漫画のことと本のこと

漫画好きが読んだ漫画や本の感想を書くブログです。

2/4週,2/11週に読んだ漫画感想(11件)

その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。

 

リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。

 

本日は11件の漫画の感想です。

 

 

ヤングマガジン2024年10号
『税金で買った本』98冊目 ビブリオバトルガイドブックⅡ

 

 

みんなが知りたい図書館の裏側!!司書のお仕事ってどんなもの?あのシステムってどうなってるの?割と真面目なヤンキー少年石平くんが好奇心いっぱいに突っ込んでいく図書館お仕事ものマンガ。

 

今回はビブリオバトル(書評バトル)について。


ビブリオバトルの発祥、日本の大学だそうで(原型は他にあったとしても)、ジャパンがこういうバトル形式のイベントを作るのって意外だったわね!サッと調べると京大とか立命館大学とか出てきますが、これはどうなんでしょうネエ(何かの起源の話はそれだけで戦争になるからちょっとぼやかしますぞ)

 

わたしも漫画のビブリオバトルには参加したことがあって、バトルとは言ってもほのぼのした「コレ面白かったから聞いてー!」みたいなやつで楽しかったです。自分の好きな本を人に話すってオタクが一番輝きますから。ただ知らない人の前だと緊張はしますネ。

 

作中でも本好きオタク女子高生の柴さんが「大会は出たくない、できれば内輪のヌルいコミニュティでビブリオバトルしたい」とゴネます。大会は嫌だが本は紹介したい。アンビバレンツ。でもまあやっぱりマンガなんでね、大会に行くことになるでしょう。陰のオタクがどう頑張るかを見守ります。

 

「[1話]続テルマエ・ロマエ

shonenjumpplus.com

 

ルシウス、ジャンプラに帰還。ジジイになって!!


風呂を愛する浴場技師、ローマ人ルシウス。彼がふと風呂で気を失うと、「平たい顔族」の風呂にタイムスリップ・・・!現代日本の風呂の技術をローマに輸入せよ!風呂っていいなあ!!こってり風呂ギャグ、再演。

 

「少年が中年になってリバイバル」は今流行りですが、元から中年だったルシウスはジジイに。さらに風呂マニアを拗らせ、周りの人も愛想を尽かしていく。ルシウスは新しい風呂を作れるのか。

 

うーーーーーんとオ。。。。


コレはちょっと厳しいことを言いますけど、新しいひねりもなく、ギャグとしての肉欲女性、みたいなアイコンも「いや80年代のジャンプじゃないんだから。。」みたいな古さで、懐かしさ全振り、なんでしょうかね(歯切れの悪い言い方)

 

あと、いま、(メディア的に)ジャパン風呂文化で華やかなのってサウナだと思って、キャッチーなのってととのうってことじゃないですか?(あれ超体に悪いらしいね?)ジャンプラっていうTwitterに接続してる媒体だと、風呂よりサウナなのかなあとか。

 

うーん、このままのテンションでずっとはキツイかな、というのが私見ス。新しい表現を競う媒体に現れた懐古趣味。困惑。。

 

なお、ヤマザキマリ氏、ジャンプラでやる前はグラジャンで古代ローマものを連載していたそうで、そちらの方が読者層に合っているのでは、みたいな・・・

 



『パルノグラフティ』

comic-days.com

 

マンガクリエイター、板垣巴留の初エッセイ。『BEASTARS』、『SANDA』などヒット作を飛ばすその日常とはどんなものか?

 

開始3ページ目で「私はすごく普通の人間」という大見得が切られるエッセイ。

 

えっと・・・・・・・・・

 

ムサビ卒で・・・チャンピオンの看板漫画家で・・・・・・デビュー作でアニメ化もして・・・

 

父ちゃんが板垣恵介刃牙の作者)・・・・

 

「普通」の範疇が・・・デカイッ・・・・・!!!!

 

エッセイの題材は主にファミリーのお話。しかし「板垣恵介のこと」を大きく取り上げるわけでなし、2世漫画家ではなく板垣巴留自体の評価が伺える作り。いやわたしも実際、板垣巴留が見たくて読んだし。

「自分はたいして派手ではない」という自己認識で描かれるものの、個性丸出しと言うか、うん、そう、こういうカンジでも「普通」を名乗って生きていいし生きたいネ・・・と勇気をもらいました(勇気?)

 

特に家族の在り方についての「普通」概念は本当にいいナアと思って、父ちゃん板垣が多忙で仕事場に泊まり込んでいるので、基本的に「家族とは電話で話して会うのは週1.2」というスタイルだったそう。これは普通になっていいスタイルですネ。

 


『夏目アラタの結婚』11巻

 

 

 

夏目アラタはリーゼントの児童相談所職員。担当児童からの願いで、ある死刑囚に会うことになる。凶悪で、嘘つきで、一見可憐でも口を開けば歯がボロボロ。モンスターのような女性は、夏目アラタのこの後の妻。

 

緊迫のリーガルサスペンス、ふたりの逃亡編。面会室を飛び出し、二人は車に乗って束の間の自由を味わう。

 

いやあ夏目アラタの結婚はちょっとネタバレしたくなくて・・・美麗な絵とおぞましい猟奇殺人、「面会室ワンシチュエーションサスペンス」というハイクオリティなエンターテインメント。


ほんとネタバレしたくないんだけど、真珠(死刑囚)のかわいらしいビジュアルを一瞬でモンスターに変化させる口腔について多方面で納得せざるを得ない理由が明かされいやあああああコレは面白いのヨオ(これも言いたくなかったけどココほんとスゴくて!!)

 

次の12巻で最終巻。


犯罪のアリバイ崩しから少女の愛着障害の話になってきていて、好きってなんだっけ、結婚ってなんだっけって考えるマンガでもあります。

 

愛するってなんでしたっけかね。その『夏目アラタの結婚』なりの答えが、12巻で出るんでしょうか。

 


『あの日の腹の虫』

comic-action.com

 

『ようきなやつら』岡田索雲新作。

そこは開放的で閉鎖的な精神病棟。1983年を舞台に、7000坪の敷地と職員数110名、入院患者290人の巨大な精神病院で、幻覚とも現実とも言えない体験をする人たち。3話一挙公開。

 

ウンッ

 

不穏な空気とほんわりした笑い、そして80年代ファッションの違和感を抱え、3話じゃ全然判断つかない!!!

 

「この後が気になる方はお便りを」ということで、これはたぶん連絡が多かったら続きが書かれる感じだろうなー

 

岡田索雲氏のマンガ、割と不遇な目に遭うことも多く、打ち切りになるケースも多々あります。『マザリアン』とかあれ多分もっとやりたかったんじゃないかな(『鬼死ね』読んでなし)

 

『ようきなやつら』『アンチマン』など、社会的な問題に向き合った作品・・・というわけでは(いまのところ)ないです。

 

・・・と言いつつ、ノールックで出てくる同性愛など氏が今まで築いてきたリテラシーは当然のように踏襲。ルッキズム等、「もうその話ずいぶん前にクリアしてるよ」という作品作りは「平凡な作品」というにはレベルが高いと言えますでしょう

 

『しあわせは食べて寝て待て』

souffle.life

麦巻さとこ、38歳、週4パート。
ほんの少し前までバリキャリで人生やるつもりだったし、マンション買うつもりだった。でも「一生付き合う病気」になったから、どうも人生を切り替えるべきだ。


築45年の団地と、そこに集まるひとたち、それからゆる薬膳。自分の時間を過ごすこと。

 

あっの〜〜、これはわたし自分語り不可避ですわ。。


わたしも会社員でした。一度リタイアしてもまた戻れると思ってた。
でもいろんなことが重なって、重なりまくって、本当に最近ですよ、「ああ、あの生活にはもう戻れないんだな」と諦めがついたのは。

 

『しあわせはたべて寝て待て』でも、そういう過渡期がリアルで、


「パートなのに服が上質」とか、わかる、お金がある時期にいい服買って、それを今も着てるんだよね。

 

他にもいろんな理由で会社員のレールから外れた人たちがふわっと生きていて、

 

けど割とその人たちも打算的というか、結構善意だけじゃない集まりで、そのバランスが好きですね、ええ。実際、そんなもんだと思うし(結構、人間関係の密さがウッとくる感じはある)(でも多分そうなるだろうなとも思う) 

 

それら全てをまとめる、ゆるゆる薬膳のごはん。あったかそうよ。

 

発達障害パーソンとして嬉しかったのはLD(学習障害)の症状を持つ人(明確にそう描かれてる)がやんわりと「困ってはいる」といいながら暮らしていて、あー、こーゆー人いるなあと思ったり。たぶん本人は自覚してない、という描かれ方。

その人は職種を選ぶことで特性の弱さをカバーしていて、こういう人ってたぶん、本人も周囲も自覚してないけど普通にいるし、こういう人に苦手なことを無理にやらせないでほしいな、と思うなど。その方がみんなハッピー

 

週刊TIMES2024年2/23号
『解体屋ゲン』1031話

 

 

 

パッとしない商店街のパッとしないカレー屋。ぼちぼち売り上げが伸びてきて、商店街一丸となってフェアを開催しようとしたが、カレー屋の店主は子どもが連れてきたともだちがあまりにも痩せているのを見て、こども食堂をやることを決意。ゲンさんたちがひと肌ぬぐ!

 

建築業界漫画ではあるけど、社会の問題にもガツガツ突っ込んでいく本作。今回もこども食堂の資金集めをするにあたり、「それはいい心がけだけどそもそも政府の仕事だろ」というまっとうな指摘。まとも!


それでもやりたい、というカレー屋に資金が集う。それもまたまとも。


古い店舗の店内リフォームの話になればそこはゲンさんの範囲内。またこどもの親に信頼されるよう、店内に監視カメラをつけるなどの工夫もする。こども食堂は無事オープンできるのか。

 

『阿・吽』(とりあえず7巻まで)

 

 

 

最澄空海
平安の日本仏教において、天台宗密教という大きな潮流があった。


権威に認められ愛されながら同時に批判し続ける最澄


アウトサイダーとして権威以外から認められ密教に突き進む空海


ふたりは同じ時代にあって、ただふたり、同じレベルで【阿頼耶識】を分け合える天才。無意識の魂が美しい筆致で踊り出す。

 

ごめんなさいぼく仏教のことは何も知らなくて(まず謝ります)

 

なので漫画としての『阿・吽』の話をしたいんですけど、暴力に飢えている方にはぜひにおすすめ!支配欲、権力欲、家庭内の暴力、フィジカルの暴力、性暴力、全部詰まってます。わたしかなり暴力耐性ありますけど「ここでこうきたらえぐいな」を矢継ぎ早で出されます。ワーニング!

 

これでもかと見せつけられる醜さと、心優しきエリート・最澄の「全てを救う」という壮大な意思との対比。


そして真理だけを追求する少年、空海。天才が故の学ぶことへの飢え、つまり「自分を救う」意思で密教に踏み入れる空海

 

最澄ははるかな高みを目指しすぎるが故に虚しさを抱え、空海は果てのない知識欲のためにいつまでも乾く。

 

どちらも「足りないことへの欲求」、これを絵で表す。おかざき真里氏の美しい筆が、最澄の虚無を白く白く、空海の飢えを黒く黒く描く。

 

2人の「足りてない、もっと欲しい」という究極の煩悩、これを絵でずっとずっと絵で描いていて、おかざき真里氏の華やかな絵柄で過剰に修飾されていく。

精神世界をどう表現するか、最澄の侘しさを、空海の衝動をどう紙に表すのかをずっとやっていて、もちろんものすごく参考文献たっぷりな、史実に支えられた物語ではあるんだけど、

「飢えを絵で描いてみたい」みたいな欲求を感じるです。

平安の最悪の策謀や治安の悪さすらその素材にしかすぎず、最澄空海のパッションを描きたいのかなあと。

空海の渇望を描くときの絵面の「黒さ」、もうあれよ、もののけ姫もののけ姫の祟り神みたいになってるの。見開きで真っ黒い勢いのある何かが吠えてるとか(空海です)。

【絵の勢いに翻弄されたい】という人にこそオススメかなあと思う。仏教も、この人らが何に悩んでるのかもわからん、ただ絵が強い、なんかを求めてるのは分かる気がする、絵に動揺させられたい、そういう。

 

「ピアス」

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ピアス、綺麗だね。


高校の頃、隣の席に座ったあの人は、口調はキツイけれど「退屈しのぎに誰かを傷つける人」には見えなかった。小さなピアスをしていた。


校則違反をめぐる、自我と小さな革命の話。

 

思い出話をさせていただきます(でも漫画の話)。


スラダンの井上雅彦が1998年に『ピアス』という短編を描いていましたね。ステップファミリーになる不安を抱えた少女と、ピアスをした少年の話でした。

 

ピアス、は、イニシエーションなのかもしれませんね。

 

校則という抑圧に明確、継続的に反旗を翻す装飾具のための、痛み。

この痛みを以て、これからの戦いの覚悟とする。そんな儀式。

 

1998年のピアスは少女の成長でしたが、2024年のピアスは女性が過去の革命の痛みを思い出すもので、読者の年齢層は違うところを見ているな、と感じます。

 

ところで、こういうマンガに敵役として出てくる一方的な悪役(この作品ではコンビニカスハラ爺さん)、基本的にはステレオタイプで一面的な「役のための役」になっているんですけど、実際こーゆー爺さんは死滅していないのでどうしたもんかな。。と思います。いるんだよなマジで。。

 

中原さん、最後の方のページで左手に指輪がなく、短編マンガの中の情報で全てを読み取るなら「独身でコンビニで働いている」という理解で良いと思って

(共に暮らすパートナーがいたとしても)日本社会の(書類上の)独身女性への冷たさは異常なほどで、全てが「男性のイエに入ることを前提」にした権利保障になっている今、もう塞がってしまったピアスをよすがにカスハラ爺いを撃退するその背筋のまっすぐさ。

 



『ヒトナー』

shonenjumpplus.com

 

素晴らしい思考実験SFでしたナ・・・

 

そしてこれは少年漫画媒体であり、このような青臭い理想論を言うべきだし、

 

おれたちは「青臭い理想論」をこそ頭上に高く掲げ、そこに苦しみながら向かっていくしか生き延びる術はないのだ

 

ところで

アオリが「ケモノはヒトにフェチズムを感じるの?」なんだけど、本当のメッセージはその辺の話では全然ない、

けどいいんじゃない、そういう目眩しで毒薬をそっと忍ばせる、それが毒かどうかは後世の歴史家が決めるだろう

 



【コミックDAYS読み切り】キャラバン

comic-days.com

 

キャラバンーーーー隊を組んで全国各地を回り、宣伝、販売などをすること。その集団。

 

技術者の会社で起こった「よくある話」。納品先での初期不良品対応。そこから始まり、ミッションを終えるまでの1日の話。

 

これは良質!!
小さなリアリティを積み重ね、問題あり、課題あり、それを乗り越える・・・

うわあ、こういう小説は昔はもっとあったはずなんだが、これは2024年のマンガだ!!素晴らしい。

 

ただ、チクっと言わせてもらうなら、キャラバン・・・生活も共にしたであろう長期間の旅路の仲間をタイトルに採用して、女性がたったの一人としていない、というのは指摘させてもらうですネ。無理に入れろたあ言わないけど、わたしは客じゃないのね、OK OK・・・とはチクっとは言いますわさね