その日読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。
リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。
本日は23件の漫画の感想です。
- ねこともVol.87
- 『メイドインアビス』12巻
- 『戦士に愛を』
- モーニング2023年46号
- 「[第九話]サチ録~サチの黙示録~」
- コミックビーム2023年11月号
- コミック乱ツインズ2023年11月号
- 『もっこり半兵衛』
- 『羆嵐』
- 「205/第1回ジャンプTOON AWARD」
- 「モンキートリック」
- 『天津水市「がご」撲滅だより がごはん』
- 「[第146話]チェンソーマン 第二部」
- 『ねたあとに』
- 「わたしたちは無痛恋愛がしたい 〜鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん〜 | 第24話 男らしさの呪い」
- 【新連載】余談と怪談
- ハンドシェイク(読み切り)
- DOGA
- 「なんにもない、なんでもない」(読み切り)
ねこともVol.87
これは雑誌全体の感想になるんですが、猫をテーマにした4コマやエッセイ、創作マンガオンリーの猫アンソロジーと呼べる雑誌。読者からの猫写真投稿などもあり、リアル猫も拝めます。猫純度100%。
私は実家がいわゆる「猫の家」で、一人暮らしで家を出るまでに2匹の猫を飼っていました。今の環境では飼えないので、こういう雑誌を見るとあの柔らかさや声を懐かしく思います。
日本美術の勉強をしていても、江戸時代の絵師で猫好きマンが猫絵を描いているなんてことはよくあることで、昔から猫は美術の面でも好かれてますな。
アンソロジーのマンガはどれも軽く読めるもので猫の邪魔をいたしません。まずは猫。猫が優先。当たり前ですが猫は酷い目には遭いません。
『メイドインアビス』12巻
少女は冒険心に全てを捧げる、身も心も、倫理観さえも。
隅々まで探索され尽くした世界で唯一残されたフロンティア、地底へ続く大穴「アビス」に挑む冒険者たち。彼らは神秘の力を持つ「笛」を携え、降りれば2度と上がっては来れない地底に潜る。好奇心は誰にも止められない。
有名作ですがおいそれとは勧めません。酷い暴力が目白押しなので、辛い人には辛い作品です。痛みの表現やグロテスクが嫌な人は絶対見ちゃダメ。
さて倫理観を破壊することでお馴染みのメイドインアビス、私は少し違う角度から感想を。
メイドインアビス、枠線がフリーハンドなんですよ。なぜか。
あと、なんだろ。。私は電子で読んでるんですけど、薄く塗った跡?が、画用紙みたいな質感に見えるんですよね。これは紙でもそうなのかなあ。
機械感など硬質なところはカタイ感じあるんですけど、時に出してくる「凶悪メンタルすぎて人物が筆絵化」の時とか、枠線も相まって寓話のようです。
あと、バトル漫画としてゴツいですよね!バトル担当はレグ(謎の機械少年)ですが、12巻でも伸びる腕と飛翔しばり無視(この世界はジャンプでダメージを受けるので)でハイパーバトルになってます。お勧めはしません(2度目)
メイドインアビス、悪い昔話、
柳田國男がフィルターをかける前の各地の口承伝承。あるいはペローやグリム以前の民話。
グロと暴力と知的好奇心のカーニバル。
そんな感じがします。
柳田國男の収集した話とか、祭りの名の下にしれっととんでもないこと書いてますからね。。
そういうのを物語で済ますのは大切だと思うんですよね私は。。
『戦士に愛を』
その戦場は人造人と人造人が殺し合う。
大戦で大地は汚染された。その除染のために作られたのが毒に耐性のある「人造人」。
しかし人造人は40年ほどしか寿命がなく、人造人の人体活性化を求めて機構政府との衝突が絶えない。
人造人ウィズは汚染除去プラントの仕事を失い、選択肢がなく兵士に志願する。そこで見る地獄とは。戦地シーンを追求する戦争SF。
初出は2016年。
「人もどき」人造人との居住地を分ける「境界壁」、そのために「居住地を接収される人造人」、そして政府警察に暴行される「人造人デモ集団」。
あまりにも濃厚に現在の激戦地を喚起させる作品。
しかしこの作品には「生活」がない。音楽も食べ物もない。
あるのはただ戦地。毒が蔓延し過去の人間の造りし異物「機械兵」の死骸が転がる廃ビル群で、気づけば死んでいる銃撃戦だけがある。
私はまだ1巻を読んだだけだけれど。
生活感が全くないので、現実の戦地とは違うもの。(生活を壊すことこそ戦争なので)
でも戦地に想いを馳せることはできる。同じ「人造人同士」が殺し合い、「人間」は手を汚さない構造。紙のようにあっさりと死にゆく同僚。昔はきっと栄えていた街の残骸。
モーニング2023年46号
『二階堂地獄ゴルフ』
堕ちて落ちて堕ちまくる・・・!『カイジ』の福本伸行の新作はプロゴルファー試験に落ち続けて35歳になってしまった男の話。カネのかかるプロ試験を支えてくれた後援会から見放され、二階堂は孤独と敗北感を噛み締めながら単独プロ試験に挑む。
キビシい〜〜〜!!
男の!男の欺瞞を!残さずキャッチして全部指摘していく福本伸行地獄!!
「俺はまだ若いから」と言う35歳に「若くねえだろもう」と現実を突きつけるところから始まり、
「プロ試験にギリギリ落ちた」ことがアイデンティティ(もうちょっとで受かってたんだけどナ〜〜で10年)と気づいてしまい、
プロ試験に合格した後輩に説教して「なんで落ちてるのにアドバイスできると思うの?」と実に真っ当に言い返され。
あげく、後輩の不正を見て見逃してあげようと決意したのに、痛いことを言われまくったのでつい不正を暴いてしまう。。。
イタタタタタ卑小ッ!
男に優しいモーニング、『小遣い万歳』や『1日外出録ハンチョウ』で薄めないと大変。ああでも今回ハンチョウ掲載ないんでこづまんで薄めてください!うわわわわ!
「降りられない」ひとは、二階堂地獄ゴルフ見てメンタルを保てるんだろうか。
敗者であることが問題なのではない、勝負の世界に挑み、その舞台から降りられず、己が敗れたことを認めず、鏡から目を逸らし10年過ごした男の欺瞞を容赦なく掬い出して突きつけるこのッ。。
そのリングから降りちゃったらラクなのに!!とタオルを投げるモーションに入っている私ですが、それは。。嫌なんだろうナア。。お、降りちゃいなヨ〜〜!!!
と言いつつ、
この自己批判、非常に好感を持って見てるんですよ。
女性はまだまだ、差別や虐待が酷くて、自己批判とかにいくフェーズじゃなくて。
自己批判が大っぴらにできることは文化が豊かということです。けっちょんけちょんにしてください、自分たちを。自己批判であなたたちはさらに強くなります。全くズルいぜ。
「[第九話]サチ録~サチの黙示録~」
サチはクソガキ!
天使と悪魔が「人間審判」を始めた。人類の中から代表を選び、その善良度で人類の存続を決める。天使と悪魔が1人ずつ派遣され、その人間のポイントを測る。ポイント次第で人類滅亡!選ばれたのはサチ!天使と悪魔がクソガキに振り回される(と見せかけて案外楽しくやる)コメディ。
このマンガ好きだなー(初手からの褒め)。
今回はランの上司の天使長が現れて、「保護者たちがギャースカこどもに見せるモンのラインを決める」の回。
少年マンガに掲載されるギャグ漫画ってこうあるべきだな!という気持ちの良い展開。ギャグに風刺が効いていてインテリジェンスがチラ見え。
こどもが読むマンガ、というより、こどもマンガを取り上げられて悔しい思いをして、そのまま読んでる大人向け、、、のマンガなんだけどさあ。
俗物天使のランちゃんが主張する「指導者が娯楽の影響に負けてちゃいけないでしょうが」というの、飲んでいた第3のビールをそっと置いてアツい握手を求めるレベルです。
ところでこの回についてSNSで「コンテンツを優先して他人が困っているのにコンテンツを表に出し過ぎる見苦しい大人の言い訳みたことある」(意訳)という感想を見て。
そのきもちは分かる。「表現を表に出すことに躍起になっている人の言い分」ではあって、ちょっと嫌だなって思う。
でもそのバランスは極めてシビアで、1970年代における「過度に道徳的な価値観からのマンガ追放運動」というものがあり、サメ映画とかバカアクションとか、そういうくだらないものが憎まれ委縮した時代っていうのが確かにあったので。
くだらないコンテンツもほどほど、すてきコンテンツもほどほどじゃあないといけないんです。ここはねー、バランスですよね。ずっとずっと、読者側の議論が必要なところです(うっかりと哲学的な話題)
コミックビーム2023年11月号
ストーリものが多くてまとまった感想の言えないマンガが多いので、言えるものだけ。
『地獄の三十路録』
三十路になっても処女なのは嫌だ。。男をゲットしてみたい、堅物女の地獄録。
女が降りなきゃいけないステージーー!!やめろやめろ早く降りろそんなところから!ほらモラハラ男が勘違いして寄ってきたじゃん〜〜(地獄!)
『魔女とわたし』(読み切り)
リアリティラインの高い絵で、高校に転入してきた魔女(白人種日本語ネイティブ少女)と人の顔色を伺う少女の邂逅を描く。
過渡期かなあと思う。私のこどもの世代は保育園から多国籍他人種の子達が仲良く遊んでるので、今がキツい時じゃないかな
『幻滅カメラ』
そのカメラで撮られた者は性欲がなくなる?ゲイで卑屈なカメラマンがそれで撮るよう依頼されたのは、既婚の姉と、同性の恋人。
SNSなどでとにかくウケの悪い鳥トマト作品。隠しようのない毒で、今号では家父長制をメタメタに。
カメラマンに立ち塞がるモデルの父。いや俺は素材提供だけで展示は姉なんですけど「うるさい女がアートなどできるわけがない(!)貴様のような無職者(!!)が幼稚でバカな娘(!!!)を唆したんだろう(!!!!)」。偏見と傲慢のミルフィーユ!こういうの見せてくれるの貴重だと思うのよ。
『そして彼女は贄となる』(読み切り)
「有名人の彼女って?」プライベートを歌われてしまう女性のメンタルは追い詰められて。短いホラー風味で、「有名人」側のメンタルが消えてしまったのは少し残念。
『終末、きみと』
ゾンビ化が静かに進行する世界で、人間(だと思われる)けれどあの人を食べたいと願う気持ちと、食べられたいと願ってしまう2人の分かち難さ。
2人が同性であることで生じる恋愛の困難と、食欲に直結してしまっている感情の混線。恋はややこしい。
ほかにも書きたいものはあるんだけどこの辺で・・・!暴力もフェミニズムも構造破壊もあるサブカルチャー漫画誌です。『下北沢バックヤードストーリー』、古着店ドリームマンガで西島大介ギャグがあったのは笑った。サブカル生まれサブカル育ち!
コミック乱ツインズ2023年11月号
『カムヤライド』
4世紀、大和。
古墳時代の戦乱を生きるヤマトタケルは、熊襲討伐の際に熊襲の神「国津神」と対峙する。神の圧倒的な力に押されていた時、モンコと名乗る男が背後に立った。埴輪を媒介して奇妙な全身鎧をまとったモンコは「神遂人(カムヤライド)」として「人と神の境界線を閉じる」。
「古墳時代特撮ヒーロー」!
『エリア51』で「ハードボイルド妖怪退治」を描いた久正人が挑むのは日本成立前の古代を舞台にした特撮ヒーローもの。
前作で洋の東西問わず妖怪を出してきた博識は本作でも健在。さらに戦隊モノや仮面ライダーでキャラデザインを手がけるデザイン力はマンガでも一目瞭然の「ホンモノ」さ。
古代なのに野球やったりするユルユル歴史ファンタジー。かつ、女性的キャラのマッチョさやプラスサイズ表象など見ていて自由。
古語の使い方などもいちいちカッコよく、『コミック乱ツインズ』という「お江戸雑誌」において歴史ものだから好き勝手やっていいんだろ!!と縦横無尽に遊んでいる感じにニヤつきます。
あと、あのー。エロ方向の話ですが、この作家さん「触手」なんですね。ドゥーユーアンダスタン触手?(特殊めなエロの話をしてます)
試し読み↓
https://comic.pixiv.net/viewer/stories/46104
『もっこり半兵衛』
江戸の夜鷹(路上に立つ最下層娼婦)を夜回りで見守るのは月並半兵衛。スケベで子持ちで腕が立つ。ついたあだ名は「もっこり半兵衛」。その正体は大老・柳沢吉保に見染められた荒巻藩の脱藩剣術指南役、別名「人斬り半兵衛」であったッ。。
江戸とエロとバイオレンスとセクハラ!
人斬り半兵衛が剣を一閃、バラリ泣き別れる上半身と下半身。直後の下品なギャグに1ページ内の寒暖差がすごくて結露しそう。
『狂四郎2030』などで見せた強烈な社会批判も健在。この巻では「連座」、江戸における放火犯は家族もろとも死罪である見せしめ刑に苦言を呈しています。
私は自分の生活がマッチョともセクハラとも縁のない生活をしていて、だからこういうハイパーマッチョ作品を手元に置いてたまに見るというのは、私なりの現実逃避なんだろうなと思ってる。
暴力が構造に組み込まれてる作品で、暴力を否定していないし、その分悪人に暴力を思い切り振るう。フェア、だと思う。この世界に私はいたくはないんだけど。
人権をズタズタに冒涜した遠い国の国防相の発言に割とヨロヨロしていて、コンテンツの中でだけ、暴力に最大の暴力で返すところが見たかった。本当にやったらダメだから。それは分かってるからさ。。
『羆嵐』
熊害といえば『羆嵐』!
矢口高雄氏がコミカライズしているのでそちらをご紹介。
日本史上最悪の熊害、三毛別熊害事件を小説化した同名小説のコミカライズ。
小さな集落の無惨な熊害のち、熊ハンターが集結し凶悪な熊を追い詰める怒涛の追い込みがアツい。
女こどもが惨殺される惨たらしいシーンもありつつ、さすが『釣りキチ三平』の矢口氏らしい美しい北海道の自然も見もの。
Kindle Unlimitedに含まれるのでご興味あればどーぞ。
「205/第1回ジャンプTOON AWARD」
へええーーー!!
ジャンプラで縦読みコミックス、いわゆる「ウェブトゥーン」の募集をしたんだね。
この作品は身長が205センチある気の優しい男のコメディ。縦読みというカタチに身長差ギャグはすごく効いてるし、
読み方の実験それだけじゃなくて、心情についてもきちんと掘り下げててイイな。高身長について観察眼があるというか。ベッドで寝る時は斜めになる(一番大きいの買ってもまっすぐ寝るとちょっとはみ出すんだろうね)
審査員は韓国ウェブトゥーンの会社RED7のイ・ソンヒョク氏。氏はもともとヤングガンガンの編集を10年務めた日本マンガ出身の人なよう。私は縦読みコミックスのこと何も知らないんだけど、業界が華やぐのは大賛成だよーもっとやれ!
「モンキートリック」
縄文時代に起こった殺人事件。ろくに検証もされずに死刑にされようとするウジャクを救ったのは流れ者ワユタ。超古代密室殺人事件を推理せよ!
これ、ジャンプ少年漫画ファンタジーとしてすごいイイなって思って。
ミステリなんだけも、
でも、本質としては、「人ひとり死ぬことを深く考えない、突き詰めないで流していくことってダメじゃない?」っていう提案で。
すげーーーーーつまんねー重箱の隅突きしちゃえば、そら色々ありますよ。この時代だと「個」の概念まだ無いだろうとか、結婚概念は9世紀くらいからだそうなんで不倫とか貞操とかの概念もないよねとか(娼婦って商売は結婚制度で「性の独占」が起きたから成立したそうですby『性差の日本史』)
でもそーゆー話じゃなくて、
人1人死んでも「群れの掟」ではなんか流せちゃう、でもそうじゃないよね、掟とかじゃなくその人個人の痛みや辛さ、尊厳があるよね
そういうめちゃくちゃ現代的な道徳を、古代舞台だからこそ語れていて、
少年マンガに載って欲しいのはこーゆーマンガじゃんか。少年マンガくらいこんな正義を語って欲しい。
(でも縄文時代に興味が出たら正史研究にGO!)(これも大切)
このお話って
「周囲がいい、社会がいいって言ってる話を、【真実じゃねーだろ】って掘り返す話」
で。
今、求められてる道徳ですよホントに。「IAEAがいいって言ってるから汚染水流します」じゃねーんだよ数値をちゃんと出せって話してんだ
『天津水市「がご」撲滅だより がごはん』
第3話 みいちゃんのひみつ
ここは天津水(あまつみず)市。異形の怪異【がご】に対抗するため、がご撲滅班通称「がごはん」が・・・厳正なるくじ引きで、一般人女性4人選ばれた!だいじょうぶか天津水市!
ゆるくて可愛い、時々毒の地域密着ゴーストバスターズ。
カワイイ!女の子たちも敵も可愛くて双方ムカつく!
どこの地方かはわからないけど、特産品は玉ねぎ。畑で食い荒らされる玉ねぎとディスられる農家。もうそんなにいうなら食べなくていいです!
穏やかでゆる〜い空気感(たまに血が出る)。ちょっとビールとか飲みながら見るのにぴったりの一息つける系コンテンツ。
「[第146話]チェンソーマン 第二部」
集英社、やる気かなあ。これ公開して、電話殺到とかしないかな。新聞社とかはそういう行動があるようだけど。解散命令出されたって別に教会がなくなるわけではないので。
露悪でエグい大衆マンガなんて、このくらい汚いことやってナンボでしょ。巨悪も繊細な涙も全て消費するんでしょう。
電話が殺到して文言差し替えになったら、それはそれでまたTwitterが騒いでくれるしね。
文春の魂ですね。露悪で汚くて、でも他のお行儀のいいところが手を出せないところに出せちゃうっていうの。
古い話になるけど、『電車男』のドラマでも「壺売り」ってミームがあって(詐欺で騙される、という文脈で使われた)
あと、『きのう何食べた?』で、シロさんの性指向を受け入れられないお母さんが「壺の宗教」に入ってたって話は有名だよね。
その意識が個人に向けた差別的な偏見になることは避けなければいけないんだけど、
本邦政府、「事実を消す」のがめちゃくちゃにお得意なので。
サブカルに組み込まれてしまえば消せない。その威力を支持する。
『ねたあとに』
長嶋有小説のコミカライズプロジェクト(この作品はすでに既刊のもの)。21人の漫画クリエイターが漫画に再構成する小説の妙。
『ねたあとに』は「コモローさん」の別荘に招かれた久呂子さんの楽しくて不思議な寓話のようなお話。
版画のような強弱のある線とフリーハンドの枠線、ほっこりのんびりした時間の楽しめる作品です。作中の遊び、今度やってみたい。
「わたしたちは無痛恋愛がしたい 〜鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん〜 | 第24話 男らしさの呪い」
私は『私たちは無痛恋愛がしたい』が好きじゃない。
それは私が「教え導きますコンテンツ」に基本的に反感を持つアウトローだからでございます。
落ちこぼれも教え導いてくれるのかい?失せな!(銃を構える)
の魂で40年やってきて、あと実際それなりのリテラシーを携えてきていると思っています。一人でコツコツ本を読むアウトロー。
でも違うんだよね、私が客じゃないんだよね。
DVで深い穴にハマって悩んでいる人は、マンガをきっかけに自分が受けていることがDVだって気づくかもしれないし、それへの対処法や答えがパッケージされてたらすごく救われる。私が鼻につくところは、誰かが求めてるところ。
なのでここに広報。DV、また男性学も含むので男性にもおすすめです(ややこしい紹介の仕方)
瀧波ユカリ氏はすごく学んでらっしゃると思う。
私も精神・経済DVで離婚歴があるので、困ってる時に選択肢がなくなる感じはとてもよくわかります。というかDVの悪質なところは「お前に選択肢は無いんだ」と思い込ませるところで、それを提示するマンガはすごく必要。
今の私が元気で健康で家庭も楽しいから、そういうコンテンツがミスマッチになっているけど
「夫に服従する必要なんかゼロ」、
それさえもっと広く知られていればこのマンガは「人の選択肢ってそれだけなの?」ってフェーズで論じられるもので(私はそこにんっ・・・って思ってるので)、
でも今、社会はそうじゃないから。
【新連載】余談と怪談
柔らかな絵の雑談に時々おや?と思う程度のちっちゃな怪談が混じるスタイル。
おしゃべり、ですよね。だれかとおしゃべりをしてて、ふっと混ざる違和感のある話。
怪談って本来こんな感じのもので、なんだかリアルに感じます。これが積み重なって、ああいつものあれねーなんて思ってて、帰る電車の中で「あれ?あの話、けっこうマズくない?」って思い出したら美味しい、みたいな。
ハンドシェイク(読み切り)
上界、と、下界。
暴力、管理社会、攫われた妹。
圧倒的な視覚情報で綴られるアドベンチャー。
うむっ。
話はよくわからん!
『映像研には手を出すな!』大童澄人氏のアシスタントを経て今回デビュー。建物と、そのカメラアングル・効果がはちゃめちゃに上手いんだけど、話はよくわからん(2度目)。
これほど美しく魅せる背景画であれば、少年マンガっぽいカタルシスは捨てて視覚情報の冒険に連れてって欲しい気もしまする。
絵を見るだけでも楽しいです。まだデビューなのでお話は今後に期待ですな(お話をしない、という方向とかもいいんじゃないかなとか)
DOGA
貴族の子息と、貧困の娘。
2人は全く違うのに、2人とも海を見たことがない。砂漠に沈み、大地の少ない星で知らないものを見に行く2人の旅路。
フランスの出版社ki-oon(キューン)と制作。作者初の商業長期連載になります。
人が住める土地の少ない舞台はアドベンチャーのムードに溢れ、知らない世界への憧れに満ちています。
まずはお話の初めなのでワクワクするのが仕事みたいな感じで、あとは女の子がプラスサイズなのが良きですね!正直、貧困による肥満(貧困は人を太らせる)のような感じがしてて悲しいですが、金をゲットしてそのお腹をさらに膨らませてくれ!行け行けプラスサイズ!!
「なんにもない、なんでもない」(読み切り)
なんとなく、でもなにかが辛い。
不登校の花凛は、公園のベンチで「じいちゃん」と話すのが日課になっていた。
すれ違う好意と悪意、ある日じいちゃんは言った、「死体を見に行くか?」
いいしれない不安と向き合うジュブナイル。
これは雰囲気のある読み切りですねー。
ちょっと「少年マンガのトレンドパターン」と違って、お母さんは優しいし悪い奴がずっと普通に悪い。
死を物見遊山で見ることで生を得る、あまり最近のジュブナイルに見なくなったアプローチ。昔はこどもが死体を探しに行く話ってよく聞いたなーと思います。
なので懐かしい、甘酸っぱい気持ちにさせてくれたんで良いなあと思ったんですけど
ちょっといい子過ぎやしないか、というのも感想。
死体を見て日常にヒビを入れてもらって、行き着いた先が目的のないお勉強ってのは上品すぎやしないか。またかたーーいつまらーん世界に自分から戻ってどーする。
あとじいちゃんがいわゆる「マジカルニグロ」の扱いで気になりました。ジジイ自我の剥奪と、主人公に都合のいいファンタジー妖精としての役割を担うキャラクター。じいちゃんは何を想ってあのベンチに毎日いたんだろう。じいちゃんはなんであのベンチにいて、なんで見知らぬこどもと一緒にいたんだろう。じいちゃん側の動機の消滅。
見えない圧力(合わない感じで優しい母親も、ハブってくる友達も、粗暴なクラスメイトも)が嫌で、たぶん花凛はあの生活嫌いなんだよねアレは。息苦しいんだよね。
死体を見て感じいるものがあったなら、タナトス・・・死への興味や美学、また死にも近い超非日常、、、私はあんまりここに結びつけるのは好きじゃないけど、まあ端的にセックスとか、そーゆー、今まで花凛の息を詰めていたものの反対だったから良かったって話だと思うんだ。おじいちゃんに安心したのもそれこそ生ではなく死の匂いがするからじゃあないかね。
なんで戻っちゃうのと。
せっかくゲットした死の実感なのに、またその・・・矛盾した話だけど、花凛を「殺す」場所に戻っちゃったらあなた、本当に死んじゃうよって。
死を見てスカッとしたこどもくらい、学校に戻さないでユルく見守ってあげてほしーなーなんて。
この結末について「◯◯にしたら良かったのに」とか言い出したら批評の域を脱しちゃうと思うので言わないけど、いやーガッコなんか行かずにロマサガ2とかずーっとさせてあげてえよ(言ってる!)