面白いのよ。
めくるめく悲劇の連続、事実や作者の実体験とリンクしているという背景からの強い感情喚起、
悲劇に痛快な勝利を与えるゲンのクソガキ力(りょく)、
当時の貴重な文化資料としての好奇心、
史実が作中に登場する知的な快、
ゲンの武器は現代感覚でいって規格外のクソガキ力(りょく)で、それは戦後の混乱期にアウトローと良心を両立させることのできた、現代では成立し得ないヒーロー像で。
今のマンガで決して見ることのできない規格外のこどもが、
世界で唯一、最悪の爆弾が落とされたその後を生き延びるって、
こんなに面白さを保証された設定ある?
少年マンガって「この困難に・・・まさかこんな方法で抗うのッ!?」のために、必殺シュートやスタンド能力を編み出してきたわけだけど、
現代人の想像を超える悲劇に、「現代人の想像を超えるクソガキパワー」で抗うのはめちゃめちゃ面白いです。
絵が1970年代なので受け付けない、という人に無理に勧めないけど、
被爆体験、戦争体験を教科書的に学ぶ「しかできない」マンガだという評価には、私は完全にNOと言うよ。
「この世の理(ことわり)から痛快に離脱した必殺技で強くなって勝ちたい」
っていうの、少年マンガで求められる感情だと思って。
この世の物理法則を無視したかめはめ波やドライブシュート(これはサッカー選手に再現されちゃったけどさ)、各種スタンド能力、悪魔の実、(ヒロアカでいうところの)個性、○○の呼吸、
これらは「この世の理」を痛快に離脱する方法で
はだしのゲンさあ、
「理不尽な大人が強いて、大人たちが従わざるを得ない【国家神道を基にした道徳観】」
っていう「この世の理」があって、
「軍の保管庫に泥棒に入ったり悪徳医者にウンコぶつける」
っていう「痛快な離脱」があるなと。
はるか昔イタリアルネサンスから、芸術は宗教道徳に抗ってきた。
享受者は抑圧からの解放を喜ぶ。ふだん縛りつけるものを痛快に飛び越える時、私たちは「おもしれー!」と言う。