その時期読んだ漫画の雑感をまとめておくエントリです。
リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。
本日は28件の漫画の感想です。
- 『透明男と人間女〜そのうち夫婦になるふたり〜』4巻
- 『恋とか夢とかてんてんてん』4話
- 『よなきごや・上』
- 『ワカコ酒』コミックゼノン2023年11月号
- 『カナリア』
- 『これからのラーメンの話』※閲覧注意
- カラスヤサトシ「夕子ちゃんの近道」島田虎之介「猛スピードで母は」
- 『殺し屋はスマートウォッチに逆らえない』
- 「[第73話]ラーメン赤猫」
- 『スクールバック』第8話 嫌いな人
- 『パリッコの都酒伝説ファイル』
- 『まんがで分かるまんがの描き方』ヤングエース2023年11月号
- 『解体屋ゲン』週刊漫画TIMES 2023年10/13号
- 『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
- モーニング2023年45号
- 「[#7]スパイダーマン:オクトパスガール」
- 『あのこが好きだった本』
- ヤングマガジン2023年45号
- 「にわか雨のてがみ」(読み切り)
- 『レタイトナイト』8話
- 「[第1話]対世界用魔法少女つばめ」(新連載)
- 「[#009]ぼくと海彼女」
- FEEL YOUNG2023年10月号
- 「[第18話]ハンサムマストダイ」
- 『女神の石』
- 「[第74話]ラーメン赤猫」
- 「[第七話]歴史メンタリスト」
『透明男と人間女〜そのうち夫婦になるふたり〜』4巻
この世界はありとあらゆる種族が暮らしている。
それは個性であり、全ては配慮によって社会的障害を取り除かれる。
全盲の女性、夜香さんと透明人間透乃眼さんの「普通」のラブストーリー。
障害の社会モデル、ということばがあります。
ざっくりいうと障害者を障害者たらしめているのは「社会」であり、適切な理解と配慮、そしてデバイスやデザインがあれば「普通の人」になるという考え方です。
厳密には調べて欲しいのですが、『透明男と人間女』は社会モデル障害を排除した世界です。全盲の夜香さんはこの世界で少々の齟齬はありつつも単なる「違い」として毎日を生きています。
今回は透明人間の透乃眼さんのコンプレックスと葛藤。
この作品、現実世界の写し鏡としても読めますけど、真摯に「透明人間が一般社会にいたらどういう悩みを抱えるか?」と思考するSFでもあって、透乃眼さんの傷は、「姿が見えないことで信頼関係を築けなかった過去」。
もちろん、全盲の夜香さんには何の障害にもなりません。その悩みの概念にピンとこないレベルで。
個の特性が個にフィットして互いを助ける。すごく面白いと思います。
他にも「毛皮の模様がド派手な獣人で、性格的にもアネゴ系で革ジャンがむちゃくちゃ似合うし服屋で勧められるのはモノトーンかそれを打ち消す「カッコイイ系」なんだけど、ホントのホントは小花柄のふわーっとしたワンピースを着たい」の写螺子さんの話もすごくいいの。着ていいんだヨ〜〜〜!!
「ファンタジー世界の亜人は社会とどう適応するのか」って思考実験がすごいのと、でもそれは結局は現実社会の要素を取り込んでいるので、ここから現実社会を読み込んだり、展開させることはできると思うのです。
ンッ、だけど〜〜〜〜
すっごい恋愛モノでさあ、もう、えっ手エ握っちゃいなよ!握らないの!?もういいじゃんそんなのお互い好きなんだからアッ照れるの〜〜〜!?みたいなムズムズする恋模様でして、普段そういうの読まないのでスマホ持ってジタバタゴロゴロしてるわけ!私のようなポップな血と暴力のマンガ読んでる奴は!!
かわいい恋愛ものと多様性の自由さを味わいたい方にぜひおすすめデス。
『恋とか夢とかてんてんてん』4話
なんにもない、29歳。
絵を描いても反応ないし仕事はバイト。
だから大阪に住むことにした。片思いのあの人がSNSで住んでるって言ってたから。
紙面が伸びて縮んで弾む恋心。心のイマジネーションが溢れる恋物語。
ンッ痛いッ。。。
カイちゃんの恋心が相変わらずコマの中で踊る。好きな気持ちが泡になって爆ぜる。。。
が故に、おばさんはその恋は勧められんよ。。
でもまあ、そういう恋をすることってある、
あるネ。。
イタタな恋は無邪気で心配。でもじゃあ誰が止めらるということもない。ものすごく傷つかないように願ってる。。。あと高円寺くんは呪っとくからね!
『よなきごや・上』
今夜も寝ないなあ。。
辛い妊婦状態を終えてお腹も軽くなって楽なはずなのに、赤ちゃんが可愛く思えない。寝れないから。
抱っこ紐で夜に街を彷徨うと「よなきごや」という看板があった。すっぴんのボサボサ髪でそこを開けると・・・
懐かしい。。
私は5年前ッスね、この辛さ。今、隣にながーく大きくなったこどもが寝てます。ぐっすりと。
ウチは年子だったので、寝られない期間は約1年でしたねえ・・・
ここからは私こと、バイオレンス漫画読みの視点なんですけど
拷問器具で「異端のフォーク」ってのがあるそうで。とんがった鉄のフォークをベルトに取り付けて置くと、寝そうになったら胸に突き刺さるから寝られない。「寝かせない拷問」なんですね。3日くらいやると精神に異常をきたすそうです。
【赤ちゃんは寝なくて大変だけど可愛いから頑張れます】
嘘
で
す
!
!
産後うつってことばありますけどオ、ホルモンがどうとか言いますけどオ、私個人としては「ただ単に睡眠を削りに削られて普通に鬱になった」だと思ってますけど!!
お話自体は未来のある方向に着地するので爽やかに読めます。ブチギレてるのは思い出し怒り。
『ワカコ酒』コミックゼノン2023年11月号
OLワカコの趣味は一人酒。うまいつまみと酒のマリアージュを求めて、今日もカウンターに1人座る。
ワンテーマで21巻。ひたすら一人酒4ページでずっとここまでやってきました。
酒を楽しむというテーマが故に季節感とか店の雰囲気なんかも反映される作品なんですけど(暑い時には枝豆だしオシャレな店ならカプレーゼでしょ)、
今回は「廃業してしまうお店で飲む」。
このお店はご高齢で、、のような雰囲気ですけど、インボイス実施の10/1に読むと「いやたぶんインボイスもあるよね。。」と嫌あな味わいが広がります。
こういう小さなお店を薙ぎ倒すのがインボイスなので。。特にニュースはないので実施はされたんでしょうね、でも撤回してもらいましょうそうしましょう。
ワカコ酒は
「仕事が忙しくてクサクサした時の飲み」とか「バーゲンの帰りの飲み」とか、日常(つまり社会)が酒や料理のチョイスに影響してくるマンガで、
作者の新久氏は居酒屋取材ガッツリ、当然のように東京ウォーカーにも連載を持ってた(今もだっけかな?そこはあいまい)人で、小規模居酒屋の現状はよくわかってると思います。だから今回の回なのかなあと。
私の話で言うと、私は都合10年ほど小規模飲食店広告の業界で飯を食わせてもらった人間で、
小さいお店の大変さってホントあって、インボイスなんてこういう店を全部潰すくらいしかメリットないと思います(それがメリットなのかなあ。。)
『カナリア』
TwitterでKindle Unlimitedで読めるよ!って書いてあったからなんだろう?と思ってダウンロードしたら、1ページ駄洒落が25ページ続いて終わった。読むねるねるねるねみたいな気持ち(どんな?)。ダジャレがないと眠れない夜にお勧め。そんな夜あるだろう?(特殊な感想)
『これからのラーメンの話』※閲覧注意
『これからのラーメンの話』 (1/8)
— 背川昇 (@sgw_nobo) 2023年10月1日
【※暴力的で品性下劣な漫画です】
【※ラーメン漫画ではありません】 pic.twitter.com/ZurvDQAWz8
「女ってエロい」の対象を追い詰めて追い詰めて、さらに商業利用でしゃぶり尽くすめちゃくちゃな皮肉のマンガです。
一連を漫画にされた時のタイトルにしぶうううい顔になります。ニーズも良く汲んでるし、キャッチー。これは「売れる」だろうなって・・・思いますよ。それに苦い顔です。
暴力的、です。キツい表現なんで勧めはしません。
でも、現実への批判は十分に含んでいると思います。いろんな方面への批判。
※なお、作者の背川氏はヒップホップ漫画も描いていたそうで。ポップカルチャーへの皮肉への信頼感が厚いですな
『キャッチャー・イン・ザ・ライム』 背川 昇 監修:般若/R−指定(Creepy Nuts) | ビッグコミックBROS.NET(ビッグコミックブロス)|小学館
長嶋有小説コミカライズ企画第二弾
カラスヤサトシ「夕子ちゃんの近道」
島田虎之介「猛スピードで母は」
※すでに公開期間は終了
長嶋有の小説をコミカライズし、Webアクション上で公開。
『夕子ちゃんの近道』はノスタルジックなスペースとエキセントリックな姉妹との日々を描く。
4コマ形式、なによりカラスヤサトシマンガのカラスヤサトシそのまんまの造形主人公で、見知った人はまるでカラスヤサトシが物語に現れたようで楽しい。もちろん、知らない人には少しほろりとした、あり得る人たちのあり得る日々の物語として。
『猛スピードで母は』は白黒のパキッと効いたイラストレーションのようなマンガ。デザインが綺麗でみていても楽しい。
小学生の聡くんと、カッコいいお母さん。お母さんの好きな人。1970年代かな、「お母さん枠でカッコいい」はすごく珍しかったと思う。イラストのかっこよさと共に、シワのある顔でなおステキなお母さんが良き。
今回公開の作品は11年前に公開されているもの。今後発表になる完全新作も期待。
『殺し屋はスマートウォッチに逆らえない』
奴は殺し屋、死神X。奴がくればバーは3分後には死体置き場(モルグ)になるのさーーー
でも死神、スマートウォッチのエクササイズに夢中。コッテリ風味ギャグ漫画。
1話1話がショートなので読みやすいです。
あの、情報量が多いです。ムッチリと。
キャラのボディがムッチリなのも良いですし、アクションエフェクトが「飛び回る本人が明確に記されるタイプ」と言いますか、ここで撃ってこちらでさばいて、みたいのがアクション表示(結果)だけではなく本人もちゃんと描かれるスタイルで、誌面がミチっとしてます。すごく好きなタイプ。
こどものころのギャグマンガを思い出します・・・私がこどものころなんで岡田あーみんとか奇面組とかですけども。そういう味わいがありますねえ・・・(お茶をすする)。ギャグマンガが本気でくだらなくて良かった時代の。
「[第73話]ラーメン赤猫」
ラーメン赤猫は猫がやってるラーメン屋。
接客、製麺、ご近所づきあい、弁護士との打ち合わせ、祭りの参加と地域店舗との関係・・・ってこれガチの小規模飲食店ものじゃん!
渡る世間は猫ばかり。信頼関係とリアリティのラーメン屋漫画。
今回は「小規模店舗で病人が出たよ!」の回。
小さい店では心配なことですが、信頼感でラーメン赤猫はクリア〜!ああ、職場ってこうあってほしい。普段の仕事は6割で抑えて有事の際に助け合う、最高。
『スクールバック』第8話 嫌いな人
伏見さんは、どこかの高校の用務員さん。程よく、適度な距離で、ちょっと話せる人。
大人という存在に無意識に傷つけられるこどもが、我慢していたことを少し話せる人。
10代のこどもに視点を強く置いたヒューマンドラマ。
今回は。。痛いなあ。。
笑顔の人が信じられない子。笑顔の大人は本当に怒ってくれない、だってお母さんは「私のことを思って怒ってくれる」・・・
母親から依存され、言う事を聞いてしまう子のある日のこと。
スクールバックでは、傷ついたこどもたちへの答えは出ません。伏見さんは「適度な距離を取る人」で、解決まで踏み込む物語ではないからです。
私は、こどもの痛みを知るための漫画だと思ってるし、この漫画を読んで痛みに配慮したり、あるいは「過去のこどもだった自分」の痛みに気づくための漫画だと思ってます。
こうやって物語にされて客観視することで、「あれっ?昔私がされてたことって??」「私がやっていたことって?」って気づくことあるんですよ。
少し気をつけながら読んでみると、そういう心情に気づくことがあるかもしれません。
物語は爽やかです。伏見さんは深入りをしない人だから。そんな語り部は、私はアリだと思ってます。
もちろん、今こどもをやってる人にも良いと思います。
「そんな程度のことで」を物語の中で掬い上げてもらっているのをみるのは、「あ、私これ言っていいんだ」ってなったりすると思うので。
『パリッコの都酒伝説ファイル』
今をときめく居酒屋ライター、パリッコ。彼を主役に据えた飲み歩き漫画・・・だけどオ、それだとちょっと薄いな〜なんかいい味つけない?ん〜オカルト?オカルト混ぜてみようか?というような編集会議が想像される(憶測)、オカルト×飲み歩きギャグ漫画。
安居酒屋の飲み会に咲く、ものすごく強引なオカルト小噺。まさに泥酔ノリで展開するこじつけ全開の都「酒」伝説は、軽く飲みながら読むのにぴったり。
私はライターパリッコさんが大好きで、パリッコ提唱「酒蒸し法(フライパンになんでもいいからタンパク質を放り込んでなみなみ酒を注いで酒が蒸発するまで蒸す)」は本当にお世話になっています。ハイパー簡単でどんな肉でも基準値を超えてくるんだヨ。
現実のパリッコさんはまんがのような怪しげな風貌ではないけど、確かに「◯◯法」とか言い始める感じはこの漫画の根っこを作ってる・・・・のか?
テキトーなオカルト風味をアハハって読んでると、ちょっとイイかも?安居酒屋テクが入り込んできて侮れない漫画です。なに?安居酒屋テクって(自分で言っといて)
酒蒸し法についての詳細はこちら!みんな大好きデイリーポータルZ!
平成最後のキッチン革命「酒蒸し法」
『まんがで分かるまんがの描き方』ヤングエース2023年11月号
マンガ指導マンガで「政治」に踏み込む!講師は安心信頼の大塚英志ッッ!!!
このシリーズ、私は前から読んでいて。手塚治虫由来の漫画術やウェブトゥーンなど、漫画原作・編集者でもある大塚英志が講義する信頼の漫画だったんですが、ここへきてなんと政治をやるとな。
大塚英志は『多重人格サイコ』などで知られる漫画原作者ですが、同時に柳田國男直系の民俗学&サブカル&プロパガンダ研究者でもあります。私の批評は北村紗衣と大塚英志のミックスでできてる。
「萌え漫画をフェミニズムから守ることだけが表現の自由にすり替わってしまう」
「それがゆえ、表現が政治に支配されている時代を学ばなければいけない」
私の日々のマンガ紹介トゥートの主張そのまんまと思ってください(当然、私が大塚英志に倣っているのです)
今回は大正末期からの「まんがの描き方」についての講義。まんがの描き方が学べるようになり、広告に転用されるようになり、そしてその後に待ち受けていたのは戦争プロパガンダへの展開。
マンガが政治的じゃない・・・・って、それ、「誰が」「いつ」言い出した?
『解体屋ゲン』週刊漫画TIMES 2023年10/13号
極小建設業を営むゲンさんは、海外で「ダイナマイト解体」を学んできたビル爆破解体のプロ。ゼネコン、一人親方、海外企業も巻き込むゲンさんのアツい想いが業界を動かす。
現実の業者にも取材する、将来を見据える建設業界お仕事マンガ。
今回はゲンさんの会社の事務、有華さんが営業に成功(小さいので事務も営業に行かねばならないのだ。。)。良さそうな案件なんだけど、どうも性的な視線を感じて。。
マンガについては、マンガらしいファンタジー撃退(ゲンさん世界のドラえもん、大手ゼネコン研究所の谷が面白解決)。
ゲンさん世界は理想主義に陥らない生々しさがあって、現実問題やばいセクハラなんだけどそれが罷り通っている業界であることが描写される。それは隠しても仕方ないので。。。
私は自分が女性であることを踏まえて、営業行ったら性的に求められるの絶対嫌、あってはならない、と思うんだけど、じゃあそれを描かないのは、、それはずるいと思うので。実際に「在る」ものを。フェアな漫画だと思います。
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
やーー面白かった!!
ハイクオリティ画質・映画クオリティのゲーム画面再現・過不足ない脚本、演出で超良質のエンタメ。こどもが見てる最中ずっと走り回ってましたよ(レンタルBlu-ray)。
お母さんとしましてはマリオ世界の「ピーチの不在」がスゴイよかったなーって。
ピーチといえば囚われ、囚われといえばピーチという、マリオ生誕以後ずっと常識としてあった「囚われの姫概念」。
本作のピーチはスターウォーズ1.2.3のヨーダみたいに動くし、為政者として大変立派な人物。クッパにデカいジャベリン(か?)を突きつける姿、推せる!
では「クッパから何かを取り戻す」が物語の9割であるマリオ世界で何を取り戻すかといえば囚われたルイージ。マリオと再会したらクルクル抱っこでチューするの!?(しなかった)って感じでお姫様!!
でもルイージ、クッパにヒゲ引っ張られてマリオのことを喋っちゃう「主人公の足を引っ張る仲間」ムーブ、そしてなにより最後にマリオと背中合わせでクッパをやっつける「バディみ」もあり、この作品に姫はいませんでした!主体性100%!良き!
さて、私が勝手に言い出した「囚われの姫」概念ですが、これは「客体化され、物語の都合で勝者のトロフィー奪い合われる姫」「主体性は無く自ら脱出や抵抗を試みない姫」だと捉えていて、
本作のピーチはもうぜんっぜんそんなことない、マリオの指南役だしコングの国にゴリゴリ交渉に行くしバチボコバトルするしメインバトルキャラだし
ルイージにしてものちのちの成長とマリオと背中合わせの激アツバディ(マリオがあんなに修行してできるようになった動きがスタールイージは一発でできるようになった、というのは言ってくれるな・・・!)は物語初期の「囚われの姫」のみで収まるものでは無く
当然マリオ、コング、キノピオ諸々も意思と行動があり
イイじゃん・・・!主体性の濃縮果汁還元じゃん。
なんか話の最初の頃にマリオのファミリーが出てきてマリオ兄弟超バカにされてて「ファミリーに認められてなくてボクは」みたいな愚痴をコングにするんだけど、
こんなにみんなキラキラしてんのに、あんな意地悪なファミリーに認められる必要ある?ゴッドファーザー2でもファミリーを維持するのは難しいって言ってたし解散だよ解散!ファミリーなら黙ってると思うなよ!
モーニング2023年45号
『箱庭モンスター〜少女漫画家、ときどき紙袋〜』
少女漫画編集者のお仕事とは!?
超ハードワーク&マッチョ環境の編集部から一転、少女漫画編集部に転属になった臼井。
うつ寸前だったのでこれで楽になる!と思いきや、少女漫画編集部は「売れない」という魔窟で・・・!?
売れない。。。。のか。。。。
少女漫画には全然詳しくない私なので、そんなにも売れてない売れてないと言われてアワアワになってしまっている。そうか。。そんなに。。
今回は新米編集、臼井が大御所漫画家に以下三つのうちどれかを選んで、と言わなくちゃいけなくて悩む回。
・今の作品のままなら原稿料半額
・大ヒット前作の続きものを描く
・異世界転生ものを描く
んんんんんんんんんんんそうなのオ〜?
私のようなバイオレンス&デストロイな漫画読みは、異世界転生もの全然読んでない。『ライドンキング』しか読んでない(アレはまた話が違う)
でも確かに雑誌として「異世界転生専門」の雑誌が多数あることも、男性向け女性向け別に独立して成立してることも確認している。
私としては、自分は読まないけど異世界転生というフォーマットに則った軽く読めるコンテンツ、というものが悪いとは思ってないけど、そればっかりだと寂しいわね、というのも本音。
『だんドーン』
『ハコヅメ』作者の描く、江戸幕末警察黎明期。
薩摩藩斉彬侯の下、西郷隆盛と共に暗躍した川路 聖謨を主人公にコミカルに描く。
これ、めちゃくちゃ面白いんですよねえ。
何って、ツッコミがとにかくドライで現代的で現実的で、すごく好みなんです。
歴史というものを編む時、歴史家の中には強く聖性を付与する人がいます。
「卑弥呼はその時、感動に打ち震えた」みたいなやつです。
私なんて者は「いや現代と価値観相当違うし感動に?打ち震える?え〜?そうなる~?」みたいに思うわけですよ。
で、『だんドーン』はそれがコメディかつ現実的なので、
「うん、この作戦ムリだね!広げた風呂敷できるだけちーっちゃく畳む方向で逃げきろっか!」
みたいな、現代の倫理観で納得できる物語が付与されるわけです。
聖性を付与するとは
「本作戦は失敗してはおらず、前向きな縮小で未来への期待を託すものである」
みたいなキラキラすり替えっすね。嘘つけ失敗してんだろ!
それが合ってるかと言えばそりゃ分かんないんですけど・・・少なくとも警察黎明期というアンタッチャブルにキラキラ聖性を付与されるよりぜんっぜん楽しい。楽しいというか、、この素材でキラキラされたら俺のプロパガンダレーダーが火を吹くわけで(ごにゃごにゃ。。)
「[#7]スパイダーマン:オクトパスガール」
スパイダーマンの敵、ドクターオクトパスが日本の中学生の脳に同居した!?いじめられっ子の乙葉とオクトパス、案外いいコンビ。オクトパスの科学力でまちの悪いやつをやっつけろ!
清く正しい少年漫画!
と言いつつ、登場キャラクターがいまのところオクトパス以外全員少女ということにはたと気付いたりして。男の子は少し残念だったりしないだろうかな〜
今回はオクトパスの敵として「オクトパスとスパイダーマンの遺伝子ミックス」という敵が登場。スパイダーマンってこう、化学の匂いがするですね。スパイダーマン自体も「放射能を浴びた蜘蛛に咬まれる」という化学の匂いがして、オカルトとか宇宙生物とかじゃないんだなあというのは素朴な感想です。アメコミには詳しくないのだぜ。
『あのこが好きだった本』
嘉山諒は本を読む。あんまり読まなかったけど最近読む。
本を介して人と会う。会うし、スルーっと肌も重ねる。
ゆるい空気の漂う、本と人との関わりの漫画。
私、このマンガ好きなんですよ。ブンガク的堕落、えっちじゃん・・・!と思って。
でも最新話でちょっと風向きが変わって、あれ?これって・・・ブンガク的堕落でえっちだ!
何話まで続くのかな。やるせなくて気だるくて哀しくて、毎日育児でヘルシーに過ごしている私はこんな話も読みたくなります。
ヤングマガジン2023年45号
『一日外出録ハンチョウ』
死と金のデスゲームの名作『カイジ』のスピンオフは、奴隷生活を送ってるはずの地下組織のおじさんたちのほのぼのライフ!?「地下組織からの1日だけの外出」という設定で、おじさんたちが個性豊かに独身中年男性を謳歌。みんなでパフェを食べたりマンガ投稿に挑戦したり。ウキウキの中年休日!
今回は「接客の悪い店でみんなでごはん」の回。
ハンチョウの何がいいって、「過程」があるんですよ。
今、飲食店ランキングサイトなどで「結果」だけが見られちゃう時代に、そこで起こったことにワーワー言いながら折り合いをつけるおじさんたち。
今回は「この店の接客の悪さを漫才に例えるとな、」という、若い頃漫才番組を浴びるほど観た世代の例えを披露し、かなりマズイ接客(あれ私なら怒ってるな)もなんとなくクリアーします。あとご飯自体は美味しかったらしい。
そこに起こっているドラマをきちんと描くことで、「星3.5」のつまらなさから出ていける。そんなささやかなおじさんたちのプロテスト(そんなデカい話ではない)
「にわか雨のてがみ」(読み切り)
突然の、雨。
友人と一緒にいた「ぼく」は、その雨が自分たちの上にしか降っていないこと、そして友人がとても楽しげなことに気がついた。
少し不思議で愉快なショート漫画。
擬ネコチャン(擬人化のネコチャン)がそっと踏み込んだアニミズムの世界。擬ネコチャンのイラストの情報量の少なさと森のミチミチした書き込みの多さに時空が歪む。ああこれは、これは水木しげるの系譜。面白うて少し不気味。のち、愉快。
『レタイトナイト』8話
ビシテ大陸のザイ地域は海に挟まれ、4つの国がある。北方のレタイトナイトに暮らす少年カンカンは、作物の取れる量が減り、すこし苦しい時代に生きていた。魔物と魔法、そして経済。ファンタジー世界でも「生きて」いく物語。
今回は「この世界の収入&ざっくり生活用品の物価紹介」があって楽C!
わたくし、設定集で一日楽しめるサイドの人間なものですから、こういうのめっちゃ嬉しいわけ。
ふむふむ、普段着は「3銀貨」かー!日本円だといくらくらいかな。
しかし服の値段は紡績技術&工業化がどれだけ発達しているかで変わる、
そもそも通貨(クレジット)で生活全てを回すのではなくある程度は縁故でインフラを担える社会構造であれば現金はそんなにいらなくて価値が低いのかも、
また魔法で服の修理ができるなら価格が釣り上がることもなさそうだウフフフフフ(本当に楽しい)
以前、作者の香山哲氏から「今作の魔法は、熱量保存の法則が効いている環境を想定してます」という提示があって、
無から有を生み出すわけじゃない、魔法とは言え労働技術に近いものかなと思ってて、では素材そのものの価値は結構高いんじゃないかなウフフフフ(楽しい)
あと、異世界日替わり定食メニューも楽しいです。異国めしだ〜
「[第1話]対世界用魔法少女つばめ」(新連載)
今、空には「ハート」がある。
ハートで埋め尽くされた空で、ひとつでもハートが割れると超ヤバい。強い「思念」が降り注ぎ、人は狂い、殺し合う。
燕は高校2年生。両親はもう死んでしまったけど、泪(るい)ちゃんと心心(ここ)ちゃんがいればそれでいい。だから魔法少女になって人を守りたい!でも魔法少女ってどうなるの?
kawaiiとゾンビ様の群衆が押し寄せるダークファンタジー。
ハート意匠とタイポグラフィアートの力の強いグラフィック。マンガとして違和感のあるデザインは常に刺激的。
当然このテーマとグラフィックでいくなら『魔法少女まどか⭐︎マギカ』を意識していないとはいえず、まどマギ以降、億単位で作られたフォロワー作品(盛ったけど同人作品まで含めたらあながち冗談でもないんじゃないか)との差別化はどんな感じでいくのかしら。
「フォロワー作品が上回る」ことは全然あるので注視したい。
個人的にはちょっと飽きはあるけど、飽き・・・つまり定番化してこその「こすり」もあると思うので。
「[#009]ぼくと海彼女」
妖しげで寂しげで、妙に惹かれてしまう女(ひと)。
少年を惑わす女性というのは魅力的ですな・・・!
今回はオカルティックな伝承と、そして「体験した人間の口承」。過去に惑わされ囚われた男というのもイイですねウフフフフ(好きなテーマなので喜んでる)
FEEL YOUNG2023年10月号
『発達障害な私たち』
発達障害な私たちは、いつも心ここにあら’s・・・
2005年、「発達障害者支援法」により日本社会に認識された発達障害はその認知件数が急増中。当事者である漫画クリエイターと編集者コンビが、生活者としての発達障害者に取材しまくるゆるめでマジメな発達障害者レポ漫画(医師による監修付き)!
オモコロ・恐山編最終回。
わたくしも当事者として首がもげるほど頷いて少しもげました(ウソをつきました)。恐山氏、タイプとして近い。
「食べ物系取材をするので食べてはいけない」の前に思いっきり食べてきてしまう恐山氏。本人の分析曰く「◯◯系取材」として取材だけが頭に残っているため腹ごしらえをするパターン、「食べ物系」として頭に残っているためお腹減ったーなんか食べよ!と食べてしまうパターン、後半の「食べてきてはいけない」がすっぽ抜けるパターンに分解。
明晰で合理的な分析と言語化、そして結果のトンチキぶりとの乖離。
高度な言語能力とスーパーウッカリドッキリ思考能力の合わせ技。こういう人「も」いる。たまにしかいないのでネットの有名人になってるわけで、他の発達障害者がみんなこんな片輪のスーパーカーみたいな人でないことは言及しておきます、ハイ。ネット面白有名人。
「[第18話]ハンサムマストダイ」
ハンサムマストダイ、おふざけギャグ漫画だけど素材が男性アイドルなので時節柄どーーーしても現実の某アイドル企業とオーバーラップしてしまうんだけど、
「悪逆の限りを尽くした挙げ句に道徳を説いてくる悪のアイドル企業社長」に対しての反論が「寝ぼけてんじゃねー」なのはすげー正しいと思いました。正解でしょう。逆にそれ以外無いっすよね。。
『女神の石』
作家、長嶋有の小説のコミカライズ企画。
イラストレーター100%ORANGEによる不穏で不条理なポストアポカリプスショートSF。
これは絵の力!
退廃的で未来のない物語を再構築するのは絵本も手がける可愛らしい画風の100%ORANGE氏。
寓話的ではない、酷薄でウンザリするような日々、
カワイイ絵なのにマッチョやダメ人間、博識そうな男性全員のクソっぷりが丸出しになる。こんな生活イヤだ〜
これは世界観に合った絵柄の作家だとむしろ「・・・で?」ってなる作品だと思うので編集者のベストセレクト。新たな価値。
『大好きな妻だった』
武田登竜門氏と言えば、Twitterで話題になったこの読み切りもご紹介。
嘘が下手で口の悪い妻とぼく。妻に癌が見つかって、妻は一変した。死が確定した妻の最後の抵抗。
↓ネタバレしているんで良ければ読んできてから、コピペでテキストなどにはっつけてどうぞ!
千香の行動、あれは自分を守るためだよなあっていうのは思ってて。
だって、最後にお金残してたじゃないですか。てことは、死後バレることは確定なんですよ。
生きてる間だけ嫌われたい、
それってたぶん、「素のままの自分」を嫌いになってほしくないってことだったんだろうなって。
昴に嫌われるためってのも絶対あったろうけども、演技で徹底的にイヤな奴を演じて、「そっち」を嫌ってくれれば、素の自分は守られるから。
どうせ嫌われる、だったら演じた方を嫌ってっていう。昴を信用していない。
これは死を目前にした愛の試し合いで、千香は幼いけどそれを責めるには死はあまりにも不可避だし、そして昴は千香に勝利したし。
というわけでいいマンガだな、とは思うんですけど、、、
私個人として、がん患者家族だったことがありまして。
心情ではなくカネのことで、吐き気がするよーな絶望的な未来を待ち受けた過去があって、目をぎゅうっとつぶっちゃう作品です。
残高が減った昴の気持ちが痛いほどわかるので、手放しで泣けないンす。これは個人の感想。本来は愛の試し合いのマンガなので、良い話だと思います。
「[第74話]ラーメン赤猫」
猫のラーメン屋は今日もオープン。
麺打ち、接客、人事、経営、地区の店との付き合いに顧問弁護士とのやりとり・・・これガチの小規模経営自営業じゃん!渡る世間は猫ばかり!あったか人情ラーメン屋噺(猫情?)
今回は店の穏やか担当・虎のクリシュナちゃんが「法的人格試験」を受ける回。
ラーメン赤猫はすごく真摯に「猫がラーメン屋やったら?」を突き詰めていて、そういう・・・そういう仕組みでやってるんだ!?と面白く受け止めています。試験をクリアすると人と同等の資格を得られるんだな、この国の猫は。
試験のクリアで人権が「付与」されるのって憲法的にどうなんだ?と思いつつ、じゃあ生まれたまんまの猫に人権与えられるのかよと(喋れない猫もいるようで)、
これはアニマルライツの話?いや、人権付与の話?
ネコチャンキャワイイとか言ってると思わぬ袋小路に。いえファンタジーなんですが!猫はラーメンの湯切りはしないので!!
「[第124話]ダンダダン」
超作画オカルトバトルラブコメ(あまりにプリミティブに凄いのであらすじが短い)
今回は新キャラの過去の掘り下げどす。ダンダダンはこういうキャラごとの物語(ナラティブ)掘り下げも本当にうまくてね。。
それにしても今回、「キッチンに背中を向けて立ち楕円コマに料理を描くことで「本来料理に携わる年齢じゃない子が料理をしていることがすぐわかる」という表現になってるんだけど、この楕円コマの使い方見たことないなあ・・.アメコミとかではこういうのあるのかな?面白いな。
ところで今回の新キャラ「委員長」(もうこう言っちゃっていいだろう、そういう類型のキャラクターだ)が幼い頃から父と死別し祖母のケアをするヤングケアラーだった過去を説明セリフなしで絵のみで見せていく(うまい。。)んだけど、
ヤングケアラーって社会保障からこぼれた「社会からの虐待」という側面があると思うんですが、埼玉の虐待禁止条例だと「大人(おばあちゃん)が見守ってるから虐待ではない」ってことになるんでしょうか。それともこれも通報案件なんですかね。違う意味で保護されて欲しいけど。※こちらの条例、2023/10/10現在で取り下げの予定(完全にやめるとは言ってない)だそうですね。ちょっと無理がありすぎなのでこのままで4649。
「[第七話]歴史メンタリスト」
負け戦の武将に惹かれ院で研究をやっている司馬朔太郎。その「歴史的負け人生」への共感性を買われ、ハードな人生でメンタルをやられた偉人たちの「メンタリスト」に抜擢される!偉人伝のシニカルな捉え直しを軽いギャグに。原作はトゲトゲ漫画の旗手、鳥トマト氏(でもこの漫画はトゲなんて一切ないよ)
今回は吉田松陰先生がやってきて、Z世代に「結局何もできてなくね?」という冷たい声を浴びせられます。そーゆーことを言うな。
私は大学生なので、その研究者の功績が直接何かに作用しなくても次の研究の礎になることを知っています。漫画の中でもきちんと改心して吉田松陰先生から漢語を習う(これは本当に素晴らしいことだぞ)という結末になってよかったです。幕末の漢語は日本の文化の礎なのだよ
この漫画、歴史人物がふにゃふにゃ飲んだくれながら愚痴る感じと思いきや、ちょいちょい「歴史研究」について納得することがあるので侮れなく。朔太郎が学会で発表する回とか、研究者の矜持も見せてくるのでこちらも気が引き締まります。勉強しよ。