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『おとなになっても』感想~「捨てて逃げてきたこと」が都会で起こっていることに戦慄した~

こんばんは、約40年前に「地域社会になじめなーい!」と産声を上げた中山です(誇大な表現)。

 

本日は志村貴子先生の『おとなになっても』の感想を書きたいと思います。

 

しかしなにしろ普段から恋愛マンガを読みつけていないので「恋愛マンガ文脈」が読めていないことをご容赦ください。

 

なにより私はこの登場人物たちが暮らす「地域社会」のイメージに身震いしているんです・・・

 

この記事は以下の構成でお届けします。

・『おとなになっても』あらすじ

・『おとなになっても』感想

 

 

『おとなになっても』あらすじ~二人のヒトが出会った、二人は女性で、一人は結婚していた~

 

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『おとなになっても』1巻 志村貴子 講談社 より引用

 

 

『おとなになっても』あらすじ

 

大久保綾乃、小学校教師。

・平山朱里、接客業。

ある日出会った2人はおとなだったので、キスしたくなって「今かな」と感じたからキスをした。

でも綾乃は既婚者。

 

夫は離婚はしてくれない。

押しの強い義母がおぜん立てして、気づけば夫の家族と同居してる。

引きこもりの義妹も気になる。

小学校の子どもたちもなにか問題を抱えている。

 

36歳の女性が社会生活をしながら恋をする。それはただ恋をするだけでは終わらない、いろんなものがまとわりついている。

 

 

『おとなになっても』感想~私が捨ててきたもの、逃げてきた場所が近くにありそうな怖さ~

 

俺なら爆発する!!!!

 

『おとなになっても』は恋愛マンガです。

 

好きだと思えた人がいて、その人のもとに駆け付けるには色んなハードルがあって、それでもどうしてあの人が好きなんだろう、そのハードルを越えられないのは自分なのに、会えないと泣いてしまうのはなぜなんだろう。

 

という恋愛マンガです。

 

でもここでのハードルって言うのがね、

 

(結婚6年目、特に夫と仲が悪いわけじゃないのに)好きだと思えた人がいて、その人のもとに駆け付けるには色んなハードル(夫が離婚はしてくれない、押しの強い義母さんが丸め込んでくる)があって、それでもどうしてあの人が好きなんだろう、そのハードルを越えられないのは自分なのに、会えないと泣いてしまうのはなぜなんだろう(あと夫婦で不妊の話を避けていたのも、昔好きだった子をなかったことにしたのもなぜだろう)

 

っていうね、大人にしか発生しない現状が打破できない、過去の後悔、という特重(とくおも)なやつなんですね。

 

かつ、↑の気持ちは大久保綾乃の気持ちですが、

  • 既婚者である綾乃に恋した平山朱里の気持ち
  • 綾乃の義妹で引きこもりの大久保恵利の気持ち

などが多角的に展開する群像劇です。

 

キャラクター全員の感情が自然で一方的な悪者がおらず、ドラマに無理がないので綾乃と朱里のもどかしい関係にハラハラする・・・のですが・・・

 

 

私はなにより、『おとなになっても』で恐怖におののいたんですね。

 

 

というのも、重めの地域密着型(プラスα)の付き合いが都会で行われている感覚にブルったんです。

 

解説しますね。

 

 

まず、『おとなになっても』は都市部に近い地域のお話です。

 

明言はされていませんが、綾乃と朱里が通勤に使う地下鉄は都市部のものです。

 

↓のような地下鉄の構造は地方にはありません。

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『おとなになっても』5巻 志村貴子 講談社より引用

 

都内で言うと、この中二階みたいな作りだと三越前とか有楽町とか・・・?

 

とか感じるほどには、都会で展開する物語です(地方の都市住まいの方は近い場所の地下鉄を当てはめて読んでもいいんだと思います、場所の明言は無いので)

 

 

たぶん、綾乃たちが住んでいるのは都内地下鉄から数駅進んだ住宅街でしょう。

つまり、日本の中でも相当な都会に暮らしていると言っていいと思います。

 

しかし綾乃や朱里は「地域社会」と絡み合った暮らしをします。

 

  • そもそも綾乃は小学校教師だし
  • 朱里は物語スタート時には飲食店勤務で、その後元の美容院に呼ばれて復職
  • 二人して地域のマラソンに出ちゃったり
  • ご近所さんと親しくなって食事に行ったり

 

ここで唐突に私の話になりますが、私はこういった地域社会の付き合いが死ぬほど苦手です。

小さい頃から「ただ同じ場所に住んでいる人」の空気が読めなかったし、それが嫌で埼玉の片田舎の新興住宅地から都会に逃げてきました。

 

だから、『おとなになっても』で滞りなく行われているこれらの地域関係にゾクゾクするものがあります。

 

そしてなにより、本作最凶キャラの「お義母さん」のマインドにものすごくひるんでいます。

 

「お義母さん」は綾乃の義母です。

 

お義母さんはデリカシーがなく、綾乃に正面切って嫌味を言う嫌なババアです。

 

しかし半面、地域のイベントには積極的に関わり友人も多く、気さくで明るい女性でもあります。

 

その末子である恵利は引きこもりです。

 

そんなお義母さんが、引きこもりの恵利ちゃんがきれいに髪を切って外に出歩くようになって「思ったこと」に震えるのです。

 

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『おとなになっても』5巻 志村貴子 講談社より引用

 

「恵利がお嫁に行く未来もあきらめかけていたけど」

 

 

引きこもりで世間体の悪い娘。嫁にも行けない娘。

嫁に行けば解決。娘を嫁にやれば、私自身が報われる。

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『おとなになっても』5巻 志村貴子 講談社より引用

 

お義母さんのお義母さんに対するコンプレックス。

「こどもをうまく育てられなかった」というコンプレックスにとらわれているように思えます。

こどもが引きこもったのって、別に専業主婦のお母さんのせいではないのですが。

 

 

家庭のせい、母のせい、嫁のせい、娘のせい、etc・・・・・・・

 

私が捨てて、逃げてきた世界そのままです。

 

 

多分東京都下。日本で一番トレンディでおしゃれで、ジェンダー的にも先進的な意識を持った人たちが住む場所。

 

それで「コレ」なんだな・・・・・・・・・・・・・・・という、絶望と恐怖。

 

『おとなになっても』は、私にとってけっこうホラージャンルです。

 

 

 

まとめ。まとわりつく重たいものがあっても、恋は止められない。

 

というわけで「コミュ障による『おとなになっても』感想」をお届けいたしました。

 

まあ私は特に地域コミュニティが苦手という特性はありますが、都内で暮らす多くの人は、「地域コミュニティ怖い(怖かった)」の感覚は少なからず持っていると思うんですよね(どうでしょう?)。

 

綾乃と朱里は、こういった地域を難なく泳げる人たち。おとなならではのしがらみを持っていける人たちです。

 

それでも二人は恋をしてしまった。そしたら、しがらみがとても重たくなった。

 

重たくてわずらわしくて、恋をやめればまたそれは軽くなるのに、それでも恋をやめることができない。

 

きわめて正直でわがままで、まっすぐな恋物語だと思います。

 

 

志村貴子先生の漫画をしっかり読んだのは実は初めて。

女の子がすごくかわいくて清潔で、とてもすてきな漫画でした。

今後も『おとなになっても』のまっとうな社会生活(にチラ見えするジェンダーコンプレックス)におびえながら、綾乃と朱里の恋の行く末を見守りたいと思います。(あとお義母さんもなんか、しがらみを捨てられるとイイっすよね・・・・)