その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。
リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。
本日は19件の漫画の感想です。
- 『ルーザーズ ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~』
- 『ボールアンドチェイン』4話
- 『ダンゲロスシリーズ』
- 「[番外編4]ハンサムマストダイ」
- 『Season10/番外編 第1回 邦キチー1グランプリ』
- 『花の雨が降る ROCAエピソード集』
- 『贋 まがいもの』
- 『梅花の想ひ人 日本昔噺選集』
- 「[第120話]ダンダダン」
- 「[番外編4]放課後ひみつクラブ」
- 「[#6]スパイダーマン:オクトパスガール」
- 『【第二十七話】カネコさんのやさしいおやつ【ブルーベリージャムとマシュマロのホットサンド】』
- 『トランスフォーマーごー!ごー!』
- 『36才のオタクが急にハマれなくなった話』
- モーニング2023年41号『サラリーマンZ』(新連載2回目)
- 『逢いたくて、島耕作』
- 『【モーニング・ツー読み切り】画家とAI』
- 「SCRAMBLE in 10min.」
- 週刊漫画TIMES2023年9月22日『解体屋ゲン』
『ルーザーズ ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~』
本邦の官房長官が「記録にないですね」とか言った関東大震災における朝鮮人虐殺。
このテーマを真っ向から取り上げたマンガ『追燈』を9/1当日に無料公開した気骨あるマンガ媒体、双葉社のWebアクション。
そのアクション黎明期のヒストリーの漫画化が『ルーザーズ』。作は「こづかい万歳」の吉本浩二氏。
1965年のわい雑な社会環境化で、こどもが読むものだったマンガを大人に向けて切り替えたのはどのような人間たちだったのか。
期間限定で1巻分無料。1巻の山場は「モンキー・パンチ発掘」というめちゃくちゃアガる展開でございます!若い頃のモンキーパンチいい人そう〜!!!
『ボールアンドチェイン』4話
専業主婦のあやと、バリバリに働き結婚間近のけいと。
団地妻(的に見える集合住宅)の専業主婦
と、式もこどもも拒絶のけいとの価値観が全く異なる2人の物語が交錯する。
女とかだとか、妻だとか。常識を越えていけ。
やな感じのレビューですよ↓
すごく現実的なところを見てるんだろうなあと思う。。
あやがつまらない暮らしをして腹の出た夫と離婚できないのも、けいとの婚約者が隠れ保守でダルいことばっかり言ってるのも。
。。。そうかなあ?
4話で「家庭内別居」って言葉が出てきて、家庭内で無視をしあうっていうことを指すっていう話、
いや、文脈としてそうじゃないのは理解してる。してるんだけど。。
夫婦、というか同居パートナーって、ある程度相手を無視するというか、反り合わない境界線に踏み入らない必要はあって、「信頼の上での無視」は必要なんじゃないかなと。
けいとも、「新しい価値観の女」のように描かれていてめちゃくちゃにカッコいいのに結婚に固執していて、
私のよーな、元から生家の家庭環境が崩壊してて、「互いの政治主張には踏み込まない条約」を夫と結んである程度の(信頼関係の上でだけど)無視を敢行している人間には、
うーん。。ちょっとしっくりこないスね。。
『ダンゲロスシリーズ』
少し特殊な成立のマンガ。
コミックスとしては『戦闘破壊学園ダンゲロス』『ダンゲロス1969』の2シリーズ。
このダンゲロスシリーズ、そもそもが作家、架神恭介のデザインするウォーシュミレーションテーブルトークRPG。
その小説を架神恭介自らが書き、「すべての版権をフリー」にしたところ、漫画クリエイターの横田卓馬が無連絡でコミカライズ(!)。架神恭介はヤンマガに掲載されたのをみてコミカライズを知るという異例の作品である(版権フリーだからそれで良かったっぽい)(その後はビジネスパートナーとして仲良くやってるらしい)。
テーブルトークRPGである都合上、キャラクターは皆エッジのたった能力を持っている。その能力とは、「妄想が現実に変わる確信を持つこと」、すなわち厨二的(コレはあえて使おう)妄想を現実に使えるという設定であるッ!!
能力そのものに溢れるエロ、グロ、ナンセンス。それを駆使して戦う能力バトル!!魔神自治組織「生徒会」と同じく魔神「番長グループ」でダンゲロス・ハルマゲドン!!
とてもじゃないがお子さんや親御さんには勧めません(なのでリンクも貼らないぞ)!頭が悪くて厨二なあなたに最適なコミックス。作画の横田卓馬の美麗な絵で下品が冴え渡る!(というわけでリンクも貼らない、どうしても見たい方は自己責任でググってちょうだい!)(18歳以上でよろしく!!)
「[番外編4]ハンサムマストダイ」
パンツ回。
今回は4ページの特別編なんだけど、4ページすべて意味がわからなかった。2回読んだけどそれでも意味がわからなかった。これが未知との遭遇である(何言ってんの?)
大体パンツ回ってなに?(自分で書いといて)
『Season10/番外編 第1回 邦キチー1グランプリ』
「映画について語る若人の部」に所属するすっとこどっこい邦画プレゼンター女子高生、邦キチが愛と共に「どうかしている」邦画をプレゼン!!
アメコミ映画のヌル映画ファンの部長やアジア映画好きのヤンヤン、ほか男性アイドル映画や特撮映画マニアも集まって、今回はどの角度のどのジャンルのすっとこどっこい映画を紹介するのか?
この回は特別編、Twitterで募った「邦キチグランプリ」、すっとこどっこい邦画300作(ええ〜!?)の中間報告。
扱う映画も面白いんだけど、マンガファンの視点で言うと邦キチたちが完全にメタ存在として現実のツイッタラーと同じ世界線にいるのが面白いスね。ラジオパーソナリティだこれ。
大昔のジャンプには巻末に「ジャンプ放送局」という投稿ページがありましてね、そこにファンアートや編集員のお題について投稿したのです。ハガキで!
このジャンプ放送局も編集者がアイコン化・キャラ化してハガキ職人達とやり取りしていて、懐かしく思い出した次第。
今足りてないのはそういう牧歌的なキャッキャしたやりとりな気がして、邦キチグランプリはそのニーズに応えたのかもですねえ(お茶を啜りながら)
『花の雨が降る ROCAエピソード集』
またロカと美乃に会える!
いしいひさいちによる自費出版本『ROCA: 吉川ロカ ストーリーライブ』のアナザーストーリーズ。本編の時系列に沿いながら、別シーンを見せていく構成。
『ROCA: 吉川ロカ ストーリーライブ』はKindle Unlimitedでも読めるのでぜひぜひ。4コマが基本のスムースな読み心地に、ビターな味が効いた渋みのマンガ。↓
『贋 まがいもの』
昭和初期、極貧の幽霊絵師が手を染めたのは贋作作り・・・!技術を弄し魂を写し、その絵は「本物」になり得るのか。
美大生の手遊びではあるんですが、
日本アートは粉本・・・、先人の絵をトレースしたりお手本にソックリに描くことにより流派の技術継承する世界と聞き及んでいます(ただし、江戸時代琳派の私淑文化については諸説研究論文が出ています)
そのため逆に真贋を見極める技術や研究は盛んであると推測します。そこに偽物を紛れ込ませることがどれほどの反逆であるか。それは美術史を操作すること。
・・・みたいなことを踏まえると、エキサイティング度が増すマンガっす。もちろん美しい絵と、美術に対する吐きそうな情熱を堪能することでも楽しめます。
『梅花の想ひ人 日本昔噺選集』
金をベースにした極彩色を展開するクリエイター「おく」による日本の昔話とは。フルカラー、色に感受性のある人を惑わせる妖艶な物語。
これは絵を見るタイプの漫画・・・!
特にこの4話目については、琵琶法師に視力のない時は筆書きの白黒、視力を与えられると豊かな色彩が展開します。必見。
「[第120話]ダンダダン」
見開き!迫力!街は壊すもの!超作画オカルトバトル!・・・時々恋❤️
プリミティブな作品なのであんまり粗筋が捗らない(そしてそれでいい)、画力とバトル、そして少年マンガの正義を楽しめる「正しい」マンガ。
今回はバトルの合間の仲良し回。前半、ちょっと妖怪「八尺様」がいるけどすごいかわいいのでハナマルです。
私としてはノスタルジーと羨望を感じたりね。。高校生の遊びに。
そうだったっけ、みんなでジャージでコンビニ行ってソフトドリンク買って、ちょっと親しい子と集中的に話したりして、こんなことしてたっけ、してたっけかなあ。
今の高校生もこういうことが嬉しいかな、そしたらいいなあ、なんて思う。
とかいいつつ、後半では今後の新しいバトルの匂わせが。どえらいイケメン敵がチラ見えしてたのでたぶんこいつ仲間になるな(そういう見方よくない)
「[番外編4]放課後ひみつクラブ」
巨大学園の「ヒミツ」を探す蟻ヶ崎さんと猫田くんは「放課後ひみつクラブ」のメンバー。
会話のテンポが音速!ハイパー良テンポギャグマンガは古き良きアニメの香り。
今回は番外編で3ページなんですが、スイカを食べていると「俺が本物をスイカを食べさせてあげますよ」と言うとてもあの人っぽい食通が出て来たので堪えきれずレビューいたしました。
こういう。。幕間の話にアレっぽいアレをぶっ込んでくるの、なんかこう90年代アニメみたいな雰囲気で、私大好きですね。ちなみにその食通は塩かけられて溶けます(なんて?)
「[#6]スパイダーマン:オクトパスガール」
スパイダーマンの敵・オクトパスが日本の小学生に取り憑いた!?いじめられっ子の女の子が、Dr.オクトパスのメカで悪いやつをやっつける!!
少年マンガだよなあ・・・こうあってほしい。
このDr.オクトパスはおっさんタイプ(アメコミはバースで色々設定が変わるので)。傲慢で横暴で、地球の温暖化や差別に対して「俺が支配して正してやる」というタイプ。
あのねえ、大人はダメよ。これ採用しちゃダメ。こんなの言うだけならヒトラーだってスターリンだって言ったでしょうよ。
でもさあ、こどもはこういうのに夢見ていいじゃん。いずれ大きくなったら1人の力でできないことを知るんだから、その「正義」はいいじゃん。
情けない事言うけど、この世は「温暖化」と一言言っただけで「カツドーカ」「どこから金もらってんだ」って言われるクソみてえな世界なので(こんなに暑いのに!!!)
「温暖化が止めなければいけない事」って前提を、悪い(けど強い!)おじさんが言うっていうの、すげえいいと思うんだわ。ダークヒーローだね。
『【第二十七話】カネコさんのやさしいおやつ【ブルーベリージャムとマシュマロのホットサンド】』
ちょっと珍しい、ライター会社がやってる媒体のマンガ連載(そのためサイト全体がタバコ啓蒙の内容)。
その中のおやつマンガは詳細なレシピ掲載&猫マスターの喫茶店での緩やかな時間という、タバコ全く関係ないテーマ。媒体にゆとりがある!
マスターは猫がいい。それは絶対あるじゃないですか(犬でもいいんだよ)
『トランスフォーマーごー!ごー!』
媒体はテレマガネット。こども向けのトランスフォーマーまんが。
トランスフォーマーが映画化した(んだね?)ため、ほぼおもちゃの宣伝用として作られてる。
残念ながらジェンダーロールが古く、こども向けにはもうちょっと頑張ってほしいところ・・・
このマンガ、下スクロールしていくと作者のTwitterアカウントに繋がる。作者、疲れ果てて「セックス&ドラッグ!!」とか書いたら超怒られるんだろうなーとか心配。(まあ本人の裏垢はあるだろうけども)
『36才のオタクが急にハマれなくなった話』
エッセイ漫画。
ずっとずっとオタ活をしていた私が、36歳にしていきなり!マンガにもアニメにも心が動かなくなってしまった。。どうしよう!
Twitterで流れてきて、電子292円ということで購入。なぜならこのトピックスは私自身結構恐れているからッッ。。
アイデンティティクライシスの、極めて個人的な記録。とても短いし、何かの示唆があるというわけじゃない、この方個人の日記という感じ。でもそれが個人史として刺さる。
この作品自体じゃなく、私のことなんですが、まあ現役ですよ(大いばり)。もう欲しいマンガが欲しくて欲しくて困っちゃうもん。
でも、いつかこうなる日が来るかもしれぬ。そしたらどーすんのかなー私。あーあヴィンランドサガ一気買いしたーい(元気!)
モーニング2023年41号
『サラリーマンZ』(新連載2回目)
時はコロナ禍終焉間際。古の経営者哲学を暗唱しながら今日も業務に励むサラリーマン、前山田は信頼厚き複合機企業営業課の課長。
ところで外にはゾンビがいっぱいです!サラリーマンゾンビパニック!
先週、前半で本田宗一郎名言とかをバキバキ出して「サラリーマンもの?と思わせてからのゾンビ襲来」というインパクトのある1話目を超え、出オチ100点だからこそどうするのか?という緊迫の2話目(読者的に)。
ふむふむふむ、これは。。。。
「ゾンビが出たら軍隊に頼れ」のアメリカゾンビ映画から、「ゾンビが出たら日本サラリーマン哲学で処理」という転換をやろうとしている・・・?
ゾンビに噛まれたら労災申請、など、非常時に会社組織を活用したら?というSFな気がする。へえ〜!
↓は1話目試し読み
『逢いたくて、島耕作』
課長島耕作を「聖典」と崇めるZ世代サラリーマンが島耕作世界に転生!?ミッションは世界を壊さずに非業の死を遂げる小悪党、今野の命を救うこと(あと島耕作にも会いたい)
あのねえ〜。。。。
私みたいな島ニストだけが面白いかっていったら、そうでもない世界に突入してきたよねこれ。あ、島ニストって言ってるの私だけだけど。
つまり、異世界転生世界の世界観が超強いんですよ。
異世界転生で「あああ。。そ、そんなに夜は明るくないヨ。。」とか、「いや奴隷ってそのレベルの扱いじゃないし恋とかできる精神状態か疑問よ。、」とかの、世界観が受け付けない状況ってあると思うんですが、
島耕作世界ね、「強い」から。1980年代日本サラリーマン世界、さらに島ワールドに絞ってるから、揺るがない。
あとファンタジーの二次創作とかだと、作者がもう100年前に死んでるから改変やり放題とかあるじゃん。違うから。生きてるから弘兼憲史。改変とかしたら大変なことになるから。
「一次創作を深く理解、かつ、ふざけた改変を許さない環境での転生」なので読んでて信頼感があるのよ。これで島ニストだったら絶対面白く読めるから!(島ニストじゃない)
『【モーニング・ツー読み切り】画家とAI』
近代の西欧と思われるどこか。
画家たちは「ノーム」の存在に怯えていた。技術を学習し、即座に描いてしまう妖精たち。
お人好しの画家モーリスは、ひとりノームに寄り添った。
(そして遠くに戦争が忍び寄る)
大作短編。
甘い物語だと言われればそうだけれど、こういう真っ当なメッセージをすごく、久しぶりにもらった気がした。
↓以下はネタバレなので文字色を白にしています。ネタバレOKな方は反転かコピーで読んでくださいね。
読み切りの構成として、後半のNO WARは要らないはずだと思って、
切ってしまっても全然通用した。でも入れた。
今、社会的に戦争が匂う世界で、それは有意義なことなんです。この国でもバカが戦争を煽ってる。こういうメッセージは、どれほど甘いとしても希望として嬉しいよ。
なにより、これこそAIにできないことで。イデオロギーを含むことは、AIにできないこと。
これはまさにこのマンガに描かれている、「創作に思想を塗り込む」というやつです。
西洋美術は、過去より政治と哲学とセットなのです。日本ではいつしか切り離されているけれど。
このテーマを日本舞台でやってくれたらな、とちらっと思ったけど、これは西洋美術の思想でもあるので、日本以外のシーンで正しいんだなと思い直した。
作中、創作の工程を思索するにあたり、キュビスムなどにも思考を巡らせていて、
それがAIにできないことじゃん。新しい絵の構造を生み出すこと。
この短編自体の物語の作りはものすごく古典的な(いい意味で)のに、AIっていう新概念を入れるだけでこれだけ視点がまた別に開けるの、素晴らしい転換だと思ったよ。「AIのある世界は前提で、じゃあ自分は何をするか?」ということに向き合ったっていう。
「SCRAMBLE in 10min.」
『地獄楽』の作者が贈るジバンシイコラボのPR漫画。
おれはこういう広告は好きだよ(クリエイターはどう思うか分からないけど)
それにしたって
な
ん
だ
こ
れ
?
(スピード感に踊れ!)
週刊漫画TIMES2023年9月22日
『解体屋ゲン』
ちゃんと仕事する島耕作、セックスしない島耕作!真面目な建築業界マンガ『解体屋ゲン』
今号のゲンさんはゼネコンの女性役員対決のサポート役。
ゼネコン初の役員に抜擢された内田女史。それというのも、ハウスメーカーから遣り手の女性役員が交換でやってくるから。内田女史の戦闘心マックス!ゼネコンVSハウスメーカー、双方の女性役員のやり手同士が火を吹くぜ!(後半に続く)
ゲンさん、とても真摯に建築業の未来を憂いている漫画で(作者の方もすごく発信してる)、女性の活躍についてはもうすごく描くんだよね。
それは甘い未来。わたしのよーな子育てをしてる人間からするととてもじゃないが夢物語なんだけど、現実を見ながら夢を語ることを忘れてはダメだと思うんだよ