その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。
リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。
本日は25件の漫画の感想です。
- 「[第19話]ハンサムマストダイ」
- 「墓場まで持っていく話」
- 「ザ・キンクス | 第6話 闇夜のアウル」
- 週刊ファミ通2023年11月2日号『無慈悲な8bit』
- 「[第126話]ダンダダン」
- 「[第76話]ラーメン赤猫」
- アフタヌーン2023年12月号『ミライライフライ』(新連載、不定期連載)
- 「遊星からの幸福感染」
- 「東京歌舞伎タワー計画 S:1/000 浦島設計」
- 「血を召し上がれ」
- 『マンガ 認知症2』
- シリウス2023年12月号『タワーダンジョン』
- 『全員記憶喪失オフィス』
- [第20話]ハンサムマストダイ
- 「[第127話]ダンダダン」
- 『こういうのがいい』
- モーニング2023年49号『社外取締役 島耕作』
- 『ゆりあ先生の赤い糸 』
- 「スペースの君に」(読み切り)
- 「[第147話]チェンソーマン 第二部」
- 『DOGA』
- 『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』
- ヤングエース2023年12月号『まんがでわかるまんがの描き方』
- 『瓜を破る』6巻
- 『DOGA』
- 『昭和ママと令和キッズ』
- 『線場のひと』
「[第19話]ハンサムマストダイ」
。。。
昨日、ジャンプラで「おじいちゃんが死を教えてくれる」マンガを読んだんだけど、今日もまた読んだな、超別ベクトルで。
マジな話の合間にどうしても看過できないトンチキがあって、例えるなら「しっかりした椅子に座ったらいきなり走り出した」みたいな、みたいなじゃない、この例えも訳がわからないだろうが私だって訳がわかっていないのだ
「墓場まで持っていく話」
早乙女新介(そおとめしんすけ)は25歳にして死んだ。死んだものは「墓場まで持って行く話」、略して墓話(ハカバナ)を話し、その軽重で天国地獄が決定する、、らしい。アフロのおねーさんに探られる新介の秘密とは。
楽しい絵柄とポップなリテラシーの利用。
ブラックのキャラクター、女性から男性へのセクハラ、性指向など、芯を食った高いリテラシーで心地よく読めますッス!
こういう表象を消費するだけか、現実にも導入するかで批判と受け入れの境が分かれるのでしょう。女性からでもセクハラダメ絶対。
お話はやや込み入ったミステリなので、絵柄と共にゆっくり読んで楽しんでくだされ。ただ、ミステリの謎として今どきソレは古いぜ、という気もしなくはないぞ!コンテンツとしても結構周回きてる!
「こういうのうんざりーー」って人がいるのもわかる。けど、ジャンプラという「ポップ」に乗り始める頃合いでもある、と言えると思う(ネタバレを避けているのでずっと婉曲な言い方)
それにしてもアフロは「上からの強い光のある舞台で、顔周りの影だけ塗ることで画面の黒を減らすことができる」というテクニックを知った。おお。。
「ザ・キンクス | 第6話 闇夜のアウル」
構造を改造せよッ
ギャグに内包された飽くなき物語への問いと自己完結。物語の構造は入れ替え裏返されそしてカタルシスへ。構造を揺らがされることは不安だソレがいいッ
ある田舎に暮らす家族の、少しヘンな暮らし。牧歌的な生活にいつしか「問い」が紛れ込んでくる。
今回は6話7話通して読んで欲しいんだな。お話の時間軸をひっくり返していてそれだけでも脳がエンドルフィンを放出します(エンドルフィンってなに?)
6話は不穏な「行きて帰りし物語」、7話はナンセンスギャグ。知的な香りとお楽しみ。
週刊ファミ通2023年11月2日号
『無慈悲な8bit』
ゲーム好き漫画クリエイター、山本さほのゲームあるあるエッセイ2ページ漫画。
私はゲームのことはこどもがやってるもの以外何もわかりはしないが、そこに漫画があるなら読もうとも!
今回のお題は「スイカゲームについて」。気づいたら流行っていたスイカゲーム、この手の大きなタイトルじゃないゲームの流行の決め手はつまり「配信者のリアクションが面白いからなのでは」と考察します。そうなの?(何も分からない業界の話は楽しい)
ところで、この漫画の感想の宛先が「ファミ通『無慈悲』宛」というのがいつ見ても笑う。無慈悲宛て。
「[第126話]ダンダダン」
マッドマックスでーーーす!!!!
ちょっと和風オカルトなんで、デコ山車にパンクバンド積んで歌わせて学校ロボが追いかけてきて周囲に二宮金次郎像がピョンピョン襲ってきますマッドマックスでーーーす!!!
ギターから火を吹いたら危なかった(危なくない!)(いや危ない)!
作画は週刊連載として最高レベル。マッドマックスが足りてない人は見ていってーーー!!(私足りてなかったの助かった〜)
「[第76話]ラーメン赤猫」
ラーメン赤猫は猫がやってるラーメン屋さん。でも経営、人事、近隣店舗との付き合い、顧問弁護士との付き合いヨシ!渡る世間は猫ばかり、優しい猫ラーメン屋の日常。
今回は「お世話になってる農家さんがお中元送ってくれたからいろいろ送ってくれた」「相席になってくれたから一品つける」など、きめ細やかな付き合いやサービスがきらめく回。
私はこーゆーサービス業の細やかさをすべて失って生きてるもんで、ほんとにその、こういうことができる人、天才だからね?天才よ?誇って?バリバリ誇って??(念押し)
アフタヌーン2023年12月号
『ミライライフライ』(新連載、不定期連載)
その国では苛烈な競争がある。場所は中国。舞台は大学。時代は現代。小さい頃から追い立てられ追い立てられ入った大学で、それでも休むことを許されぬ学生たちは自由を求めて自死をする。その、ドキュメンタリーに撮る決意をした女学生。
作者は雨田青(あめたあお)。翻訳は金子拓真。
現代の中国の加熱する学歴主義、人間の限界を超えた学歴の追求と、そこから転落する恐怖。
作者の方はチャイニーズネイティブの方なんだろうか(少し調べたけどわからなかった)、
「マンガで現実を知ることはできない、ただし入口にはなる」がモットーの私としては、隣国の現代の1シーンをモチーフにした漫画が読めるのは嬉しい。
社会的な題材だけど、ドラマティックな演出でスリリングなエンタメをやるのかな、、という気配がする!
本作品の試し読みはないんだけど、作者の読み切りはこちらから読めます。女性への暴力があるので注意。
「遊星からの幸福感染」
おばあちゃんを介護して、夢をあきらめてきた空。彼女のもとに飛来した「かわいい」宇宙人たちに背を押され、人並みにSNSを始めた空の、自分なりの「人生の獲得」。
またそうとう賛否が分かれそうなマンガですね・・・嫌いな人は嫌いだろうという漫画。
星新一のショートショートとかが好きな人とかは結構いけるんじゃないかな、(ことば少なに)
しんどい時はお勧めしません。私はずっと眉の間にしわを寄せて読みました。
楽しかあないですけども、この問題提議が誰かの心にとげのように刺さる時、ひょっとしたら社会が少しだけ変わるかもしれない。暴力を描くコンテンツには、そんな力があるでしょう(暴力的な漫画、だと思います)。
「東京歌舞伎タワー計画 S:1/000 浦島設計」
歌舞伎町をふらつく男は、亀を助けてスナック竜宮城へ。街を味わうマンガ。
うわーーー待ってたーーー!
この作家さん、「通勤電車で漫画を描いた」ってマンガで話題になった方で。
サラリーマンの方で、通勤電車の中でノートに絵を描いて、朝塗って。
画材はシンプルなものだって言ってたけど、あえて消失点を取った線とかが残ってて、それがまた渋くてねえ。
今回の漫画も味わい深い歌舞伎町がいくらでも眺められる。絵を眺める漫画です。
気に入ったらこっちもどうぞ!かっこいいんだあ〜
「血を召し上がれ」
道端で拾った吸血鬼、バリーさんは意地悪で何もできなくて読書マウントが酷くて、でも大好き。読書感想と血の供給でバリーさんの気を引く日々は、いろんなところが痩せていく。
読書感想のコミュニケーションは特別な関係のコミュニケーションになり得るか。漫画の感想を書き続けている私にズバッとくるテーマ。
読書好きが高じて「すべての本が読みたくなった男」が永遠の命を得て読み続ける本。
振り向いてもらえるかもしれないと顔色を伺い続けて「良い感想」を話し続ける女の子(名前が出てない!)。
私は感想を収集するのが趣味(多分研究的な目線なんだと思うけど)で、感想とは影響力のある他者によってグッと変わることはずっと見てます。私自身も経験あるし。
その人が当事者だったり、本をめちゃくちゃ読んでいたり、好意を持たれたかったりしたら一発です。バリーさんは永遠の命があるため、知識量はすごいし三島由紀夫や菊池寛の時代も見ていますから説得力もありますね。そんで冷たげな語り口で断定されたら一気に心弱くもなりますよね。嫌いなコミニュケーションだな〜
バリーさん、民俗学的アプローチに行けばよかったのに〜。感想は選別するもんじゃないんだよー増えるもんなんだよー(老婆心)
『マンガ 認知症2』
これはマンガで描かれたレポなので、微妙に私の範囲なのか?と思う、
介護マンガですね・・・
こういうセンシティブなテーマをわかりやすく伝えるためにマンガというメディアが選ばれることはとても多いのでやっぱりマンガの範囲なのだ。
誰かの手助けになればと思ってシェア。かわいくて見やすい絵なので入りやすいかと。からりの人が目を背けられないところなのでね・・・
シリウス2023年12月号
『タワーダンジョン』
弐瓶勉新連載。
ある時、禍々しきものが王女を奪った。それは竜の塔の中に去っていった。
力自慢のユーヴァは、とある村の召集兵として近衛団の竜の塔探索に加わった。
広大な世界、宙に浮く塔、阻むモンスターと探究心。
壮大なアドベンチャーのはじまり。
ほぼ色を使わない、弐瓶勉さん特有の白っぽい画面。古き良きファンタジー「塔の探索」をテーマに進むのかな。
クリーチャーがグニャグニャしてて好みの造形!どんな物語になるか。
試し読みはないので(ちぇー)、告知ニュースでどうぞ。
『全員記憶喪失オフィス』
https://biz.chunichi.co.jp/news/article/10/63818/
その会社のその部屋にいる人間、みんな記憶がなくなってたら!?
うっかり構造破壊、なにげに階級逆転。へらへらコメディ5話更新。
『花四段といっしょ』増村十七氏による新聞メディア掲載のショートコメディ。記憶喪失した会社空間でぶっちぎりの小娘、本部長子(もとべちょうこ)がてきとーに部長の座に収まり、誰も何も把握していない会社生活が今、始まる。
2ページのショートさとヘラヘラっとした笑いでコーヒーのお供にピッタリ。辛い社員生活なら「こんな生活だったらいいな」、特にそうでもないなら「本部長子はどこでも生きていけるな」とか思いながらコーヒーを淹れに行きましょうそうしましょう。
[第20話]ハンサムマストダイ
2023年最新少年ギャグマンガ、ここに完結。
フォーエバーハンサム・・・
ものすごくよかった・・・
まあ面白いことはみんな言ってるから譲って、私は女の子の話したいんだけど、
主人公は女の子が男装して男性アイドルの世界に紛れ込む話なんだけど、ラストまで「そんな設定あったっけ?」みたいな無視っぷりで(合間に女の子いじりもあったけど全部基本行動が「ぶん殴る」の方向だった)、最後もみんなで仲良く麻雀やって終わった・・・よかった・・・
バトルも全く女の子の泣きとか入れなかったし、最高の少年マンガだった、ありがとうハンサム。
「[第127話]ダンダダン」
ダンダダン、「音のオノマトペ」を使わない(ドガーンとかグシャッとかの書き文字)のがすごい、本当にすごいな、と思ってたらついにライブシーンまで音レスで始めて、もうこれBLUE GIANTじゃん
『こういうのがいい』
村田は「質問攻めの彼女」、友香は「淑女を求める彼氏」、にそれぞれ別れを告げて、ゲーム仲間として気楽なセフレ生活をスタート。会話とエッチが同じアングルで描かれる【実用書】(実用に最適という意味)
と書いて申し訳ないのですが私はコンテンツにセックスを求めていなくて「実用」度合いについてはちょっと分からんのですが、
コミニュケーションの漫画、としてすごく興味がある。
村田と友香はゲームとセックスが趣味で、会話コミニュケーション、セックスのコミニュケーションとも阿吽の呼吸。お互いに空気のようにコミニュケーションを取っていている。2人とも一般的な恋愛規範や結婚観が嫌いなことも描かれる(ラブラブカップルの会話を聞いてマクドゴミを叩きつけるように捨てる、とか)
ただ、2人の間にあるのが【決定的な賃金格差】で。
これほどまでにピッタリ合う2人なのに、村田と友香の賃貸は2サイズは違う。
ここで飛躍して、医大で女子の偏差値を抑え付けていた話に飛びたいんだけど、
男子をA、女子をBとした時、
集団AとBの勉強時間が、Aは月に50時間、Bは100時間であれば、まず努力規範や生活習慣的に話が合うわけがなくて。
でも、今の日本ではこの集団が同じ「ハコ」に入れられる。Bは、コミニュケーション相手として同じ価値観や努力規範を持つ勉強時間100時間のA‘を求める。A’はほとんどの場合、A、そしてBより収入が高い。
村田と友香が経済格差が大きいのに、コミニュケーション規範が同等なのは、こういう影響もあるんじゃないかなとか。
社会的には差をつけられた2人が、実質的には同じ価値観を持ってるってのが今、存在してるんじゃないかと。
だから「女は金を持った男が好き」というよりは、
「女が話が合う男とコミニュケーションをとろうとすると、自然に自分より収入が上めになる」
という現象が起こってしまうのではないかと。
男とか女とか、社会が決めたジェンダーの話で悪酔いしそうですけども。
時に言われる「女は収入の高い男になびく」と言うの、実はこの日本の社会構造として「女性の収入が不当に抑えられてるから」じゃないか?
とか。
漫画の話で締めると、会話とエッチがずっと同じアングルで進み、エッチシーンがクローズアップされないので面白いなって思います。ワンカメ据え置き。なお実用性については自分で確認されたし。
モーニング2023年49号
『社外取締役 島耕作』
軍事産業に乗り出した会社の社外取締役をしている島耕作。しかし強引な新社長は古参社員の恨みを買い、軍事事業は造反組の手に渡る。
これは政治的主張として私と全く反対であり、また私の不利益になることなので批判せざるを得ない。
「イスラエルとパレスチナでも戦争が起こったから台湾クライシスが起こって日本も集団的自衛権を発動させて参戦するかもしれない」
という主張をするのだけど、
違憲スよね。今、現状で。
このあと話が転がって「やっぱり戦争よくないですね」みたいな話になるのかもしれないけど、今の段階では強く批判する。
敗戦後、流通の死んだ東京で、こどもを食わせるために母親は泣く泣く身を売った。そんなに長い期間ではなかった、でも1週間、こどもに食わせられないなら母親は強盗か体を売るかしないといけない。私はそんなこと絶対に嫌ッ。戦争なんて庶民が痛めつけられるだけなのに。
『ゆりあ先生の赤い糸 』
ゆりあ先生はゴツくて背が高くて刺繍の先生をやってる50歳。
長年連れ添って友達みたいになった「とーちゃん」ととーちゃんのお母さんと3人ぐらし。
そんなある日とーちゃんがくも膜下出血で倒れて完全介護に。それだけでも大変なのに、なんと愛人が2人出てきた!?ゆりあ先生の取った手段は「3人交代で介護!」
漫画みたいな(漫画だけど。。)トンデモない介護生活をパワフルに突き進むゆりあ先生が痛快。入江貴和らしい細やかなキャラクター造形で、突破な設定なのにキャラ一人一人が生きているような瑞々しい作品。
ゆりあ先生と年下ボーイの恋愛(これもまた色々複雑なのよ)も絡み、介護を中心に極小コミューンを形成、これは家族解体の物語で社会主義なのでは(めんどくさいこと言い出した!)
菅野美穂主演でドラマ化も決定。漫画の「ゴツくてオンナを諦めてたけど、交代介護生活を経てむしろどんどん可愛くなる」ゆりあ先生、楽しみにしてるよ頑張ってッ!!
「スペースの君に」(読み切り)
大好きだった絵を切られた少年がいた。
時を経て定年を迎えた少年・・・老人は、アパートの管理人として眼前の廃墟に足を踏み入れる。そこには絵を大切に飾る少年「宇宙人」がいて。
アクション読み切り。絵も上手いし構成も少年マンガらしい満足感。主人公がおじいちゃんというのも良いです。
なにより、
「老人らしくない」部分についていいなあと思う。
端的に言って、老人が50代くらいの中身をしてるなあって。
他人を怒る威圧的な感じとか日本の老人らしいと言えばらしいのだけど、感性と行動がみずみずしいので「シワのある50代」くらいに見える。
ステレオタイプとして、定年後の老人って、あんなに動けないしあんなに機転も効かない。
でも今の老人って個人差あるよね。同じ年でも明るくおしゃれに振る舞う人もいれば、本当にザ・老人という佇まいの人もいる。
老後こそ個性が見えてくるところ。今からスクワットを日常化して、老人のステレオタイプを打ち壊せ。
(ただ、この作品のおじいちゃんの中身がかなり幼いのは気にかかる。少年マンガで若い読者が対象とは言え、個性はありつつもそれ相応の年輪も期待したいところ)
「[第147話]チェンソーマン 第二部」
第一部で一部熱狂的な支持を得たクァンシ様が出てきたけどこれはどーゆー扱いででてきたんだろ、別人格とゆーことかな。
「(チェンソーマンには)腑抜けてもらっちゃ困るんだ、前みたいにめちゃくちゃになってもらわないと」
同意同意。水族館デートとかしてる場合じゃないんだぞデンジ!
『DOGA』
貴族の青年と、貧民の少女。
どこか遠くの時代、どこか遠くの国で、体を失い機械になった貴族は、少女を頼って海を見に行くことを決意する。2人はこんなに格差があるのに、等しく海を見たことがない。
フランス出版が決定している日本マンガ(と言えるのか?)2話目(前後編の前編)。
太古のアジアのシルクロード、砂漠のソグド商の街のようなエキゾチックな世界観と、体の機械化というSF、そして圧倒的な格差という社会的なテーマが盛り込まれる。
今回の話は少し今、きつい。
貧民が昼寝をする世界遺産のたもと。彼らはこの街にいて、一度も宿に泊まったことはない。警察に追い立てられる身分。
私は10年ほど前、ベルギーに旅行に行き、ブリュッセル駅にびっしりと布団を敷いて寝ているアラブ系難民がいるのにひどく驚いた。
今、ガザは難民キャンプすら安全ではない。
DOGAはフランスの出版だから、その辺りについて社会的要素が無関係ということはないだろう。
床に寝るのが当たり前のキャラクターと、貴族の邂逅。西側の本気の格差を見せつけられている今、現実感を伴って迫ってくる。
『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』
Season11/4本目 Winny
2000年代のWinny裁判を取り扱った映画の紹介。
最近、作者の服部氏が著作権系の判例をいくつかツイートしてたのこれかー。
判断の難しい例ばかりですごくためになった。ありがたや。
Winnyという「現象」について、日本のイノベーションの現状を象徴するかのような映画になりそう。
それにしても、さっき全然別の経済ニュースで「日本の投資信託が育たないのは天下りがあるから」という身も蓋もない結論を聞いていて、ジャパンはまじで一度「ご縁とご恩」のメンタルを捨てた方がいい気がするぞ・・・
ヤングエース2023年12月号
『まんがでわかるまんがの描き方』
『多重人格サイコ』などの原作で知られるまんが原作者&編集者、かつ柳田國男直系の民俗学者でありまんがプロパガンダ研究の大塚英志が放つ「まんがの歴史(太平洋戦争プロパガンダ利用編)」ッ!
資料の正確さはこのジャンルの第一級の研究者として信頼は極めて高い(私も氏の本は何冊も持ってる)。
まんがの制作こそ政治発言をしなければ、国家プロパガンダに利用されると警鐘を鳴らす。
こういう人の後続にたくさんの人がならなきゃいけない、私もその大きな流れの小さな水流にならなければ。
『瓜を破る』6巻
性経験の有無は、生きるのに関係ありますか?
香坂まい子は32歳で性経験がない。それは自分の大きな欠落なんじゃないかと思えて。
性経験のみならず、性にまつわる(対象は育児やルッキズムまで)思いが邂逅するオムニバス。
ごく個人的な悩み(メインは性のこと)を掬い上げ、ごく個人的な事情を描き解決したりしなかったりするオムニバス。
だってエ、性経験のことって教科書に載ってないじゃん。なにを「みんなできて当たり前」みたいに言ってんの?教科書に書けって言ってんじゃないんだよ全員ができなくて当たり前だって言ってんの!
セックス、それはコミニュケーションとタイミングと自分たちの意思の総合芸術。当然義務でもなんでもない。悩んだり折り合いをつけたりする過程が丁寧に描かれていきます。
特に出番の多い、まい子と鍵谷さんの性体験がない2人による距離の取り方、縮め方。派手なことのない誠実なことばでの合意の取り方、そして最後にはエモーションが背中を押す。これを教科書に書けッ!(さっき言ったことと違う!)
なんか、とても良くて。。コミニュケーションコストをケチらない、めんどくさくてややこしいセックスの話です。
私はできる範囲で漫画雑誌を眺めるようにしていて、その中にエッチ漫画雑誌もあるんですね。
そこではコミニュケーションコストゼロでセックスができるエンタメが展開されます。
私は漫画にセックスは求めてなくて、
その過程、どのようにセックスに至るか、にすごく興味がある。
『瓜を割る』はまさにそんな漫画で、セックスも丁寧に描かれるけどそこに至る過程、そっちの方が重要な作りをしているので、私は正座で誰かの決死のコミニュケーションを覗かせてもらうのです。
逃げのない、本気のぶつかり合いの場にセックスという舞台はかなり有効で、
私はつまりコミニュケーションの死合いが見たい、
断られたらそうとう傷つくし受け入れられたらほんとに嬉しい、ことばでコミニュケーションを取ることでその辺の都合を折衝もできる、
そういう、背水の陣のコミニュケーションのつばぜり合いが見たい。
。。。なんか偏ってる気がするけど、なんかそういう感じで、『瓜を破る』はそんな、むき身の真剣勝負だと思・・・・思う(不安になる)
『DOGA』
第2話 砂漠の街のドガ (後編)
フランスの出版社での発表作品を日本で連載形式に。Webアクションの新星、武田登竜門氏の新作はどこか遠い、エキゾチックな砂漠の街から始まる、大きな社会的格差を持つ2人のロードムービー。
連載形式が特殊なのだけど、掲載としては1週間に一回なのかな。
ぽっちゃり怪力娘のドガと貴族のお坊ちゃんで体が機械になってしまった青年、ヨーテのいまいち噛み合わない旅路。
この作品はテーマが格差にあると思って、砂漠の街や体の機械化といったSFで距離を取られているけど、その貧困は現実をまざまざと思い起こさせる。
シリアやリベリアと言った貧困国、あるいは日本のホームレス街なども想起させる貧しさ。
目先の採掘で地下を掘りすぎて、地盤沈下で死んでしまう人。でも、それを批判して別な生産を考える時間資源も教育資源も彼らは持っていない。誰かが死んでも警察も来ない。
武田登竜門氏の描く作品の、社会の書類から抹消される感じが好きで、それは自由だ、、、、と思っていたけど、今作ではさらに「人を記録するという概念すらない」世界に突入していて、私の常識の根幹が打ち崩される。これは良い読書体験だ。
『昭和ママと令和キッズ』
昭和ママ、昭和中期の知り合い(?)、平成おばさん、令和の私による世代間ギャップ噺。
『母がしんどい』『それでも親子でなきゃいけないの?』等、親子間の抑圧を誠実な取材とタブー知らずに踏み込む田房永子氏が「元号って天皇制の象徴なんですけど」と言いながら比較する、カルチャー比較フェミニズム論漫画(と言っていいだろう!)。
私は自分の親子間のガビガビした感情の理解に田房永子氏のルポ漫画がめちゃくちゃ役に立って、本当に信頼しているルポライターなんだけど・・・
正直に申し上げて絵の上手い方じゃあなかったのに、明らかにマスに寄せてすごく読みやすいぜ!たまに本人の持ち味の不気味さが出るのがナイス。
本領としてはルポの人だと思うので、語られるカルチャー比較情報も感想ベースではなく歴史や理論を引いたものでホホウ・・・と納得。その後調べるのは忘れずに(私の信条は「漫画で一次情報を得るなかれ」)
昭和のブルマとかみんな信じられる?あんなパンツで運動させられてたとか犯罪だろ令和から考えると。元号区切りがフィットしてしまうのは癪だけど、要は「およそ20年単位のカルチャーギャップの話」をしている。これは教育マンガだなあ。
『線場のひと』
太平洋戦争敗戦後の日本。性アイデンティティやセクシャリティを時代に踏み荒らされる4人の人物のオムニバス。
今回は日系アメリカ人、アーサー・ジロウの物語。舞台は戦後長崎。
作中に出てくる「突き刺さった矢のようなもの」は、長崎の原爆慰霊碑・・・を建てようとしたらGHQから横槍が入り、慰霊の意図が不明、かつ短期間、そして米兵の写真スポットとして消費された矢形標柱。こういうものをスッといれてくるあたり、この作品の社会的な目線が強く伺えます。
日本人でもアメリカ人でもない、アメリカ人として忠誠を見せるため兵士になり、箸が使えないと責められる。でも英語が使えてこどもにチョコレートはあげられるし、日本にもてなしてくれる親族がいる。
国家に切り刻まれたアイデンティティ。決して単純に「こちらの国のやり方が良い」と言えない、今よりもずっと深刻なものだったと思います。
彫刻家の小田原のどか氏もこの矢形標柱をアートにしています。皮肉な文脈です。