漫画のことと本のこと

漫画好きが読んだ漫画や本の感想を書くブログです。

『ルチャリブレ ― 覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』感想〜ロスのおっさん5人組が街を守る?海外ゆるふわおっさんヒーローコメディ〜

海外のヒーローコメディのご紹介ですー

 

絵のイメージは日本漫画勢にもオススメ!

キャラのデフォルメもセンスいい、ほっこりオッサンヒーローギャグです。

 

あらすじと感想をご紹介します。

 

ルチャリブレ ― 覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』

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jerryFrissen/Bil/原正人『ルチャリブレ -覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』パイインターナショナル2014年 より引用

 

 

著者:

ライター(原作)jerryFrissen

アーティスト(作画)Bill

翻訳 原正人

出版社:パイ インターナショナル

 

【あらすじ】

ロサンゼルスに住む5人組のルチャ(メキシコプロレス)・マスクのおっさん。

 

エル・グラディアトール

レッド・デモン

ディアブロ・ロコ

ドクター・パンテラ

キング・カラテカ

 

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jerryFrissen/Bil/原正人『ルチャリブレ -覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』パイインターナショナル2014年 より引用

 

 

彼らはロスの自警団ではあるが特に特集能力はない。

かつ収入もないので、奥さんからは嫌味を言われ親の脛を齧る生活。

 

5人とも仲がいいんだから悪いんだか、軽口と罵り合いをしながら悪に立ち向かう。

 

立ち向かう悪も、貧乏な狼男集団やうっかり迷い込んだゴジラなど憎めない人外。

 

ロスを舞台に巻き起こる、ほっこりゆるふわおっさんヒーロー!

 

【感想】

無職のマッチョおっさん5人にほっこりしつつ、キレキレアクションバトルが楽しい!

 

 

ルチャマスクを被った自警団の5人のおっさんのキャッキャウフフがかーわいー!

 

小学生の頃の友達がまんま大人になった感じの5人組、油断するとお互いの悪口を言い合って殴り合いしてる。体臭disとかすぐするし。

 

そして社会的にすごく肩身が狭そう。

クルマ壊して奥さんから怒られ、作戦会議中にママが差し入れ持って入ってきて「アレルギーはもう平気だって!」の世界観がすごくカワイイ。。

 

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jerryFrissen/Bil/原正人『ルチャリブレ -覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』パイインターナショナル2014年 より引用

 

こんなほっこり親父たちだけどバトルはデフォルメが効いたキャラを使ってキレッキレ!

 

ヴィランもマヌケなカワイイやつらではあるものの、狼男やゴジラ、半魚人などの人外が割と複数で襲ってくる。

 

アクションシーンも見応えアリ。フルカラーも相待ってアニメみたいな臨場感!

 

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jerryFrissen/Bil/原正人『ルチャリブレ -覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』パイインターナショナル2014年 より引用

 

 

私は海外漫画初心者ですが、まったく違和感なくマッチョなダメおっさんのイチャイチャにニヤニヤできます!

 

Kindleだと3巻(一巻550円程度)。紙本だと定価2200円。

 

個人的には紙がオススメ。

装丁が豪華なハードカバーだし、なにしろ絵が綺麗。ロサンゼルスの空の下、ノーテンキなおっさんヒーロー物語が楽しめますよー!

 

 

『海が走るエンドロール』感想〜映画を撮りたい65歳。クール男子への仄かな感情も含むシルバーレディ少女漫画〜

映画好き、そして青春をまた送りたい50代〜60代の皆様にオススメ(もっと下の世代もグッとくるよ)

 

鮮烈な映画への情熱、ほんのりした男の子への気持ちがないまぜになった「65歳からの映画撮影」漫画です。

 

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『海が走るエンドロール』 たらちねジョン 秋田書店 より引用

 

 

著者:たらちねジョン

掲載:月刊ミステリーボニータ

 

 

【あらすじ】

 

夫を亡くした65歳の女性、茅野うみ子。

元から映画を観ることが好きだったことを思い出し、映画館に立ち寄ってみる。

 

そこで出会った美大生の映像学科の男子学生・海(カイ)に、「映画作りたい側なんじゃないの?」と問われる。

 

うみ子は自らの創作意欲を自覚し、海と同じ大学に通うことにした・・・

 

 

【感想】

 

「もし私が映画を撮るなら」

海くんをきっかけに、映画とうみ子さんはまた出会った。

 

 

65歳のうみ子さんは、明るいけれど落ち着いているし、孫もいて、穏やかで優しい良識的なおばあちゃんといった感じ。

 

表紙のイメージだと老齢ながらなにか開放的なオーラを放つ人」という印象だったので、常識的な年相応のご婦人であることにびっくりした。

 

でも、ページをめくるにつれてうみ子さんの行動力(というかやや常識はずれな部分)が明らかになっていく。

 

主婦トモに話を合わせられないし、軽々しく大学を決めるし、大学生の男の子ともっと話したいからって理由をつけて家に誘うなど。

 

わりとテンションの高い人であった。

 

そしてうみ子さんは、海くんというすごい美少年に惹かれる形で映画の道に踏み出す。

 

少女漫画的ロマンスとしてとても淡いし、海くんに好かれたくて映画を作りたくなったわけではない。

うみ子さんは海くんがいなくても映画を撮ると思う。

 

うみ子さんが家で一人、映画の構成を考えてしまったり、自らの料理動画で短編を編んでしまったりしたのはロマンス由来では無いと思うからだ。

 

海くんはあくまできっかけ。うみ子さんが若き日の情熱を思い出し、「もし私が映画を撮るなら」と映画に再び出会っただけ。

 

純粋な映画への気持ちを持つ65歳が「自分を茶化さず」作れるか。

今後が楽しみな作品。

 

 

 

ところで、『傘寿まりこ』『メタモルフォーゼの縁側』『たそがれたかこ』など、子育ても結婚生活も卒業した女性が自分の「好き」にトライする漫画が増えたなあと思う。

 

それは漫画読者の高齢化でもあるのかな?と思って、とてもとても良いことだなーと思う。

 

 

『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』感想〜ファンタジー×ロック!そしてスポ根!音イメージの奔流は情報量が多くて少ない〜

ド熱いスポ根がお好きな方におすすめの漫画ですー

 

スポ根でファンタジーで、そしてロックなんですが。それ成立するの?と思うけど、ものすごいパワーで成立させるんですよコレが。

 

あらすじと感想をご紹介します。

 

SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』

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長田悠幸/町田一八 『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』スクウェア・エニックス2014年より引用

 

 

 

【あらすじ】

地味な英語教師、本田詩織26歳。

 

将来の夢はぼんやりお嫁さん。家は貧乏、いつも茶色のスーツを着ているジミな彼女だが、実は高校生の頃はギターをかき鳴らすロック少女だった。

 

そんな本田先生にアフロのブルースシンガーの霊が憑りついた。

 

霊の名前は「ジミ・ヘンドリクス」。彼が言うには、27歳までに「伝説」を作らないと本田先生は死ぬ・・・!

 

リミットは1年!本田先生に眠る熱きギタリストの魂を燃やせ!

 

【感想】

 

音のイメージを具現化したぜ!!!

ド級のスポ根だぜ!

「俺の考えたいちばんすごいアーティスト集めた」ぜ!

 

見どころを羅列すると↑のように分裂する本作です。

 

まず音のイメージ。これは見ていただいた方が早い。

 

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長田悠幸/町田一八 『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』13巻スクウェア・エニックス2014年より引用

 

 

あり得るか?あり得ねえだろう?でもこういう音が出てるんだ。こういう音を出したんだ!!

 

絵のうまさも相まって、怒涛の音イメージの奔流。ほか、ライブ中にバスが飛び出したりクジラが舞ったりと大変に派手!

 

確かにこんなことは起こらない。しかしこれがイメージというものだッ!(なお、↑のコマはなんと「4ページぶちぬき」という漫画の常識を打ち破る演出)

 

その音イメージが出るほどの説得力ってなんだ?っていうの、本作では「スポ根で鍛えてるから」っていうアンサー。

 

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長田悠幸/町田一八 『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』8巻スクウェア・エニックス2014年より引用

 

 

血と汗と涙と、カップラーメンをぶつけられるド根性。今時珍しいほどの熱血ぶりですが、この苛烈な「修行」をキャラ全員が克服しての音!

 

 

で、今までの二つと大きく異なる面白みとして「俺の考えたいちばんすごいアーティスト集めた」ってのがあって。

主人公にジミヘンが取り憑く・・・という設定上、他にも憑いてる有名アーティストがいる訳です。

コレも見てもらった方が早いデス。

 

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長田悠幸/町田一八 『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』17巻スクウェア・エニックス2014年より引用

 

 

ブライアンジョーンズにジャニスジョプリン、

ジムモリソンにカートコバーン!

 

私は音楽に明るかアないんですが、このメンツが偉大なアーティストであるであることくらいはわかります。

 

ここにジミヘンが加わるって事で、小学生のロック好きが「おれのかんがえたアーティストで打線組んでみた」という夢バンドができる訳ですヨ。

 

 

・・・という感じで、内容モリモリでとっ散らかりそうな本作なんですが・・・

 

存在する情報量の多さに対し、表現する情報量は少ないので大丈夫なのです。

どういうことかっていうと「一巻の半分はセリフなしで音楽イメージで進行」とか!!

 

 

「ジミヘンの幽霊が取り憑いた」というファンタジーにノレさえすれば、超極上の音楽スポ根体験ができます。

 

音イメージはまるで読むMVです。

すごい表現力だし、もっと流行ってほしいなあ。ド熱くて面白いヨオオオオ!すばる先生ダーイスキ!

 

 

 

 

 

 

『ネオ・キャット』感想〜猫社会派SFだ!モノ言う猫たちのちゅ〜るを伴う社会的生活〜

これは良いですぞー!

 

喋る猫がいる世界、社会生活を通して猫生(人生的なモノ)が流れていく社会派SF!

なおちゅ〜るのある世界で猫好きも満足。

 

あらすじと感想をご紹介します。

 

 

『ネオ・キャット』

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 青化『ネオ・キャット』 祥伝社2021年 より引用

 

 

【あらすじ】

海辺に暮らす老齢の絵描き。

 

人との付き合いが苦手な彼は、マッチングアプリで「好きなDVDを持って待ち合わせ」をした。

 

彼が持っていったのはリュック・ベンソンの『Le Grand Bleu』。

 

果たして相手は来た。それは同じく『Le Grand Bleu』を持った猫、「きくお」であった。

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青化『ネオ・キャット』 祥伝社2021年 より引用

 

それは進化と呼べるのか?猫が社会生活を送る世界。

 

猫に惑わされるヒト、猫を求めるヒト。軽やかでユーモラスな短編8編からなる猫SF

 

【感想】

 

これは傑作ッ!

 

時に移り気なマッチングアプリの相手として、時にやり手のホスト(ネコホス)として、時に大企業のCEOとして。

 

猫たちがあまりにもさりげなく猫生(人生的なモノ)を送るSF。

 

猫の自立性(キャティズム)を思考する猫がいたり、猫たちはこの世界で社会的に強くないという描写もあったり。

 

でもヒト弱者のメタファーではなくあくまで猫。社会風刺じゃなく猫。

 

 

 

何かを啓蒙するタイプのSFではなく、「猫が喋れて共に暮らせたら?」を描くif物語です。

 

と、真面目なSFと見せかけて、ちゅ〜るネタ含めた猫あるあるも盛りだくさん。

 

SFが好きな方、猫が好きな方に広く勧めたい傑作猫SFです。オススメえ〜!

 

 

 

『天狗とわらし』感想〜少年誌的「やさしいせかい」と高い画力。ところでジャンプ+の年齢ターゲットはどこなんだ〜

ジャンプ+新連載のほんわかコメディのご紹介ですー

 

コメディなんですけど・・・画力が大変高くて安心感がある。

ただ、それとは別にジャンプ+の方向性に疑問を持ったり・・・

 

『天狗とわらし』

shonenjumpplus.com

 

著者:しいたけ元帥

掲載:少年ジャンプ+(web)

 

 

【あらすじ】

最強にして妖怪界の一匹狼、「大天狗金剛」。

 

百鬼夜行の妖怪どもを敵に回しても気にしない不敵な男が、なぜか超Kawaii座敷童「わらし」と住むことに。

 

うっとおしがる金剛だが、わらしとの生活は心休まるモノだった。

 

一方、「金剛を倒せばボスになれる」と金剛を付け狙う妖怪たちが蠢き始める・・・

 

 

【感想】

 

「バキバキクールな筋肉ダルマがカワイイ幼児育児のギャップ」コメディ。

 

しいたけ元帥先生は『ガンダムビルドダイバーリゼ』などで商業漫画を描いていた漫画家さん。この度ジャンプ+で新連載。


さすがアクションの表現力なども高いし、「最強の男×カワイイ幼児育児」というギャップギャグも職人的な作り。

 

妖怪のデザインもバリエーション豊か。少年漫画向けのグロすぎないヴィランと育児ネタを交えた「やさしいせかい」のバトルをします。

 

画力が高くて安心の作りです。

 

 

 

 

・・・が、これは作品の話というか掲載媒体の話なんですが、

 

なぜジャンプ+で連載したし・・・?

 

そもそもジャンプ+は(建前上)16歳以上から見られる漫画アプリ。

 

ヒット作は『チェンソーマン』『地獄楽』『サマータイムレンダ』と、残虐&酷薄。地獄楽で「房中術」って初めて知ったもん!おとなのまんが!

 

で、『天狗とわらし』は多分10代前半くらいが楽しめるんじゃないかと思って。。

 

本誌か、いっそ最強ジャンプ(ジャンプの低年齢レーベル)の方がハマるんじゃないかなって。

 

かわいいコメディなのにアクションやヴィランデザインがいいっていう、良い漫画だと思うのですが・・・ジャンプ+だともったいないかなーなんて思ったのでした。

 

 

 

 

『メイコの遊び場』感想〜グロ注意!懐かしのお遊戯は男の精神を破壊する〜

グロが平気な方のみおすすめの漫画のご紹介ですー

 

グロが無理なら無理に勧めません!でも「遊戯」の使い方のうまさや次第に明らかになる子どもたちの姿の構成など、面白い漫画なんですよ。

 

 

『メイコの遊び場』

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岡田索雲『メイコの遊び場』 双葉社2019年 より引用

 

【あらすじ】

学校に通ったことのない眼帯の少女、メイコ。

 

昼には空き地に集まる親切な子どもたちから、いろんな遊びを教えてもらいます。

 

夜には「お父ちゃん」に頼まれて、見知らぬ男の前で眼帯を外します。

 

眼帯の下を見た男たちは、メイコの精神世界に連れて行かれます。

そして「メイコの遊び」で心を破壊され、次々に廃人になっていきます。

 

 

【感想】

 

エッッッグ!!!いです!!

精神世界であり得ない死に方をする男たち、その殺し方は素朴な「あそび」。残虐さと素朴さのギャップにえづいちゃう!

 

メイコは眼帯の下の目を見せることで「自分の精神フィールドに相手の精神を呼び込むことができる」少女。

 

荒涼とした精神世界でメイコは無敵。どんな超常現象でも起こせます。

 

昼に友達に「釘遊び」「投げ縄」など素朴な遊びを教えてもらったメイコが、男たちと「遊ぶ」。

 

釘遊びは男を突き刺し、縄は男を車で引きずり回す。

メイコの精神世界で死ぬと心も死ぬ。現実世界には廃人になってうめく男たちが残る・・・

 

心を壊される男は大抵ヤクザのクズそうな奴ではあるんですが、その末路は血の気の引くものです、、、

 

 

とにかく残虐でグロい本作ですが、無感情なメイコが徐々に子どもらしくなる構成が秀逸。

 

メイコは最初こそ無感情な少女ですが、素朴な遊びを通して友達がいる温かさに気付いていきます。

 

また、ただ親切だと思われていた「仲間の子供たち」もそれぞれ事情を抱えていて、それがゆるゆると露わになる展開も見事です。

 

グロいものが見たい方、皮肉なストーリー展開に唸りたい方にオススメ。

けど再三言うけどグロが無理ならお勧めしないよ!!夢に出るよ!!

 

 

 

 

 

『さよならタマちゃん』感想~漫画家アシスタントの35歳が癌になった。その後の進展も含めて震える優しい絵の闘病記~

闘病記として・・・

そして夢をあきらめない人の漫画としてオススメな漫画です。

 

「35歳からまだまだやれるんだ」がマジで起こった、その前の話。

 

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武田一義さよならタマちゃん』 講談社 2013年 より引用

 

【あらすじ】

漫画家を目指して漫画アシスタントをする35歳、著者の武田一義

彼は睾丸癌に侵され、入院を余儀なくされていた。

妻の早苗、犬のビッグ、そして同室の入院患者の面々やアシスタント仲間。

 

様々な人と関わり支え合いながら、過酷ながん治療に耐える日々を描く。

 

【感想】

闘病記です。

エッセイというには整っているし、フィクションというには現実の知人が登場する。

 

舞台は基本的に病室の片隅。吐いたり、イライラしたり、同室の入院患者とふれあったりと、がん患者の入院生活をまるっと淡々とながめていきます。

 

エッセイテイストですがストーリーは起承転結をきちんと押さえたつくり。しっかり構成が練られています。

むき出しのエッセイから1枚フィルタがかかったようなジャンルです。

 

また絵の柔らかさがあるので、闘病のしんどさが軽減されます。

吐いたり、奥さんに八つ当たりしたりといった辛いできごとも(少しは)優しい雰囲気になります。

ただ逆に、かわいらしい絵で同室の入院患者さんの先輩が亡くなるのはこたえます。

優しい絵の特性を最大限に活かし、普段の辛さは軽く、生死に関わる辛さは倍増する闘病記です。

 

 

 

 

そして何より、病気を得てからのリアルの進展がすごい。

 

本作での武田先生は、いまだ連載作のない、35歳の漫画アシスタントです。

退院後、本作の連載が決まります。

 

しかし武田先生はその後、『ペリリュー~南国のゲルニカ~』という名作を著し、アニメ化も進展中(※2023/7現在、いまだにアニメ化のニュースは聞かれません・・・)です。

 

私はそもそも『ペリリュー~南国のゲルニカ~』で武田先生を知りました。

インタビュー記事を読んだり実際に漫画を読んだりして、漫画家としての技量は折り紙付きだと思っています。

 

  • 「戦争に関する本はほとんど読み」、「生き残りに会って取材」「現場にも足を運ぶ」取材量
  • センシティブな内容をしっかりとエンターテインメントに仕立て上げている演出力
  • 本来の超画力の画風を封印し、かわいらしい画を最大限に戦争漫画に活かす

 

さよならタマちゃん』の時の武田先生はいまだ卵のままのアシスタントでした。

しかし癌を経て、武田先生がどれだけ頑張ったのであろうかと創作を超えて胸が熱くなります。

 

誰もかれもこうであれ、とは言いません。

しかし「病を得て躍進した人の闘病記」として超貴重なものだなと思います・・・!

 

 

 

(というかペリリュー、超面白いのでみんな読んだ方がいい。苛烈な内容だけどしっかりエンターテインメントだし、『さよならタマちゃん』のエッセイとフィクション紙一重の面白さはそのまま引き継がれてるよ!)