漫画のことと本のこと

漫画好きが読んだ漫画や本の感想を書くブログです。

0311週に読んだ漫画感想(漫画14件、本4件)

その日読んだ漫画や本の雑感をまとめておくエントリです。

リンク切れや無料期間公開終了などご容赦くださいませ。

 

本日は漫画14件、本4件の感想です。

 

 

【comics】

 

『定額制夫のこづかい万歳 月額2万千円の金欠ライフ』モーニング2024年15号

 

 

 

マンガクリエイター、吉本浩二の定額制こづかいデフレ生活レポート漫画。Twitterにて定額お小遣い制で暮らす「こづかい超人」を広く募集。今宵もクセの強いこづかいの使い道があきらかになる・・・

 

こづまん、今回の超人のこづかい額は「3万7千円」。けっこうもらってます。その使い道はなんと「国家資格取得」!!

 

もともとスポーツマンだった超人、コロナで楽しみがなくなってしまったため適当な国家資格を取得することに(なんて言いました・・・?)


「こづかい範囲で資格取得」が目的なので、テキストは2冊まで、国家資格限定。そのおかげで複数の資格を取得し、仕事にもプライベートにも活きているのだとか。

 

この漫画・・・人類学とか社会学の範疇なんじゃないかなと思って・・・デフレとコロナと国家資格は民間より激安→中高年の楽しみに、って、社会学じゃないかなあコレ

 

あとわたし国家資格の勉強中なので「資格は2冊を厳選してやりこめば十分」という超人のことばについていきます。参考書と問題集、2冊4千円を1日2時間。心しますッ

 

「[第92話]ラーメン赤猫」

shonenjumpplus.com

 

猫のラーメン屋さん、お休みの日の一幕。
あの、、住み込みの仕事先がこんな風だったら全然働きたいですが本当に働かせてください・・・

 

1日外出録ハンチョウ(ヤングマガジン2024年14号)

 


奥さんが亡くなったあと、こども2人を育てるシングルファザーが「ふとした平日の午後に突然1人の時間をゲット」という話。

 

本当にお父さんしてる、仕事終わりにこどもたちの喧嘩の仲裁に入ったりとても気を遣って生活してるので、めちゃくちゃストレスが溜まってたことに気づいて、のんびりしたくなったって話で

 

あの、ちゃんと育児してる人だって。。ストレス溜めることが証明だ、なんて言いたくないけど現実問題不可避で、やっぱこどもを育てることに疲労感はある。「365日10年、久々に1人の時間が訪れた」って言ってるお父さんの話( ;∀;)オヨヨ

 

現実の重い話にするなら、シンママはここに「驚愕の低賃金」というヤバさが加わり、このような穏やかな日は10年に一度も訪れないかもしれない、というのは付記しておく。

なにはともあれシンパパお疲れ様っす。黒服牧田の休みに幸あれ。

 

『解体屋ゲン』週刊漫画TIMES2024年3月22日号

 

 

こどもが激痩せしていて友達の家に食べ物をねだりに来る・・・そんな子のためにオープンしたこども食堂なのに、肝心のその子が来ない!直接家に行ってみたが・・・

 

「いかにも水商売」というステレオタイプのネグレクト母親を登場させつつ、その母親の態度の背後に離婚後の別居親が養育費不払いと居住マンションのローン未払いしている問題に行きつく。連帯保証人が母親なので払い続けるor自己破産しかなく、自暴自棄になる母親像を浮かび上がらせる。

 

この漫画雑誌、明らかに男性向けの雑誌なんですけど、こういう切り口で母親を悪者にしないのすごいなと思う。


現実問題こういうケースはとても多く、男性からすると痛い話なんだけど、それでもこの媒体で描くことの痛みはそれは自己批評的だと思う(ただし相手方の別居親はオフィスのホワイトワーカーとして描かれており、媒体読者層を想定すると自己投影には少しクッションがあるかもしれない)(それでも十分な啓蒙)

 

あと、お母さんがなにか長いものを口につけていて口紅・・・??と思ったら、あれたぶんアイコス(電子タバコ)かな?タバコのトレンドが全くわからなくて、ステレオタイプのイメージに置いてかれている(でもそれでいいんだと思う)

 

解体屋ゲンはブルーワーカー漫画なので、母親が水商売を生業としていることになんら批判的な視点はない。また、料理ができなくてこどもにカレーばかり食べさせている、ということも批判されない。作中、「母親なのに」ということばは一言もない。

クッキングパパ』もそうなんだけど、保守的な温かみってこういうことだろうと思う。保守思想にひもづく家父長制はあまりにも酷くて全否定しなきゃいけないんだけど、

この保守の、地域や職域の連帯に多様性が加わり、排外主義が撤廃されることをわたしは望んでる。

 



亜人ちゃんは語りたい

pocket.shonenmagazine.com

 

亜人(デミ)とは、特殊な性質を持つ人間の事である。すなわちバンパイアやサキュバスデュラハンなどッ!かつては迫害の歴史があったが、今では差別もなくなりマイノリティとして生活している。


亜人大好きながら人生で縁のなかった教師・高橋が赴任した高校にはなんと4人もの亜人がおり・・?亜人日常コメディ開幕ッ!

 

様式としては「ハーレムもの」のくくりに入りますけどこれは異文化コミュニケーションですネエ!

 

おれは昼にウンベルト・エーコを読んだんでそのテンションで話す。

 

『永遠のファシズム』では「(移民への)不寛容の教義は富める者が作り、貧しいものが実践する」と言った。まず金持ちは教義を作るなア!!と言いたいけど、その対策として「暴力に訴える貧しいものに知識人が教育を施す」と言う。

 

なにからなにまでチシキジンさんはエライですねえイライライラ~!ってとこですが、『亜人ちゃんは語りたい』の高橋は亜人(つまり移民的な属性だ)への興味から本人たちも意識寺内特性について解き明かし共有する。これは教育。おかげで『亜人ちゃんは語りたい』世界はとてもハッピー!

 

そもそも教師高橋は亜人が大好きでアカデミーで研究したかったのに、社会の無理解でできなかった「非アカデミー」で、

 

エーコ先生、知識人が教育するって言いますけど、アカデミーはホントに差別属性に関して研究して教育として広めてくれるんス~?

 

亜人ちゃんは語りたい』は「亜人たちが生活的にも精神的にも苦しくて問題を起こすことがあった」として警察組織として「亜人課」が設置されている、という話があって、

特性だけじゃないんですよ、生活的な問題や二次障害的問題、犯罪への関与とかさあ~~~

(ちょっとやさぐれております!やさぐれております!!)

 

あ、こう、女子高生女の子キャッキャハーレムものとしてもおススメですよ、かわいいお話っす。

 

『隙間』『月刊コミックビーム』2024年4月号

 

 

 

台湾の漫画クリエイター、高妍(ガオイェン)が描く、沖縄に留学してきた台湾の少女の政治とプロテスト。


実在の編集者、鄭 南榕(ていなんよう)の言論の自由と台湾の自由をかけた焼身自殺。
彼は記者の名前を明かさずに雑誌「自由時代」を刷った。内乱罪で起訴され捕まる前にガソリンを撒き編集部で焼身自殺を遂げる。享年41歳、その年は1989年。


台湾はその後、言論の自由を獲得し民主化運動が加速、今では東アジアで唯一同性婚のできる国でもある。

 

鄭 南榕の娘は言う。「焼身自殺の決意を知った母が泣いた、あなたが死んだら台湾はこの後どうすればいいのかと」。鄭 南榕は答えた、「あとは君たちがやるんだ」

 

反抗は

 

誰かがやるものではない。自分で声をあげるものだ。
強くなくとも、強いものの後を引き継ぐのでいい。
投票、言論、民主主義を信じること。できることはたくさんある。

 

政治について冷笑することの愚かしさ。おれたちに逃げる道など残されていない。何ができるか。

 


『アフロとボウズ』(読み切り)

shonenjumpplus.com

 

若手お笑い芸人、ハセガワ。ヤクザの下っ端、神崎。ハセガワは拉致され、神崎は拉致した。しかしハセガワはドッキリだと思っている!!すれ違いシットコム

 

軽快だし画もスタイリッシュだしバトルの盛り上がりもあって普通にいい話なのです。が・・・

 

こう、「お笑い芸人は暴力にさらされる企画があり得る」という大前提あってのマンガっすよね。知らされず拉致されるとか普通に怒っていいんだけど、それが「お笑い芸人ならあるかも~」って設定に使われちゃってる。

 

セガワはたぶん、そういうこと抜きにちょっとヌケたパーソナリティなのだと思うのでこの話は全然成立するんですけど・・・『電波少年』とかの、気づいたら外国の知らない場所に放り出されるとかっていうやつ、わたし自身がすでに全然ありえないし面白くないので「お・・・おう、今更こういう切り口でするか」とひるんだ次第。

 

三谷幸喜の『ザ・マジックアワー』も似た感じのシットコムだけど、妻夫木聡佐藤浩市を一生懸命だますクッションがあるのでまだ受け入れられるんだけど・・・ハセガワ、それは気づけ、少なくともその企画、クランクアップしてもTwitterで炎上する。

 

『被災地記録マンガ』

note.com

 

こちらはnoteで発表されたもので商業物ではないので多くは語りません。どうぞ興味があればリンクで読んでこの貴重な記録のPVにしてほしいです(note売り上げは寄付されているそうです)。

 

2024年能登半島地震のレポートとしてのマンガ、あまり作品数が無くて・・・でもマンガが大衆アートであり、社会の記録でもあるならば、こういうマンガもアーカイブされるべきだと思うッス。

 

ちなみに作者のヤチナツ氏の『真・女性に風俗って必要ですか?~女性用風俗店の裏方やったら人生いろいろ変わった件~』、女性の性欲を語る作品で面白いっすよ

 

kuragebunch.com

 

『ねこぱんち』№211

 

 

 

猫と仲良くなれる方法&生き方のヒントが見つかる猫手帳、というマンガ誌。作品は猫が登場することがマストで、目的特化型のマンガ誌だな~!と思ってたんだけど、

 

今回の№211、なんと「猫と私と朝ドラと」という特集で、猫×朝ドラという打ち出し。そういうコラボの仕方があるんだネ~!

 

マッサンやあまちゃんゲゲゲの女房まんぷくなど、評価の高い朝ドラと猫との創作漫画。

 

元々のターゲット層とかぶってたりするのかな。わたし、こういう試み嫌いじゃない!

 

『ディア ロンリースター』

shonenjumpplus.com

 

和を乱してしまうことを恐れる女子高生、星川。そんな彼女の同級生、佐鳥は、空気読めないしゃべり過ぎのサックスプレイヤー。星川は佐鳥の個性に惹かれていくが。

 

佐鳥は明確にASDや感覚過敏などの神経系障害を持っているように描かれているので、その視点で。

 

神経系障害を持つ人間が何かに秀でている可能性は健常者の人と同じくらいだと思うんだけど、特性と表現方法がハマったとしても、他者からの批判を強く受けるのは日常生活がうまくできない神経系障害者で、その分成功には枷があると言える。

 

作者がどのように考えて描いたかは分からないけど、佐鳥は長じても孤独だと思う。佐鳥には「一般」と渡り合うスキルが無い。だからこの漫画のエンドはあるひとつのパターンとしてすごく幸福なケース。

 

人間は生まれついて、その個性を持っている。それがどのように喜ばれるか、どのように使えるかはその人次第。

 

わたしは脳内多動の多弁がとまらないタイプだけれど、わたしに発達障害が無かったらどうだったろうかと考える。平凡極まりない人間として、何かに突出した人を羨んだと思う。それはただ、この社会が「何かに突出しないといけない(ただし常識的に)」という呪いがあるからなのだけど。

 

『友人の式日

comic-action.com

 

友人、瞬が死んだ。死を嘆くかずやの前に現れたのは、瞬の幽霊。だが、瞬は記憶を失くしていた。失くした記憶とあの時の感情を探しに、ふたりが日常を歩く。

失くしたものを探すのは、感情を探すこと。途切れてしまったものをつなぎ直すボーイミーツボーイ。

 

今日はチョット・・・作者の意図じゃないと思うんですが、「映画館」に絞って感想をアウトプットしたいと。

 

この作品の重要なシーンとして、「一緒に見た映画で全然泣けない(ことが哀しい)」というシーンがあるんですが。

 

映画館ってそういう、感情の共有の場でもあると思うんですよ。あの暗いところに閉じ込められてね、同じ音楽と同じ映像を見るというのは。


あと、「映画館に行く」ということも重要です。奇しくも映画が出始めの頃、ヴァルターベンヤミンが「芸術が複製できる(映画はどこにも持ち歩けるので)ことで、今までの絵画などが持っていた「礼拝的な意義」が失われた」と言っていましたが、配信サービスが充実した今、映画館にもその礼拝的意義が認められると思います。

 

そんな大事な場所で、差別的なことってアリでしょうか。瞬とかずやが心を交わしている水面下で、障害者が泣いてもその心は損なわれないでしょうか。想いを馳せます。

 



『あいにくあんたのためじゃない』

kuragebunch.com

 

ラーメンブロガー佐橋ラー油は行き詰まっていた。40過ぎて人気も翳り、ある人気店から入店拒否をされたことで「ぶった斬り系として腰抜け」とバッシングされている。そのラーメンを食べたくて、謝罪をしてやっと入れてもらえた先には・・・

 

イヤ〜な露悪と差別への高度な眼差し。
こういう切り口来たか!とうなずく。

 

わたしは漫画誌をいろいろ眺め見てるんだけど、ちょっと前に流行った・・・『サバサバ女』なんてコンテンツがありましたネ、ああいう露悪なスカッと系、そういう作品で誌面が全て構成されている漫画誌、というのもあります。

 

この漫画も系譜としてはそうなんでしょう。でも、そこで「泣かされている人」の解像度がすごく高い。差別する側の像としても、女性蔑視でサブカル崩れの権威主義と非常に身近な像をセレクトしています。

 

しょうもない紋切り型の加害者と被害者しかいない大衆漫画から、自分達の身近な加害者像と被害者像の大衆漫画へ。この漫画の最後に加害者をどう扱うのか、ものすごく興味がありますネ。

 

個人的には、岡田索雲の『メイコの遊び場』を思い出しました。気のいいこどもグループひとりひとりに付属する差別の属性。差別は決して他人事ではない。

 

「[第51話]正反対な君と僕」

shonenjumpplus.com

 

ふっ。。
ふふふっ。。。

アオハル・・・ね・・・?

 

あのさ、「デートって何したらいいかわからない」って人も、『正反対な君と僕』を片手に持てばいいんじゃないかな、これにハメると苦しいけど、ひとつの解ではある。解ではある(たぶん)

 

(記憶の向こう)わたし、すぐ酒飲んじゃったから。。こういうノンアルコールなデートヨクワカラナイ。。キラキラシテル。。酒。。。(ぶつぶつ)

 

『税金で買った本』ヤングマガジン2024年16号

 

 

 

図書館のお仕事ってどんな感じ?
利用者さんや仕組みのあれこれ。本好きヤンキーの石平くんがバイトで覗く、図書館あるある司書マンガ。

 

「高校生ビブリオバトル」編ッ!!
本オタクたちのとっておきを紹介し、紹介の仕方で「どの本が読みたくなったか?」を投票するビブリオバトルを開催。おもしろそ〜!

 

今回は坂口安吾や『バッタを倒しにアフリカへ』などを紹介します。『バッタ〜』、面白そうなんだよな!全身タイツで!!

 

わたし、ビブリオバトルってやったことなくて。やってみたいなと思いつつ、まだ機会に恵まれない。

 

こういうお話を読むと自分が何の本を紹介するかって夢想してしまいますネ。。
私アレだな、冷泉彰彦の『アメリカの警察』を推したいんだよ、理由はネッ(以下5万字略)

 

 

【books】

 

『マンアフターマン

 

 


1993年発刊。「人類はこの後どう進化するか?」を500万年後という超未来までを仮説、絵として起こして具体例を図解する。

 

ヒトが食い散らかしてしまった地球の環境資源。それに適応するためにさまざまに遺伝子工学を元にした手術を施し、採集や水中生活に特化した姿に進化する人間たち。彼らはもはや文明に戻ることはできないので、高度な脳機能も不要である。そのため知能は低く抑えられ・・・

 

これってどこから「ニンゲン」なの?というSFらしい問いをメカニックではなく進化論として組み立てるアプローチ。絵がちょいグロでデルトロ方面が好きな人にもおすすめだ。

 

このへん、カミサマが「知恵の実を食べたお前らの罪」と言われるのは分かります。社会生活を営み、集団で環境を搾取し、食い尽くし滅ぼす。ぼくらの知能が低ければこんなことにはならなかった。

 

しかし俺たちの脳もまた神の作ったものから生まれ出ていて、俺らの罪はあなたのものでもあろう。神よ、共に責任を取れ。

 

『永遠のファシズム

 

 

 

『永遠のファシズム』を読む。
正直オオン・・・としてしまう。

 

2016年にこの世を去ったイタリアの小説家・思想家のウンベルト・エーコ。1932年生まれ、第二次世界大戦を体験したイタリアの少年の目から見たファシズムは、「ファシズムと言えばドイツ」という偏見を打ち崩してくれるし、アメリカへの思いも「西洋」とひとくくりにしてしまう彼らの区分けを感じさせてもらえる。

 

ただア・・・

 

わたしが読みたかったのは「人は内なる獣性があり、それは教育で打ち崩すことができる」のような文脈で、いったいどのような!?とワクワクして対象の「移住、寛容そして耐え難いもの」という項目を読んだのだけど、残念だけど「白人の大人の知識層は学のない一般庶民にできること少ないけどがんばろうぜ!」という特権階級へのメッセージだったでござる。

 

「貧しい人たち」と「裕福な層」「知識階層」をはっきりと分け、裕福な層は不寛容の教義は生み出したが実践するのは貧しい人たち。だから彼ら貧しい人たちが不寛容を実践する前に知識層が教育することはできるよ!という・・・

 

おれの女・障害者として賃金を直接クソ搾取してくんのは「裕福な人たち」だし、「貧しい人たち」とは連帯できてると思ってて・・・「知識階層」がやるべきことってどうでしょうエーコさん、裕福な人たちをなんとかしてくれませんかエーコさん

 

いえでもね、個人的には好きですよエーコさん。

 

この年代の人なのに、ファシズムが抑圧した性について「女性蔑視、純潔から同性愛に至る日画一的な性習慣に関する偏狭な断罪」をマチズモとして批判している。
女性そのものや同性愛もさることながら、純潔・・・これはノンセクシャルアセクシャルじゃないだろうか、「生殖につながらない愛情」を肯定しているの、いいナアと思うし。というかこのあたりの世の中のファシズム的なもの、「原ファシズム」を問うた項目『永遠のファシズム』はさすが本のタイトルにもなる名文。

 

1990年代に将来的なポピュリズム・・・「個人を無視するファシズムが重用する、質的な大衆」は「インターネットで一部の大衆の声が切り取られて使われる」であろうと喝破。そうなってまーす!!

 

でも、インターネットがあったからこそ野蛮なバカだけじゃなく、貧乏で学歴もないモンが学んだり連帯することもできてね。エーコさん、大衆の力、わりとモリモリ来てますよ。SNSを使ってカウンターをする庶民は今たくさんいますエーコさん。

 

とはいえ全体的に面白い本でした。「原ファシズム」とは統率の取れていない思想であり、非合理が信条であり、批判を嫌う。批判(批評)は科学的な知的営みであり、ファシズムは知を嫌う。うっとこの国ですエーコさん。

 

『まんがでわかるまんがの歴史』

 

 

 

 大塚英志による日本マンガ史。帯は「まんがの起源は「鳥獣戯画」ではない」。
 なにせまんがで描かれているので読みやすいが、内容は「第●講」というカウントの通り毎回かなりディープな講義。ある程度戦中史や美術史、あるいは大塚英志の本を読んでいるとめちゃくちゃ楽しいと思う。
 
 まだ読み切ってない(いや濃厚でねえ)んだけど、大正アヴァンギャルド→高見沢路直→田河水泡田河水泡は高見沢路直のペンネーム)→すなわち日本マンガとは現代アートの流れがあるのである!というの、俺は支持するよ俺は支持するよ~~~!!!

 マンガ表象における記号論からイデオロギー、これからの未来へ。マンガの歴史の一面として。

 

少女漫画へのミュシャの影響、
田河水泡のらくろにおけるアールデコの取り入れ方、

アカデミーにクレジットされたものがアートだというなら確かに違うけど、これほど技術が落とし込まれている以上、それは日本画における「私淑」として見ることはできないのかい(いやどーしてもアートにして欲しいわけでもないけど。。)

 

トランスジェンダーと性別変更 これまでとこれから』

 

 

 

 岩波ブックレット
 2024年、通常国会が開かれている。2023年10月25日、トランスジェンダーの性別変更に関わる法律、いわゆる「特例法」について、5つの要件中4つ目の要件について最高裁違憲判決が出た。この本が出たのは2024年3月。この通常国会中に、少なくとも特例法の4つ目に関しては改正する「義務」がある。
 喫緊の状態で発売された本であり、本書の目的はトランスジェンダーへの正しい理解を広めることである。そのため本著の4章構成を、当事者であり活動家、弁護士、研究者、医師がそれぞれ担当している。
 100ページに満たないボリュームながら、ひとつひとつの章をしっかり理解するのは簡単ではない。それほど内容が充実しているとも言えるし、それほど自分が普段から関心がないとも言える。
 しかし違憲判決が出るほどの人権侵害についてはおぼろげながら理解した。これから6月まで通常国会は開かれている。繰り返し読んで理解につとめたい。