このエントリーに書いた感想は以下の3件。
- 『兵士とブリキ屋』
- 『漫画 サピエンス全史 文明の正体編』
- 『ペリリュー ―外伝― 1 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』
※Webマンガリンクは時間が経つと閲覧ができなくなっている可能性もありますがご了承くださいませ
『兵士とブリキ屋』
どこかの国のどこかの村。
兵士の家に生まれた少女と、ブリキ屋の家に生まれた少年。
長じて少女は兵士となり、国のため村のため体をどこかしら失くして帰ってくる。
ブリキ屋はその都度、淡い気持ちを抱く彼女の身体を金属で補足する・・・
美しい・・・欠損の耽美よ・・・。
ファンタジー的な世界観ではあるが、体が徐々に機械に入れ替わり、さてどこまで入れ替えれば彼女は彼女のままであり得るのか・・・というSF的問いと恋心が切ない。
が、そこはこの作品の本懐じゃないねッ!
美しいショートボブの女性がじわじわ身体欠損していくフェティシズム、ブリキ屋のデザイン性抜群の義眼や義足によって異形に変わっていくその耽美性よオ!!
女性の身体を欠損させるための小道具としての戦争、兵士に淡い想いを抱くブリキ屋自ら彼女を異形へ変えるサディズム、それに耐えられないブリキ屋と、意義を加速させるための戦況の悪化。
私はライトなフェティッシュとして、それもたいそう美しいものとして受け取りましたよ、ええ。ただフェチ最大化のためとはいえ戦争の美化にはなっちゃってるので、そこは注意して読みたいところ。ただ「世にもくだらない理由で身体が欠けていくという虚無」と捉えるとまた更に味がする。
『漫画 サピエンス全史 文明の正体編』
哲学者ユヴァル・ノア・ハラリの著作をコミックス化。歴史を大胆に解釈し、海外にしかありえないテンションで戯画化されている。
原著を読んでいないので比較はできないのだけど、このマンガそのものは大層読みやすいです。数万年前の証拠の及ばない時代を物語の流れとして読み解く、すっごく雑に言うと『虚構推理』みたいな(とてつもなく雑なたとえ)
原著はベストセラーのため、ニュースとかではよく「ハラリの言説をそのまま受け取るな」みたいなニュースがあるのですが、まあそれはそう。
とは言え、物的証拠の及ばない遥か過去の解釈のひとつとして見るならとても面白いし、エキサイティングな思考実験かと思います。
(以下美大生の解釈)
私は大衆アートと民俗学の関係性というものにメチャクチャ興味があって、鶴見俊輔が定義した「限界芸術」がゴシップを民衆のアート(物語の原初のかたち)として含めていたのが『サピエンス全史』の「過去、人類が集団を守るために行い始めた物語創作がゴシップであった」という言説にぴったりはまっちゃって、そのあとの人類の創作物語・・・宗教、憲法、資本主義、個人主義、共産主義なども含まる、というお話は得心が行っちゃったんだよねえ。面白いお話でした。
『ペリリュー ―外伝― 1 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』
二次大戦時、ペリリュー島(現パラオ)で行われたアメリカ対日本の地獄のゲリラ戦を描いた作品の外伝。
生存者へのヒアリングも含む濃密な取材で著された11巻の本編もとてもよかったけれど、その登場人物たちの補足たる内容。
「それぞれのペリリュー」とでも言える内容で、本編の主人公田丸の友人吉敷のエピソード、パラオ現地の妊婦、田丸たちと相対するアメリカ兵青年・・・と主人公を違える群像短編。
ペリリューの戦いがひとつあったのではない、日本の1万強、アメリカの5万弱、そしてパラオの人々すべてに降りかかった戦争を多角的に見る作品。