漫画のことと本のこと

漫画好きが読んだ漫画や本の感想を書くブログです。

『極東事変』感想〜二次大戦終戦直後の東京で、爆発・カーチェイス・不死身の兵士のド派手アクション大活劇!!

もっと流行って欲しい!と思ってる漫画のご紹介です〜

 

ド派手なドンパチで男女バディ、街中でバズーカとビル爆破の大エンタメですごくいいんだ・・・もっと流行れ・・・!

 

あらすじと感想をご紹介します。※感想については有料でご覧くださいまし

 

 

【あらすじ】

1945年九月。

終戦を迎えた東京で、GHQはある戦後処理に迫られていた。

 

それは【変異体(ヴァリアント)】と呼ばれる生体兵器の殲滅。

変異体たちは終戦を認めず「奇兵隊」と名乗るテロリスト集団と化していた。

 

死神と呼ばれた兵士・近衛勘九郎(コノエカンクロウ)は、変異体殲滅部隊の変異体兵士・砕花(サイカ)と出会い、奇兵隊と戦う事になる・・・

 

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『オッドタクシー』感想〜アニメコミカライズは動物キャラの令和トレンディサスペンスドラマ

アニメコミカライズの漫画の感想です〜

 

アマプラなどで配信中の『オッドタクシー』。漫画は現在2巻刊行です。

 

良きサスペンスなのでぜひ!

 

あらすじ、感想をご紹介します。

 

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『オッドタクシー』

 

原作・脚色:此元和津也/P.I.C.S.

作画:肋家竹一

 

【あらすじ】

住人は動物。場所はリアルな新宿。

オットセイのタクシー運転手、小戸川(41歳)。

偏屈な変わり者で他人にあまり心を開かない。

彼の友人やタクシーの乗客が、「行方不明になった女子高生」を探している。

小戸川に好意がある風な看護師、友人のマッチングアプリ好き、地下アイドル、漫才師。

 

誰もが各々の事情を抱えながら、小戸川に近づいてくる・・・

 

 

【感想】

これはドラマだ!トレンディサスペンスドラマだ!!

 

動物オンリー。ながら、その生々しさは現代にマッチ。

そもそも主人公が独身のタクシードライバー(41歳)。その友人はマッチングアプリにハマった41歳独身(年収盛ってる)、恨みを買ったのはガチャゲー依存症の青年、接近するのは奨学金苦で院内の薬を転売する看護師・・・

 

 

生々しい!でもそれぞれ、オットセイやサル、アルパカちゃん!!かわいい!生々しい!

 

生々しいながらも地下アイドルにハマった青年のバイト先のキャバクラやギラギラした新宿の街並みはほのかにバブル時代を思わせ、すごくトレンディドラマっぽくて。

 

会話も小粋でテンポよく、不穏でおしゃれでこれドラマにしたらすごい流行るんじゃないかと思うけどキャラは動物!

 

アマプラのアニメは既に完結しているらしく、良さそうな評判が流れてきますが漫画は未完。まだアニメを観るわけにはいかない。。

 

 

ドラマはあまり観ないですが、90年代くらいのドラマを令和におしゃれにアップデートした感じです。とても丁寧で上質なサスペンスなので、観ていてストレスがないですよ!

 

2023/7/2追記

完結済みのレビューを↓に書いています。ネタバレになっちゃうので注意して読んで!

ima-nakayama.hatenadiary.com

 

 

『宇宙の真ん中の隣』(読み切り)感想〜軽妙に絵を楽しむSFレディバディ〜

先日読んだ読み切り漫画のご紹介です。

 

軽妙&絵で魅せる。シマ・シンヤ先生のヤングジャンプ(アプリ)読み切りです。

 

 

作者:シマ・シンヤ

掲載:となりのヤングジャンプ

 

 

【あらすじ】

少し未来、とある星の片隅で。

29歳パイロット(ただし現在無職)、リン。

3年前にリンが無職になる理由を作った女、シェイ。

 

シェイは言う、

人生は搾取されるか反抗するか楽しくやるか。

 

リンは嫌々ながらも「楽しくやる」ために、シェイの持ってきた違法な仕事をてつだうことになる。

 

【感想】

 

なにせ絵がオシャレなんだ!

陰影のクッキリした背景に淡い光、細いキャラクターの線。

書き文字は作中一箇所のみ。引き算の演出と軽妙な会話センスが軽やかです。

 

全体に流れる貧しさと、アナーキーな倫理観。南米ギャングの下請けのような気軽さで宇宙船に乗るSFです。

 

おしゃれで小粋な作品でした。

 

 

 

 

『時間跳躍式完全無劣化転送装置』(読み切り)の感想〜爽やかな「あの日の友達との再会」をSF仕立てで

 

作者:山素

媒体:コミックDAYS(講談社アプリ)

 

 

【あらすじ】

大学生の咲子の家に訪れたのは、7年ぶりに会う友人、楓。

引きこもり気味でレポートを書く咲子は、フランスの調理学校から戻った楓が眩しく、そして少しうっとおしい。

 

ところで話は変わるが、咲子の家には時間転送機械があった。

 

 

【感想】

爽やか〜〜〜

 

7年ぶりに会う友人との、「嫌ってわけじゃ無いけどなんか困ってしまうしどちらかというとコンプレックスを抱いちゃっててね」っていう絶妙な感情が!

ディープすぎない、軽やかなSFを通して変化する!

 

なんて幸せなSF。

手の届く範囲のビミョウな感情と、ちょっとした非現実が噛み合う快さ。好き・・・!

 

読み終わってからタイトルを見直すと、また幸福な笑いが漏れる。嬉しい世界です。

 

 

『ボタボタ』感想~晴れやかな性と女の暴走記。闇も過ぎればスカッとする~

漫画の感想です。

 

スカッとしたい女性におすすめ!性と狂気のやりすぎ愛情物語。

 

あらすじと概要、見どころを紹介します。

 

 

『ボタボタ』

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板垣巴留『ボタボタ』日本文芸社2021年 より引用

作者:板垣巴留

掲載:週刊漫画ゴラク

 
【あらすじ】

氷刈真子は29歳。

美人だが誰とでも寝る・・・と思いきや、極度の潔癖症で汚いものに触れると大量の鼻血が出てしまう体質。

男性とふれあいたい!狂気と、やりすぎなまでの愛を求める物語。

 

【概要】

チャンピオン連載の少年漫画『BEASTARS』でヒットを飛ばした板垣巴留先生の1巻完結漫画。

少年漫画の経歴によるやりすぎ・過剰な表現が一周回って笑いを誘い、青年誌掲載の性表現が女性の晴れ晴れしさにつながる怪作。

 

【見どころ】

 

まずは「あまりに過剰な心の闇が一周回って笑っちゃう件」。

 

性行為をしようとすると大量の鼻血を出してしまう体質の真子。

 

血みどろのセックス・・・サイコホラーの様相を呈するはずが、一周回っていっそギャグ。

 

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板垣巴留『ボタボタ』日本文芸社2021年 より引用

 

作中では、真子が極度の潔癖症になる心の闇も描かれています。

 

しかし「過剰さ」によって、真子はベタっとしたメンヘラ女ではなくいっそあっぱれ!と思いたくなる突き抜けたパーソナリティを感じさせます。

 

 

その突き抜けた清々しさは「女性がスカッとする、真子の決断」につながっていきます。

 

ラストのオチのつけ方なのでここでは公開はしません。

 

しかし、闇に染まった女が最終的にとった行動は突飛で豪快でやりすぎで、そしてスカッと爽快。

 

闇も過ぎれば爽快感。血みどろなのに晴れやか。

 

なんとも表現しがたい怪作ですが、1巻完結の気軽さもあるのでもし気がむけばぜひ。

女性の悩みの話のはずなのに、少年漫画的気持ちになる新感覚の作品ですよ。

『サトコとナダ』感想〜イスラム女子と日本女子、アメリカのルームシェアでできた友情〜

最近、アフガンのこともありイスラムのことを色々調べていました。

 

『サトコとナダ』は1人のムスリマイスラム教徒の女性)の日常の漫画です。

 

同時に泣きたくなるよな女の子同士の友情のお話だったので・・・感想を書きます!こんな友だち、娘にできて欲しい!

 

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(『サトコとナダ』 ユペチカ 講談社/より引用)

 

著者 ユペチカ

出版社 講談社 (2017/7/8)

 

 

【あらすじ】

 

アメリカの大学生、サウジアラビアから留学しているナダ。

同じくアメリカの大学生で、日本から留学しているサトコ。

 

ルームシェアで知り合った2人。でも日本人のサトコはムスリマのナダの日常に驚くことばかり。

 

ほか、クリスチャンのミラクル、アフガニスタンからきたムスリマのパキザ、日系アメリカ人のケビンくんなど人種も宗教もごちゃ混ぜの友人関係が楽しく紡がれる。

 

 

【感想】

 

エッセイのようだけどエッセイではないです。

ムスリマのナダのカルチャーギャップがメインだけれど、クリスチャンや日系、アフガニスタンムスリマ(サウジより厳格)など「アメリカの大学生」物語。

 

ナダの暮らし方や考え方はやはり日本人と大きく異なるけれど、アメリカの大学生たちということもあり文化が優しく溶け合っていく。

 

イスラムの考え方は日本人には馴染みが薄く、「お祈りってそんなテンションなん!?」「結婚観、動揺するわ〜」とか思っているうちにあっという間に別れが来る。

 

その時気づくのです。。

「あれ、サトコとナダ、めっちゃいい友だちだったじゃん」と・・・

 

文化が違うからこそお互いを知る努力をしていたし、考え方が遠いからこそより歩み寄る努力があった。

 

その経験を追っていたら、2人の別れ(卒業が別れですね)がものすごく!哀しく思えて!!!!

 

イスラムの生活に理解が深まったらイイナー、なんて思って読んでたら、まんまと切ない青春物語にやられました。

 

イスラムの生活を知りたい方にも、青春の瑞々しさに触れたい方にもオススメの漫画です。

 

 

※ただしムスリマも多種多様。

イスラム生活様式を知りたい場合、ナダがサウジアラビア出身で、親がアメリカ留学を許してくれる穏健派イスラムであることは考慮に入れた方が良いと思います。

『フールナイト』感想〜禍々しく鮮烈な絵とえづくような貧困の近未来SF〜

禍々しくも美しく、貧しさに冷や汗が垂れる辛いSF漫画のご紹介です。

 

絶望的なディストピアがお好きならばぜひ!

 

あらすじと感想をご紹介します。

 

『フールナイト』

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フールナイト 安田 佳澄 小学館 /より引用

 

【あらすじ】

厚い雲が日をさえぎり100年経った世界。

植物が枯れ果てる世界で、酸素を得るために「転花」という技術が発達した。

それはヒトを植物に変える技術。施術を受けた人間は2年ほどで植物に成り果てるが、1000万という大金を得る。

 

工場勤務の貧困青年、トーシロー。

月給9万で、重度精神障害の母親と暮らしている。

貧困に絶望したトーシローは「心の豊かさを買う」として転花施術を受ける。

しかし施術から覚めたトーシローは、転花した者、通称「霊花」の声が聞こえるようになっていた。

 

【感想】

絶望的な貧困!!!

「月給9万」「精神障害の母と暮らす」など、貧困ワード満載。多分福祉にきちんとつながればもう少しやりようがある気がする状態だけど、トーシローがそこに繋がるための経験や知識がないこともひっくるめて貧困。人間関係の貧困や知識の貧困。

 

トーシローは常に「貧しさ」「豊かさ」の二極の自問自答を繰り返し、間の選択肢がないどん詰まりの絶望感。

生々しすぎる貧しさ、コロナ禍でグイグイ胸にくる。

 

 

そして貧困を表現する絵がまた素晴らしくて!

 

特にカラーページ、陰鬱な世界を象徴するかのようなグレーをベースに、「血の赤」「闇の黒」といった色味が鮮烈。

灰色ベースなのに鮮やかな混乱する色味。でもとても美しい。。

 

生の意味を問う哲学性やアーティスティックなイラスト表現をしつつ、言葉通りの「植物人間」になりゆくヒトの哀しみの過程のドラマ、霊花の追撃チェイスなどエンタメ的にもバッチリ。

 

絵だけ眺めるのでもよし、地獄の貧困にえづくのもよし。まだ2巻なのでぜひ読んでほしい!