漫画のことと本のこと

漫画好きが読んだ漫画や本の感想を書くブログです。

『邦キチ!映子さん』season6感想~40代による40代のためのエヴァ映画プレゼン漫画+読み切りも庵野監督関係~

トンチキ邦画紹介漫画の最新刊の感想ですー

 

今回のseason6、大傑作2021年公開エヴァの話題が特に面白くてサイコーなのでした。

特に40代に刺さる仕上がり。

なお筆者の年齢もぴったり40で、今回の記事は主観にあふれ切っていることを宣言しておきます。

 

30代~40代の少年たち、神話になれ・・・!

 

あらすじと感想をご紹介します。

 

『邦キチ!映子さん』season6f:id:ima-nakayama:20210928155002j:image

 

【あらすじ】

とある高校にある「映画について語る若人の部」。

 

アメコミ経由・ミーハー映画好きの部長と、部員の邦吉映子、邦画大好き女子高生通称「邦キチ」。

 

どんなトンチキな邦画も、邦キチの手にかかればさらにトンチキな映画としてオススメされる・・・!

 

 

邦キチの邦画愛はとどまるところを知らず、どんな過去のマニアックな作品も長所を見つけてプレゼン!プレゼン!

 

 

業界初、邦画専門プレゼン漫画!

 

【感想】

 

収録の11エピソード中、3話+読み切りがエヴァ関係のseason6。

 

それが非常に良かったのでご紹介したい。

 

と言いますのも、今回はうだつのあがらない40歳の教師「江波(えなみ)」が主役だから・・・!

 

江波は高校の頃、エヴァンゲリオン研究会に所属していた40男。

 

当時のエヴァ研の部員でありあこがれの先輩、中峠先輩と20年間「劇場版エヴァを観る」という関係性を繰り返しています。

 

これ、リアルタイムでエヴァの劇場版を追っている30後半~40代なら分かると思うんですが非常に長いスパンなんです!その上、意中の人と劇場版を観るなんて恐ろしすぎる!

 

20年もの間ときおり公開され、期待度に満ち、そして観た後に難解すぎて無言になって解散する感じ、あの感じを繰り返している40男、それが江波です。

 

 

「劇場版エヴァを語るなら40代出さなきゃ始まらないだろ」という熱い思いを感じます。

 

そう、今回ばかりは本作の主役・邦キチもわき役。

 

40代による40代のためのエヴァエピソード漫画。それが今回の邦キチエヴァ回!

 

3回構成で見ごたえたっぷり。+読み切りも庵野監督関係で、エヴァ好き&庵野監督好きなら見て損なし。できれば30代後半~40代だと最高。

 

 

今まで読んだことが無くても特に問題なし。もし気になった方はぜひ!(特にseason6巻末の読み切りの庵野監督のアレ、邦キチのいつもの「お前本当に高校生かよ」というマニアックなチョイスでたまらんですよ)

 

 

『青野くんに触りたいから死にたい』紹介~ミッドサマー好き?じゃあ「同一化する恐怖と快楽」もどうぞ~

ミッドサマーのディレクターズカット版が公開されましたねー

 

そのためTwitterでもミッドでサマーな話題が盛りだくさん。

 

私も先日、ディレクターズカットじゃないバージョンを観ましたが実に良い・・・

ダニーの訴えるような泣き声が笑顔に変わるのはある意味で幸福であるとすら感じました。

 

ホラーとしてもおぞましく、特に欧米文明文脈における「科学的文明・個の確立」の世界に生きている人たちにとって土着信仰・個の破壊はとてつもない恐怖だったのではないかなと。

 

そこでこの機会に、ジャパンマンガからオカルティック&個の侵食がテーマの『青野くんに触りたいから死にたい』をご紹介します。

 

怖いんだよオ、でもね、美しくて・・・

そして、「それって不幸だっけ・・・?」と困惑するんだよオ・・・

 

【あらすじ】と 【オカルト部分・個の侵食】についてご紹介します。

※ちょっとネタバレ、っていうかオカルト部分を解き明かすミステリでもあるので、もし興味があるならすぐ読んできてもらった方が良いです!

 

 

青野くんに触りたいから死にたい

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椎名うみ青野くんに触りたいから死にたい講談社2017年 より引用
【あらすじ】

 

優里ちゃんは明るいけれどコミュ障な女の子。

隣のクラスの青野くんに一目ぼれして告白。無事付き合うことに。

 

でも、すぐに青野くんは交通事故で死んでしまいます。

 

自分が死ねば青野くんに会えると思った優里ちゃん。カッターを手首に押し当てたとき、青野くんが幽霊になって止めに来ます。

 

幽霊でも青野くんがいればいい、青野くんと話せて幸せ。

 

優里ちゃんの純粋すぎる想いを、青野くんは受け止めます。

 

しかし青野くんは次第に、優里ちゃんの体を蝕む悪霊に変化していきます・・・

 

 

軽めのラブコメのように始まる本作。

 

次第に土着の伝承や精神への侵食など、まったく洒落にならないホラーが展開されます。

 
【オカルト部分・個の侵食】

 

まず、オカルト部分について。

 

交通事故から幽霊として優里ちゃんの元へ戻ってきた青野くんですが、彼が戻ってきたのはきちんと因果関係があってのこと。

 

捧げた「生贄」、これからさらに求める「犠牲」、そして数人の子どもたちが手に傷をつけて行う「儀式」

 

町に伝わる都市伝説、「四つ首様」の言い伝えをもとに、幻とも幻想ともつかぬ人たちが山道に長く連なる「行進」。蛇の首を落とす儀式。

 

まだ連載中で、青野くんの真意ははっきりしていません。

 

ただひとつ分かっているのは、青野くんは優里ちゃんの体を狙い、少しづつ命を奪っていること。

 

優里ちゃんが許すたび、青野くんは優里ちゃんの目の色素を、髪の色を奪い、優里ちゃんは吐血しじわじわと弱っていきます。

 

これは優里ちゃんとこの世の物理法則以上の理の上で契約をし、優里ちゃんを供物として奪っていっているのです。

 

・・・どうでしょう、オカルティックな部分、イメージできましたでしょうか。

 

 

そして「じゃあ優里ちゃんはなぜ青野くんに捧げてしまうのか?(許さなければええやないかい)」という疑問にもアンサーがあります。

 

それが「個の侵食」です。

 

優里ちゃんは極めてコミュニケーション能力に問題のある少女です。

 

明るい少女なのですが、物語が進行すると優里ちゃんが家族から虐待を受けていることが明らかになります。

 

それは蹴る、殴るといった分かりやすい身体的暴力ではありません。

 

「嫌なことを本人のせいだと思い込ませる」「他人(姉)の辛さを優里ちゃんで解消させる」といった精神的な暴力です。

 

優里ちゃんは素直ないい子ですが、こういった家庭環境のため自己愛が育っていません。

 

そのため、青野くんに体を奪われていくことを「愛」だと勘違いしています。

 

自分の体に侵食され、奪われていくことを、恍惚とした快楽として認識しています。

 

ではそれが不幸なことか?と言えば、「自分に侵食してくるくせにひどい扱いをする家族」や「距離感がつかめない優里ちゃんをバカにしてくるクラスメイト」よりは、「奪うけれど優しい青野くん」の方が、優里ちゃんには良いヒトなのです。

 

『ミッドサマー』でも、ダニーのことを幸福か不幸かを断じることは難しいと思います。

恋人のクリスチャンや一緒に来た友人たちは供物にされ、ダニーも元の世界に戻ることは許されないでしょう。

 

しかしではそれは不幸でしょうか。

家族はダニーを顧みず死んでいき、恋人はダニーのことをうっとおしがり、理解するそぶりすらない。

でもホルガにいれば、村の女たちと感情を共有し、悲しみを理解してもらえます。

文明社会の生活から考える幸せではありませんが、ダニーは映画のラストで微笑みます。

 

青野くんに触りたいから死にたい』でも、優里ちゃんは家族から個の尊厳を侵されているため、青野くんに体を奪われることを否としていません。

 

むしろ優里ちゃんは、青野くんに体を蝕まれているとき、幸福そうに見えるのです・・・

 

 

 

どうでしょう!どうでしょう!ミッドサマーが面白かった皆様!

青野くんに触りたいから死にたい』読みたくなったのでは!

 

しかしながらご注意いただきたいのがムチャクチャ怖いことです。

私は特に怖いのが苦手なたちではあるんですが、グロなしの和のぬめっとした怖さに新刊を読めば数日は悪夢にうなされ、話題にすればストレスで耳鳴りがする(マジ)ほど。

 

そんなに怖いならやめりゃいいのに・・・と思われると思われるんですが、人物描写の巧みさ・そして優里ちゃんの切ないほどの思いの強さに惹かれてまた読んでしまうわけです(ちなみに今も怖くて背中が怖い)。

 

なお、kindleなら1巻が無料みたいです(今度ドラマ化するからかな)。

巻を追うほどに面白く(&怖く)なってきますが、興味があれば1巻からお試ししてみてください!

 

 

 

 

(それにしても私の怖がりは異常なので、多分ふつうの人ならもう少し平気だと思いますよ・・・)

『ねぇねぇ、ねねさん。』感想~飯モノイメージからの叙述トリック(?)に涙せよ・・・~

本日は気になる読み切りのご紹介ですー

 

漫画における飯モノのイメージってもう定番化しているんだな・・・っていう。

 

日本漫画の文脈で最大限に活きる漫画でしたなあ。

 

あらすじと感想をご紹介します。

 

(なお、ネタバレしないうちに読んだ方が絶対面白いので、まずは↓リンクから読んできてくださいね!)

 

『ねぇねぇ、ねねさん。』

shonenjumpplus.com

 

【あらすじ】

生活力ゼロの美女、寧々さん。

寧々さんのお隣に住む、モテるために料理を始めた大学生、凛太朗くん。

 

凛太朗くんは寧々さんのためにご飯を作る。なんならあーんして食べさせてあげたりハグしちゃったり。

 

でも、いちゃいちゃご飯の時間は必ず「夜10時」。

 

11時になると必ず帰ってしまう凛太朗くんに、寧々さんの顔は少し曇っていって・・・

 

【感想】

いちゃいちゃ飯モノからの・・・!?

 

本邦ですでに確立された「お隣さんにご飯を作る」といううれしはずかしイメージを利用した本作。

 

絵もすごくきれいで寧々さんは色っぽく、「このあとえっちな感じになるんちゃう!?」という汚れた期待をめきめきに(いい意味で)殴ってきます。

 

シンプルにごはんも美味しそうで、食を通じて出会った寧々さん・凛太朗くんの絆がうかがえます。

 

ごはんはきっかけで、つながりで、そして未来にとどけるもの。

 

読んでない方への配慮のためぼやっとしたことしか書いてませんが、とにかくふわっとした幸せに浸れる良作なのでお勧めです。

 

飯モノ漫画が好きなら余計にこの叙述トリックにハマるはず。ぜひぜひどうぞ。

『邦キチ!映子さん』season7第5話感想~トンチキ邦画プレゼン、『ベイビーわるきゅーれ』でついに名作もOKに~

本日はTwitterで話題の邦画プレゼン漫画、『邦キチ!映子さん』の話題ですー

 

簡単なあらすじは載せますが、未読の方はリンクから読んできた方が理解が早いと思います。web掲載漫画なので無料で数話読めます。↓リンクからぜひぜひ。

 

そして今回のseason7第5話はちょっとエポックメイキングな回だったのでアーカイブしておきたいなと・・・

 

では、簡単なあらすじと感想をご紹介します。

 

『邦キチ!映子さん』

 

 

【あらすじ】

とある高校にある「映画について語る若人の部」。

 

アメコミ経由・ミーハー映画好きの部長と、部員の邦吉映子、邦画大好き女子高生通称「邦キチ」。

 

どんなトンチキな邦画も、邦キチの手にかかればさらにトンチキな映画としてオススメされる・・・!

 

 

邦キチの邦画愛はとどまるところを知らず、どんな過去のマニアックな作品も長所を見つけてプレゼン!プレゼン!

 

 

業界初、邦画専門プレゼン漫画!

 

【感想】

 

邦キチの魅力と言えば、「絶対に作品を貶めないプレゼン」。

 

私も漫画のレビューサイトで記事を書いているのですが、邦キチの姿勢は本当に学ぶことばかりですよ!(突然の大声)

 

正直、海外(特に北米)などと比べて予算や規模的に劣ることが否めない邦画。

 

また海外のトンチキ映画は日本まで至らず、日本のトンチキ映画は必然触れる機会が多いということもありましょう。

 

しかしその邦画のトンチキさを愛し・トンチキの中から長所をプレゼンするのが邦キチのやり方。

 

私も実写デビルマンを観た後に、邦キチのプレゼンの懐の深さに襟を正したものです。

 

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 服部昇大 『邦キチ!映子さん』season1集英社2018年 より引用



「どこをとってもこの世に二つとない作品」・・・

 

物は言いよう・・・

確かにその点をピックアップするならば間違いなくこの世に二つとない映画で、このプレゼンは完全に有効です。(なお実写デビルマンの評価を知りたい場合、「実デビ 酷い」などで検索してみてください)

 

 

 

さて、このように『邦キチ!映子さん』はトンチキ邦画をプレゼンしまくる漫画なわけですが、このseason7第5話の題材は『ベイビーわるきゅーれ』。

 

アクションの質や女の子同士の友情など、とても評価の高い最新の邦画です。

 

今までトンチキ邦画ばかりプレゼンしていた邦キチが、名作をプレゼンしたらどうなるのか・・・?

 

結論から言えば非常にいつもの邦キチでした。

 

『ベイビーわるきゅーれ』の、かわいい女の子ダブル主演というイメージ→ハードアクションを紹介する大きな緩急。「ちょっとした映画マニア」が追いつかない新進気鋭の表現を取り上げるさすがのプレゼン力(りき)!

 

邦キチ、つまんない映画も面白い映画もすごくフラットにプレゼンしやがるッ・・・!

 

season7第5話を以て、面白い邦画もイケることが分かった邦キチ。

今後のプレゼンにますますの期待が高まりました・・・!

漫画のネタバレレビューについて〜『キン肉マン』騒動アーカイブ。もはやツイートも読書体験 ~

 

本日はマンガの紹介ではなく、日本のマンガの時事問題についてアーカイブも兼ね触れたいと思います。

 

Twitterで話題になった「マンガのレビューについて」です。

 

私はもう、SNSに関しては止められないと思うんだよね・・・

 

Twitterで話題になった件とは】

この件ですね↓

togetter.com

 

内容としては、

 

  • キン肉マン』の作者のひとり、ゆでたまご嶋田先生がTwitterでのネタバレ含む感想に注意喚起(含む法的措置勧告)
  • ジャンプ+編集長が嶋田先生の発言に追随(含む法的措置勧告)
  • 結果、『キン肉マン』のみならず、Twitterでのジャンプ作品の感想ツイートが激減する


うーーーーーーん。という内容です。

 

非常に悩ましい問題なのですが、結論から言うと感想が激減するのは集英社に不利益になります。

 

感想ツイートは以下のような効果があると思います。

 

  1. 無料の広告であり、
  2. 読者の読書体験のうちのひとつであり、
  3. クリエイター、編集部のモチベーション(純粋な意味でも、販促計画としても)

 

 

感想ツイートは流れていた方がいいのです。それは間違いない。


しかしながら、クリエイターの「ネタバレを避けてほしい」という気持ちも分かります。


そりゃもうクリエイターからすれば、自分の想定するコンディションで、一番おもしろい状態で読んでほしいですよね。それは痛いほどわかります。

 


でも残酷ながら、たぶんもうそれは不可能だよな、というのが私の(現段階での)見解です。

 

 

なぜなら感想ツイートは、すでに読書体験の一部だからです。

 

それが『キン肉マン』において特に顕著だったということだと思います。

 

人の口に戸は立てられません。

これはマンガのネタバレ以外でも、人類開闢以来ずっとそうなので覆ることはありません。

 

そして『キン肉マン』を好きな層は、現状30〜50代くらいで、少年時代にキン肉マンを読んでいた世代が中心だと思います。

 

この層は少年時代の「ジャンプを読んで、次の日にクラスで友達と話す」ことまでを読書体験としています。

 

その読者が大人になった今、Twitterでつぶやくことは少年時代の読書体験と非常に似た価値があると想定できます。

 

「あの技最高だったよな!」「まさかあいつが味方で戻ってくるなんて!」「すごいうれしかったよな!」

 

これはネタバレです。しかし、そのネタ部分に対して語り合いたいのです。

 

私も『キン肉マン』関係でツイートをすると、それはそれはあたたかなコミュニケーションが広がることを知っています。

 

(余談ですが、2019年にキン肉マンスタンプラリーに参加したことがあります。

Twitterで進捗をつぶやくと、知らない人でも気軽にいいねを押してくれるし、私も「ああ、この人あそこ行ったんだ~」なんていいねを押して交流が生まれました。(嶋田先生もいいねしてくれましたよ)

 

スタンプラリーのみならず、Twitterでの交流も含めて楽しい時間を過ごすことができました。)

 

キン肉マンを読む」という行為は「読んだ後にネタバレ部分(一番面白かった部分)をツイートして語り合いたい」ということも含んでいると考えて良いと思います。

 

であればどうすればよいのか。

 

考えうるのは、例えばネタバレ感想に「#肉バレ」などのハッシュタグをつけ、未読者は該当ハッシュタグをミュートする・・・などでしょうか。

 

web漫画の最後のページに告知をすれば、結構できるんじゃないかなあ、なんて思うんですが・・・

 

と言いつつ、ミュートワード設定などのネットリテラシーが必要になってくるため難易度は高いです。

 

またそもそも嶋田先生やジャンプ+編集長の「ネタバレをやめてほしい」という意図が、私が想像するより広範囲に及んでいるかもしれません。そのため、意向に沿うものかもわかりません。

 

 

しかしながら、「誰かと語る」までが読書体験である作品において、もはやSNSでのネタバレは避けられないと思います。

 

ネタバレ部分を語り合いたい、その欲求をスマートに解決する方法は模索していかなければいけないと思います。

 

法的措置の姿勢を見せて感想ツイートを減らすというのは、誰も得をしない哀しい結果です。ましてや、次世代を担うweb漫画の感想まで減るのは集英社も本意ではないはず。

 

なにか策を講じてほしいというのが、漫画ファンである私個人の願いです。

 

 

 

『ブルーピリオド』11巻感想~絵画教室のこどもたちとの触れ合い、闇が深すぎる~

本日は『ブルーピリオド』最新刊の感想ですー

 

『ブルーピリオド』といえば、この10月にアニメ化する人気「美術スポ根」漫画。

 

11巻ではスランプに陥った主人公、八虎が子どもの絵画教室にアルバイトに行くのですが・・・

 

あらすじなし、感想オンリー、少々のネタバレ含む内容なので既読の方のみ↓へお進みください。

 

 

『ブルーピリオド』11巻

 

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【感想】

 

 

重いッ!

 

佐伯先生(表紙のイケシルバーヘアレディ、八虎の恩師)の絵画教室でバイトすることになった八虎。

 

内容は絵画教室の子どもたちへの指導。

 

その子どもたちが一癖も二癖もあって。。。

 

その上、突然の橋田カムバック。そして橋田もチラチラ重いところを見せてくる・・・

 

7巻以降、ずっと低調、沼に足を取られるような、もがくような展開が続いている『ブルーピリオド』。

 

その重さ、実にいいねエ・・・!

 

絵画教室のこどもたち(の中でも問題のある子)の闇もまた、美術への姿勢として根深い。

 

私も子どもがいるので、こういう美術の関わり方したらだめなんかな~なんてちょっとわが身を振り返ったりします。

 

ところで、今回の美術知識は「ピカソ」について。普通に勉強のきっかけになるのでありがたいです。生涯で15万点の作品創作ってちょっとすごすぎだなピカソ

 

 

『妻の飯がマズくて離婚したい』感想~ママ情報webメディア漫画の拡散を考える。コストと楽しみ、それが問題だ~

本日は今Twitterでバズってる漫画をアーカイブとしてご紹介したいと思いますー

 

Twitterやってますよね?やってなければこちらとか↓を見ていただくと、Twitterでなにやら盛り上がっているのが分かると思います。

 

togetter.com

 

ママ向けwebメディア掲載なのにストロングなスタイルに、漫画読みとして畏怖を覚えたので考察したい・・・という次第です。

 

今回は

 

  • 私の観測したあらすじ(24話までで)
  • なんでこの漫画が議論を呼ぶのか

 

について書きたいと思います。いやあ業界のセオリーをぶちのめすわあ。

 

 

 

『妻の飯がマズくて離婚したい』

select.mamastar.jp

 

 

 

『妻の飯がマズくて離婚したい』はwebメディア「ママスタセレクト」で連載している4コマ漫画です。

 

(webメディア掲載の無料まんがのため、今後無料で読めなくなるor掲載が取り下げになる可能性をあらかじめ申し伝えておきます)

 

 

 

私の観測したあらすじ(現在公開の24話までで)

 

ミナミ、兼業主婦。

アツシ、会社員。

 

ミナミとアツシは小3、小1、年中のかわいい子どもに恵まれた夫婦。

 

しかしこの夫婦には大きな問題があった。

 

それは食の価値観が大きく異なること。

 

ミナミは実家の家庭方針から「腹に入ればみな同じ」という価値観。

アツシは裕福でなくとも食べることが大好きな両親のもと、「お金をかけずに手間をかけて」食を楽しむ価値観を持っていた。

 

ミナミには「食を楽しむ」という概念そのものが分からない。

そのため食は二の次三の次、かわいい子どもたちの教育費のために最低価格の素材、最低限の作成コストで作った食事を出す日々だった。

 

そんなある日、アツシがこっそり1万2千円のディナーに行ったことが判明する。

 

ぶつかり合う二人。離婚も視野に入った価値観の違いを、二人はどのように乗り越えるのか・・・?

 

 

 

【なんでこの漫画が議論を呼ぶのか】

 

この記事では、内容についてではなく「この漫画がTwitterトレンドに乗るほどの話題になったのはなぜか?」という視点で見たいと思います。

 

結論としては情報メディア発信でありつつ、ターゲットがつかみづらく、考察を呼ぶからだと思います。

 

まず、情報メディアからの発信であること。

 

当該作品が連載されている「ママスタ」は、「ママに役立つ情報を日々配信」というキャッチコピーのついた紛れもない情報メディアです。

 

4コマ漫画も多数掲載されていますが、どちらかと言えば育児や子連れのお出かけ、保育園、塾などの育児情報を強みにした媒体です。

 

そしてそんな媒体でありつつ、『妻の飯がマズくて離婚したい』のターゲットがつかみづらいこと。

 

本来ママ向け情報メディアの4コマ漫画であれば、基本的にターゲットを女性に絞り、女性が読んで楽しい・女性へ問題提起するなどの作品が定番です。

 

しかしこの作品では妻・ミナミの努力や理想、夫・アツシの苦悩が双方描かれ、「ミナミの言うことも分からなくはない」「これはアツシかわいそうだわ・・・」とミナミ(妻)とアツシ(夫)の間で感情移入先が行ったり来たりします。

 

現状(24話)では、ママ向けとも思えないですし、ひねってパパ向けとも思えません。また性別問わない育児層への訴求としてもやや外れている気がします。

 

リアルな作品ではありますが、情報メディアのコンテンツとしては「どこに感情移入していいかわからない」という意図がつかめない不安を感じます。

 

結果、考察を呼ぶこと。

 

ターゲットや意図が分からず、かつ題材が身近な時、人は作品についてあれこれと「これは●●向けなのでは?」「こういう意図なのでは?」といった考えを巡らせます。

 

これが考察です。

 

 

 

更に考察が過熱している理由として、題材があまりにも不幸なことが挙げられると思います。

 

 

『妻の飯がマズくて離婚したい』は、三大欲求である食の価値観の断絶を描いています。

 

ミナミは食にまったく興味がないため、食を「コスト」としてとらえています。

対してアツシの食は「楽しみ」です。

 

ミナミ、アツシの価値観はどちらも現実に存在しますし、一概にどちらが悪いというものではありません。

 

そしてどちらが悪でもないがゆえに、埋めがたい断絶ができています。

 

そのため、「そもそも結婚しなければよかったんじゃ」「(現実にはないだろうけど)こんなこと言われたら泣く」「(仮定として)お金があれば解決するのでは」など、思考実験が繰り広げられてるのではないか、と考えます。

 

 

 

 

 

まとめますと、

  • ママ情報が発信されているメディアに掲載されているのに
  • ママ向けでもパパ向けでもない、誰にアピールしているのか分からない作品
  • でも題材は食のことで身近だから、みんなアレコレ考えちゃう
  • &、内容があまりにしんどいから「もしああだったら・・」がはかどる

というのが、『妻の飯がマズくて離婚したい』が拡散されている理由なんじゃないかと思います。

 

あまりにもストロングなスタイルの4コマ漫画を投下してきたママスタさん。PVもすごいことと思われます。

 

現段階(2021/9/22)で24話。いつ完結するかわかりませんが、どのようなオチを付けるのか。

ミナミとアツシは離婚せずに済むのか。

毎日更新っぽいので、ちょこちょこ見に行きたいと思います。

 

・・・ほんとにどうするんだコレ・・・?