですか。みんなに絶対的に降りかかった悲劇、それなのにみんなを搾取する悪い権力者に対し、道徳や規範を一時的に踏み越え、暴力的な方法で権力者に一泡ふかす。これが庶民が読むマンガじゃなくてなんでしょう。


 いかんせん絵柄とギャグが古いので(そりゃあ否定しませんよ)ポップアートとして現代に通用するかと言われれば強要はできません。でもこのテイストからしかこの味はしません。原液そのまま、プリミティブなクソガキヒーロー活劇をお楽しみください。

 

レコメンド『ペリリュー 外伝2』

 

 第二次世界大戦中、パラオ諸島の孤島ペリリュー島にて、アメリカ軍と日本軍が戦闘を繰り広げていた。兵士田丸はその当時、アメリカ兵はもとより、飢餓、病魔、不衛生、そして日本兵同士の仲間割れをかいくぐって生き残る道を模索した。現実の生存者への取材も含む、濃密な取材と監修で無事完結した本編のアナザーストーリーを描く外伝。

 

 ペリリュー本編は生き延びた兵士・田丸の視点で進むお話ですが、なんなら外伝の方が本筋と言っていいのかもしれない。生き残れなかった人や敵兵であるアメリカ兵の視点から描かれるペリリューの風景。戦争って、でも、そうじゃないですか。その土地に生きた人が全員巻き込まれますよね。


 そして外伝2で描かれる、トランスジェンダーと思われるキャラクター。男性の役割を引き受けることができないし、恋をする対象も男性だった。彼女と言っていいのかわからない。そこまでの心情描写がされる前に死んでしまった。他のほとんどのキャラクターと同じように。


 戦争は個人の都合を全て踏みつぶす。個人にはすべてに異なる特性があるのに、そんな当たり前の権利を全てなぎ倒す。こんなもの、絶対に困ります。

 

ディスイズ!少年マンガ

 

『ダンダダン』

 オカルト!バトル!ちょっとラブ!ジャンプラが誇るザ・少年マンガ!!


 プリミティブな漫画なのであらすじが短い・・・でもそれでいいんです。今、週間連載の日本マンガとして最高峰レベルの画力で魅せる!!


 私は性根が少年マンガ読みでしてね・・・「悲しい!?負けるな!ブン殴れ!!」というう3つのステップで構成された話は大好きです。加えて休載もせず惜しげなく街破壊をする豪華な作画・・・!大丈夫ですかたまには休んでくださいね!?


 お話は襲い来るオカルト妖怪と仕方なしにバトルする・・・火の粉を払うタイプの戦いなのですが、襲いかかってくる妖怪の「理由」、悲しみの表現がいちいち厚い。

 女性の貧困や前時代の排外主義、ヤングケアラー、トー横キッズを想起させるこどもたちの共同生活など、時代をとらえた共感を美しい描写力で表現します。

 その悲しみが取材と現実を鋭くとらえたものだ・・・とまでは言いません。でも、少年マンガの役割ってそのくらいのものだったと思います。大人はすぐにわかるけどこどもにはわからない絵が描いてあって、これなんだろう、調べてみよう、、あるいは大きくなってから理解するとか。2023年8月ごろには80年前の東京の空襲を悲しみの起源とする妖怪が出てきて、こういうことを少しこども心にとどめておいてもらえたらいいのかなって。


 少年マンガが戦争の怖さすら描かなくなって久しく、集英社のめちゃくちゃ売れている媒体の最高峰の表現でこういうアプローチがあること、すごくうれしく思います。あと、絵がすごすぎて最近はオノマトペ(擬音)も放棄してる。このマンガ、今の週間連載のトップクラスの漫画だと思うぜ!

 

レコメンド『黒博物館 怪物よ三日月と踊れ』

 『うしおととら』『からくりサーカス』の藤田和日郎、雑誌『モーニング』でフェミニズムを描く・・・!


 舞台は19世紀。フランケンシュタインを著したゴシック小説家メアリー・シェリーが、過去のある事件を語り始める。それは醜い風貌の田舎娘が、踊るような剣技で悪の意志を打ち砕く話。そして、メアリー自体の自立の軌跡。


 メアリー・シェリーの母親はフェミニズムの先駆者と呼ばれるメアリー・ウルストンクラフト。19世紀ゴシック小説界という女性に少しづつ開かれた社会に、それでも男性からの抑圧がある様子を真っ向から描きます。


 『うしおととら』はサア・・・中学生で不登校児だった私が「なにか迷ったら「うしおはどうするか」で判断する」という行動を取ったほどに頼るべき(信仰もなにもない私はマンガのキャラクターにしか頼れなかった)存在として心に今も在るんだけど、作者が30年の時を経てフェミニズムを描いてくれるとはさあ・・・ファンでよかったヨウ・・・。
 実際、やっていることはうしおととらの頃と変わらないと言うか、とにかく「悪者はこっちで倒す!だから自分の問題には【おまえ自身が立ち向かえッ】!!」というメッセージがビンビン伝わってきます。


 藤田マンガのお約束の妖怪やモノノケの類はいったん封印。舞踊の振り付け師に考案してもらった剣舞でのバトル、そしてメアリーシェリーの「自分の権利」を勝ち取る戦い。少年!マンガだッ!!

 

ショートな感想も書いています↓

ima-nakayama.hatenadiary.com

 

 

心よ少年に戻れ!プリミティブギャグマンガ

 

『ハンサムマストダイ』

 ハンサムでなければ死あるのみ!!超人気男性アイドル、涼が死んだ。涼のガチファン、悠里は涼の死の理由・・・ハンサムガイズにつけられたハンサムチョーカー、ハンサムに反する行動を取ったハンサムを支配しアンニュイなハンサム顔しかできなくさせる非道なメカ「ハンサムダビデ像」を破壊するためヤングハンサムアカデミーに挑む!すべてのハンサムを救え!ってか何回「ハンサム」って言ってんだ!ハンサムギャグ爆誕ッ!!

 

 なにを言ってるのかわからねえと思うが・・・というまくらことばが毎回つく、ハッチャメチャのギャグマンガ。2023年へようこそ!時代が変わってもへんてこギャグは生まれるんだね!!
 物語のラインとしては男性アイドル事務所に潜り込んだドルオタ女子がハンサム試練にチャレンジし、幾多のハンサムとハンサムバトルを・・・ってもういいって!言葉遣いから発想、展開まで小3がノートに描くエモーションで最高に満足。


 という罪なきアホギャグですが、今年はなにせ日本最大の男性アイドル事務所における歴史的な性加害事件が明るみに出た年でもあり、なんてタイミングだヨ・・・と頭を抱えるも、本作は爽やかで真っ当でアツいメッセージで完結しました。現実もこうだったら良かったのにな・・・。


 また男装女子モノとカテゴライズしていいのですが、その辺のエッチハプニングはありません(あったけどギャグだった)。一度女の子であることがバレてエロい攻撃をされたときには「バカにすんな!気持ち悪いんだよバカが!!」とブン殴ります。現実もこうだったら・・・(ため息)

 

 

 

レコメンド『女甲冑騎士さんとぼく』

 矮小!インターネッタラーギャグ!!
 ルームシェアをしていた先輩がいなくなったので、オタクサラリーマンのぼくは「女甲冑騎士さん」とルームシェアをすることになった。甲冑騎士は歴史上の役割を終えたので日本で下宿している事が多くて、だからそういうことになった。これ以上説明できない。千駄ヶ谷を舞台に、高貴な女甲冑騎士さんと精神の半分をインターネットに持ってかれてるぼくの暮らしのアーバンファンタジー

 

 なにがアーバンファンタジーだ(公式に書いてある)。この作品、「女甲冑騎士」というそのまま丸ごとのペルソナ(中身は絶対に顔を見せない、というかたぶんあの甲冑が顔なんだと思う)、Twitterの中でもかなり矮小な部類に入る「ぼく」のインターネッタラーの共感羞恥、そして枠の外のアオリ(枠の外に書いてある、編集者とかが入れる合いの手のテキスト)芸といい、珍妙な味わいにあふれる逸品。


 作者のツナミノユウ氏は以前も「度を超したぽっちゃりセクシーの堕落したインド女神のジャージな毎日」というマンガ(なんて?)等手がけており、ダーツを投げたら的を外れて隣のビルの爆破スイッチに刺さりました~!みたいな意外性がある。書いといて悪いけど今の例え、たぶん全然クリティカルじゃない。


 「ぼく」の醸すしょーもないインターネットオタク(=なんのオタクでもないSNSにダラダラいる奴)の解像度は出色。SNSでいいねを獲得したい卑近な気持ちに自己批判せよッ

 

向き合いたい、社会批判を含むマンガ

 

『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』

 

 大好きな夫だった。仕事帰りに見た夕日がきれいだった。平凡すぎるでしょうか。でも、それが良かったんです。
 自死をした夫、彼の死の理由の鬱の原因が知りたい。その思いは、ふつうの主婦には手の届かない理由で黙殺された。だから裁判をすることにした。相手は国家、歴史的な公文書改竄問題に巻き込まれたひとりの自死遺族の戦い。


 この作品の前書きにはこうあります。「この漫画作品はフィクションであり、実在の人物や団体と関係ありませんが、実在する人の願い、祈りには大きく関係しています」と。
 この漫画は現実とリンクしている部分はあります。この漫画がモデルとしている裁判の結果はいまだに決着していません。この漫画も3巻で完結しましたが、漫画の結末は苦いモノでした。さらになぜかアマゾンでは紙の本が欠品(2023年12月30日現在)。途中の連載停止など含め、困難の多い作品でした。

 しかし、この作品にはコードが振られました。ISBNコード978ー4-09ー862517-8です。これはもう消せないです。その視点に偏りがあったとしても、明かされていない事実があったとしても、この裁判があったことは、このISBNコードの名の下にいつでも思い返すことができます。

 

 やや観念的な話になって申し訳ない。漫画としては、特に魚戸オサム氏の的確な画力と表現力を高く評価します。口下や背中でも「あの大臣だな」と分かる画力、疑惑に満ちたパーティーシーンをあえて画質を落としてイメージとして見せる表現力、3巻における「あの人」の似顔絵の的確さと、小道具としての「あのマスク」の皮肉なチョイス。
 コロナ下である世相を反映し、法廷シーンは全員がマスクを付けています。声を上げることを封じられたマサコちゃんのようでもあり、黙秘で逃げようとする関係者が口を開かない様子のようでもあり。

 

本作については2件の評論を書いていますのでご興味あればどうぞ

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レコメンド『まんがで分かるまんがの歴史』

 

 柳田國男直系の民俗学者であり、プロパガンダ研究者であり、現役のマンガ原作者である大塚英志が放つ「まんがの歴史」は古くは江戸時代も含む豊富な史料を用いた事実に立脚する漫画史。


  作画はひらりん氏。膨大な参考史料引用と大塚英二氏の解説を非常にキレイな線のマンガ様式で読める、めちゃくちゃ勉強になる講義漫画です。

 ミッキーマウスから始める記号論、キャラクターのパーツ論などの構成要素、戦前の著作権の在り方、戦争が与えたまんが創作への影響。手塚以後のまんがの世界。

 まんがの歴史を真摯に見つめたとき、それは必然的に権力批判となります。しかしそれと同時に大塚氏は語り掛けます。

 表現する人間は、政治や社会や現実の歴史に無知であってはいけないと。

 

 その表現がどのような経緯で生まれ、そしてどのような経緯で消えていったのか。変わっていったのか。その歴史が今のまんがムーブメントを作っています。漫画読みとして心したいし・・・・・・・知った方が面白いじゃあないですか?

 

 

実験と哲学。創作の可能性を拓くマンガ

 

『ザ・キンクス

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 それは笑いの哲学。とある平和なファミリーが紡ぐ日常は、笑いの多角的な実験場。悩みながら笑う、そんな夜もある。

 

 『GOLDEN LUCKY』、『えの素』などのシュールギャグを放つ榎本俊二のある到達点。こちらもお得意のファミリーエッセイの風情を漂わせながら、シュールというには挑戦的なギャグを構築しています。特に「文字」や「書き文字(オノマトペ」のアレンジが多い気がします、言語のお好きな方にもおすすめ。毎回題字が楽しみ!

 

 こんなに刺激的な笑いってすごい。でも舞台はファミリーエッセイ調なので痛々しくもなくて、笑いが痛い必要って必ずしもないんだなーと思い知らされます。

 

レコメンド『鬱ごはん』

 

 

 鬱野たけしは孤独な青年。だけど割と幸せだしのんびりやってる。映えもしないし出会いもない。彼のごはんは生活の一部。それが妙に味がする。低体温の4ページ漫画。

 

 鬼才、施川ユウキの飯もの漫画。でもこれを「飯もの」とカテゴライズするのはたぶん違う。

 鬱野はいつでもボソボソしていて、特に不平も不満もなく暮らしている一人の男。、、、、の、「食事風景を切り取った漫画」なんだな、と思います。

 日本には「飯ものマンガ」というジャンルが確立していて、そのリアクション芸とかはもう研究されて多様なパターンが成立しています。性欲の快楽と重ね合わせてみたり、可愛らしい風情にしてみたり、連帯を表したり。

 さらに『孤独のグルメ』『ワカコ酒』などは食事を通して一人の人の食事レポートテキストを展開する様式で、これもまた爆発的に広まりました。

 が、鬱ごはんはこれは、「鬱野の日常を描きたいから縛りとして食事風景を切り取った」という、日常を見せるためのツールとしての食・・・なのではないかなと思います。ヒーローでもない、パリピでもない。つまり普通の人の生活を覗く。鬱ごはんは覗き見コンテンツです。楽しい。

 

社会にアプローチ。役に「立ってしまう」マンガ

 

『解体屋ゲン』

 

 朝倉ゲンは極小の解体業者社長。しかしその実態は、海外で高等ビル解体技術「爆破解体」を学んだプロフェッショナル!その人的魅力で様々な人を巻き込み、大手ゼネコンから昔気質の棟梁たち、女性従事者や外国人労働者など、建築業界全体の問題に臆すことなく向き合う。

 

 すでに100巻を超えた本作品。ゲンさんのビル爆破はド派手なアトラクションだし、登場する女性キャラクターも景気良く水着になるエンタメ作品です。

 一方で、建築の最新技術の紹介や伝統的技術の継承、業界の人的リソース問題、労働問題や賃金についても言及していく社会派作品でもあります。

 最近では現実の建築情報系YouTuberや業界の新しい取り組みをしている団体を紹介。「行動するマンガ」と言っていいと思います。

 

 私は当該マンガでアルコール依存症のキャラクターが自助グループに繋がり、酒との距離を取りまた普通に生活をしている様子が描かれていることに感銘を受けました。

 私の父はトラック運転手でアルコール依存症を患った人で、辛い生涯を閉じた人でした。ブルーカラー人生を送った父にも手に取りやすい絵柄で描かれたこの知識、生前に彼が見ていたら良かったなあと思います。

 

がっつりと感想も書いていますのでこちらもどうぞ↓

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レコメンド『逢いたくて、島耕作

 モーニングの長期連載、『島耕作』シリーズ。これを熟読し「聖典」と崇めるZ世代サラリーマンが島耕作世界に転生!?島耕作に逢いたい!でも僕は知っている、島耕作世界で非業の死を遂げるモブキャラを。この人たちを救いたい!聖典を改変せずにモブを救え!まさかの島耕作世界転生マンガ。

 

 島耕作世界を知り尽くし、島耕作世界にZ世代らしいツッコミを入れる。これは批評!「批評 島耕作」だッ!

 そもそも批評とは一概に批判を示すものではなく、対象に対して深く理解した上で多角的な視点での解釈、考察を加えるもの。現代のリテラシーで視た島耕作世界はワンダーランド!あの時代は許されていた女性の扱いや社内暴力について、深い理解の上で解説し、Z世代の目で感想を述べる。これは批評ッ(またか)

 

 また、1980年代風俗史としても価値ある逸品。「新幹線で煙草スパスパ」「女性に対しての蔑称『クリスマスケーキ』」など、忘却に押しやられようとしているサラリーマン風俗のアーカイブとしても貴重。島ニスト以外にも意義のあるマンガです。(島ニスト、とは島耕作好きに与えられる称号。たぶん私しか言ってない)(なお公式は「島コニスタ」と呼称。たぶん公式しか言ってない)

 

思想を込めろッ。社会評論に至るマンガ

 

『逆資本論

 

 経済マニアが描く!共産主義の原点、カール・マルクスの「資本論」を現代の視点で批評、そして展開する経済思想漫画。

 会社経営者でもあり、更にもともと『君のお金はどこに消えたのか』など経済ネタ漫画を描いていた著者が満を持しての著述。・・・というには、作者のブログ(&人気書籍)『中国嫁日記』に登場する奥さん、月(ユエ)さんと息子バオバオと語るエッセイの形式で読みやすいです。


 内容はぜひご確認いただきたいのですが、気候変動への警鐘から始まり斉藤幸平『人新世の資本論』の批評、月さんの極めて庶民的、しかし中国の寒村出身という経済感覚のつっこみを交え、強い理想を掲げた結論に達するのは胸アツと言っていいでしょう。 むしろ思想を語る本として「読みやすすぎる」ということが欠点・・・とすら言えるサクサク読めるマルクス現代解釈です。こういう思想の一例がマンガで読めることをとてもうれしく思います。

 

こちら、長めの感想も書いていますのでどうぞ↓

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レコメンド『コムニスムス』

 

 コムニスムス・・・「共産主義」。1975年のカンボジア、つまりクメール・ルージュの占領下のプノンペンが舞台の・・・バトルもの?


 ピュリッツァ賞を目指す日本人少年と最強の2歳児がコムニスムスの共同体から繰り出される刺客をなぎ倒す。共産主義への希望と理想が散っていく寂寞。大国の代理戦争の舞台にされたアジア。西と東の戦いは、歴史の上では結末が分かっている。しかしその行間にあったものはなにか。


 西島大介氏はベトナム戦争を舞台にした『ディエンビエンフー』などの作品もあり、強い批評性を持つ漫画クリエイター。この作品はweb媒体に連載中、いくつかの使用禁止語があったもののそれらを解禁してのコミックス化。ポル・ポトクメール・ルージュなど、歴史として忘れるわけにいかない語が掲載されています。


 本編の他、カンボジア豆知識のショート漫画や寄稿の論考なども掲載。ポップアートの枠を超え、「日本のサブカルチャーシーンで民主カンプチアを再確認する」というような試みなのかな、と思います。


 かわいらしい絵とエグい心理描写。共産主義に散った理想と、託したもの。コミックスはまだ完結していないので、気長に続刊を待ちたいと思います。

 

脳みそをかき回せ!価値観を逆転するifのSFマンガ

 

『【読み切り版】大きくなったら女の子 -夢と嵐太郎の場合-』

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※セックス描写があります

 この世界は「男」として生まれ、集団の中の1割が女性化する。それは体が大きい個体の可能性が高く、178センチを超えると「女」になることが多い。こどもは「男」が育て、「女」は複数の子の親になることが多い・・・

 

 自分のジェンダーバイアスの法則を乱される一作。こういうものを見なければ!

 「男」は「こどもを育てることになる」から不利、可愛い服は小さな「男」用に作られており、「女」は可愛い服を着ることはできない、「女はセックスのことしか考えてない」、、、

 強い批評性があると思います。男女という二つの性だけではなく、その移行期、またジェンダーの役割を引き受けない人・・・と、性というものの文字の上の定義をぐしゃぐしゃ〜っとかきまわし、多様なグラデーションに想いを馳せます。

 あと、エッチっす!

 

レコメンド『これからのラーメンの話』

※強い暴力表現があります

※不快な表現があります

 

 ラーメンが大好きな女子大生ふたり。ひとりは食べる顔がエロすぎる、ひとりは音がエロすぎる。ふたりを見る社会的な視線は、とんでもない事態を招いて。

 「消費」に対しての強烈な批判のあるマンガ。Twitterで発表されたマンガですが、非常に話題になりました。

 

 サブカルチャー文脈にある食と性を重ね合わせる手法。全く望まないのにカリカチュアされた「それ」を身につけてしまっているふたりの女性が主人公です。

 彼女らはただラーメンが食べたいだけなのに、店の他の客の目が気になってラーメンが食べられない。次第にカルチャーとしてアイコン化され、キレてみればそれをエモとして消費される。さらに望まぬ形でアイドル化され、ポップカルチャー作品として売り出される始末。

 

 購買作品としてまとめられているわけではないのでネタバレまでしてしまいますが、思い詰めたひとりがラーメン店を銃乱射で占拠、血まみれのラーメン屋で思う存分エロい音をさせてラーメンを食べるのがラストシーンです。

 

 毒と苛立ちに満ちています。「みんなのオモシロ」のために生贄にされた個人の悲憤、そして有象無象の「みんな」への強い批判。気持ちのいい作品ではありませんが、こういう作品が出てくることを歓迎します。気持ちよく作品を読んでいる後ろで、嫌だって言ってんのに消費されている人はいないか・・・ということは時折振り返らなければいけません。

 

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 2023年に読んだ印象的なまんがを、エモーション別に20作ピックアップしてみました。

 去年はまんがの雑誌の休刊が相次いだり、年末の映画がなぜか太平洋戦争をにおわせるものが多かったり、ポップアートの世界も楽しい雰囲気ではありませんでした。

 大塚英志の『まんがで分かるまんがの歴史』でも、戦中において仕事を奪われたクリエイターたちが国家の仕事を受注していた形跡があきらかにされており、

 それは磨かれたクリエイターの技術で国家の望むものを描く・・・という、プロパガンダとしての力が強いものだと思います。

 イスラエルのガザ侵攻を思います。私たちは誰かの都合に良いように思想を変えられてはいないだろうか?

 まんがはある意味で思想を変えるものです。まんが読んで「なーんにも変わらない」ということばかりでは決してありません。だからこそ、変えられるモンくらい自分で選ぶ。面白くて、実験的で、私のことを自分の都合よく変えようとしてこないマンガ。それってたぶんコミュニケーションですよね。

  

 今年もたくさんマンガを読んでいこうと思います。マンガは楽しいですね。

 

↓去年のベストマンガとレコメンドはこちら↓

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