長野県、松本。
ここにひとつの新興宗教が施設を作っていた。
遠くオーストラリアでは、教団の人間が大量の羊の死骸を片付けている。
実験を繰り返し、たった一滴で人を死に至らしめる毒、サリンが完成した。
気化させ、毒ガスになったサリンがばら撒かれる夜を起点に、その前後の日々を描く。
最近は統一教会で話題になっているカルト。
しかし、たった20年前に世界史上でも稀な都市型バイオテロを起こしたオウム真理教への言及は緩やかに失われつつある。
この漫画に描かれている事件はフィクションを織り交ぜたものだ。
しかし実際に事件はあった。
長野県松本市で8人が死亡、600人以上が負傷。
その後、東京の地下鉄にて死亡14人、負傷者6000人を超えるバイオテロを起こした。
日本におけるカルト最悪の事件である。
この事件に至る背景を深掘りする本ではない。
ただ、あった事件を鋭く切り出す。忘れないために。
こんなおぞましいことに若者が加担し、若者の未来を潰したこと。
ヨーロッパの出版社の、いわゆるバンド・デシネ。
ライター(原作者)はコミック原作者にしてジャーナリストのLFボレ。訳者は著名なアメコミ・バンド・デシネ翻訳者の原正人。