漫画のことと本のこと

漫画好きが読んだ漫画や本の感想を書くブログです。

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『はだしのゲン』をサブカルチャーコミックスとしての面白さで評価する

面白いのよ。 めくるめく悲劇の連続、事実や作者の実体験とリンクしているという背景からの強い感情喚起、 悲劇に痛快な勝利を与えるゲンのクソガキ力(りょく)、 当時の貴重な文化資料としての好奇心、 史実が作中に登場する知的な快、 ゲンの武器は現代感…

トーチweb 『COVID-33』

to-ti.in やるせなくて切ない、パンデミックの日常SF。 手話を寂しい水色で描き、柔らかく印象に残る。人は希望を持つべきだ、それがSFなら。 この作品の会話は手話であり、水色で取り出された手でつむがれる簡易手話はビジュアル面での愛らしい主張がある。…

『チェンソーマン』(1部)読む映画秘宝としてのチェンソーマン

著者:藤本タツキ出版社:集英社 親の借金を抱えた少年、デンジは友だちのポチたと【契約】を交わし、この世界の恐るべき存在「悪魔」、チェーンソー頭のチェンソーマンに変身できるようになる。 その力を見出したのが公安の美女マキマ。貧しいデンジはジャム…

くる日もくる日もコロナのマンガ

くる日もくる日もコロナのマンガ -ビームコミックス-しりあがり-寿/dp/4047365335 しりあがり寿氏による「コロナの日々」4コマ。 トランプ、安倍、小池百合子などリアルな「当時」の社会と、現実を薄くスライドしたファンタジーが交差する。 寿先生、ちゃん…

『cocoon』沖縄戦を生きるために、少女は想像力の繭に逃げ込む。繭からは、吐瀉物と内臓がまろび出る・・・

著者:今日マチ子出版社:秋田書店 沖縄の戦局はもう悪くなっている。看護隊の女学生が単なる洞穴(ガマ)で負傷兵を看護する。 たくさんの友達を見送りながら、親友で「王子様」のサンと、ミサイルが降る沖縄で生きるマユ。 マユは空想の繭の中にいる。外がど…

『奇子』〜感情移入のできない、戦後処理と因習と悪魔のファムファタール〜

著:手塚治虫出版社:小学館(1972年連載当時) 昭和24年。 田舎の旧家の天外家では家長の父が長男の妻に産ませた不義の子、奇子を中心に、いびつな人間関係が構築されていた。 次男、天外仁朗はGHQのスパイであった。殺人工作に関わったことから、天外家の人…

『石見さんのGライフ』フェミニズムってこれ含むかんね?バカで下品な女性ギャグを寿げ!

※下品注意※ 「日常生活における女性の性欲が描けたらな、と」快感を追求する異色のヒロイン…あえて「Gライフ」を描くわけ わはは!アホだ!!と、笑い飛ばして終わるにはこの作品の持つ意味は大きい。 明治に女性の性欲を禁じられた本邦。1930年代平塚らいて…

『スーパーマン・スマッシュ・ザ・クラン 』書評~お子さんにもピッタリの明るく正しいスーパーマン~

原作:ジーン・ルエル・ヤン作画:グリヒル翻訳:吉川悠 2020年ハーベイ賞ヤングアダルト部門受賞。チャイナタウンからメトロポリスに引っ越してきたチャイニーズ・ロベルタとトミー。スーパーマンと共に秘密結社クランを倒す! 1946年のスーパーマンの連作ラジ…

『しょうもないのうりょく』※漫画の感想〜ささやかすぎる異能+穏やかな人間関係=平和!スコシフシギなSFの世界に移住したい

著者:高野雀出版社:竹書房 舞台はありふれた普通のオフィス。しかしこの世界の人間は皆「異能」を持っている。 異能は「書類を崩さず積める」「猫にめちゃくちゃ好かれる」「果物の旬がわかる」などささやかでしょうもないものばかり。 せいぜいが話のタネく…

『反トランス差別ZINE『われらはすでに共にある』』感想〜「くだらない権」を保護せよ〜

著者: 反トランス差別ZINE編集部 トランスジェンダー当事者、あるいは「共にある」著者17人のエッセイ、またおすすめの本などが紹介されている。 一番最初の三木那由多さんのエッセイだけ、大筋と私の感想を絡めて述べたいと思う。 『くだらない話がしたい』…